博 士 ( 獣 医 学 ) 長 崎 健 一
学 位 論 文 題 名
/ ヽイドロキシアノヾ夕イトを担体とした エ リス ロポエチン徐放性製剤の開発
学位論文内容の要旨
近年、´I曼性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)という病気の概念が提唱され、
注目さ れてい る。CKDとは、 糸球体ろ 過量が 健康な人 の60%以下に低下するか、ある いはタンソくク尿が出るといった腎臓の異常が一定期間以上続く状態の綱尓である。放 置した ままに しておく と、末期腎不全となり人工透析や腎移植が必要となってくる。
現在、日本には約1,330万人滅人の約8人に1人)のCKD患者がいると言われている。人 工透析 を受け ている患 者数は26万人を超 えてお り、その数は毎年1万人ずつ増え続け ている。
造血 作用を有 するerythropoietin (EPO)は主に腎臓で産生されるため、腎機能の低 下に伴 い高頻 度でEPO欠乏性 の貧血を 併発し 、腎陸貧 血と言われている。腎陸貧血の みなら ず、悪 陸腫瘍や りウマ チといっ た様々 な原因に よる貧血 におい てrecominant humanEP0が静 脈内投与 または 皮下投与 されて おり高い 治療効 果を示し ている。 しか し、投 与され たEP0は 速やかに排泄されるため、貧血でない状態を維持するためにはI 週間に3回 の投与を 繰り返 す必要が あり、患 者のみ ならず医療現場にとっても大きな 負 担と 橙 っ てい る 。 こ のことか らdrugdeliverysystem印S)の 手法を用 いた投 与頻 度を軽減できるシステムの開発が期待されている。
DDS研究では 、これま でp01y(1aCtiCglyc01iCaCid)、ポリエチレングリコール、
ヒアル ロン酸 、ゼラチ ンなど の高分子 ポリマ ーがEP0の担体としてしばしば用いられ てきた。しかし、これらの方法はタンパクの失活弋 変陸、担体の起炎陸や分解、担体 が含有 できる タンパク 量が少たいことなどの問題がいくっかある。そこで、新たな担 体としてハイドロキシアパタイトmp)に着目した。HApは多:孔性であり、多様な物質 を吸着・保持する´t生質を有することから、さまざまな物質の徐放陸製剤の担体として 利 用 さ れ て い る 。 本 研 究 で はHApを 担 体と し たEP0徐 放陸 製 剤 の 開発 を 試 みた 。 まずHApがEP0徐放性 製剤の 担体とし て有効 であるか 否かに っいて検 討を行っ た。
HApを 担体と した5種類の 方法によ ってのEP0徐放 性試料を調製し(未処理試斛、亜鉛
(Zn) 処理試料 、Zn/olylacticacid(P川処 理試料、 焼結/Zn夘LA処理試 料、PLA処 ―62−
理試 糊、健常マウスに皮下投与 後、経時的に血液学的検査および血漿中EPO濃度の測 定を 行うことにより、EPO単独投与より長い造血持続効果を 有する試斛を検索した。
その 結果、未処理試料を除く4っの試料では、投与後に造血 のピークに達した日数が 延長 し、ピーク時およびピーク 後の血液学的パラメータがEPO単独投与群と比較して 高い 値で推移する傾向が認めら れた。また、Zn処理試料投与群では血漿中EPOの検出 期間 が延長した。Zn/PLA処理試 料投与群では同様に血漿中EPOの検出期間が延長した ことに加え、投与1日後の血漿rpEPO濃度が 大きく減少した。これは、初期過剰放出が 軽減されたことによると考えられた。
次に、EPO単 独投与と比較して徐放効果が高し啼囃fにっいて、腎性貧血モデル動物 を用 いて持続的貧血改善効果を 有するか否かについて検討した。血漿中EPO濃度がよ り長 期間 検出 され た2種 類の 試料(Zn処理試糾、Zn/PLA処理 試糊を腎性貧血モデルで あるICGNマウスに皮下投与後、 経時的に血液学的検査およぴ血漿中EPO濃度の測定を 行う ことにより、EPO単独投与より長い貧血改善効果が得ら れるか否かを検討した。
その結果、EPO単独投与群の血液学的パラメータは投与7および14日後では、投与前と 同等 の値であり、投与21日後に は低下傾向が見られた。投与7日後には造血効果はす でに消失し、投与前の状態に戻っていると 考えられた一方、Zn処理試料およびZn/PLA 処理試糾投与群では、投与後の血,液学的パラメータのピークは投与7日後に見られ、
