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博士(農学)大原昌宏 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)大原昌宏 学位論文題名

A Revlsion of the Superfamily Histeroidea         of Japan (Coleoptera)

(日本産エンマムシ上科(鞘翅目)における分類学的研究)

学位論文内容の要旨

  本 論 文 は 英 文 で 書 か れ 、 本 文 (54表 を 含 む )251枚 と161図 よ り な る 。 1。緒言。 エンマムシ上科の昆虫が、動物の死体その他分解しつっある有機物に発 生するハエの幼虫や、キクイムシの幼虫などを捕食する天敵として、生態系において 一定の役割を果たしていること、にもかかわらず本邦では従来研究が散在しており、

本論文が最初の包括的研究であることを述べている。

  2。 方 法 。 本 研 究が 日 本の 版 図内 か ら約3000、 台湾 か ら約300の 成 虫標 本 を 得て おこなわれ たこと、さらに比較のためヨーロッパその他からの約200の標本を 検査したことを述べている。これらの標本は、論文提出者自身の全国的な採集によっ て得られたものの他、多数の公的・私的なコレクションより借用したものであり、産 地|まほば日本の全版図に亙っている。また、この昆虫群の分類において特に重要な生 殖器官の研究法を説明し、一部外部形態については走査型電子顕微鏡による観察をお こなったことを記している。

  3。研究史。まず過去230年余りにわたるこの昆虫群の高位分類を要約している。

ついで本邦より記載あるいは記録された種とそれらの分類の変遷を逐年列挙し、本研 究で 明かにされ た9新 種、2未 記録種を加 えて115種 が版図内か ら知られる ことに なったとしている。

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(2)

  4。形態および術語。分類形質として用いられる外部形態および生殖器の構造を詳 細に分析し、それらの術語を確定している。系統の構築に有用な形質の状態を比較し、

状態の原始・派生関係すなわち極性を決定している。特に雌の貯精嚢とその付属器官 が 有 用 で あ る と し 、 形 質 の 進 化 系 列 を ダ イ ア グ ラ ム で 示 し て い る 。   5。鞘翅目におけるェンマムシ上科の位置、近縁分類群との関係について説明した 後、この上科が3科、すなわちSphaeritidae、Synteliidae、Histeridaeよりなり、

ごく小さな前2科が原始的な群であるとする見解を採用している。一方、上科のなか で最大の科であるHisteridaeにっいて渡、従来さまざまな分類が提案されてきており、

今日ではWenzel(1944)によって提唱されMazur (1984)によって検討修正された亜科 レベルの分類が一般に採用されているが、亜科の分岐関係の解明についてはいかなる

試みもなされなかったと述べている。まず、SphaeritidaeとSynteliidaeを外群とし て決定された形質の極性をWenzel‑Mazur方式で検索に用いられている形質に適用し、

クラドグラムの構築を試みた。得られたクラドグラムは5っの重複変化、すなわち3 っの逆行と2っの平行、を含むが、そのうち3っについては比較形態の結果からは受 け入れ難いとしている。そこで新たに追加された形質も含めて、極性が決定された形 質全部を亜科に対して配列したマ卜リックスを作製し、これに基づいてクラドグラム を構築した。新しいクラドグラムではWenzelーMazur方式における3っの逆行のうち2 っが解消され、新たに生じた体型等の平行については、生活型との関連で説明がっく としている。この結果、(1)WenzelーMazur方式における2大区分Histeromorphaeと Saprinomorphaeは破棄され、(2)Niponiinaeはもっとも原始的な亜科として科の他 の亜科全部に対して外群となり、(3)残りの10亜科は大きく2群に分かれるが、

これらはWenzel−Mazur方式における2大区分とは構成が異なる。結局、全く新たな系 統関係が提唱され、以後のテストを待つことになる。

  6。 分 類 。 最 終 的 に 日 本 産 エ ン マ ム シ 上 科 は3科 、10亜 科 、36属、117種

‑ 698―゛

(3)

1未 決 定 種 と1侵 入 種 を 含 む ) に 分 類 さ れ 、 こ れ ら の 分 類 群 に つ い て 分 類 階 級 毎 に 検 索 表 を 作 製 し 、 新 種 お よ び 再 記 載 の 必 要 な 種 に は 詳 細 な 記 載 を お こ な い 、 あ る 数 以 上 の 標 本 が 測 定 で き た も の に つ い て は 主 要 部 分 の 測 定 値 表 を 付 し て い る 。 ま た 、 カ メ ラ ・ ル シ ダ に よ る 描 画 と 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 写 真 を 豊 富 に 使 用 し て 形 質 の さ ま ざ ま な 状 態 と 分 類 群 の 特 徴 に つ いて 理解 を助 けて いる 。

以 上 の ご と く 、 本 諭 文 は 日 本 産 エ ン マ ム シ 上 科 に つ い て の 最 初 の モノ グラ フで あり : 本 邦 に お け る 昆 虫 分 類 学 上 の重 要な 貢 献で ある 。

ー ー699

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

A Revlsion of the Superfamily Histeroidea     of JapanくColeoptera)

  ( 日 本 産 エ ン マ ム シ 上 科 ( 鞘 翅目 )に おけ る分 類学 的研 究)

