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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 医 学 ) 牧 野 学 位 論 文 題 名

高度血液希釈人工心肺手術モデルにおける ノヾーフルオロケミカルによる酸素供給効果の検討

学位論文内容の要旨

    【 背景 】パ ーフ ルオ 口 ケミ カル は一 般式CnFmで 表されるフッ化化合物 である。バーフル オ 口 ケ ミ カ ルは ほと ん どの ガス に対 し 高い 溶解 性を 示し 、 なお かつ 、生 物学 的 にき わめ て 不 活 性 で 生 体内 では 分 解を 受け ない 。 この ニつ の理 由か ら 、輸 血に 変わ る酸 素 運搬 体と し て 注 目 さ れ た が 、1970年 代 後 半 か ら1985年 に か け て 世 界 中 で 臨床 試験 が行 わ れた にも か か わ ら ず 、 投与 手技 の 煩雑 さや 、適 応 疾患 が限 られ るな ど とい った 理由 によ り 実際 に臨 床 応 用 さ れ る ま で に は 至 ら な か っ た 。 そ の後 、製 剤 技術 の進 歩に よ り、 第2世 代 とい うべ き 新 た な パ ー フル オ口 ケ ミカ ルが 開発 さ れ、 酸素 運搬 体と し てだ けで はな く、 画 像診 断に お け る 造 影 剤 、腫 瘍の 診 断と 治療 への 応 用、 虚血 性疾 患に お ける 局所 循環 の改 善 、臓 器保 存 な ど 、 現 在 多様 な分 野 への 応用 が試 み られ てい る。 しか し 、輸 血に 変わ る酸 素 運搬 体と し ての 応用はすすんで いなしゝ。その理由としては 、次のニつの特徴が挙げら れる。一つ目は、

バ ー フ ル オ 口ケ ミカ ル の酸 素運 搬能 は 酸素 分圧 に比 例す る ため 、組 織に 十分 に 酸素 を供 給 す る た め に は高 濃度 酸 素吸 入が 必要 で ある こと であ る。 二 つ目 は、 半減 期が 短 いた め投 与 後2か ら3日 で 呼 気 中 よ り 排 泄 さ れ て し ま う こ と で あ る 。 こ の ため 、気 管挿 管 下で の使 用 に 限 ら れ る 、投 与数 日 後輸 血が 必要 に なる 、と いっ た問 題 がお こっ てい る。 一 方、 人工 心 肺 を 用 い た 心臓 手術 で は、 人工 心肺 使 用中 は必 ず気 管内 挿 管さ れて おり 、ま た 、人 工肺 で の 酸 素 化 も 可能 であ る 。ま た、 体外 循 環中 の一 時的 な貧 血 さえ 乗り 切る こと が でき れば 、 術 後 は 回 路 内の 血液 を 体内 に戻 すこ と によ ルヘ マト クリ ッ ト値 を上 昇さ せる こ とか ら、 バ ー フ ル オ ロ ケミ カル が 排泄 され ても 問 題な いと 考え られ る 。こ のこ とか らバ ー フル オロ ケ ミ カ ル は 心 臓 手 術 で の 輸 血 に か わ る 酸 素 運 搬 体 と し て 有 用 で あ る と 考 え ら れ た 。   以 上 の こ とを 証明 す るた め、 高度 血 液希 釈下 にお いて パ ーフ ルオ ロケ ミカ ル が十 分な 酸 素供給を行えるかを 次に示す実験モデルを作成 し検討した。

  【 材 料 お よび 方法 】 実験 動物 は雌 ピ ーグ ル犬15頭(9. Okg〜ll. Okg)を使 用し ,Control 群(n 5)、Anemia群(n 5)、PFC群(n 5)の3群にランダムに分け比較した。パーフルオ口ケ ミ カ ル は 神 戸 学 院 大 学 薬 学 部 製 剤 学 福 島 昭 二 講 師 よ り 提 供 を うけ た28%perfluorooctyl bromideを使用した 。

  体 外 循 環 : Ketamine hydrochlorideとthiamylal sodiumに より 麻酔 導入 , 気管 内挿 管 し人工呼吸器に接続 。人工心肺回路は人工肺に 小児用のsafe Mini (POLYSTAN、デンマーク)、

