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知的障害者の学校から社会への個別移行支援に関する研究 : 福祉や就労の立場からみた支援の在り方

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(1)平成十五年度 学位論文.   知的障害者の学校から社会への    個別移行支援に関する研究 ∼福祉や就労の立場からみた支援の在り方∼. 兵庫教育大学大学院  学校教育研究科  障害児教育専攻.  m O2108f.  木原伸幸.

(2) 目 次 第1章 問題の所在と研究の目的・・・・・・・・…  9・・・・…  1 第1節 問題状況.  1.日本の障害者問題   1)はじめに.   2)知的障害者の労働問題.   3)福祉の問題   4)日本の施策   (1)雇用対策   (2)福祉生活支援事業   (3)文部科学省の提言  2.キャリア教育の進展.   1)キャリア教育のはじまり   2)アメリカの進路指導の特徴.  3.移行支援   1)移行の概念   2)移行支援の国際的動向   3)「障害者移行」の問題.  4.障害者の自立に向けた「個別計画」.   1)アメリカにおける個別指導プログラム   (1)個別教育計画(lndividualized Education Program).   (2)個別移行計画(lndividualized Transition Program).   (3)個別就労計画(lndividualized Plan of Employment).   (4)その他の個別計画   2)日本における個別の教育支援計画   (1)個別の指導計画.   (2)個別移行支援計画 第2節 研究の目的・・・・・・・…  9・・・・・・・・・…  16.

(3) 第2章研究の方法と調査の回収・・・・・・・・・・・・・・・…  21 第1節 研究方法・・・…. 。9….  。。。・・・…  9・・21.  1.調査方法  2.調査内容  3.調査期問.  4.対象  5.分析方法 第2節調査の回答数と回収率・・・・・・・・・・・・・・・…  23 第3章 結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・…  9・…  24. 第1節面接調査結果からの考察・・・・・・・・・・・・・・… 24  1.面接調査実施実施方法  2.KJ法 図解「障害者の地域移行と社会」  3.K J法 文章化r障害者の地域移行と社会(個別移行支援計画)」.   1)社会の流れ   2)マイナスの流れ   3)プラスの流れ.   4)移行支援の出てきた背景   5)学校の個別移行支援計画   6)個別移行支援計画を実施してみて   (1)移行支援の課題   (2)社会の問題.   (3)大事なのは共通理解   (4)成果と今後.  4.その他の面接調査   1)千代田短期大学 坂井清泰先生   2)宮崎県障害者雇用促進協会.   3)知的障害者授産施設rつよし共働センター」.

(4) 第2節 アンケート結果からの考察・・・・・・・・・・・・・…  36.  1。アンケート実施にあたって  2.記入者.  3.地域資源  4.進路指導上の連携   1)進路指導上の連携の必要性.   2)連携の効果   3)連携を行う場合の課題.  5.地域ネットワークの構築.   1)地域ネットワーク支援体制の必要性   2)地域ネットワーク支援の具体的課題.   3)地域ネットワーク支援に期待する効果.  6.個別移行支援計画   1)実施状況   2)生徒の進路による実施状況.   3)ケース会議   4)実施後の感想.   5)実施する上での課題.  7.今後の広がり  8.見直し場面. 第3節総合的な考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  67.  1.連携について  2.地域ネットワークについて  3.個別移行支援計画について 第4章 結論と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  74.  第1節結論…  9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 74   1.障害者を取り巻く社会.   2.地域資源及びサービスの不均衡   3.知的障害者の支援. 第2節 今後の課題・・・・・・・・…  D・9・・・・・・…  77 参考文献一覧・・・…  9・9・・・・・・・・・・・・・・・…  80 巻末資料、謝辞.

(5) 第1章問題の所在と研究の目的. 第1節 問題状況 1.日本の障害者問題.  1)はじめに  人の命が芽生えた瞬間、その命は人間として普通に生きていく権利を与えられている。 それは、国籍や親の地位や財産、本人の能力に関係なく平等に与えられるべきものである。. ましてや、障害の「ある、なし」に左右されるものではない。このような障害者も普通の 社会生活をしていくことは当然であるという考え方は、ノーマライゼーションと言われる。. その理念の発端は、デンマークで施設改革を要求する知的障害者親の会の運動を基盤とし て成立した「1959年法」、および同法の立法化の過程で指導的役割を果たしたバンクーミ ッケルセン(Bmk−Mikkelsen、N.E.)によるものである。この理念は、スウェーデンでベ ンクト・二一ルェ(Ni口e、B.)らによって発展し、さらにアメリカにわたって、ヴォルフ ェンスベルガー(Wolfensberger,W.)らによって・概念化が進められていった1)。ノーマラ. イゼーションは、国際障害者年の「完全参加と平等」を支える基本的な考え方となり、障 害者も他の市民と同様の生活を享受する権利を有することが基本理念としてあげられた。.  平成5年、政府は、今後10年間の基本方針を定めた「障害者対策に関する新長期計画」. を策定し、ライフステージに全ての段階における全人間的復権を目指す「リハビリテーシ ョン」の理念と障害者が、障害のない者と同様に生活し、活動する社会を目指す「ノーマ. ライゼーション」の理念の下に施策の推進を図ることとした。このように、デンマークか ら始まったノーマライゼーションの理念は、海を越えて世界的に認められ障害者理解の中 心的な考え方になっていった。.  国連は、1971年12月20日に、知的障害の人々の権利宣言を出した。この宣言は、7 つの基本方針から成り立っている。その三に「知的障害の人々は、経済的に安定し、世間 並みの生活を送る権利がある。能力の及ぶかぎり生産的な仕事をしたり、他の職業に就く. 権利を有する」とあり、その四にr知的障害の人々は、可能な時はいつでも、自分の家族 または里親と一緒に暮らし、地域でいろいろな活動に参加すべきである。もし、施設での ケアが必要になったら、普通の生活にできるだけ近い形の環境が保障されるべきである。」. と宣言されている。このように、「職業、地域生活すべてにおいて、できるだけ普通の生. 活を保障すべきである」というノーマライゼーションの考え方は、世界の知的障害者の権 利を守る共通の基本理念となっている。. 一1一.