  本 論 文 は 英 文 で 書 か れ 、 本 文 (54表 を 含 む ) 251枚 と161図 よ り な る 。   エン マム シ上 科の 昆虫 は動 物の 死体 その他分解しつっある有機物に発生するハエそ の 他の 昆虫 を捕 食す るも のが 多く 、ま たキクイムシの坑道中やアりの巣中等でそれら の 昆虫 を捕 食す るも のも ある 。昆 虫類 の活動する季節に普遍的に発生し、生態系にお い て捕 食動 物と して 一定 の役 割を もち 、畜舎等におけるハエの防除に積極的に導入さ れ たル キク イム シの 天敵 とし て利 用さ れている例が国外にある。本邦においてはこの よ うな 応用 は未 だお こな われ てお らず 、基礎的な分類に関しても散在した研究しかな か った 。

  本 研 究 は 、 国 内 の 多 数 の コ レ ク シ ョ ン か ら 借 用し た 材 料 を 含 め て 、 約3000の 標 本 と、 台湾 産で 本邦 と共 通す る種 の約300の 標本 に基 づい て進 めら れたものであり、

標 本 の 産 地 は ほ ぼ 日 本 全 土 に 亙 っ て い る 。 また 比較 のため 、約200の外 国産 標本 を 大 英博 物館 その 他か ら借 用し てい る。

  研 究 を 始 め る に 当 っ て 、230年 余 り に 亙 る この 毘虹 群の 高位 分類 を要 約し 、本 邦 よ り 記 載 あ る い は 記 録 さ れ た 種 と そ れ ら の 分 類 を 追 跡 し て い る 。

―‑ 700

夫 永 彦 貞   敏 木部 塚 高阿 飯 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

本研 究におい ては成虫 の形態に基 づいて分類をおこなっているので、まず分類に用 いられる 形態を詳 細に分析し 、系統の構築に有用な形質について状態の原始・派生関 係すなわ ち極性を 比較形態に よって決 定している。特に雌の貯精嚢とその付属器官の 形 質が有用 であることを見いだし、形質の進化系列をダイアグラムで示している。

本研 究で倣こ の上科が3っ の科より なり、最 大のェン マムシ科に比較して他の小さ な2っ の科が原 始的状態に あるとす る見解を 採用して いる。し たがって、形質状態の 極性 の決定に は原始的な2科を外群 として使 用した。 エンマム シ科内部の分類につい ては、Wenzel( 1944)によって提唱されMazur( 1984)によって一部修正された亜科レベ ル の分類 が一般に 採用され ているが 、亜科聞 の系統関係 について は従来い かなる試 み もなさ れていな い。まず 、決定さ れた極性 をWenzel―Mazur方式で検索に用いられてい る 形質 に 適 用し て クラ ド グ ラム を 構築した 。このクラ ドグラム は5っの重 複変化、 す な わ ち3っ の 逆行 と2っ の 平行 、 を含 む が 、そ の う ち3っ に つ いて は 比 較形 態 の結 果 か ら受け 入れ難い としてい る。そこ で新たに 追加された 形質も含 めて、極 性の決定 さ れ た全形 質を亜科 に対して 配列した マトリッ クスを作製 し、これ に基づぃ てクラド グ ラ ムを構 築した。 新しいク ラドグラ ムではWenzel−Mazur方式におけ る3っの逆 行のう ち2っ が解 消 さ れ、 新 たに 生 じ た体 型等の平 行について は特殊な 生活型と の関連で 説 明 がっく としてい る。この 結果、(1)WenzelーMazur方式 におけるHisteromorphaeと Saprinomorj〕haeの2大区 分が破棄 され、(2)Niponiinaeはもっ とも原始 的な亜科と し て 科 の 他 の 亜 科 全 部 に 対 し て 外 群 と な り 、 (3)残 り の10亜 科は 大 きく2群 に 分 かれる が、これ らの群はWenzel‑Mazur方式にお ける2大区 分とは構成が異なる。結局、

全 く 新 た な 系 統 関 係 が 提 唱 さ れ 、 今 後 の テ ス 卜 を 待 つ こ と に な る 。   最 終 的 に 日 本 産 エ ン マ ム シ 上 科 は3科 、10亜 科 、36属 、117種 (1未 決 定 種 と1侵 入 種 を 含む ) に 分類 さ れ た。 こ のう ち9種 は 新種 と して 記 載 され 、 他に2種 が 日 本の版 図より新 たに記録 された。 分類階級 毎に検索表 を作製し 、新種お よび再記 載

―701−−

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の 必 要 な 種 に は 詳 細 な 記 載 を お こ な ぃ 、 あ る数 以 上 の 標本 が 澗 定で き た もの に つ いて は 主 要 部 分 の 測 定 値 表 を 付 し て い る 。 ま た 、 カ メ ラ ・ル シ ダ に よる 描 画 と走 査 型 電子 顕 徽 鏡 写 真 を 豊 富 に 使 用 し て 形 質 の さ ま ざ ま な 状 憩 と 分類 群 の 特 徴に つ い て理 解 を 助 け て い る 。

以 上 の ご と く 、 本 論 文 は 日 本 産 エ ン マ ム シ 上 科に つ い ての 、 最 初 の包 括 的 研究 で あ り 、 昆 虫 分 類 学 上 重 要 な 貢 献 で あ る 。 こ れ が出 版 さ れる こ と に より 、 そ の効 果 と して こ の 昆 虫 群 の 今 後 の 分 類 学 的 研 究 の み な ら ず 生 態 学的 調 査 研究 を 容 易に し 、 さ らに 応 用 的 利 用 を 促 進 す ると 期 待 され る 。 よっ て 審 査員 一 同 は、 最 終 試験 の 結 果 と合 わ せ て、

本 論 文 の 提 出 者 大 原 昌 宏 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 が あ る も のと 認定した。

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参照

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