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博士(工学)李 桓成 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)李   桓成 学位論文題名

キャビテーションによる機械式人工弁の表面壊食に関する研究 学 位 論 文 内 容 の 要旨

  キャピテーションによる壊 食が原因と思われる人工弁の 破損例が報告されて以来、機械式人工弁のキ ヤ ビテーションの発生が注目 されている。弁の破壊は人工 弁装着者を直ちに死に至らしめるため、キャ ビ テーションを発生しない弁 の開発が強く望まれている。 これまでの研究で、機械弁にキャピテーショ ン が発生する機序として、弁 が急激に閉鎖する際に負圧を 発生させるウォーター・ハンマー、同様に弁 が 急激に閉鎖する際に弁と弁 座間の隙間で生じるスクィズ ・フローなどが挙げられているが、その詳細 は 不明である。特に、ディス ク開閉試験により実際に壊食 を生成し、壊食至る過程を実験的に検討した 研 究は皆無に近い。

  本論文では、機械弁におけ るキャピテーションの発生か ら弁表面壊食に至る一連の過程を解明するこ と を 目指して、モデル弁ディス クを用いた3種類の試験を行 い、機械弁の表面壊食に影 響を与える各種 バ ラ ヌ ー タ に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 以 下 に 、 本 論 文 の 内 容 を 各 章 に 分 け て 要 約 す る 。   第1章 で は 、 人 工 弁 の 歴 史 、 本 研 究 の 背 景 、 目 的 、 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ た 。   第2章で は 、機 械弁 の破 損原 因 にな るキ ャビ テ ーション 現象について述ベ、また、 その動力学的理 論 およ乙膿面壊食を起こすメ カニズムについて述べた。

  第3章で は 、加 速耐 久試 験に よ るキ ャピ テー シ ョンとの 壊食の検討について述べた 。機械弁の機械 的 耐久性を短期間に評価する ことを目的として、人工弁開 発時には加速耐久試験が行われる。レかし、

こ れまでの加速耐久試験は剛 体ホルダー内で行われ、弁近 傍の圧カに大きな影響を与えると思われる生 体 下のコンプライアンスは考 慮されていない。そこで、ま ずコンプライアンスを付加して加速耐久試験 を 行い、表面壊喰とコンプラ イアンスの関係を定量齣に評価した。コンプライアンスは、その大きさと、

付 加する位置を変え、5.4 X10s回の弁開閉を行う加速耐久試験を実施した。その結果、予想とは異なり、

剛 体ホルダーに比ベコンプラ イアンスを付加したホルダー において壊食ピットの数が増加し、さらにピ ッ トの直径も増加する結果を 得た。また、コンプライアン スの付加によルウォー夕一・ハンマーは減少 し たことから、加速耐久試験 ではウォーター・ハンマーが ディスク表面壊食の主因子ではないと推測さ れ た。

  表 面壊 食に 影響 を 与え ると 考えられるもうひとつのパラ ヌータであるスクィズ・フ 口ーに著目し、

高 速度ピデオカメラを用いて ディスク閉鎖速度の計測を行い、表面壊食との関係を検討した。その結果、

当 初の予想とは異なり、コン プライアンスを付加すること によルディスク速度が増加していた。これよ り 、コンプライアンスの付加 がスクィズ゜フローを増加さ せ、その結果、キャビテーションの発生量が 多 くなり、表面壊食を増加さ せるという機序の存在が示唆 された。また、同じ高速度カメラを用いてデ

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イスク が閉鎖 する様 子を撮 影した結 果、キャビテーション気泡が実際にディスク周縁部に発生し、その 発生部 位は壊 食ピッ ト発生 部位と一 致する ことカ ℃確認 できた 。

  第4章 では、 自然心 模擬回 路による 壊食試 験につ いて述 べた。 加速耐 久試験 では、 コンプラ イアン スの付 加がデ ィスク 表面の 壊食ピッ トを増加させるという結果となったが、弁の開閉速度や圧力条件が 自然心 とは大 きく異 なると いう問題 点があった。そこで、生理学的な圧カレベルでも壊食が生じること を実証 するた めに、 自然心 模擬回路 を試作し、コンプライアンスの設定条件を変えて、ディスクの閉鎖 速度や 表面近 傍での 圧力変 化を計測 するとともに、ディスク表面に発生する壊食との関係について検討 した。 その結 果、生 理学的 な圧カレ ベルでも壊食ピットが生成されることを確認できた。また、コンプ ライア ンスと ディス ク閉鎖 速度はよ く相関し、コンプライアンスが増加すると閉鎖速度は低下し、表面 壊食ピ ットも 減少す る傾向 が見られ た。この結果は、コンプライアンスの付加量と壊食ピットの発生量 の関係 に着目 した場 合には 、加速耐 久試験と矛盾するが、閉鎖直前のディスク速度と壊食ピットの発生 量に着 目すれ ば、一 致して いること から、壊食ピット生成に対するスクィズ・フ口ーの重要性が示唆さ れた。

  第5章で は、ス クィズ ・フロ ーに着 目した 壊食試 験につい て述べ た。以 上、2つ の試験結果を通じて ディス ク表面 を壊食 させる 機序とし てはディスク閉鎖速度と直接的な関係にあるスクィズ・フローが重 要と考 えられ た。そ こで、 ディスク の閉鎖速度が比較的広い範囲で制御できるソレノイド駆動型の弁開 閉装置 を開発 し、デ ィスク 速度を直 接制御して機械弁の連続開閉実験を行い、ディスクの表面に生じた 表面壊 食を定 量的に 評価し た。その 結果、壊食ピットの発生が、ディスク閉鎖速度に関して閾値を持つ 現象で あり、 その閉 鎖速度 の閾値は 本研究 で用い た機械 弁では 約014m/sで あることが分かった。さら に、こ の閾値 はスク ィズ・ フローに よって生じる負圧がキャピテーション発生の必須条件のひとつであ る飽和 水蒸気 圧に相 当する ことを見 いだし た。