(6)  2)知的障害者の労働問題  障害者の職業的自立とは、障害者個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい職業 を通じての社会参加を実現されるものとされている。障害者福祉法には、「すべての障害. 者は、社会を構成する一員として、社会、経済、文化、その他のあらゆる分野の活動に参 加する機会を与えられるものとする」(第3条2項)と謳われている。.  しかし、長引く経済不況のもと、知的障害者の雇用状況も変化している。従来知的障害 者は、「ゆっくりだが、一つの事を丁寧にやる」と評価され、それなりに適応できる職場 もあったが、現在は根本的に変化している。その変化をまとめ2)ると、.  ①スピードの問題  「ゆっくりだが、…  」は通用しない。早さが問われる。.  ②他品種少量生産の問題  「一つの事を丁寧に…  」は通用しない。多様な業務をこなさなければならない。.  ③職場のローテーションの問題.   仕事場のローテーションで共に働く人々が日々入れ替わる。多様な対人関係の中で仕  事を効率よくせねばならない。.  1987年に「身体障害者雇用促進法」が「障害者の雇用の促進に関する法律と改正され た。この結果ようやく身体障害者だけでなく、知的障害者・精神障害者を含め「障害者」. 全体がr雇用促進の対象」とされた。しかし、この当時、知的障害者や精神障害者は雇用. 義務はなく、その後も少しずつ法律の改正が続いているが、雇用を促進するための有効な 手だてとはなっていない3)。そのことを示すように、労働省の調べ(朝日新聞日曜版、1999、. 10.31)によると、障害者雇用の総数は、年々増加を示しているが、雇用されている障害. 者は、脊髄損傷などの運動障害者が多いことが報告されている。脊髄損傷者などの運動障 害者は、見てすぐ障害部位が分かるため、企業からみても分かりやすい障害と言える。よ って、脊髄損傷者の場合は、車いすによる移動の問題やトイレなどの改造により、職業的 ハンディキャップはかなり軽減され、企業からも求人の対象になっている。これに比べて、. 知的障害者や自閉症、学習障害、てんかんなどがある人たちは、見た目で、どこがどのよ うな障害なのか理解されにくいため、企業は雇用に二の足を踏んでいる状態である4)。.  また、労働省の1993年の雇用実態調査によると、雇用されている知的障害者数は、約 6万人で、この60.7%が製造業に従事している。知的障害者がこのような単純作業に従 事することが多いというのは、以前から指摘されていた5)。しかし、「産業構造の変化」. と言われるように、我が国では製造業に従事する人が年々少なくなっている。このような. 労働は・人件費の安いアジア諸国で行われることが多い。つまり、知的障害者の働く場所 が年々少なくなってきていると言えよう。  また、知的障害者の卒業後の進路が一般就労と結びつかない理由として、松矢6)は、「生. 徒の障害の重度、多様化」「産業構造の変化」「高度技術化に伴う知的障害者の職種や職. 一2一.

(7) 務の減少」「障害者福祉施設の量的拡大による就職志向の低下」「実際の就職先と職種や 職務が合致しない職業教育」「離職者への職業リハビリテーションプログラムの不足」「進. 路指導における学校と労働関係機関との連携不足」をあげている。犬飼7)は、障害特性に 応じた支援の必要性、3年以内の離職が多いこと。佐伯8)は、企業内では、知的障害者理 解教育がなされていないなどの問題点をあげている。このように、知的障害者を取り巻く. 雇用の問題は、時代の流れなどの要素を含みつつ困難さを増しており、早期の解決が望ま れている。.  3)福祉の問題  世界においては、ノーマライゼーションの理念が進展するとともに、環境との関係で、 障害を定義する新たな障害分類についての考え(WHOのI C F)が発表された(2001、6)。. また、日本においても、今まで措置として行われていたものが、新たに契約に基づくr支 援費制度」としてスタートした。いずれも、障害者の主体性をより尊重する動きであり、 本人の自己選択・自己決定が求められている。.  これまで日本は、入所施設を拠点にした地域福祉が展開され、成果を得てきた。しかし、. 入所施設がもともともっている、多かれ少なかれ個々の利用者の特性や個性が生かされに く・くなる傾向は、どうしても残ってしまう。これを払拭することはやはり限界があると言. えよう。高山9)は、施設の暮らしで、利用者の生活の質(QOL)を低下させていたのは、. サービスを提供する側に問題があったのではないかと述べている。それほど、人的環境の 影響は大きいのである。それは、いくつかの施設職員による体罰、虐待事件を見ても明ら かである。施設での援助は、家事労働の側面をもっており、日常をこなしていれば、専門. 的な援助実践をしなくてすむという落し穴があると言う9)。今まで日常生活を円滑に運ぶ こと、問題行動を解決することに汲々としている面があったのではないか。そのため、管. 理や強制が必要であったのではないか。後を絶たない知的障害者への虐待、人権侵害に対 して、加害者へ法律的な手段を講じるだけでなく、虐待を受けた人々への心のケアがその 後どうなされたかも問題にしなければならない。. 一3一.

(8)  4)日本の施策  (1)雇用対策  近代的な障害者雇用対策の端緒は、第一次世界大戦後の傷疲軍人対策と大正13年(1923). に起きた関東大震災における被災者に対する支援策に実質的なものを見ることができる。. 法的整備がなされ、社会的条件整備の基礎が築かれたのは、昭和35年(1960)に身体障 害者雇用促進法が制定されたことに始まると言われる。同法は、昭和62年(1987)に「障 害者の雇用の促進に関する法律」と名称が改められ、企業に対する障害者雇用率制度等の 措置とともに、障害者の職業的自立を促進するための職業リハビリテーション等の措置を、 総合的に行うことを内容とする法律として整備された。.  他には、「障害者対策に関する新長期計画」(平成5年障害者対策推進本部決定)、「障 害者プラン」(平成7年障害者対策推進本部決定)、r障害者雇用対策基本方針」(平成10. 年労働省告示)、「新障害者プラン」(平成15年∼平成19年前期構想)等に基づき各施 策が展開されている。.  国民的理解の促進は、障害者雇用対策の基本といえ、国県等により各種の啓発活動が行 われている。例えば、技能者としての能力を競う障害者技能五輪大会は、国際的取組がな され、毎年国内で行われる県大会、全国大会の他に4年に一度国際大会が行われる。また、 9月は、障害者雇用促進月間とされ、全国的に各種啓発活動が展開されている。.  2002年度より実施される「障害者雇用機会創出事業」については、地域障害者職業セ ンターで委託実施されており、2003年度よりr職場適応援助者」(ジョブコーチ)がセン. ターに配属されることとなる。これらの新規事業の展開により、福祉的就労から企業就労 への可能性がより広がるとともに福祉と一般雇用をつなぐ双方向の流れが生まれようとし ている10)。この様に、障害者雇用も新しい時代を迎えようとしていると言えよう。.  (2)福祉生活支援事業  社会福祉基礎構造改革によって、福祉サービスの多くが、措置制度から契約制度に大き く方向転換してきている。その中で、高齢者や知的障害者、精神障害者の利用者保護と選. 択や契約に関わる自己決定を支えるしくみとして整備されたのが地域障害者権利擁護事業 (福祉サービス利用者援助事業、第2種社会福祉事業)である。2002年9月時において、 利用件数は7400件に上っている。.  障害者施策の指針となる障害者基本計画は、その基本的な考えとして、「共生社会の実 現に向かって、障害者が社会の対等な構成員として、人権を尊重され、自己選択と自己決 定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画するとともに、社会の一員としてその責任を分 担する」ことを掲げている。. 一4一.

