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藤田小矢香 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成22年9月

藤田小矢香 学位論文審査要旨

主 査 原 田 省 副主査 中 込 和 幸

同 渡 邊 達 生

主論文

“Green odor”inhalation by stressed rat dams reduces behavioral and neuroendocrine signs of prenatal stress in the offspring

(妊娠ラットの緑の香りの吸入は胎生期ストレスによる仔の内分泌・行動異常を抑制する)

(著者:藤田小矢香,上木史織,三好美智夫,渡邊達生)

平成22年 Hormones and Behavior 58巻 264頁~272頁

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学 位 論 文 要 旨

“Green odor”inhalation by stressed rat dams reduces behavioral and neuroendocrine signs of prenatal stress in the offspring

(妊娠ラットの緑の香りの吸入は胎生期ストレスによる仔の内分泌・行動異常を抑制する)

妊娠中の母親のストレスは胎児にとってもストレスとなる(胎生期ストレス)。胎生期 ストレスは、ヒトや動物の子どもが成長した後に内分泌・行動異常を来たすことが知られ ている。その原因として、胎盤を通して伝わった母親の副腎皮質由来のグルココルチコイ ドが及ぼす胎児脳への影響が考えられる。一方、鎮静系の香料である緑の香り(green odor)

にはストレス緩和作用がある。今回、妊娠ラットがgreen odorを嗅ぐことにより胎生期ス トレスによる仔の内分泌・行動異常が予防できるか否かを検討した。

方 法

5~6週齢の雌Wistar ratと7週齢の雄ratを交配して妊娠ラットを作成した。ステンレス 製拘束器を用い拘束ストレスを行った。拘束ストレス負荷は、妊娠10日目から19日目まで の10日間、毎日1時間行った。ストレス負荷開始直後から、green odorあるいはそのvehicle をしみ込ませた綿球を、妊娠ラットの鼻先3cmの場所に置き吸入させた。あるいは対照とし て何も吸引させずストレス負荷を行わなかった妊娠ラットを用意した。これらの母ラット から、生まれた雄の仔ラット[それぞれgreen+stress (G+S)群、vehicle+stress (V+S群)、

control (C群)]が8週齢に達した段階で実験に使用した。母ラットの実験としては、①産後 の強制水泳テスト(うつ病様行動の指標)、②産後の副腎重量の測定(ストレスの指標)、

③母性行動のテスト(仔への育児行動の変化の有無を調査)を行なった。仔ラットの実験 では、①強制水泳テスト(うつ病様行動の指標)、②血漿ACTH、コルチコステロン(CORT)

濃度の測定、③視床下部室傍核におけるc-Fosの発現(視床下部における神経活動の指標)

を調べた。ストレスが負荷された母ラットでは母性行動が減少する。その影響を除く為に、

一部の仔ラットは里親に育てられた。これらの仔ラットに強制水泳テストを行なった(上 述)。

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3 結 果

ストレスを受けた母ラットで観察された副腎重量/体重比の増加と母性行動の1つであ る「pup retrieval(仔を巣に集める)」の減少はgreen odor の吸入により有意に抑制さ れた。しかし、ストレスを受けた母ラットで、 immobility時間の増加(強制水泳テストに おけるうつ病様行動の指標)は観察されなかった。一方、胎生期ストレス仔ラット(V+S 群)のストレス誘発ACTH、CORT反応は、C群と比較して有意に大きかった。妊娠ラットにgreen odorを吸入させると、これらのホルモン反応の亢進が抑制された(G+S群)。V+S群では、C 群よりもFos陽性細胞数の有意な増加が認められた。G+S群では、Fos発現細胞数がV+S群よ りも有意に減少した。強制水泳テストにおいて、V+S群ではC群よりもimmobility時間の増 大が見られたが、G+S群では、胎生期ストレス仔ラットのimmobility時間の増大は抑制され る傾向が得られた。母親ラットの養育行動に関わらず(実母と里親)、胎生期ストレス仔 ラット(V+S群)ではうつ病様行動が観察され、ストレス負荷された母親の香料吸入(G+S 群)はこの行動を防止することが分かった。

考 察

胎生期ストレスを受けた仔ラットで認められたうつ病様行動の増加と、血漿ACTH濃度や CORT濃度の上昇反応ならびに視床下部室傍核のc-Fos発現の増加はすべてgreen odorをス トレス負荷妊娠ラットに吸入させると抑制された。すなわち、green odorは胎生期ストレ スによる仔ラットのうつ病様行動や視床下部-下垂体-副腎系の活動亢進を防止することが 分かった。ストレスによる母性行動の減少と里親に養育された仔ラットのうつ病様行動が green odorで抑制されたことから、green odorはストレスが胎児の脳と母性行動の両方に 及ぼす悪影響を抑制して、成長後の内分泌・行動異常を防止するものと推察される。

結 論

妊娠ラットにgreen odorを吸入させると、胎生期ストレスによる仔ラットの内分泌・行 動異常が抑制できるものと推察される。

参照

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