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第3節  総合的な考察

 1.連携について

 本節では、第1節の面接調査と第2節の質問紙調査を総合して考察を加えていきたい。

まず、連携により期待できる効果として、学校も関係機関も「卒業後の継続した支援」が トップに挙げられていた。しかし、自由記述からその中身は、相違していることが分かっ た。つまり学校側は、現在、学校が行っている支援の中心的な役割を果たす代替機関の出 現を望んでおり、関係機関側は、卒業後も学校の支援の継続を望む声が多くみられた。時 期的にみると、学校側は、在学中から卒業時までの連携を強く希望しており、就労などの 関係機関は、卒業時から卒業後のアフターケアまでの連携を希望し、双方に温度差がみら れる。このような問題を解決するためには、話し合いによる共通理解が重要であり、話し 合いにより多くのことが解決できることが面接調査からも明らかになっている。また、話 し合いをすることにより、支援内容も充実してくると同時に、相互の信頼関係も生まれて くることも報告されている。しかし、話し合いの場を設定し、お互いの立場からの意見を ぶつけ合うだけでは、かえって溝が深まり逆効果になることも考えられる。相手が抱えて

いる問題も一緒に抱え込む覚悟も必要である。

 連携の範囲は、その内容により違ってくる。個人情報の共有化の場合に、隣の市や町ま で連携の幅を広げてしまうと、支援内容に具体性がなくなり関係者にもピンとこないこと がある。逆に、広く情報や連携を求める場合に、小さな範囲だと情報量も限られ支援内容 に多様性がなくなる。連携の範囲は、大きすぎても小さすぎても駄目であり、その支援内 容に応じたメンバー構成と形態が必要とされる。

 連携において期待する効果の項目の中で、「生徒のQO Lの向上」と「保護者の願いの 達成」の2項目は、学校側も関係機関側からも少ない項目として挙げられていた。このこ とは、「連携」だけでなく、「地域ネットワーク支援」についても同じ結果であった。こ のことから、連携については、「生徒や保護者が優先」という考え方よりも「関係機関同 士の支援の充実」「支援者の利便性」という意識が強いことが分かる。結果的に、その事 が障害者や家族支援の充実につながっているとは思うが、本当にその人が何を望んでいる のか、支援される側からも考えてみることも必要ではないだろうか。

 2.地域ネットワークについて

 次に、地域ネットワークについて述べていきたい。地域ネットワークは、学校側も関係 機関側も必要性を強く感じている。しかし、実際に活動をしている地域は、アンケートの 回答地域の中で4割しかなかった。有効性は感じているが、「実際にどこの機関が中心と なり実施するか」などの課題が原因であろう。期待できる効果も、連携の場合と同じで「卒 業後の支援の継続」が挙げられた。「本人のQO Lの向上」や「本人の権利擁護」という 観点は低い。つまり、支援の継続や進路先の確保、情報収集など、どちらかと言えば支援 者側の効果を期待していることが分かる。

 地域ネットワークの課題としては、「その核となる機関の存在」や「地域資源の格差」

を挙げる回答が多かった。私自身も中学校の教職員であるので、学校現場の忙しさは日頃 から感じている。新しい支援などにどんどんチャレンジしていきたいという気持ちと、こ の仕事が増えることで、今まで行えてきた大事な仕事ができなくなるのではないかという 不安感がつきまとう。関係機関側からも、不況のために国から下りてくる補助金が削られ、

一人で複数の役職や仕事をこなしているという現状も報告された。「有効性は分かるが、

自分の所は今の仕事で手一杯である、どこか代わりにしてくれないか」という意見が多く みられた。個別移行支援計画の課題として、「対象生徒の増加時の対応が心配」という意 見が多いこともこのことを裏付けていると思われる。

 3.個別移行支援計画について

 これまでにも述べてきたように知的障害者の地域社会への移行は、多くの課題を抱えて いる。その課題を少しでも解決しながら、障害者自身の二一ズを把握し、関係機関が連携 し適切な支援を行い地域移行を成功させるためのッールとして「個別移行支援計画」が導 入され始めた。緒方23)は、個別移行支援計画の作成について、教職員の多くが重要と認 識していると述べている。しかし、今回の調査結果から2年以上実施している学校は、本