(9)  1992(平成4)年の厚生省(当時)の授産施設制度のありかた検討委員会の提言は、障 害者の就労・社会参加二一ズの増加、障害の重度化、利用期間の長期化、通所指向など利 用二一ズの量的質的変化などに適切な対応を求めるものであった。.  知的障害者福祉法に基づく知的障害居宅生活支援事業は、知的障害者居宅介護等支援事 業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者短期入所事業、知的障害者居宅生活支援事 業から構成されている。同法は、知的障害者地域生活支援援助事業(グループホーム)も. 規定している。また、2001(平成13)年に改正された社会福祉法により権利擁護の基盤 も整備されている。.  厚生労働省が平成11年度から実施しているr障害者就労・生活総合支援事業」では、 就労支援と生活支援の一体的提供の必要性を提唱している。このような流れを受け、今後 生活支援を行う就労支援機関も増えてくることが考えられる。今後、養護学校も、この様 な支援機関と連携が図れる場合、中心的役割を就労支援機関へ速やかに移していくことが. 可能となる11)。そして、東京都の知的障害養護学校などが取り組み始めた「個別移行支 援計画」にも応用でき、全国的にも効果が期待されている。.  (3)文部科学省の提言.  2001(平成13)年1月の「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」では、 今後の特殊教育に関する基本的考え方を整理し、就学指導の在り方、特別な教育的支援を 必要とする児童生徒への対応、特殊教育の改善・充実のための条件整備について検討し、. 改善方向の提言などがなされた。特に、障害のある子どもに対する特別な支援を適切に行 うためには、一人一人の自立を目指し、乳幼児期から学校卒業後にわたって、教育、福祉、. 医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対する相談と支援を行 うための一貫した体制を整備する必要を述べている。.  平成14年11月に出されたr今後の特別支援教育の在り方について(中間まとめ)」 においては、「個別移行支援計画」も含む新たな「個別の教育支援計画」の必要性を謳っ. ており、関係機関関係部局の連携協力をこれまで以上に密接にすることにより、専門性に. 根ざした質の高い教育的支援が可能になるとし、このような関係機関等の連携を効果的に 行う上でも「個別の教育支援計画」は有効だと述べられている。.  つまり、今までの学校中心の就労に偏った進路指導から、複数の関係機関が役割を分担 し、責任をもって継続的に支援を行っていく、ライフスタイルも含めた「生き方を支援」 する進路指導への転換が求められていると言えよう。. 一5一.

(10) 2.キャリア教育の進展.  1)キャリア教育のはじまり.  1950年代、現在の特殊教育とリハビリテーション分野における「移行」の前概念と考 えられる「キャリア」の概念が、ドナルド・スーパーによって形成された’2)。彼は、キ ャリァを「生涯において、ある個人が占める一連の立場」と職業のみではなく、生活面も. 含めた広い意味で定義した。また、職業的発達を自己概念の実現過程であるとして、自己 の適性、興味関心について認識し、将来はどんな職業について、どんな人間になりたいと いう願望や希望をもつことを自己概念とした13)。.  2)アメリカの進路指導の特徴  アメリカの進路指導の理念をr職業選択・進路選択を支援する活動」という職業モデル (vocat藍nal guidance)から、「個人のキャリア発達とキャリアマネージメントによって重. 要な知識とスキルの獲得を促進するように計画された統合的・体系的プログラム」 (Henl,E1997)というキャリアモデルヘと移行され始めたのは、1970年代である。  1971年、シドニー・マーラン(当時の教育省長官)は「キャリア教育(Career edecation)」. を当時から増えていた中途退学者予備軍の生徒たちが、大人として機能できるようになる. ための準備教育として、初めて教育関係者に紹介した。このことを発端として、キャリア. 教育を重視する傾向が生じ、1976年、特殊教育の団体カウンシル・フォー・エクセプシ ョナル・チルドレン(CouncilforExcepttionalChildren,以下CEC)の12番目の部会として 「キャリア開発」部会が発足し、障害生徒へのキャリア教育に関する実践と研究の取組が 本格的に始まった14)。.  1994年に制定された「School−to−Work OpPo亘unities Act」がアメリカの進路指導の理念. と役割及び実践において大きな影響をを与えていることを見逃すことはできない15)。こ. の法律は、主として高等学校やコミュニティカレッジが地域の経済界、産業界とのパート. ナーショップを発展させること、そして、すべての生徒を対象とした「学校から仕事への. 移行のためのプログラム」を産業界と教育界が協力して開発することを勧告し、実践のた めの助成を行うものである。進路指導の専門家であるカウンセラーの教育プログラムでは、. 将来働く分野の違いを越えて、キャリア発達の学習、介入行為としてのカウンセリングプ ログラム、運営の能力、職業情報と社会の変化などが必修科目となっているため、「キャ. リアモデル」が主流となっていることは特徴の一つである。キャリアモデルは、「職業生 活を送るr人』に焦点をあてる」モデルである16)。. 一6一.

(11)  今後のアメリカの進路指導は、今まで同様生涯キャリア発達の視点に立って職業生活を 送る全ての人を対象とした発達的・統合的な援助プログラムとなることが予想される。. 特に、働く者のメンタルヘルスヘの関心が一層高まる中で、キャリアカウンセリングと心 理カウンセリングは、統合される傾向が強まる17)。さらに、テクノロジィとカウンセラ. ーの共存が一層進み、「コンピュータを利用したガイダンス」から「インターネットによ る進路指導」へと発展することが考えられる。.  松矢18)は、従来の日本における進路指導、職業教育とキャリア教育との関連から米国 における移行サービスの重要性を早くから指摘している。日本における職業教育や進路指. 導として実施されているものが、米国においては連邦・州・地方の予算の投入と教育・職 業・福祉等の関係部門の連携による介在サービスとして実施されている点が大きな違いで あり、学ぶべきだと指摘している。. 一7一.

