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博 士 ( 工 学 ) 竜 澤 宏 昌 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 竜 澤 宏 昌

学 位 論 文 題 名

魚 道 へ の 応 用 を 意 図 し た 渓 流 の 河 床 形 態に 関 す る 研究 学 位 論 文 内 容 の 要旨

  自 然 環 境 の 保 全 に 対 す る 社 会 的な 機運 の 高ま りの 中で 、近 年 、河 川環 境を 対象 に した 近 自 然 型 の 保 全 技 術 や 復 元 ・ 創 造 技術 が模 索 され 始め てい る。 山 間部 の「 渓流 」も 例 外で は な く 、 そ の 河 床 形 態 や 流 れ の 性 質に 関す る 知見 が必 要不 可欠 と なっ てい る。 本研 究 では 、 自 然 渓 流 に み ら れ る 様 々 な 河 床 形態 のう ち 、小 規模 の単 位形 態 であ る礫 列お よび 礫 段の 形 態 ( 以 下 、 こ れ を 「 小 規 模 河 床 形態 」と い う) を重 点的 に取 り 上げ 、そ の性 質の 解 明を 目 的 と し た 移 動 床 実 験 お よ び 理 論 的な 検討 を 行う とと もに 、そ の 応用 とし て、 それ ら の形 態 を安定的に維持し得る近自然型の魚道設計法を新たに提案した。

  小 規 模 河 床 形 態 の 成 因 ・ 形 成 機構 につ い ては 、こ れま での 土 砂水 理的 な研 究に よ って 、 反 砂 堆 の 形 成 、 河 床 砂 礫 の 活 発 な移 動と 分 級、 反砂 堆ク レス ト 付近 での 大礫 の停 留 、さ ら に 礫 段 の 場 合 に は 反 砂 堆 の 波 長 と斜 め交 錯 波の 共振 化に よる も ので ある こと が明 ら かに さ れ て い る 。 し か し 、 そ の 形 成 条 件と して 重 要な 役割 を果 たす と 考え られ る河 床材 料 の粒 度 分 布 特 性 に つ い て は 、 一 様 粒 径の 砂で 構 成さ れて いる 河床 に は小 規模 河床 形態 が 形成 さ れ な い と す る 指 摘 以 外 、 ほ と んど 見当 た らな ぃ。 この 点を 明 らか にす るた め、 揖 斐川 支 川 の 白 谷 お よ び 豊 平 川 支 川 の 小 川に おけ る 河床 材料 調査 で得 ら れた 河床 表層 砂礫 の 粒度 分 布デ ータを考察した。その結果 、それらの粒度分布が( P=(d/dmax) ,n=l/2〜 3/4)で表され るTalbotの曲 線に よく 従 うこ とを 見出 した 。 この 曲線 は、 コ ンク リー ト骨材な ど混合材料に 最 大 密度 を与 える 粒度 分 布の 理想 曲線 とし てTalbotが 実験 の 結果 から 提示した ものであり、

上 式 の 指 数nが1/2 ‑1/4の 場 合に 最大 の密 度 とな ると され てい る 。併 せて 、粒 径別 表 層砂 礫 の 体 積 占 有 割 合 に 関 す る 保 存 式 を用 いて 、 波状 の掃 流カ によ っ て分 級を 受け た河 床 砂礫 の 定 常 粒度 分布 を理 論的 に 推定 した 結果 、こ れ がn=3/4のTalbotの曲線に非常に近 い曲線を描く ことを確認した。

  次 いで 、Talbot型の 砂 礫粒 度分 布、 流量 お よび 流路 勾配 を 種々 変化 させた移 動床実験を行 い 、 渓 流 に み ら れ る 河 床 形 態 が 実際 にど の よう な条 件下 で形 成 ・安 定化 し得 るの か を観 察 す る と と も に 、 そ の 形 状 特 性 お よ び 流 れ の 基 本 的 な 性 質 を 明 ら か に し た 。   すなわち、Talbot型粒度分布であるA砂礫tP=(d/dlnax)1/2)、B砂礫( P=(d/dmax)1′4)、および 非Talbot型粒度分布(片 対数紙上で上に凸形)であるC砂礫による実験を多数実施 し、くDA砂礫 お よ びB砂礫 実験 では 、反 砂 堆の 形成 、砂 礫 の分 級、 反砂 堆峰 付 近で の大 礫の 停止 と いう 過 程 を 経 て 小規 模 河床 形態 が形 成さ れ るこ と、 ◎非Talbot型分 布のC砂 礫実 験で は、 反 砂堆 が 形 成 さ れ る も の の 、 こ れ に 最 大 径礫 の移 動 を停 止さ せる よう な 働き が認 めら れず 、 結果 と し て 、 小 規 模 河 床 形 態 が 形 成 さ れな いこ と を確 認し た。 また 、 小規 模河 床形 態が 形 成さ れ た砂 礫床表層の粒度分布が、いずれも( P=(d/dmヨx)l/2〜3/4)の分布形をなしていることを明ら か に した 。以 上の 結果 か ら、河床表層部の粒度分布 が指数n> 1/2のTalbot型分布 であること、

