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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 山 田 紫 陽 子

学 位 論 文 題 名

実験的外傷性咬合が若年ラットおよび 老齢ラットの顎関節と歯周組織に及ぼす変化

学位論文内容の要旨

  【目的 】近年,高齢化社会をむかえ,老齢人口の増加とともに高齢者の疾患が多様化している.顎関 節症は現 代における歯科領域の代表的疾患のーつに数えられるほど一般化しているが,特に若年者にそ の増加傾 向がみられることから,研究対象は主として若年者にむけられ,高齢者に関しての報告は若年 者の報告 と比較して少数である.高齢者の欠損歯数は減少しており,20本以上の残存歯を有する者の割 合も増加 している,また,一般的に咬合の異常が咀嚼などの機能の異常を生じ,下顎頭や咀嚼筋の異常 運動を惹 起し,下顎頭や咀嚼筋の病的変化を生じると推測されており,高齢者においても欠損歯数の減 少に従い ,若年者同様に補綴物による早期接触,ブラキシズムや側方圧などによる外傷性の咬合が生ず る可能性 が増大するものと思われる.そのため,高齢者においても咬合状態と顎関節症の関係を検討す ることは 非常に重要と思われるが,欠損歯数の少ない高齢者における顎関節の状態を報告したものはほ とんどみ られず,不明な点が多い.

  動物実 験においても,外傷性咬合が老齢ラットの顎関節および歯周組織にどのような影響を与えるの かについ ての報告はみられない,本研究は、外傷性の咬合が高齢者の顎関節や歯周組織に与える影響を 解明する ことを目的に,若年ラットおよび老齢ラットを用いて顎関節と歯周組織が実験的外傷により生 じる変化 について検討した.

  【方法 】7週齢(若年ラット群)及 び1年6ケ月齢(老齢ラット群)の雄性Wistar系ラットを用い,

各 ラッ トの 上顎 右 側M1に2mmの 高さ のレ ジンで作成したプレートを接着させ,外傷性 咬合を付与し た ,処 置群 は3,7,14,21,28日後 ,対 照群 は1時 間後 (便 宜的 に0日とした)と3,7,14,21, 28日後に 各3匹ずっエーテルの吸入に より安楽死させた.安楽死後,頭部を摘出し,10%中性ホルマ リンにて 浸漬固定後,10%EDTA溶液で脱灰し,通法に従しゝバラフィン包埋を行った.下顎頭は厚さ6 ルmの正中前頭断連続切片を作製し, 顎関節の形態的観察を行った,上顎両側第1臼歯の口蓋根を含む ように厚 さ6umの前頭断連続切片を作 製し,歯周組織におよぽす外傷の影響について検索した.顎関 節 で はHE染 色 , ト ル イ ジ ン ブ ル ー 染 色 ,BrdU染 色 , 歯 周 組 織 で はHE染 色 ,TRAP染色 ,BrdU染 色 を 行 い , 顎 関 節 と 歯 周 組織 に生 じた 変 化を 組織 学的 なら びに 組織 計量 学的 に比 較検 討し た.

【結果と 考察】上顎第1臼歯に外傷性 咬合を付与した場合,若年ラットでは7日後で下顎頭の軟骨層上 層に萎縮 性の変化が生じ,14日後には対照群と比較して軟骨層の上層および下層の肥厚がみられ,その     ―722−

(2)

後、21日後から28日後にかけては対照群と同様の組織像を示した.

  老齢ラッ卜処置群では,若年ラットと比較すると軽度だが,14日後で軟骨層上層の厚さの菲薄化がみ られ,萎縮性の変化が生じていた. 21日後,28日後では対照群とほぼ同程度に肥厚していた.若年ラ ット処置群,老齢ラット処置群ともに外傷性咬合の付与により顎関節の変位がおき,下顎頭に加わる機 械的刺激が減弱し,軟骨層の萎縮性の変化がおこることが明らかになった.その後,下顎頭の機能的構 造を維持するために萎縮性変化の代償として,軟骨層の細胞増殖活性が高まり,軟骨層が肥厚し,下顎 頭が咬合挙上の状態に対し適応することを示唆しているものと思われた.しかし,老齢ラットでは処置 後 に下顎頭 でみら れるBrdU陽性細胞数が少なく,外傷性咬合による顎関節の組織学的変化の程度は少 なかった.老齢ラット無処置群の下顎頭の軟骨層の上層の厚みは,若年ラットと比較して薄くなってお り,下顎頭全体の細胞数も減少し,下顎頭の骨髄腔は著明に減少し,骨化が進行していた,このことか ら,老齢ラットでは下顎頭の細胞の活性の低下により,下顎の変位に対して下顎頭での適応能が若年ラ ットに比較して低下していることが示唆された.

  歯 周組織 では,若 年ラット処置群,老齢ラット処置群ともに3日後,7日後で根分岐部の歯根膜腔が 狭窄し,歯根膜線維の走行の乱れが観察された,処置後14日目には,歯周組織の修復傾向が認められ,

21日目以降,両群とも対照群と同様の組織像を呈し,障害の回復が認められた,根分岐部におけるTRAP 陽 性細胞は ,若年 ラット処置群では3日後,7日後,14日後で対照群と比較して大幅に増加していた,

老 齢ラット 処置群 では3日後,7日後 で増加し ていた .根分岐 部にお けるBrdU陽性細胞は,若年ラッ ト では3日後,7日後 で対照群 と比較 して増加 し、老齢ラットでも若年ラットと同様に,7日後で対照 群と比較して増加していた,根分岐部で歯根膜の狭窄,歯根膜線維の断裂や走行の乱れがみられた時期 は ,TRAP陽 性細 胞 お よびBrdU陽性細胞 の数も 増加して いた.処 置後21日 後以降、 歯周組 織の修復 が みられる ととも に,若年 ラット ,老齢ラ ットと もTRAP陽性細 胞の数 ,BrdU陽性細胞の数は対照群 と同程度になった.以上の結果より,実験的に外傷性咬合を与えた場合,老齢ラットでは,歯周組織の 状態が加齢によって若年ラットと異なるものの,若年ラット,老齢ラットともに比較的初期に外傷によ る組織変化がみられ,その後修復することが明らかになった.