(12) 3.移行支援.  1)移行の概念  「移行」は元来「変換、過渡期」などの類義語として、人生のあらゆる場面で日常的に. 用いられる言葉でもある。精神科医グールド(Gould、1978)は、成人期の発達を、子ど も時代に由来する誤った信念を一つ一つ捨て去り、現実的で成熟した意識を獲得していく 過程だとして、大きく変化する時期を「移行期j transition periodと呼んだ19)。CECの1984. 年の年次大会において、当時の特殊教育・リハビリテーション局次長のマドレーヌ・ウィ. ル(Madeleine Will)が初めて特殊教育とリハビリテーションの分野における「移行」の. 概念を紹介した20)。そして、生涯発達の段階で4回の移行期を設定した。現在では、学 校から社会に出るときだけでなく、学校に入る時、学校が変わる時、担任が替わる時、学 部が変わる時、または引っ越しで地域生活が変わる時等、子ども達を取り巻く環境が変わ る時をすべて移行と呼んでいる〔MaryAm.Demchak,Robin G.Greenfild,2003〕21)。.  2)移行支援の国際的動向  移行(トランジッション)及び移行支援に関しての国際的動向として、OECD(経済協 力開発機構、Orgmization for Economic Cooperation and Development)のCERl(Center for. Education Recerch and Inovation)は、1978年に「障害青年のインクルージョンと成人・労. 働へのトランジッション」をテーマとした行動計画に着手し、次いで1982年から86年に おいては「学校から成人・労働へのトランジッション」「障害青年のアクティビティな生. 活・人生」をテーマとした行動計画を実施した22)。OECD/CERlは、トランジッション. 過程を相互に関連しつつも相対的に異なる3つの段階、①義務教育の最終学年 ②継続教育と職業準備 ③労働及び成人生活の開始時期に区分し、年齢的には、各国の教. 育制度などにより相違するが、青年期の学校から社会への移行とは、14歳∼15歳から 20歳半ば頃までに及ぶ継続的で持続的な営みとしている23)。  「移行サービス(移行支援)」については、米国における1990年の障害者教育法(IDEA). の定義がしばしば紹介される。そこでは、「移行サービス(移行支援)」を「進学、職業 訓練、援助付き雇用を含む統合的な雇用、継続的な生産学習、成人を対象としたサービス、. 自立生活、地域参加など個人が卒業後に行う様々な活動を促進するために調整されたサー ビス」としている24)。. 一8一.

(13)  ウイル(Madeleine Wil1)は、「就労に導くために幅広く配置されたサービスによって取. り囲まれた結果指向のプロセス」と移行を定義し、移行の橋渡しモデルを示した25)。. ウイルのモデルは、高校から就労への特別なサービスなしの橋と、2種類のサービスを含. む3つの橋から各々の二一ズによっていずれかを選択するものとした。障害者のQOL(ク オリティ・オブ・ライフ;生活の質)の向上の観点から「移行」の概念を形成した者にア ンドリュー・ハルパーン(Andrew S.Halpem)が挙げられる。ハルパーン(Halpem)は、. ウイル(will)のモデルの3つの橋のうちr特別なサービスなし」をr一般的なサービスの 利用」と改め、サービスが全く必要ないわけではないことを明確にした。ハルパーンは、. 高校卒業後の移行の目的は、就労だけでなく居住環境、社会・個人ネットワークが整った. 上に成り立つ「地域の適応」であると定義した。その後、彼自身の定義するQOLすなわ ち「幸せ、満足感、安らぎから得られる自己実現」を目的に加えた26)。水谷ら27)は、米. 国における1980年∼90年代にかけてのr移行(トランジッション)」の概念を総括してr主 に職業・キャリア教育から展開したと考えられるが、QO Lの向上の視点を伴い形成され. てきた」とし「学校から職場への移行」だけでなく、「学校から地域社会への移行」「学 校から大人としての生活の移行」という広義のものへと広げられた経緯を紹介している。. 小鴨28)は「移行は、中学校課程から次の期間(例えば、雇用主、高等学校過程、職業訓 練過程、在宅サービス供給者)への調整、引き渡し、サービスの移行などへの動きのある 一つのプロセスと捉えることができる」としている。.  3)「障害者移行」の問題  発達障害白書(2002)によるとr知的障害者養護学校の卒業生の進路状況は、約30%が. 就職、約40%が作業所・授産施設などの通所施設利用、約15%が入所施設利用、約10 %が在宅、残りが進学や訓練機関入学となっており、障害のない人たちの『学校から社会 への移行』とは異なっている29)」と報告されている。川上30)は、「知的障害者は、危機. 的な移行に直面した場合に、その環境への対応スキルの獲得が未熟であることが多い」と. 述べている。つまり、障害者の移行期には、適切な支援を行うことが望まれており、かつ 必要である。.  危機的移行(Critical Tlansition)の定義としてワップナー(Wapner,S.、1983)は、”. 人間一環境システム”の急激な崩壊としている31)。人間と環境とは、相互に影響し合い. ながら1つのシステムを形成している。安定した人間一環境システムが発達の要因や環境 の変化によって均衡が破れ、新しい人間一環境システムを形成しなければならないような. 移行を危機的移行という。「危機的な移行」というと、個人の人格が崩壊し、破壊へ向か うような危険な状態を考えやすいが、必ずしもそればかりではない。危機は、分かれ目で. あるから、人生の中で次々と起こる出来事に対して適切に対処すれば人間の成長につなが. 一9一.

(14) るし、失敗すると破局につながる。そのことは、障害者に限らず、誰もが経験する可能性 があると言えよう。つまり、障害者が危機的移行に陥ることが問題なのではなく、そのこ とに対応するスキルの幅が狭いことやサポートする支援者がいないことが問題を深刻化さ せている。.  松矢32)は、障害を通した移行支援の条件として、「すべての障害者に自分に好ましい 企業就労や作業所等における就労、その他通所施設における日中活動が選択できる条件」 「どこで、どのように住まうか選択できる暮らしの条件」「余暇活動の条件」「市民とし. て消費生活が享受できる所得保障」「必要な医療が受けられる条件」「加齢化、高齢化に. 対応した必要な施策と連携」の6点をあげている。「移行」及び「移行支援」が注目され る要因を内海33》は、「障害者の移行に多くの困難が伴い支援を必要とするだけでなく、. ノーマライゼーションの進展により、多くの障害者とその家族が地域生活を指向するよう になってきた」と障害者の積極的な社会参加、地域参加の観点で言及している。坂井34) は、移行サービスの基本的な枠組みとして、「縦断面における継続的・一貫的支援」と「横 断面における諸サーピスの調整・統合化」をあげている。.  移行支援の実際は、まだまだ理念の世界にあり、現実の学校現場や教師間の認識の落差 があまりにも大きいとの指摘もある35)。理念だけで終わらせないためにも、よりよい移 行支援のあり方を模索する時期にきている。. 一10一.

(15) 4.障害者の自立に向けたr個別計画」  1)アメリカにおける個別指導プログラム.  (1)個別教育計画(lndivMualized Education3mrogmm)  アメリカ合衆国における障害者教育では、従来障害児の約半数が適切な教育サービスを. 受けられなかったり、800万人の障害児のうち約100万人が公の学校教育体系から排除さ れたりしていた36)。このような課題を解決すべく、1975年11月に全障害児教育法が制定. された。この法律は、3歳から21歳までのすべての障害児に無償の適切な公教育を提供 することを州及び地方の教育機関に要請している。その中で、個別の二一ズや能力に合わ せて適切な指導を行うことが障害児教育に適していることが認められ、障害がある全ての 児童・生徒に対して、毎年I E P(lndividualized Educational Program:個別教育計画)を. 作成実施することが義務づけられた。.  I E P作成の手続きは、①特殊教育を受けるための申請、②実態把握、③障害の確認、. ④サービスの分析⑤計画の作成と指導内容の決定、⑥実施、⑦プログラムの評価といった. 主に7つのステップがとられている。 I E Pとは、全障害児教育法に定めている文書のことであり、州によっては若干の差異は あるが、おおむね表1−1のような内容が盛り込まれている37)。. 表1−1 1EPに盛り込まれている内容 (1)開始時における障害児のレベルを明記する. (2)該当年度における年間目標、および短期の指導目標を明記する (3)障害児が受ける特殊教育あるいはそれに関連する特別援助を明確にする (4)普通教育プログラムヘの参加の程度を示す. (5)援助の開始予定と予想される期間を示す (6)短期目標の達成に関しては、適切な目標、評価手続きを、指導計画1年以上に   わたって明確にしておく (7)最低年1回は、指導目標が達成されたかどうかの再評価を行う.  I E Pの計画と指導内容の決定権は、学校側と親側にある。どちらかが承認しない場合 は、再度ミーティングを開いて双方納得のいくI E Pに修正するか、又は法的手続きを開 始して公聴会を開くことになる38)。1997年の連邦法39)では、「親に与えられていたI E. P作成時の学校との共同決定権は、各州が規定する成人年齢になるとともに生徒に譲渡さ. れる」との条項が加えられた(34CFR §300・517)。従ってI EP作成時は親、後述の I T P作成時には、生徒本人の主体的関与と自己決定が重視されている。. 一11一.

