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山崎和雅 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成22年9月

山崎和雅 学位論文審査要旨

主 査 渡 邊 達 生 副主査 松 浦 達 也

同 稲 垣 喜 三

主論文

Effect of intraoperative acetated Ringer's solution with 1% glucose on glucose and protein metabolism

(術中1%ブドウ糖加酢酸リンゲル液の糖ならびにタンパク質代謝に与える影響)

(著者:山崎和雅、稲垣喜三、持田晋輔、舩木一美、高橋俊作、坂本成司)

平成22年 Journal of Anesthesia 24巻 426頁~431頁

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学 位 論 文 要 旨

Effect of intraoperative acetated Ringer's solution with 1% glucose on glucose and protein metabolism

(術中1%ブドウ糖加酢酸リンゲル液の糖ならびにタンパク質代謝に与える影響)

術中のストレスで血糖値は上昇し、高血糖のさまざまな問題のため手術中のブドウ糖投 与の必要性はあまりないと言われている。従来の2.5%、5%、10%ブドウ糖輸液製剤の投与で はいずれも高血糖になるという報告がある。最近の研究では、ICU患者で周術期の血糖値を 150 mg/dl以下に管理すべきであることが示され、血糖値の管理は予後にまで影響を与える ことが知られている。一方で長期の飢餓状態は、肝臓におけるグリコーゲンの蓄積量を減 少させ、血中ケトン体を増加させる原因となる。しかし、麻酔中の低濃度ブドウ糖を含有 した細胞外液補充液の血糖値、血中ケトン体値、血中インスリン濃度に及ぼす影響を検討 した研究はない。そこで本研究は、低濃度(1%)ブドウ糖加酢酸リンゲル液の手術麻酔中 の血糖値、血中ケトン体値、血中インスリン濃度、筋タンパク質分解に及ぼす影響を検討 した。

方 法

対象:耳鼻咽喉科、口腔外科、眼科の予定手術患者を対象とした。低濃度(1%)ブドウ 糖加酢酸リンゲル液投与群(G群:16人)とブドウ糖を含まない酢酸リンゲル液投与群(R 群:15人)の2群にわけ、手術前夜から絶食、手術3時間前から絶飲とした。麻酔導入前か ら、それぞれの輸液製剤を投与した。全身麻酔はプロポフォール 2 mg/kg、フェンタニル 0.02 mg/kg、ベクロニウム 0.1 mg/kgで導入し、セボフルレン、酸素、空気で維持を行っ た。血糖値、血漿インスリン濃度、血漿ケトン体濃度、血漿3-methylhistidine(3-MH)濃度 を測定した。血糖値は麻酔導入時(T0)、導入1時間後(T1)、導入2時間後(T2)、導入3時間後 (T3)、手術終了時(T4)に測定し、血漿インスリン濃度、血漿ケトン体濃度、血漿

3-methylhistidine(3-MH)濃度はT0とT4に測定した。

結 果

患者背景、手術中の循環動態、BIS値(麻酔深度モニター)に有意差は認められなかった。

血糖値はT1、T2、T3、T4においてG群で有意に増加した。G群の血糖値の平均はT1で93.8 ±

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6.4 mg/dl、T4で114 ± 11.6 mg/dl、R群では、T0で94.3 ± 7.9 mg/dl、T4で101.2 ± 11.6 mg/dlであった。血糖の最低値はG群とR群でそれぞれ88 mg/dlと83 mg/dl、最高値は145 mg/dlと126 mg/dlで、両群とも全ての時点で150 mg/dl以下に保たれた。血漿ケトン体濃度 はT4でG群よりもR群で有意に増加した。血漿3-MHの変化量はG群で有意に減少していた。血 漿インスリン濃度は両群間で差が見られなかった。

考 察

これまでの報告によれば、術中における 2.5%、5%、10%ブドウ糖含有輸液製剤投与でし ばしば 180 mg/dl 以上の高血糖となっていたが、今回 1%ブドウ糖加酢酸リンゲル液の投与 で 150 mg/dl 以上の高血糖を呈することはなかった。3-MH は骨格筋が分解されて産生され るアミノ酸の一種で、分解後は再利用されず腎臓から尿中に排泄される。従って、骨格筋 分解の指標として用いることができる。1%のブドウ糖加酢酸リンゲル液の投与で、3-MH の 変化量が減少したことは筋タンパク質の分解が抑制されたことを示す。これらのことから 少量のブドウ糖投与が、安全域内の血糖値でタンパク質異化を減弱させることが示された。

これまではブドウ糖投与による nitrogen sparing effect は、ストレスの減弱した術後の みに認められるという報告であったが、今回の研究結果から、術中からブドウ糖を投与す ることで筋タンパク質分解を抑制することが示唆された。

さらに 1%ブドウ糖加酢酸リンゲル液の投与は、脂肪分解からケトン体の生成を抑制し、

飢餓状態を改善させることが明らかにされた。

血糖値は、手術侵襲の程度に応じて増加することが知られている。今回の研究では、術 中に使用したフェンタニルの量、BIS 値、血行動態には両群間に差は認められなかったの で外科的侵襲は同程度であったと推定される。

結 論

耳鼻咽喉部、頭頚部の小手術における 1% ブドウ糖加酢酸リンゲル液輸液は、血糖値を 安全域値内に維持すると同時に、脂肪とタンパク質分解を抑制した。

参照

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