あ る い は 、 こ の 分 布 に 至 る こ と が、 小規 模 河床 形態 が形 成・ 安 定化 する 重要 条件 で ある こ

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(2)

とを指 摘した。

  

さら に 、初 期勾 配1/10の 実 験砂 礫床 を用 いた 一 連の 実験 にお い て、 沖積 部の 交互 砂州に酷 似 した 「 砂礫 堆」 が礫 列・ 礫 段に 共存 する 形で 発 達す るこ とを 初 めて 確認 した 。こ れら砂礫 堆 の 発 達 に 伴 い 形 成 さ れ る 長 波 長 の 河 床 波は 、こ れ まで 現地 観測 等で そ の存 在が 指摘 さ れ て い た 中 規 模 河床 形態 で ある と考 えら れる 。 非Talbot型分 布 のC砂 礫実 験 にあ って も、 交 互 砂 礫 堆 が 発 達 す る こ と で 小 規 模 河 床 形 態 の形 成が 促 され るこ とを 見出 し た。 すな わち 、 交 互 砂 礫 堆 の 発 達 に 伴 う 流 れ の 偏 流 に よ り 掃流 カが 増 して 河床 砂礫 の移 動 ・分 級が 進む 部 分 と 、 掃 流 カ が 減 少 し て 河 床 砂 礫 が 堆 積 す る部 分と が 生じ 、砂 礫堆 部で は ほぼ 元河 床の 状 態 が 維 持 さ れ る の に 対 し て 、 流 れ が 集 中 す る水 みち 部 およ び転 向部 では 、 その 直上 にで き た 砂 礫 堆 に よ っ て 上 流 か ら の 砂 礫 の 流 下 が 妨げ られ 、 徐々 に砂 礫床 表層 の 分級 と粗 粒化 が 進 み 、 や が て 小 規 模 河 床 形 態 が 形 成 ・ 安 定 化す るこ と が知 られ た。 水み ち 部で は、 共存 す る 礫 列 ・ 礫 段 の プ ー ル 深 が 深 く な り 、 よ り 自 然 に 近 い 魚 道 の 再 現 を 保 証 す る 。

  

次 に 、 実 験 砂礫 床上 に おけ る小 規模 ・中 規 模河 床形 態形 成 時の 流れ の抵 抗則 が

Hey

式 に よ く 従 う こ と を 確 認 し た 上 で 、 そ の べ き 関 数近 似式 を 用い て、 小規 模河 床 形態 の波 高△ お よ び 波 長 允 の 推 定 式 を 理 論 的 に 導 い た 。 こ れら は、 流 れが 射流 の条 件下 で 限界 掃流 力状 態 と な る 礫 の 径 が △ に 、 砂 礫 床 に 形 成 さ れ る 反砂 堆の 波 長が えに それ ぞれ 等 しい もの とし て 導 い た も の で あ り 、 上 述 の 実 験 砂 礫 床 で 得 られ た波 高 ・波 長デ ータ によ く 適合 する こと を 確 認 し た 。 ま た 、 実 験 砂 礫 床 に 形 成 さ れ た 砂礫 堆の 形 状に つい て、 沖積 河 川の 交互 砂州 形 状 式 と 比 較 し た 結 果 、 波 長 に 関 し て 両 者 が ほ ば 一 致 す る 場 合 と 、 実 験 値が 計算 値 のほ ば3倍 程 度 に な る 場 合 の

2

通 り の 結 果 が あ る こ と を 見 出 し た 。 後 者 は 、 通水 初 期に 交互 砂州 波 長 に 等 し い 砂 礫 堆 が 発 達 す る も の の 、 射 流 およ び交 互 分級 の作 用を 受け て 砂礫 堆の 前傾 斜 部 か ら 対 岸 に 向 か う 流 れ が そ の 砂 礫 堆 を 乗 り越 えて し まう とい う現 象、 す なわ ち砂 礫堆 の 統 合が生 じた結果と考えられる。