(16)  (2)個別移行計画(lndividualized Transitio皿Program).  1980年から90年にかけて、連邦助成による多くの移行に関するプロジェクトが進めら れ、縦断的研究が実施された。その結果、スムーズな移行のためには就労以外にも、様々 な領域での支援や個別の二一ズによる計画作成が必要であることが認められるようになっ た。障害がある子どもも成長とともに学校卒業後のことを考えねばならない時期がくる。. そのため、1990年の連邦法では、16歳以上の生徒のI E Pにr移行サービス(transition services)」を含むよう義務付けた〔1997年の法改正により現在14歳〕。そこで、各州各 地域によっては、単にI E P上に移行サービスに関する記述を含めるだけでなく、I E P. の中に「移行サービスのページ」を設けたり、あるいは添付したりして、それらをI T P (lndividualized Transition Program:個別移行計画)と呼ぶようになった40)。.  I T Pの中心は、学校から職場への移行を具体化する計画で、I T Pを進める上で把握. しておかなければならないポイントは次の通り4Dである。.  (1)どこに住みたいか?  (2)どんな仕事がしたいか?  (3)どんな訓練が必要か?.  (4)医療ケアなど必要なコミュニティサービスをどのようにして得るのか? これらについて、利用者本人及び保護者と相談を重ねていく。.  I T P作成のためのミーティングには、担任教師、学校の代表者、関連サービスと親に 加え、更に多様な職種の専門家(職業リハビリテーション・カウンセラー、ガイダンス・ カウンセラー、移行コーディネーター、グループホームや自立生活センターなどのマネー、. ジャー、ジョブコーチなど)や地域の代表、実習先の職場の雇用主、そして本人が参加す る(Wehman,1995)。水谷40)は、日本の個別移行支援計画への出席者と比較して、多種多 様な専門家の参加を指摘している。. 一12一.

(17)  (3)個別就労計画(ln−iviαu浦zeαPlan ofEmpIoyment).  I EPが全障害児教育法で定まられたものとすると、青年期に達した障害者のためには、 職業的自立を目標とするIWRP(lndividualized Written Rehabilitation Program:個別. リハビリテーション計画)が、1973年のリハビリテーション法に盛り込まれた。I EP が指導のために作成される計画あるいはプログラムであり、I T Pが地域のサービスや支. 援の調整をする計画であるのに対して、IWRPはリハビリテーション局のサービスを受. けるための個別計画である。1992年には、IWRPに中にITPの実行が明記されるよ うになった。また、1997の改正によりI WRPはI P E(lndividualized Plan ofEmployment). と名称変更され、これによって、I E P・I T P・I P Eと幼児期から成人期までの一貫 した個別指導計画が実施されることになった42)。.  (4)その他の個別計画.  カリフォルニア州を例にとると、I EP、I TP、I PEの他に州と契約して、発達障 害者と家族向けサービス調整を行うリージョナル・センター(Regional Centers)が実施の 主体となるI F S P(lndividualized Family service Plans:個別家族サービス計画)と. I P P(lndividualized Program Plans:個別プログラム計画)という個別計画が作成さ. れる。I FSPは、全障害児教育法修正(PL99−457,p韻H)により、3歳未満の障害 児あるいは発達障害のリスクの高い未熟児等を対象とし、I P Pは、1969年のカリフォ ルニア州の州法、ランタマン発達障害者サービス法(1潰nteman Developmental Disabilities. Services Act)により、知的障害者、脳性まひ、てんかん、自閉症がある者とその家族を 対象にする43)。I P P作成においては、後述のP C P(Person−Centeled Planning:本. 人主体の計画作成)の手続きがとられており、障害者本人と親、リジョーナル・センター からの代表者が参加するチームでの協議により作成される。P C P(Pelson−Centered. Plaming)は、主に障害者の欠点や課題の実態把握をして、それを伸ばすための目標設定. を中心とする伝統的なIEP作成の手続きとは異なり、あくまでも本人の長所や興味、好 みを中心として、将来のビジョンを設定するものである鰯。. 一13一.

(18)  2)日本における個別の教育支援計画.  (1)個別の指導計画  日本における個別の指導計画は、アメリカにおけるI E Pをモデルにしながらも日本型 に工夫され、全国で実践を見るようになってきた。個別の指導計画は、教育課程の実施に. 伴い、各教科等の目標、指導内容・方法を個別に設定し、それに基づいて評価を行うもの である。新学習指導要領においては、自立活動における個別の指導計画の作成が必要とさ れているが、自立活動だけでなく、各教科においても作成されることが望まれる45)。. 緒方の調査46)では、約85%の養護学校が個別の指導計画を作成しており、高等部にお いてもほとんどの学校で個別の指導計画は作成されている現状が明らかになった。しかし、. 相沢・池田の調査47)では、平成10年、11年から実施の学校が多くを占める結果が出 ており、まだ、課題の多い状況であると言える。今後は、r個別の教育支援計画」の観点 から、位置づけられる必要があり、特に、家庭や地域の諸機関等と密接な連携協力を図っ. ていくことが重要になる。後述する個別移行支援計画の内容を、現在作成している個別の 指導計画の中に盛り込む方向で検討している学校が多く存在する48)。.  (2)個別移行支援計画.  文部科学省は、東京都に平成11・12年度盲、聾学校及び養護学校就業促進に関する 調査研究を委嘱した。これを受け、東京都知的障害養護学校就業促進協議会は、平成13 年2月に2年次調査研究報告書を出し、研究成果としては、  ①進路指導における学校間の連携  ②職務の分析の結果を活用した進路指導の充実.  ③就労支援システムにおける学校の役割の3点を明確にしている。  さらに「就業に関する調査研究」を全国特殊学校長会に委嘱し、研究を行った。その研 究成果として、全国特殊学校長会はr教育・労働関係機関等が連携した就業支援の在り方 に関する調査研究一報告書一」の中で、「在学中に作成される個別移行支援計画」と「卒. 業時に作成し、卒業後に活用される個別移行支援計画」の2種類の個別移行支援計画を提 案している49)。.  この様な動きの中、先進的な取組を行っている東京都立の知的障害養護学校を中心に、 2種類の個別移行支援計画が実施され、広がりをみせ始めている。「個別移行支援計画」. は、卒業生が進路先や地域社会においても、学校と同じように力が発揮できるように、彼 らの能力や適性、あるいは本人の希望や課題に関する支援法等に関する情報を進路先や地. 域の関係者と学校とが共有し理解し合うためのッールである。そして、養護学校高等部の 生徒たちが、主体的に進路を選択し、学校から社会ヘスムーズに移行できるように、また、. 国民としての諸権利を行使することができる成人になるために、一人一人の二一ズに応じ. 一14一.