その 後徐カに減弱していったが 、投与21日後においてもEP0単独投与群と比較して優 位に 高い値を維持していた。血 漿中EP0はEP0単独投与群では投与7、14および21日で いず れも検出されなかったが、Zn夘LA処理試料投与群では投与7日後まで、Zn処理試 料投与群では投与14日後まで検出された。i蚓§惆囲の病理組織学的検査では、投与21 日後まで背部皮下に担体が残存していたも のの、担体周囲に見られた組織反応は、異 物処理反応が主体であっ也
以上のことから、Zn処理試料およぴZn夘LA処理試料は持続的な貧血改善効果を有す ると考えられた。
学位論文審 査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 准教授
安居院 伊藤 滝口 佐々木
学 位 論 文 題 名
高志 茂男 満喜 宣哉
/ ヽイドロキシアノヾ夕イトを担体とした エ リス ロポエチン徐放性製 剤の開発
腎 性貧 血は 医学 及 び獣 医学 領域 にお しゝ て発 生頻 度の 高い 重要 な疾 患の ー つで ある。腎 性 貧 血 の 治 療 法 と し て は 、 リ コ ン ビ ナ ン ト エ リ ス 口 ポ ェ チ ン(EPO)を 投 与 す る 方 法 が 一 般 的 で あ る が 、EPOの 分 解 が 速 い た め 、 十 分 な 血 中 濃 度 を 維 持 す る た め に は 週3回 の 投 与 が 必 要 で あ る 。 こ れ は 患 者 及 び 患 畜 ・ 飼 主 にと って 大き な負 担 とな って いる 。申 請 者は 、こ れを 解決 す るた めに 、EPOの 徐放 製剤 の 開発 を行 った 。
申 請 者 は 徐 放 製 剤 の 担 体 と し て 、 ハ イ ド 口 キ シ ア バ タ イ ト(HAp)に 着 目 し た 。HAp は多 孔性 で様 々な 物 質を 吸着 ・保 持す る性 質を 有し 、生 体に よる 異物 反応 が 少な く、徐々 に 分 解 さ れ 消 失 す る と い う 性 質 を 有 し て い る 。 申 請 者 は5種 類 のEPO吸 着HAp製 剤 を 作 製 し 、 そ れ ら をICRマ ウ ス 皮 下 に 投 与 し 、 造 血 及 び 種 々 の 副 作 用 に つ い て 検討 を行 っ た 。 そ の 結 果 、 亜 鉛 を 処 理 し たHAp試 料(Zn‑HAp)、 及 び そ れ を 更 に ポ リ 乳 酸(PLA) で コ ー テ ィ ン グ し た 試 料(Zn/PLA‑HAp)の2っ が 最 も 持 続 的 な 造 血 作 用 と 、 持 続 的 な 血 中EPO濃 度 の 上 昇 を 示 し 、 特 に 顕 著 な 副 作 用 も 見 ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結果 より 、 申 請 者 はZn‑HApとZn/PLA‑HApがEPOの 徐 放 製 剤 担 体 と し て 有 効 で あ る と の 結 論 に 至っ た。
次 に 、 申 請 者 は 上 記2つ のEPO徐 放 製 剤 の 有 効 性 を 検 証 す る た め に 、 遺 伝 的 に 腎 不 全 を 呈 す るICGNマ ウ ス か ら 腎 性 貧 血 モ デ ル を 作 製 し 、 こ の モ デ ル に 上 記2製 剤 を 皮 下 投 与 し た 。 上 記2製 剤 と も にEPO単 独 投 与 に 比 ベ 、 有 意 に 持 続 的 な 貧 血 改 善 効 果 が み ら れ 、 血 中EPO濃 度 も 有 意 に 高 値 で 持 続 し た 。 更 に 、 特 に 顕 著 な 副 作 用 も 観 察 さ れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 申 請 者 はZn‑HApも し く はZn債I丿 いHApは 、EPOの 徐 放 製 剤 の 担 体 と し て 有 効 で あ り 、 こ れ ら のEP0徐 放 製 剤 は 臨 床 的 に も 十 分 利 用 可 能 で あ る 事を 示し た。
以 上 一 連 の 研 究 成 果 は 獣 医 学 の 分 野 に お い て 一定 の水 準を 超え た もの と判 断さ れた 。 よ っ て 、 審 査 員 一 同 は 、 上 記 博 士 論 文 提 出 者 、 長 崎 健 一 君 の 博 士 論 文 は 、 北 海 道 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 規 定 第6条 の 規 定 に よ る 本 研 究 科 の 行 う 博 士 論 文 の 審 査 等に 合格 と 認め た。