  

一 方 、 小 規 模 河 床 形 態 ( 礫 列 ) を 想 定 した 固定 床 での 実験 から 、勾 配 一定 の条 件の も と で 流 量 が 増 加 し て い く と 、 小 規 模 河 床 形 態上 には 順 に、 完全 越流 状態 で ステ ップ 部を 越 え る 流れ が ほば フラ ット なプ ー ル面 上に 落下 ・拡 散 して エネ ルギ ー を失 うよ うな 「落 下流」、

ス テッ プ を越 流し た流 れが プ ール 部で 潜り 跳水 を 起こ す「 潜り 流 」、 ステ ップ を越 流した流 れ が そ の 直 下 な ぃ し は プ ー ル 部 で 跳 水 を 起こ し、 跳 水の 下流 にSl曲線 か らM1曲線 に接 続 す る 膨ら ん だ水 面を 伴う 「跳 水 流」 、ス テッ プ部 お よび プー ル部 の 全域 にお いて 射流 状態で流 下 す る よ う な 「 射 流 」 が 現 れ る こ と を 確 認 し た 。 そ し て 、 こ れ ら

4

つ の 流れ は、 池内 ・ 山 田らの 理論の応用を図ることで概ね 分類できることを示した。

  

最 後 に 、 以 上 の 実 験 お よ び 理 論 的 な 考 察を 通し て 明ら かに した 小規 模 ・中 規模 河床 形 態 の 形 状 ・ 構 造 を 持 続 的 に 再 現 し 得 る 近 自 然型 の魚 道 設計 法を 提案 した 。 すな わち 、@ 想 定 す るダ ム のバ イパ スな どに お いて 計画 流量 を定 め ると とも に、 現 地砂 礫の 最大 粒径 を知る、

◎n二二 ニ1/2のTalbot分布砂礫を想 定して砂礫堆の発生条件に従う幅を決める、◎提案式によって 礫 列 の 波 長 ・ 波 高 を 求 め 、 基 礎 処 理 を お こな いな が ら84%通 過篩 程度 の 礫を 順次 並べ 固 定 化する 、@n二ニ1/2のTalbot分布砂 礫を一面に敷き詰め、計画 流量規模の通水によって砂礫堆の 自 然 形 成 作 用 に よ る 形 状 形 成 を お こ な う とい うも の であ る。 この 魚道 は 、渓 流魚 類等 を 対 象 とす る 移動 装置 とし ての 機 能の みな らず 、魚 類 の棲 み場 所と な り得 るも のと 期待 される。

ま た 、 そ の 機 能 が 全 く 損 な わ れ る 満 砂 状 態に あっ て も、 ある 一定 以上 の 流量 を得 るこ と で 自 ら の 形 状 を 再 現 ・ 維 持 し 得 る と い う 維 持管 理の 面 でも 極め て有 利な 性 能を 有す るこ と を 実験的 に検証した。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

魚道への応用を意図した渓流の河床形態に関する研究

  

山地渓流における砂防ダムや貯砂ダムに魚道を設置し,魚類の往還を保証する必要性が 高まっている.しかし,当該区魚道は土砂による埋没が多く対策が望まれている.本研究 は,渓流に自然形成する階段状河床波(礫列)を魚道として利用するという新しい考えにた って上述の問題を解決することを目的にしている. そのために,2章から6章において渓 流の階段状河床波,ならびにそれらによって構成される淵・瀬の形成条件,流れの諸性質が 実験および理論解析によって明らかにされている. これらの結果を受け,7章において新 しい魚道の設計法が提示され,あわせて企図した機能の検証実験がなされている,新提案 の魚道は,一時的土砂埋没が生じた後にも人為手段なしに自己修復する優れた機能を示し た,

  

本論文は,

8

章より構成されている.

1

章は,山地渓流における魚道問題の背景,「移動装置」としての魚道から「渓流再生」

魚 道 へ の 発 展 と い う 着 目 点 , な ら び に 論 文 の 目 的 と 章 構 成 が 述 べ ら れ て い る . 第

2

章は,溪流河床形態 に関する従来研究のレビューがなされ,あわせて著者が注目する 河床形態の多数の実測例が提示されている.これらから,階段状河床波の成因におよばす 河床砂礫粒度分布の影響が未解明であること,中規模波と称されるこれより長い波長の河 床波に関する研究が皆無であることが示されている,

3

章は,渓流の河床表 層粒度分布の調査結果,およびその特性の理論的説明が示されて おり,以下の新知見が得られている.