(19) て計画的に支援することが必要である。.  ここで、前述した2種類の「個別移行支援計画」について具体的に述べていきたい。「個. 別移行支援計画」は、社会生活の移行に向けて作成され、学校の教育活動の中で活用され るものであるが、卒業後も在学中に明らかになった支援内容を継続的・計画的に実施する. 必要がある。そこで、在学中に活用する計画表を個別移行支援計画1、卒業後に必要とな る支援内容を関係機関との連携によって明らかにした表を活用したツールを個別移行支援. 計画2として実施している。  その中身は、社会自立に向けた資料(個別移行支援計画1)、就職後の職場定着するた めの資料(個別移行支援計画2)、不適応のトラブルの対応としての資料(個別移行支援. 計画2)という3層の支援計画になっている。. A.個別移行支援計画1…  学校内における学習担当者、及び保護者が本人への学習.  支援及び指導において、共通理解をもち役割分担しなが  ら実践するための機能をもつ。.  在学中に行う進路指導や個別の指導計画との関係を整理  する必要がある。. B.個別移行支援計画2・. ・・. 校から社会へと生徒が移行する際の外部機関との共通.  理解のための書式となる。具体的支援者を明確にする側  面と、個別の指導計画により、明らかにされてきた本人  への支援方法や支援内容が盛り込まれる。.  〔詳しくは、全国特殊校長会が出版している「障害児・者の社会参加をすすめる個別移. 行支援計画」と東京都知的障害養護学校就業促進研究協議会が出している「個別移行支援 計画Q&A基礎編」を参照。〕. 一15一.

(20) 第2節 研究の目的  平成7年に総理府より発表された障害者プランは、何人の人が施設を退所し、グループ ホームヘと移行したとか、グループホームをいくつ作ればよいのかといった数値目標を明 確にしている点が高く評価されている。しかし、知的障害者の支援内容は、多岐にわたっ. ており、国から出されるプランだけでは対応できない部分も多い。つまり、個人の二一ズ に即した適切な支援を行うためには、個別の援助プログラムが必要となる。.  米国では、学校あるいは家庭から地域の生活への移行にあたっては、移行サービス (Transition services)があり移行のプログラムが明確になっている。しかしながら、我. が国では、移行に関するシステムは、整っているとは言い難い。特に、障害のある生徒の. 就業を促進するためには、生徒の在学中から一般企業等への就労に向けた支援計画を作成 すること、卒業後も支援を計画的に行えるようにすることが重要である。.  障害者基本計画の教育育成の項目では、r障害のある子どもの発育段階に応じて、関係 機関が適切な役割分担の下に、一人一人の二一ズに対応して適切な支援を行う(個別の支 援計画)を策定して、効果的な支援を行う」として、関係機関同士の連携の大切さを述べ ている。教育と労働の関係機関の連携においては、地域障害者職業センターは、かねてよ り学校との連携を図り、養護学校高等部2年生段階における「職業相談・職業評価」を実. 施してきた。地域によっては、学校における企業就労希望者全員の職業評価を実施し、職 業リハビリテーションにおける専門的な助言をもとに、就労支援を活発に行っている地域 もある。.  知的障害者は、健康的な生活の意義の理解とバランスのよい適量の食事や適度な運動に ついての実践が難しく、生活習慣病を引き起こしやすい状況にあると言われている50)。. そのため、医療機関との連携も重要な柱になってくる。医療機関等と連携した精神障害者 の実践的な求職活動指導(ジョブガイダンス)やジョブコーチ支援が実施されはじめた。. 医療機関等の利用者の中で、就職意欲は高いものの就職するための準備が十分に整ってい. ない精神障害者を就労に結びつけるために、公共職業安定所から医療機関等に出向き、就. 職活動に関する知識や方法を実践的に示す事業も実践されている(実施安定所、全国47 カ所)5D。.  児童とその家庭支援においても、福祉と教育の連携、市町村保健センターと医療との連. 携、保健所と民生委員・児童委員の連携、ボランティア活動や福祉教育における学校や. PTAと市町村社会福祉協議会の連携など幅広いつながりが実践の中で開拓されている。  このように、障害者を取り巻く各関係機関同士のきめ細かい様々な連携において、学校 は、在学中から社会への移行に必要な個人情報を整理し、関係機関が行う一人一人に対す る支援内容を協議できるようにする役割があると言える52)。このことは、学校は生徒の. 一16一.

(21) 在学中から社会へ移行するための支援計画を作成することや、卒業後は、関係機関と連携 して支援を継続することの必要性を述べている。.  東京都を中心に、知的障害養護学校の中には、アメリカの個別移行計画(I TP)を参 考にした日本的な移行支援(個別移行支援計画)を行っている学校もある。しかし、まだ 緒に就いたばかりで、全国的な広がりをみるまでには至っていない53)。先行研究でも、 松矢(2003)54)、内海(2003)55)、水谷(2003)56)57)58)59)、緒方(2003)60)、菊地(2003) 6’). 原(2002)62〉、市村(2003)63)、坂井(2002)64)などがあり、今後の在り方を示唆する. 考えが述べられている。しかし、数的には少なく、特に、就労、生活支援の側からみた移 行支援の在り方を検証したものはない。移行支援を成功させるためには、教育、福祉、労 働、医療の関係機関の連携が不可欠であることが、文部科学省から出された提言65)にも 謳われている。.  そこで、教育関係者だけでなく、福祉や就労、医療などの関係機関の立場からみた意見 も考察していくことで、新しい視点が生まれ、障害のある生徒に適切に対応した個別移行. 支援計画を実現することにもつながると考える。今回の研究は、地域の現状や支援状況を. 知るために面接調査を実施し、その結果に基づいて質問紙を作成した。質問紙調査は、養 護学校の連携場所の関係から福祉と労働に絞って配布し、その結果と面接調査の結果を総 合的に考察していく。また、今回数量的に少なく調査を実施できなかった、医療機関との 連携も重要であることは言うまでもない。.  知的障害者の権利を擁護し、地域移行を成功させるためにも、本研究の主題でもある「知. 的障害者の学校から社会への個別移行支援の在り方」を研究し、考察していくことは意味 深いことであると考える。. 一17一.