  今回の検索結果より,老齢ラットでは外傷性の咬合に対して歯周組織の適応がおきているのに対して,

咬合挙上による顎関節の偏位に対しては若年ラットと比較して適応が低いことが明らかになった.これ は ,歯周組 織に比 べて下顎頭では加齢による細胞数の減少が著明であり、BrdU陽性細胞も少ないこと から、細胞活性の低下が生じているためであると考えられた.

【結論】老齢ラットに実験的に外傷性咬合を与えた場合,歯周組織においては適応がみられたが,下顎 頭では若年ラットと比較して適応が低下していることが明らかになった.高齢者においては咬合の変化 に対する下顎頭の適応能が低下しているため,顎関節の機能の維持のために,適切な咬合高径の維持が 重要であると考えられた.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

信 稔 光

   実 験 的 外 傷 性 咬 合 が 若 年 ラ ッ トお よ び 老齢ラットの顎関節と歯周組織に及ぼす変化

  審 査は、審査 員全員が 出席の下 に、申請 者に対し て提出論 文とそれに関連した学科目に っ いて口頭試 問により 行われた 。

最初 に、申請者により学位論文に関する以下の説明がなされた。

  近年, 高齢化社会 をむかえ 高齢者の 疾患が多 様化して いる.高 齢者においても欠損歯数 の減少 に従い,咬 合状態と 顎関節症 の関係を 検討する ことは非 常に重要と 思われるが,欠 損歯数 の少ない高 齢者にお ける顎関 節の状態 を報告し たものは ほとんどみ られず,不明な 点が多 い.申請者 は、外傷 性の咬合 が高齢者 の顎関節 や歯周組 織に与える 影響を解明する ことを 目的に,若 年ラット および老 齢ラット を用いて 顎関節と 歯周組織が 実験的外傷によ り生じ る変化にっ いて検討 した.

  若年 ラ ット 顎 関 節は処 置7日後に 軟骨層で萎 縮性の変 化が,14日 後以降は 軟骨層の 肥厚 がみ られ,21日 以降無処置 群とほば 同様の組 織像を示 しており ,下顎頭 の偏位に対して適 応 が みら れ た. 老 齢ラ ット顎関 節では7日後 から14日後 にかけて 軟骨層の 上層でや や萎縮 性の 変化がみ られたが, その程度 は若年ラ ットに比 べ著しく 少なかっ た.若年ラット歯周 組 織 では 、 処置 後3日目 に歯根膜 線維の走行 の乱れや 不規則な 配列がみ られ、根 分岐部の 歯 槽 骨は 多 数のTRAP陽性細 胞により 吸収されて いた.処 置後7日目 には、歯 根膜組織 中に 多 数 のBrdU陽 性 細胞 が 認 めら れ 、14日 目以 降 、歯 根膜線維 は機能的 に配列し ,外傷性 咬 合に 対する適 応がみられ た,老齢 ラットの 歯周組織 でも若年 ラットと 同様に、外傷初期に 歯 根 膜線 維 の配 列 の乱 れや破骨 細胞の増加 がみられ 、7日目に は根分岐 部に多数 のBrdU陽

正  

  雅

藤 田

進 脇

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

性 細胞が みら れた 。21 日後 以降 、歯周組織の修復がみられ,若年ラットとほぼ同様に組織 適応がみられた,一方,老齢ラ、ットの下顎頭での変化は若年ラットにくらべ減弱していた。

こ れは、 下顎 頭で は加 齢に より 歯周組織に比べて骨化が進行し軟骨層が薄く細胞活性が低 下していることによって,外傷性の咬合に対して適応が減弱していた可能性が示唆された.

    

上記 の結 果よ り、 老齢ラットに実験的に外傷性咬合を与えた場合,歯周組織において は適 応が みら れた が, 下顎頭では若年ラットと比較して適応が低下していることが明らか にな った ,そ のた め, 高齢者においては咬合の変化に対する下顎頭の適応能が低下してい るため,顎関節の機能の維持のために,適切な咬合高径の維持が重要であると考えられた.

  

引 き 続 き 、 審 査 担 当 者 か ら の 質 問 が 行 わ れ た 。 主 な 質 問 項 目 は 、

1

.標本を作る時の歯周組織と下顎頭の面の基準について

2

.片側に外傷性の咬合を与えた場合の、反対側の下顎頭および歯周組織の変化について

3

.外傷性の咬合を与えたことによる体重の変化について

4

.臼歯部の咬合を挙上することによる、顎運動の変化にっいて

5

.切歯の状態について

6

.高齢者の顎関節症の疫学的、臨床的な考え方にっいて

等で あり 、い ずれ の質 問に 対しても、申請者から明確な回答を得られ、さらに関連分野に

対す る幅 広い 知識 を有 して いることが示された。申請者から、今後の展望も示され、学位

授与 に値 する もの と考 えら れた。

参照

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