  第6章は 、本研 究の結 論であ り、本 論文の 成果を まとめた 。

  本研究 の結果 では、 スクィ ズ・フ 口ーは ディスク 閉鎖速 度に依 存する ので、 ディスク閉鎖速度が表 面壊食 生成の 最もよ い指標 となるこ とが示唆される。これらの結果は、機械弁の開発において表面壊食 の発生 を防ぐ ための 弁葉の メカニズ ム設計のための指針を与えるものと考えられ、スクィズ・フ口ーの 発生を 軽減す るため に弁座 の形次は 最も重 要な設 計要素 といえ る。

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以上

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

山本 狩野 三田村 下岡

学 位 論 文 題 名

克之     猛 好矩 聡行

キャビテーションによる機械式人工弁の表面壊食に関する研究

  キャビテーションによる壊食が原因と思われる機械式人工弁の破損例が報告されて以来、

機械 弁におけるキャビテーションの発生が注目されている。弁の破壊は人工弁装着者を直 ちに 死に至らしめるため、キャビテーションが生じない弁の開発が強く望まれている。こ れま での研究で、機械弁におけるキャビテーションの発生機序として、弁閉鎖時のウォー ター ・ハンマーやスクィズ・フローが挙げられているが、その詳細は不明である。特に、

弁デ ィスクの開閉試験により実際に壊食を生成し、その生成過程を実験的に検討した研究 は皆 無に近い。本論文は、機械弁におけるキャビテーションの発生からディスク表面壊食 に至る一連の過程を解明することを最終目的として、モデル弁を用いた3種の試験を行い、

機 械 弁 の 表 面 壊 食 に 影 響 を 与 え る 各 種 力 学 量 に つ い て 検 討 し て い る 。   人工 弁の耐久性を短期間に評価するために加速耐久試験が行われているが、加速耐久試 験は 剛体ホルダー内で行われ、生体下のコンプライアンスは考慮されていない。コンプラ イア ンスの付加は、弁近傍の圧カを変え、キャビテーションの発生に大きく影響すると考 え、 本論文では、まずコンプライアンスを付加して加速耐久試験を行い、表面壊食とコン プラ イアンスの関係を定量的に評価している。その結果、予想とは異なり、コンブライア ンス 付加ホルダーでは,剛体ホルダーに比ベ、壊食ピット数、ピット径ともに増加する結 果を 得ている。また、コンプライアンスの付加によルウォーター・ハンマーは減少したこ とか ら、加速耐久試験ではウォーター・ハンマーがディスク表面壊食の主因子ではないと 推測 している。次に、高速ピデオカヌラを用いてディスク閉鎖速度を測定し、コンブライ アンス付加によルディスク速度が増加していたことから、コンプライアンス付加がスクIイ ズ・ フ口ーを増加させ、その結果、キャピテーションの発生量が多くなり、表面壊食を増 加さ せるという機序の存在を推論している。また、同様にしてディスクが閉鎖する様子を 撮影 した結果、キャピテーション気泡が実際にディスク周縁部に発生し、その発生部位は 壊食ピット発生部位と一致することを確認している。

  加速耐久試験では、弁の開閉速度や圧力条件が自然心とは大きく異なることから、次に、

‑ 734

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自然心模擬回路を試作し、生理学的な圧カレベルでも壊食が生じることを実証している。

すなわち、コンプライアンスの設定条件を変えて、ディスク閉鎖速度,ディスク近傍圧力、

ディスク表面壊食などを観察した結果、コンブライアンスとディスク閉鎖速度はよく相関 し、コンプライアンス付加により閉鎖速度は低下し、表面壊食ピットも減少することを見 出している。この結果は、コンプライアンスの付加量と壊食ピットの発生量の関係に着目 した場合には、加速耐久試験の結果と矛盾するが、閉鎖直前のディスク速度と壊食ピット の発生量に着目すれば、一致していることから、壊食ピット生成に対するスクィズ・フ口 ーの重要性について改めて言及している。

  次に、スクィズ・フローに着目した実験として、ディスクの閉鎖速度を比較的広範囲に 制御できる新規なソレノイド駆動型の弁開閉装置を開発し、ディスク速度を直接制御して 機械弁の連続開閉実験を行い、ディスク表面に生じた表面壊食を定量的に評価している。

その結果、壊食ピットを発生するディスク閉鎖速度には閾値があり、本研究で用いた機械 弁では約0.4 m/sであるとしている。また、この間値はスクィズ・フローによって生じる負 圧がキャピテーション発生の必須条件のひとつである飽和水蒸気圧に相当することを見出 している。さらに、壊食ピットの数と径を詳細に分析し、これらは弁近傍の圧力低下とそ の持続時間に良く相関することも明らかにしている。

  最後に、以上の結果とキャピテーション理論に基づき、機械式人工弁における表面壊食 生成過程を考察するとともに、本研究で得られた一連の成果をまとめ、結論としている。

  以上を要するに、本論文は、機械式人工弁のディスク開閉試験を実施し、キャビテーシ ヨン壊食の発生条件と生成量を弁近傍の各種流体力学量と比較検討して、機械式人工弁に おける壊食生成過程の一端を初めて明らかにしたものであり、人工臓器工学の分野に貢献 するところ大なるものがある。

  よ って著者 は、北 海道大学 博士( 工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

    以上

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参照

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