(22) 引用・参考文献(第1章) 1)山口洋史  r障害者福祉論」コレール社、2003、4、p21。 2)川上博 発達障害児(者)の就労と支援の在り方(4)特殊教育学会ポスター発表、2003。. 3)石渡和実「障害者問題の基礎知識」明石書店、1997、p197。. 4)梅永雄二r自立をめざす障害児教育」福村出版・2000・p140・. 5)3)と同じ。 6)松矢勝宏「これからの移行支援」発達の遅れと教育2001、11、pp。4−7。 7)犬飼保夫「知的障害者の職場定着を図るための企業における支援に関する研究」.  兵庫教育大学修士論文、1999。 8)佐伯奏典「知的障害者の職場適応に及ぼす要因」兵庫教育大学修士論文、1996。. 9)高山佳子rはじめての特別な二一ズ教育」川島書店、2001・p211・ 10)全国特殊学校長会「障害児・者の社会参加をすすめる個別移行支援計画」   ジアース教育新社、2002、pp.73−74。. 11)10)と同じ、p76。 12)藤田晃之「キャリア開発教育概念構築の試み.キャリア開発教育制度研究序説   一戦後日本における中学教育の分析一」教育開発研究所、1997、pp.511−563。. 13)内藤勇次「生き方の教育としての学校進路指導 進路指導をふまえた実践と理論」   北大路書房、1997。 14)Brolin,D.E.(1996)Reflections on the beginning...and future directions!Career Development.  for Exceptional lndividuals,9(2),93−100.. 15)吉田辰雄他「21世紀の進路指導事典」 ブレーン出版(株)1995。 16)15)と同じ。 17)15)と同じ。. 18)松矢勝宏r職業教育とキャリア教育」福祉、就労ハンドブック。. 19)山本多喜司・S:ワップナ編「人生移行の発達心理学」北大路書房、2002、p15。 20)水谷由美・柳本雄次「アメリカ合衆国におけるI T Pの発達経緯と現状」  心身障害学研究26、’2002、pp.177−192。. 21)伊藤孝義他「移行ポートフォリオ作成についての調査研究」.  特殊教育学会ポスター発表、2003。 22)緒方直彦r知的障害生徒の個別移行支援計画に関する一考察」.  東京学芸大学大学院修士論文、2002。 23)渡部昭男「障害を有する青年のトランジッション保障と職業教育のあり方」   障害者問題研究(25−2)、1997、pp.13−27。. 一18一.

(23) 24)八重田ら「学校から職場への移行∼リハビリテーションサービス連携の鍵」.   職業リハビリテーション、第13巻、2000、pp.32−39。 25)Patton,J.R.&Dunn,C.(1998)Trmsition from school to young adulthood:Basic concepts and.   recommended practices。proed,Austin,Texas。 26)Halpem,A.S.(1993)Quality of life as a conceptual framework for evaluating transition.   outcomes。Exceptioml Childlen,59,486−498.. 27)20)と同じ。. 28)小鴨英夫「米国における個別移行プラン(I TP)の実施状況」   リハビリテーション研究、NO107、2001、pp。12−20。. 29)日本知的障害福祉連盟「発達障害白書2002」日本文化科学社、2001。 30)川上博 発達障害児(者)の就労と支援の在り方(4)特殊教育学会ポスター発表、2003。 31)19)と同じ。. 32)松矢勝宏「学校から地域社会へ一移行支援と進路学習一」   脳と発達(32)2000、pp。242。246。. 33)内海淳r知的障害者の移行支援」特殊教育学会第36回大会論文集。 34)坂井清泰r進路指導と個別移行支援計画」障害者問題研究30(1)、2002、pp。88−93。 35) 22)と同じ。. 36)梅永雄二r自立をめざす障害児教育」福村出版、2000。 37)36)と同じ。 38)Office of Special Education and Rehabilitation Services,U.S.Department of Education(2000).   Aguide to重he individnalized education programs.U.S。Govemment Printing office,.   Washington DC。 39)Individuals with Disabilities Education Act Amendments of1997,Dub.LNO105−117,.  §615,50−71. 40)20)と同じ、PP。177−192。. 41)36)と同じ。 42)36)と同じ。 43)Califomia Depatment of Developmental Services(2000) lndividual program Plan..   Author,Sacramento. 44)Califomia’s School to work Interagency Transition Partnelship(1995)Transition services   丘om school to adult life.. 45)10)と同じ、P6。 46)22)と同じ、pg。. 47)相沢・池田「知的障害養護学校における個別の指導計画の現状と課題j   下中科学研究助成金報告書、2000。. 一19一.

(24) 48)10)と同じ。 49)10)と同じ。. 50)1)と同じ、pp.126.127。. 51)厚生労働省障害者雇用対策課「平成15年度障害者雇用施策関係予算内示の主要事項」   2003。. 52)10)と同じ、P4。 53)22)と同じ。. 54)松矢勝広 「『個別移行支援計画』の考え方」発達の遅れと教育、2003.8NO552。. 55)内海淳r主体的な進路選択のために 一進路学習の開発一」   発達の遅れと教育、2003.3、NO547。. 56)水谷由美rアメリカ合衆国のI T P(個別移行計画)と比較して」   発達の遅れと教育、2003.3、NO547。. 57)水谷由美・柳本雄次「アメリカ合衆国におけるI T Pの発達経緯と現状」.   心身障害学研究26、2002、pp。177−192。. 58)水谷由美・鈴木由美子・藤田和弘「日米の親の特殊教育に対する満足度一トラン   ジッションにおける比較一」筑波大学リハビリテーション研究8(1)1999、pp.97−103。. 59)水谷由美「個別移行計画における生徒と親の参加に関する研究一生徒・親・教師の役   割について一」 心身障害学研究科論文発表会資料、2003。 60)22)と同じ。. 61)菊地直樹「個別移行支援計画の作成と実施  個別指導計画との関係」.   発達の遅れと教育、2003.3NO547。. 62)原智彦、内海淳、緒方直彦「転換期の進路指導と肯定的な自己理解の支援   一進路学習と個別移行支援計画を中心に一発達障害児研究・24(3)、2002・pp・262−271・. 63)市村たづ子「主体的な進路選択のため 進路支援と保護者・関係機関との連携」.   発達の遅れと教育、2003.3NO547。 64)坂井清泰r進路指導と個別移行計画」障害者問題研究30(1)・2002・pp・88−93・. 65〉文部科学省 21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)(2001)1月。. 一20一.

