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小山友香 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成30年 9月

小山友香 学位論文審査要旨

主 査 渡 邊 達 生 副主査 兼 子 幸 一 同 海 藤 俊 行

主論文

Short-term heat exposure promotes hippocampal neurogenesis via activation of angiotensin Ⅱ type 1 receptor in adult rats

(短時間の暑熱曝露はアンギオテンシンⅡ 1型受容体の活性化を介して成熟ラットの海馬 神経新生を促進する)

(著者:小山友香、椋田崇生、濱崎佐和子、中根裕信、海藤俊行)

平成30年 Neuroscience 385巻 121頁~132頁

参考論文

1. Systemic angiotensin Ⅱ and exercise-induced neurogenesis in adult rat hippocampus

(成熟ラット海馬における血中アンギオテンシンⅡと運動誘発性の神経新生)

(著者:椋田崇生、小山友香、濱崎佐和子、海藤俊行、古川康雄)

平成26年 Brain Research 1588巻 92頁~103頁

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学 位 論 文 要 旨

Short-term heat exposure promotes hippocampal neurogenesis via activation of angiotensin Ⅱ type 1 receptor in adult rats

(短時間の暑熱曝露はアンギオテンシンⅡ 1型受容体の活性化を介して成熟ラットの海馬 神経新生を促進する)

脳の海馬では生涯を通じて神経新生が継続して起こり、海馬機能の維持や改善に寄与す ると考えられている。この海馬神経新生は、適度な運動を行うと血管内皮細胞増殖因子

(VEGF)を介して促進されることが知られているが、その機序の全貌は明らかになってい ない。著者らはラットの走行運動実験モデルを用いて、運動後の体液量減少が誘発する血 中アンギオテンシンⅡ(AngⅡ)濃度の一過性上昇が海馬神経新生に対してトリガーとなる 可能性を見出した。そこで本研究では、運動と同様に体液量の減少が予想されるラットの 短時間暑熱曝露実験モデルを構築し、暑熱曝露によるAngⅡの変化が成熟海馬の神経新生に 与える効果とVEGFとの関係について検討を行った。

方 法

実験にはウィスター系ラット(オス・20週齢)を用いた。非拘束で反復採血を行うため に前処置として右心房にカテーテルを留置した。短時間の暑熱曝露群(HEAT群)は36 ℃、

湿度45%の環境で1日1時間飼育し、これを7日間連続で行った。実験3日目の曝露直後およ び5日目の曝露直前(安静時)に採血し、血中AngⅡ濃度をELISAで測定した。対照群(CONT 群)は室温(25 ℃)で7日間飼育し、同一のスケジュールで採血した。各群の一部のラッ トはAngⅡ 1型受容体(AT1R)の関与を検討するため、あらかじめAT1R選択的阻害剤カンデ サルタン(cds)を飲料水に溶かして経口摂取させた(cds-CONT群、cds-HEAT群)。暑熱曝 露の効果を評価するため、曝露終了後20分間の飲水量を測定した。7日目の曝露終了2時間 後に脳を摘出した。左半球は海馬神経新生に対する効果を検討するため、固定後に歯状回 全体にわたり20 µm厚の冠状凍結連続切片を作製した。等間隔で抜粋した切片を用いて、そ れぞれ幹細胞および幼若ニューロンのマーカータンパク質であるKi-67およびダブルコル チン(DCX)を発現する細胞を免疫染色により検出し、陽性細胞数を群間で比較した。さら に、隣接切片を用いてVEGF発現細胞を検出した。右半球はホモジナイズし、ウェスタンブ ロット法により海馬に含まれるVEGFの発現レベルを比較した。

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3 結 果

HEAT群では曝露直後に飲水量が増加した。曝露直後の血中AngⅡ濃度は、CONT群、HEAT 群およびcds-CONT群では安静時と比較して上昇は認められなかったが、cds-HEAT群では安 静時の約1.6倍に上昇した。海馬歯状回におけるKi-67陽性の幹細胞数はいずれの群間にも 差がなかった。一方、DCX陽性の幼若ニューロン数はHEAT群ではCONT群と比べ約1.4倍に増 加した。海馬VEGFの発現量はCONT群に比べHEAT群で増加した。これらの暑熱曝露による変 化はcdsで抑えられた。海馬のVEGF発現細胞の多くはアストロサイトのマーカーであるグリ ア線維性酸性タンパク質を発現していた。

考 察

暑熱曝露直後の飲水行動はAT1Rを介して引き起こされたと考えられる。血中AngⅡ濃度の 上昇は、HEAT群では認められなかったものの、cdsがAT1Rを介するネガティブフィードバッ クを遮断したcds-HEAT群で検出できたので、暑熱曝露は血中AngⅡ濃度を一過性に上昇させ ると考えられる。海馬歯状回の幼若ニューロン数は暑熱曝露により増加し、その効果はAT1R の阻害で消失するのに対して、幹細胞数は暑熱曝露およびAT1Rの阻害による影響を受けな かった。このことは、暑熱曝露はAT1Rを介して海馬における神経新生を促進するが、幹細 胞の増殖には影響しない可能性を示唆している。また、海馬のアストロサイトによるVEGF 産生も暑熱曝露により高められ、その効果はAT1Rの阻害で抑制された。これらの所見を総 合すると、短時間の暑熱曝露は血中AngⅡ濃度を上昇させ、AT1Rを介して海馬アストロサイ トにおけるVEGF産生を高めることにより、海馬神経新生を促進すると考えられる。

結 論

短時間の暑熱曝露は運動と同様にAngⅡ-AT1Rシグナルを介して成熟海馬の神経新生を促 進することが判明した。これはヒトの海馬機能の維持・改善に関する新たな生理的基盤を 提供するものと考えられる。運動は疾患や高齢等の理由により困難な場合も多いので、暑 熱曝露に相当する入浴やサウナ浴の実施により、比較的容易に海馬神経新生を促進できる 可能性が期待される。

参照

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