ポ ン プ は 口 ーラ ー型 を 使用 した 。回 路 容量 は600mlであ り、540mlの 酢酸 リン ゲ ル液 と60ml の 牛 ア ル ブ ミン でプ ラ イミ ング した 。 挿血 は左 大腿 動脈 、 脱血 は右 大腿 動脈 よ りお こな っ た 。 心 電 図 、 持 続 動 脈 血 圧 、 中 心 静 脈 圧 、 尿 量 、 膀 胱 温 を モ 二 夕 ー し た 。   ま ず 、Anemia群 お よ びPFC群 で は 人 工 心 肺 開 始 直 前 に900mlの瀉 血を おこ な いへ マト ク リ ッ ト 値 を14〜15%に調 整し た 。人 工心 肺回 路内 にAnemia群 では 酢 酸リ ンゲ ル液900mlを 、 PFC群 で は パ ー フ ル オ 口 ケ ミ カ ル600mlと 酢 酸 リ ン ゲ ル 液300mlを 補 充 し 、 人 工 心 肺 を 開

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始した。Control群ではすく゛に人工心肺を開始した。ポンプ流量を70〜80ml/kg/minに保 ち、膀胱温34℃まで冷却。冷却後、2時間この状態を維持した後、膀胱温36℃まで復温し、

人工心肺を離脱させた。この際、回路内の血液、および瀉血した血液を体内に返血した。

このまま8時間麻酔を維持した。採血、バイタルサイン測定は(1)麻酔導入時、(2)人工心 肺開 始前、(3)冷却完了後、(4)人工心肺維持1時間後、(5)人工心肺維持2時間後、(6)復 温完了後、(7)人工心肺離脱後、(8)人工心肺離脱4時間後、(9)人工心肺離脱8時間後とし た。採血では血清乳酸値、動脈血酸素分圧、二酸化炭素分圧、塩基欠損、ヘマトクリット 値を測定した。終了後、安楽死させ肺を摘出した。

  【結果】収縮期動脈血圧はAnemia群では人工心肺中ではControl群と比較し、人工心肺 終了 後はControl群、PFC群と比較し優位に低く血行動態維持が困難であった。心拍数、

中心 静脈圧、 時間尿 量に差は なかった 。Anemia群では人工心肺終了約4時間後に5例中3 例が死亡した。血清乳酸値はControl群では経過中上昇を認めなかったが、Anemia群では 開始 時と比較 し約5倍まで上昇し、他の二群と比較し優位に高値であった。PFC群では、

Anemia群と同じく低ヘマトクリット値でありながら、Control群と同様上昇を認めなかっ た。 摘出した 肺の重量を測定したところ、Anemia群では著明な浮腫を認めControl群PFC 群と比較し約30%の重量増加を認めた。

  【考察】本実験では、3群すべてにおいて体重、体温、人工心肺などの条件を一定のも のとし、動物内のエネルギー需要量は一定であると仮定した。この状況下で、嫌気性代謝 の指標である血清乳酸値が上昇することは、すなわち、酸素供給量の低下を示すと考えら れる。Anemia群では人工心肺開始後時間経過とともに血清乳酸値の上昇を認めた。これは、

高度血液希釈のため低ヘモグ口ピンとなり、酸素供給が十分におこなわれず組織において 嫌気性代謝が亢進していることを反映したものである。一方、PFC群では同じ酸素需要量 の元、同じヘモグ口ビン量であったにもかかわらず、Control群と同様の血清乳酸値の変 動を示した。これは、組織中でバーフルオ口ケミカルによる酸素供給が充分におこなわれ ていることを示していると考えられる。この結果より、人工心肺手術中にPFCを投与した 場合、ヘモグ口ピンの代わりになることを示すことができた。

  この実験の制限としては、投与量、長期予後、問題が挙げられる。本実験では過去の実 験結果より、パーフルオ口ケミカル濃度が人工心肺開始後12〜13%となるよう投与量を決 定した。しかし、28%パーフルオ口ケミカルでは60mq/kgとなり、投与量が多くなる。高濃 度パーフルオロケミカルの作成が期待される。また、今回人工心肺終了後8時間までしか 測定しておらず、体内からパーフルオ口ケミカルが消失した後の血行動態についても検討 する必要がある。

  以上の問題を解決することにより、パーフルオ口ケミカルは輸血に変わる酸素運搬体と して臨床応用されることが期待される。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

   高 度 血 液 希 釈 人 工心 肺 手術 モ デ ルに お ける パーフルオロケミカルによる酸素供給効果の検討

  パーフルオロケミカルは一般式CnFmで表されるフッ素化合物でほとんどのガスに対し 高い溶解能を持っため、輸血に変わる酸素運搬体として注目されている。しかし、酸素溶 解能は酸素分圧に比例すること、半減期が短く数日で排泄されてしまうという特徴のため、