当に少なく、さらに、参加している関係機関についても、2年以上参加している関係機関 の職員も少ないことが分かった。参加した関係機関の職員に、実施前と比べて「仕事量」

やr離職者」について聞いてみたところ「変わらない」「分からない」という意見が多く、

支援が始まったばかりで目に見えるような有効な支援には至ってないことが推察される。

個別移行支援計画は、まだ十分に地域の関係機関内に浸透した支援とは言えない。

 東京都は、平成16年から統一した書式で,全域一斉に実施する予定である。このよう な動きをみせる地域もあるが、全国的には「ケース会議を実施する場合の基準がない」と いう学校もあり、資料項目も統一されたものではない。つまり、先進的に取り入れた学校 が、その地域に合った形で独自に行っているのが現状である。

 ケース会議を実施する場合に「基準がある」と答えた学校の半数が、本人の実態と本人

校が中心となって作成していくが、関係機関の職員も交えて支援内容を検討していくべき である。そのためには、生徒本人と保護者の合意のもとに作成されたものでなくてはなら ない。また今回の調査では、一般就労の生徒に対して実施されるケースが多く、福祉就労 や在宅といった生徒には実施される割合が少ないことが分かった。第4章の結論で詳しく 述べたいと思うが、一般就労だけでなく、福祉就労や在宅についても支援が必要とされて

いる。このことも見直していくべき課題であると考える。

 ケース会議の参加者を聞いたところ、本人又は保護者の「参加なし」と回答した学校も 多数存在した。社会福祉構造基礎改革の中、平成15年より導入される支援費制度により、

障害者福祉は「措置から選択へ」と転機を迎え、本人の自己決定、自己選択さらには擁護 者である親の参加は、必要に迫られている。個別移行支援計画のもととなったアメリカの I T Pにおいては、その作成時に主体的関与と自己決定は特に重視され、ミーティングで の参加の程度や自己決定についての調査研究がなされている24〉。学校が卒業後の長い人 生を生きていくために必要なスキルの獲得を目指すならば、個別移行支援計画の作成場面 に生徒自身が参加し、自己決定のスキルを学ぶことはとても大切である。その時に、親の 支援的な参加を促すことは言うまでもない。

 個別移行支援計画を行う上での課題は、学校側も関係機関側も「個人情報の取扱」を上 位に挙げている。特に、本人の将来の希望と適性に関する情報は、ケース会議の資料を作 るに当たりはじめに押さえておかなければならない項目である。日常の学習活動全般の中 で、様々に現れる生徒の長所を把握することが最初の段階となる。そして、自己決定など の意思表示ができるような進路学習と自己の適性を意識させるような進路相談さらに、適 切な進路情報を提供することが大切である。障害者の支援に関する情報を、関係機関同士 が十分に共有することは、障害者の地域移行を支えることにつながると言える。

 しかし、その情報が差別にっながらないとは言い切れない程、障害者の支援に関する情 報は、細かい配慮を要するものである。内藤25)は、「進路情報は、従来、就職・進学対 策的なものに偏りがちであったが、もともと生徒自身についての能力、適性、興味、関心 など総体的かつ客観的な情報や生徒の将来を見通したうえでの資料などの情報が必要であ る」と述べている。

 前述した「21世紀の特殊教育の在り方」においても、教育、福祉、医療、労働等の関 係者で構成する特別の相談支援チームの必要性が述べられている。そこでも、個人情報の 適切な取扱いに配慮しつつ、継続的に相談活動を積み重ねていくことによって、相互理解 と相互信頼が培われるとしている。つまり、個人情報守秘の問題と情報の共有化の問題は、

相反する課題ではなく、共に解決していかなければならない問題である。

 質問紙調査で、学校側から多く挙げられた課題は、ケース会議に集まるメンバーの日程 調整の難しさである。対象生徒一人一人に、年度当初から予定されている会議もあるし、

男女関係などのように突発的な会議もある。さらに数年後、実施した支援を評価、改善し

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