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渡邊倫子 学位論文審査要旨

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Academic year: 2021

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平成 21年 9月

渡邊倫子 学位論文審査要旨

主 査 渡 邊 達 生 副主査 渡 辺 高 志 同 稲 垣 喜 三

主論文

Clonidine premedication effects on inhaled induction with sevoflurane in adults: a prospective, double-blind, randomized study

(成人のセボフルラン吸入麻酔導入におけるクロニジン前投与の効果:前向き、

二重盲検、無作為試験)

(著者:渡邊倫子、稲垣喜三、石部裕一)

平成18年 Acta Anaesthesiologica Scandinavica 50巻 180頁~187頁

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学 位 論 文 要 旨

Clonidine premedication effects on inhaled induction with sevoflurane in adults:

a prospective, double-blind, randomized study

(成人のセボフルラン吸入麻酔導入におけるクロニジン前投与の効果:前向き、二重盲検、

無作為試験)

背 景

笑気は鎮静鎮痛効果を持ち、揮発性吸入麻酔薬と併用して使用されることが多いが、手 術室汚染、環境汚染(オゾン層破壊)の問題が指摘されている。そこで著者らは、笑気の 代用になりうる薬として、鎮静・鎮痛効果を持つクロニジンの麻酔前投与を考えた。本研 究の目的は、セボフルラン吸入による急速麻酔導入においてクロニジンを前投与すること により、笑気併用時と同等の効果が得られるのかを評価することである。また、気管挿管 によるストレス反応の抑制効果も評価することである。

方 法

対象は女性手術症例84例で、麻酔前投薬の有無、麻酔導入時の笑気併用の有無により、

以下の4群を設定した。

Group I:前投薬はプラセボを投与、40%酸素+5%セボフルラン吸入で麻酔導入。

Group II:前投薬はプラセボを投与、40%酸素+60%笑気+5%セボフルラン吸入で麻酔導入。

Group III:前投薬はクロニジン150 μgを投与、40%酸素+5%セボフルラン吸入で麻酔導入。

Group IV:前投薬はクロニジン300 μgを投与、40%酸素+5%セボフルラン吸入で麻酔導入。

前投薬は、麻酔導入の90分前に経口投与された。麻酔導入前に、麻酔回路をテストラン グに装着し、各グループの導入麻酔薬濃度になるまで機械換気し、回路内を導入薬で満た しておいた。麻酔導入は、麻酔回路にフェイスマスクをつけ、患者に努力呼出させた直後 にフェイスマスクを当て、3回深呼吸をさせて行った。その後は自然に呼吸させ、麻酔吸入 開始から睫毛反射がなくなるまでの時間を測定し、これを導入時間とした。意識消失を確 認後、筋弛緩剤を投与し、終末呼気炭酸ガス濃度が35-40 mmHgになるように手動換気した。

筋弛緩剤投与の4分後に、定められた2名の麻酔科医により気管挿管を行った。麻酔導入中、

血圧・脈拍は非観血的に1分毎に測定し、収縮期血圧が90 mmHg未満でエフェドリンを5 mg 静 注し、90 mmHg以上になるまで2分毎に投与した。術中は、酸素と空気でFiO2=0.4とし、セ

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ボフルラン1.0-2.5%の吸入で鎮静し、1.5%キシロカインの持続硬膜外注入で鎮痛した。手 術終了時にセボフルラン投与を中止し、100%酸素フラッシュを3回行って麻酔回路内を洗浄 し、100%酸素10 L/minを投与した。20秒おきに呼名し、セボフルラン投与中止から呼名開 眼までの時間を覚醒時間とした。

ストレス反応の強さについては、末梢血中のエピネフリンとノルエピネフリン濃度から評 価した。採血は各群12名ずつ行い、術前日の安静時採血で測定した値を基準値とし、麻酔 導入直前と気管挿管直後に採血して血中濃度を測定した。

結 果

84例中3例の患者が本研究から脱落した。各群の患者背景は、年齢、身長、基準の平均動 脈圧と脈拍数には4群間で差がなかったが、体重はGroup IIで他の3群より有意に小さかっ た。麻酔導入時間はGroup Iが他の3群より有意に長かった。覚醒時間は、Group IVが有意 に長かった。麻酔導入中のエフェドリン使用量はGroup IVで他の3群より有意に多くなった。

気管挿管後の平均動脈圧や脈拍数の上昇は、Group IIIとIVでGroup Iに比べ有意に抑制さ れたが、Group IIと Iとの間には差がなかった。

血中カテコラミン値は、術前日では各群間に差はなかった。麻酔導入直前では、Group III とIVで血中ノルエピネフリン値がGroup I、IIより有意に低かった。気管挿管後の血中ノル エピネフリン値は、Group IIが他の3群より有意に高くなった。血中エピネフリン値は、麻 酔導入直前ではGroup IIIとIVでGroup I、IIに比べ有意に低かった。気管挿管後の血中エ ピネフリン値は、各群間で差はなかった。

考 察

本研究は、クロニジン前投与により麻酔導入時間は笑気併用時と同等に短縮できること を初めて示した。またクロニジン前投与により、笑気併用時よりも気管挿管によるストレ ス反応も抑制された。クロニジン300 μg前投与群では導入中のエフェドリン必要量が多く なること、覚醒時間が延長することから、クロニジン150 μg前投与がより有用と思われた。

またコスト面でも、クロニジン75 μg錠は1錠6.4円、150 μg錠で11.1円なのに対し、Group IIで麻酔導入中のみ使用した笑気(20.0±3.3 L)のコストは220円と高価なので、笑気併用 よりも低コストとなる。さらに麻酔維持にも笑気を使用する場合には、コストの差はより 大きくなる。

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4 結 論

セボフルレン吸入による急速麻酔導入法において、クロニジン150 μg前投与は麻酔導入 時の笑気の代用となり得ると同時に、手術患者の安全性向上、環境汚染の減少、医療コス ト削減の面で、笑気よりも有用である。

参照

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