(25) 第2章 研究の方法と調査の回収. 第1節研究方法 1.調査方法. 1)面接による調査  (1)先進的に個別移行支援計画を実施している東京都の知的障害養護学校3校及び東京   都福祉局職員への面接調査。.  (2〉宮崎県障害者雇用促進協会、通所授産施設つよし共働センター職員及び利用者への   面接調査。. 2)質問紙による調査  (1)文部科学省の指定を受け1)、先進的に個別移行支援計画を実施していると思われる.   都道府県の知的障害養護学校に、質問紙A【知的障害養護学校における「進路指導   上の他機関との連携」に関する調査】を郵送調査。.  (2)個別移行支援計画を実施している知的障害養護学校と連携していることが、質問紙.   A調査により明らかになった関係機関に対して、質問紙B【進路指導時における知   的障害養護学校との連携に関する調査】の郵送調査。. 2.調査内容 1)面接調査.  「地域移行」及び「個別移行支援計画」をテーマに半構造化面接2)を行う。. 2)質問紙による調査  (1)質問紙A(主な内容).  ①地域にある関係機関・団体②連携している関係機関名と必要性、効果及び問題点  ③不足を感じる関係機関 ④地域ネットワークの有無、効果及び問題点  ⑤個別移行支援計画の実施状況 ⑥ケース会議の中身⑦個別移行支援計画の効果、.   問題点、今後の広がりなど  (2)質問紙B(主な内容).   ①養護学校との連携の必要性 ②連携において期待できる効果及び問題点③地域ネ.   ットワークの有無、必要性、効果、問題点 ④個別移行支援計画の参加状況   ⑤移行支援計画の参加の感想、効果、問題点、今後の広がりなど.  以上の項目、質問内容は、「1)面接調査の結果」及び佐藤3)の研究を参考にしなが  ら、筆者が作成したものである。詳細な内容については巻末の資料に掲載する。. 一21一.

(26) 3.調査期問. 1)面接調査…  平成14年8月∼平成15年2月 2)質問紙調査(知的障害養護学校用)・・…  平成15年8月.        (福祉、労働の関係機関用)…  平成15年9月 4.対象 1)面接調査.   東京都内でも、先進的に個別移行支援計画を取り入れている3校(あきる野養護学   校、南大沢養護学校、府中朝日養護学校)と東京都庁福祉局障害福祉部施設福祉課。.   知的障害者の就労に関する施設職員と一般就労後、離職した知的障害者。. 2)質問紙法による調査    個別移行支援計画を実施している学校が少ないことが、先行研究4)と面接調査よ.   り明らかなため、先行研究や文部科学省の指定により実施が見込まれる学校に対し   て有意注出法5)を用いて対象を決定した。  (1)質問紙A(知的障害養護学校用).   東京都、秋田県、岩手県、青森県、茨城県、栃木県、神奈川県、三重県、鳥取県、.   宮崎県、鹿児島県の1都10県の知的障害養護学校97校の進路指導担当教員。  (2)質問紙B(福祉、労働の関係機関用).    個別移行支援計画を実施している学校と連携している関係機関(福祉111、労.   働57、医療2,教育3)を選出した。質問紙の質問項目が、ケース会議の中身を   問うものが多く、そのため福祉や労働の数が多くなったものと思われる。自由記述   から、この質問紙の回答には挙げていないが、「ケース会議後に医療機関に相談に.   行く」という回答もあった。医療や他の教育機関からの意見も大事であるが、統計   的に処理を行うため、今回は、労働と福祉に絞って考察を加えることとした。. 5.分析方法.    質問紙調査については、回答された数値の結果から考察を加えていく。立場上.  の違いを明らかにする項目(図3−6連携の必要性、図3−7時期的にみた連携の.  必要性、図3−12連携における課題の有無、図3−35今後の広がりに対する考  え方)については、ノンパラメトリック法6)を使い比較検討し考察を行う。. 一22一.

(27) 第2節 質問紙調査の回答数と回収率   表2−1 調査実施数、回答数、回収率 調査実施数. 97. 回答数. 回答率%. 関係機関(福祉). 111. 関係機関(労働). 57. 60 78 29. 265. 167. 知的障害養護学校. 計. 61.9%. 63.O%. 70.3% 50.9%. 引用・参考文献(第2章) 1)全国特殊学校長会「障害児・者の社会参加をすすめる個別移行支援計画」   ジアース教育新社、2002。. 2)保坂享、中澤潤、大木野裕明「心理学マニュアル面接法」北大路書房、2000。 3)佐藤圭吾「知的障害者の地域生活と地域資源」秋田大学大学院修士論文、2002。. 4)緒方直彦「知的障害生徒の個別移行支援計画に関する一考察」   東京学芸大学大学院修士論文、2002。. 5)鎌原雅彦、宮下一博、大野木裕明、中澤潤「心理学マニュアル質問紙法」   北大路書房、1998。. 6)内田治「EXC E Lによるアンケートの調査・集計・解析」東京図書、1997。. 一23一.

(28) 第3章 結果と考察 第1節 面接調査結果からの考察 1.面接調査実施方法.  日本におけるトランジションやトランジションサービスは、欧米より10年ほど遅れて いる1)。欧米のI T Pをいち早く取り入れて実践している東京都の知的障害養護学校の進. 路指導担当教員(あきる野養護2名、府中朝日養護2名、南大沢養護1名)5名と東京都 福祉局の職員1名に対して半構造化面接調査2)を行った。面接のテーマは、「個別移行支 援計画」及び「地域移行支援」と設定した。出てきた結果を、K J法3)4)により図解、文 章化し考察を行った。その他の面接調査は、千代田短期大学の坂井先生と、知的障害者の 就労支援関係者及び離職者(寮育手帳所持者)について実施した。. 征…. 会⋮ 社”.  職場環. 舘譲. 障” 前  ” 以.  ”  r:陞,. 2.図解「障害者の地域移行と社会」. ””■”■””””””■””■■””■”.               =     プラス       =   出られる人はどんどん外へ. の急激な変化. ㌧..____  __.____■.__■■____■___■__騨ノ. 〆・マイナスの流れ・一一、.     〆一・一 プラスの流れ一一一一・一、. ’ 教育の役割     9.     1   教育の役割       1. 進路と時f’の流. の優先順位. れのギャツプ. 己選 が事. 主 的に選べる 指導か. 行. 福祉の役割 自活訓 は施設だけ. 尋 個別移行支援の 出たきた背景. 家族の、思同. の思口も一.  分で選んだ耳 なんだから 家族向けサービス してもまたもどれる. リストラ対策今10%. に. わざわざ巳 な所に かなくても. 個別移行支援計 画の実際. 本人は出たいが. バックアッフ万全   ↓ 保管者も安心 ’労生活  センター. も親が・・. の家族向けサービス. ㌧_一一_..一..一..一........辺.               、.__..___ノ 1臼■””−■”■■”■■■■■■”薗”−”””” = : = = = =. 福吐と就労の一体的サービス. 就労サービス    ↓. 通勤寮は地域と企業を 自活訓練. 企業からのSOS センターと共に訪問. 定期訪問で解決. 曳一....、....國_......一一_..』_.....一國..一.._..........幽一陶一._..一.....一.一...−.ノ. 一24一.

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