気管内挿管、人工呼吸器管理が必要であり、また、排泄後に輸血が必要となり、輸血量を 減らすことができても回避することはできなぃという臨床試験データもあり、臨床応用に は至っていない。ここで、本論文では心臓手術において人工呼吸器や人工心肺回路より高 濃度酸素吸入が容易であること、輸血が必要となるのは人工心肺中の血液希釈時であり一 時的で あること に注目 し、パー フルオロ ケミカ ルの臨床 応用に適していると考えた。

    【材料および方法】雌ビーグル犬15頭(9.Okg〜n.0kg)を使用し,Control群(n=5)ヽ Amcmia群くn=5)、PFC群(n=5)の3群にランダムに分け比較した。パーフルオロケミカルは 神戸学院大学薬学部製剤学福島昭ニ講師より提供をうけた28%pcmuor00cりlbromidcを使 用した。体外循環:Kctammchydrochloridcとthiamylalsodiumにより麻酔導入,気管内挿 管し人 工呼吸器 に接続 。人工心 肺回路は人工肺に小児用のsafcMmi(POLYSTAN、デンマ ーク)、ポンプはローラー型を使用した。回路容量は6001n亅であり、540mlの酢酸リンゲ ル液と601n亅の牛アルブミンでプライミングした。挿血は左大腿動脈、脱血は右大腿動脈 よりおこなった。心電図、持続動脈血圧、中心静脈圧、尿量、膀胱温をモニターした。

  まず、Amcmia群およびPFC群では人工心肺開始直前に9001n亅の瀉血をおこないヘマト クリット値を14〜15%に調整した。人工心肺回路内にAncmia群では酢酸リンゲル液9001nl を、PFC群ではパーフルオロケミカル6001n亅と酢酸リンゲル液3001n亅を補充し、人工心 肺を開始した。Control群ではすぐに人工心肺を開始した。ポンプ流量を70〜80ml瓜g/min に保ち 、膀胱温34℃まで 冷却。冷却後、2時間この状態を維持した後、膀胱温36℃まで

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秀 顯

田 畠

安 北

授 授

教 教

査 査

主 副

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復温し、人工心肺を離脱させた。この際、回路内の血液、および瀉血した血液を体内に返 血した。このまま8時間麻酔を維持した。麻酔導入時、人工心肺開始前、冷却完了後、人 工心 肺維持1時間後、人工心肺維持2時間後、復温完了後,人工心肺離脱後、人工心肺離 脱4時間 後、人工心肺離脱8時間後の各時点で採血およびバイタルサイン測定を行った。

採血では血清乳酸値、動脈血酸素分圧、二酸化炭素分圧、塩基欠損、ヘマトクリット値を 測定した。終了後、安楽死させ肺を摘出した。

  【結 果】収 縮期動脈 血圧はAncmia群では人工心肺中ではControl群と比較し、人工心 肺終了後はControl群、PFC群と比較し優位に低く血行動態維持が困難であった。心拍数、

中心 静脈圧 、時間尿 量に差 はなかっ た。Ancmia群 では人工 心肺終了約4時間後に5例中 3例が死 亡した。血清乳酸値はControl群では経過中上昇を認めなかったが、Anemia群で は開 始時と 比較し約5倍ま で上昇 し、他の ニ群と 比較し優 位に高値であった。PFC群で は、Ancmia群と同じく低ヘマトクリット値でありながら、Control群と同様上昇を認めな かった。摘出した肺の重量を測定したところ、Anemia群では著明な浮腫を認めControJ群 PFC群と比較し約30%の重量増加を認めた。

  公開発表に際して,副査の劔物修教授からPFCの酸素溶解能と輸血製剤との比較、副作 用について,北畠顕教授からPFCの投与量、過去の製剤との違い、今後の改良点について,

また主査の安田教授から実験中の膠質浸透圧、さらに高濃度のPFC作成についての質問が あった。いずれの質問に対しても,申請者は関連研究論文,自分自身の実験データを引用 し概ね妥当な回答をなし得た,この研究は人工心肺による高度血液希釈下で,PFCが輸血 に代り酸素供給が可能であることを示したことで高く評価され、今後、体外循環手術にお けるPFC導入による無輸血手術への臨床応用への基礎データとして重要な治験である。審     |

査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ 申 請 者が 博 士 (医 学 ) の 学位 を 受 ける の に 十分 な 資 格を 有 す るも の と 判定 し た 。

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参照

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