(1)

揖斐川支川・豊平川 支川など5渓流で得られた河床砂礫粒度分布は,いずれもコンクリ ート 骨材 の粒 度分 布表 示に 多用 され るタ ルボ ット型粒度分布関数によくあ てはまる,

(2)

関数中の最適パラメータのべき数は,コングリー卜骨材の締め固め密度を最大にする数 値に一致している,

(3)

波状河床せん断カによって分級を受ける河床砂礫に,粒径別砂礫存在率の保存式および 粒径別流砂量式を適用し,存在率定常化の必要条件を満たす粒度分布を求めると,それら はタルボット型分布に近づく.

4

章は,本論文前半の 中心をなす章である.2種類 のタルボット型粒度分布をあたえた 混合粒径砂礫(A砂礫,B砂礫),および非タルボット型粒度分布をあたえた混合粒径砂礫

(C

砂礫)を用いた多数の実験により,階段状河床波(礫列)の形成に及ぼす粒度分布の影響,

209

博 興

睦 忠

田 倉

藤 板

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

お よ び 中 規 模 河 床 波 が 及 ぼ す 影 響 が 述 べ ら れ て い る , 結 果 は 以 下 に な る .

(1)A

B

砂 礫河 床 にお いては 階段状河 床波が 速やかに 形成さ れるのに 対し,

C

砂礫 河床 ではその形成が認められない.河床砂礫のタルボット型粒度分布保有の条件が,階段状河 床波の形成条件に新たに付け加えられる,

(2)

実験中発生が認められた中規模波(砂礫堆)は,沖積河川で広く見出される交互砂州に類 似 す る 性質 を 有 して い る .た だ し , 統合 化 に よる 波 長 の延 伸 が 高い 頻 度で 起きる .

(3)

中規模波が現れる場合には,C砂礫においても階段状河床波が共存する形で発生する.

また,中規模波上を蛇行する流れの転向部直下流部において相対的に深い淵が形成され,

自然渓流に非常に近い形態が生ずる.

第5章は,階段状河床波の波長と波高を推定する理論式の誘導がなされている.それぞれ,

既往の概念にもとづいて求められたものであるが,独自の改良がおこなわれ実験値との照 合によって信頼性の高い結果を得ている,

6

章は ,人工 的に作製 した階段状河床波実験により,さまざまな流量規模における流れ の性質が調ぺられている,それらは「落下流」「潜り跳水流」「跳水流」「射流」に分類され,

ベ ルヌイ式 を用い た既往の 理論を 修正した 区分式 により推定し得ることを示している,

7

章は 後半の 中心とな る章である.前章までの結果の魚道への応用が述べられ,以下の 新 し い 魚道 の 設 計法 が提案 されてい る,ま た,その 機能の検 証実験 がなされ ている . くD魚道を設置するダム・堰等が立地する「対象渓流」の流量観測資料あるいは現地河床状 況(粒度分布)などから,魚道設計流量を定める.◎べき数1′2のタルボット分布砂礫を想 定して,中規模河床波(砂礫堆)の発生条件にしたがう魚道幅を決める,◎5章の提案式によ って階段状河床波の波高・波長を求め,基礎処理をおこなって波高相当の礫を横断方向に 順 次並べて 固定化 する.@ べき数

1/2

のタルボット分布砂礫を一面に敷き詰め,設計流量 を 通 水 す る こ と に よ っ て 自 然 な 河 床 洗 掘 を は か ル プ ー ル 部 を 形 成 す る .

  

このような設計法にしたがって実施した検証実験は,以下のような優れた機能を示した,

(1)

通水によルプール部の河床洗掘とともに中規模河床波(砂礫堆)が発生し,相対的に深い 淵 の 部 分 と 浅 い 瀬 の 部 分 が 交 番 的 に 形 成 さ れ 自 然 渓 流 に 近 い 形 態 に な る ,

(2)

多量の土砂が流入した場合,一時的なプールの埋没が起こるが,その後に自然な河床洗 掘が生じプール部の再形成がはかられる.

第8章は,本論文の結論が述ぺられている,

  

これを要するに,著者は渓流が本来有する諸性質を砂礫粒度分布・河床形態・流れの側 面から明らかにし,渓流における魚道設計法に対して新知見を得たものであり,河川工学,

砂防工学に対して貢献するところ大なるものがある,よって著者は,北海道大学博士(工学)

の学位を授与される資格があるものと認める,

210

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