は じ め に
多発性骨髄腫に対する治療は,サリド マ イ ド,レナリドミド,ボルテゾミブの登場により 治療成績の改善を認めた
1)。しかし,これら新 規薬剤抵抗性多発性骨髄腫に対する治療につい て一定の見解はなく,他の造血器腫瘍に比べる と 再 発 率が 高い 同 種 移 植も 治 療 選 択 肢と な る
2)。今回自家末梢血幹細胞移植後に再発し,
かつ化学療法抵抗性の多発性骨髄腫に対して,
骨髄移植を施行しその後レナリド ミド,ポマリ ドマイドを使用した1例を経験したため報告す る。
Ⅰ 症 例
患 者:48歳,男性。
主 訴:背部痛
既往歴・家族歴:特記事項なし。
現病歴:2009年 11月に多発性骨髄腫(I gGκ, I SS-Ⅱ)と 診 断,2011年,メ ル フ ァ ラ ン 200mg/ ㎡ の前処置で自家末梢血幹細胞移植を 施行し部分寛解(par t i alr esponse,PR)獲得後,
レナリド ミド単独療法(10mg/ day)施行し PR を維持していた。2014年4月左背部痛あり受 診され,再発疑いにて即日入院となった。
入院時現症:身長 145㎝,体重 43kg。
眼瞼,眼球結膜,頚部,胸部に異常を認めな い。
腹部は平坦,軟で圧痛なし。背部皮膚所見な し,圧痛あり。肝脾腫大なし,表在リンパ節を 触知しない。神経,皮膚に異常所見を認めない。
入院時検査所見:末梢血では軽度の貧血,血清 学検査にて I gGの軽度高値と I gA,I gM の抑制 を認めた(表1) 。骨髄では形質細胞が 41. 4%
下 山 紗央莉
*1酒 井 俊 郎
*1小 沼 祐 一
*1幸 田 久 平
*1舘 越 鮎 美
*2菊 池 智 樹
*3小 幡 雅 彦
*3非血縁者間骨髄移植を施行した難治,再発多発性骨髄腫に対して レナリド ミド,ポマリドミドを使用した1例
KeyWor ds :mul t i pl emyel oma,al l ogeni chemat opoi et i cst em cel l t r anspl ant at i on,l enal i domi de,pomal i domi de
旭赤医誌 28;35~ 39,2014
症例4
*1
旭川赤十字病院 血液・腫瘍内科
*2札幌医科大学附属病院 腫瘍血液内科
*3
旭川赤十字病院 病理診断科
ACASEOFTREATMENTWI TH LENALI DOMI DEAND POMALI DOMI DEAFTER UNRELATED BONEMARROW TRANSPLATAI ONFORRELAPSED/ REFRACTORYMULTI PLEMYELOMA
Saor iSI MOYAMA
*1,Toshi r oSAKAI
*1,Yui chiKONUMA
*1,KyuheiKOHDA
*1, AyumiTATEKOSHI
*2,TomokiKI KUCHI
*3,Masahi koOBATA
*3*1
Depar t mentofHemat ol ogyandOncol ogy,I nt er nalMedi ci ne,Asahi kawaRedCr ossHospi t al
*2
Depar t mentofMedi calOncol ogyandHemat ol ogy,I nt er nalMedi ci ne,Sappor oMedi calUni ver ci t y
*3
Depar t mentofpat hol ogy,Asahi kawaRedCr ossHospi t al
と増加を認め,染色体は 54XYの複雑核型で あった (表2) 。CTで全身骨に散在性に骨硬化 と,左鎖骨頭・右第8傍胸椎には骨破壊をとも なう腫瘤を認め骨髄腫と考えられた(図1) 。 臨床経過(図2,3) :2014年4月に多発性骨髄 腫の再燃と診断した。自家末梢血幹細胞移植前 に唯一治療効果のあったレナリド ミドにデキサ メサゾン 40mgを併用した RD療法を施行し た。I gGの速やかな低下を認めたが,骨髄中の 形質細胞は 20%を下回らなかった。多発性骨 髄腫の進行のため免疫グロブリンの分泌能が低
下していると考え,病勢は骨髄穿刺での形質細 胞割合で評価した。その後骨髄の形質細胞割合 の減少はなく,再発以前よりサリドマイド,ボ ルテゾミブ,レナリドミドを含む多剤併用化学 療法に対して抵抗性であることから,同種造血 幹細胞移植の適応と判断したが同胞はおらず血 縁ドナー候補はなかったため骨髄バンクへ登録 した。移植前の治療として,クラリスロマイシ ン,レナリド ミド,デキサメサゾンを併用する Bi RD療法,レナリド ミド,ボルテゾミブ,デキ サメサゾン併用の VRD療法を施行したが,PR
表1 入院時血液検査所見表2 骨髄穿刺像
以上の改善は得られなかった。2014年9月に フルダラビン(30mg/ ㎡,Day- 7~- 2),ブスル ファン(3. 2mg/ kg,Day- 3~- 2),Tot al - body i r r adi at i on(TBI )4Gy/ 2Fr (Day- 2)を 前 処 置として非血縁者間骨髄移植を行った。骨髄は
HLA型完全一致,性別一致,血液型一致であっ た。移 植 片 対 宿 主 病(gr af t - ver sus- hostdi s- ease,GVHD)予防はタクロリムス単独で行い,
感染予防はレボフロキサシン,イトラコナゾー ル,ST合剤,バラシクロビルで行った。
図3 臨床経過② 図2 臨床経過①
図1 入院時 CT検査(2014/4/7)
移植後 Day14より急性 GVHD(皮膚 st age 3Gr adeⅡ)が出現したためプレドニゾロンの 内服を開始し,改善を認めた。しかし骨髄中の 形質細胞が増加したためプレドニゾロン漸減し たところ,慢性 GVHD(消化管 st age2Gr ade
Ⅱ , 皮膚 st age3Gr adeⅡ)が出現しプレドニゾ ロンを再開,経過中プレドニゾロンやタクロリ ムスの増減を繰り返した。Day184に病状が安 定したため,維持療法としてレナリド ミド内服 開始したところ,Day187より皮膚 GVHDの急 激な増悪を認めた。レナリド ミドの内服を中止 したところ速やかに改善した。その後タクロリ ムスを漸減中止し慎重に経過観察していたが,
Day350に骨髄中の形質細胞が 19%と増加し たため再燃と判断した。多剤化学療法に抵抗性 でありレナリドミドも同種移植後不耐容であっ たことから,ポマリドミド(4 mg/ day)+デ キサメサゾン 40㎎ の内服を開始した。開始後 Gr ade4の血小板減少,好中球減少,貧血を認 めた。2コース目からはポマリド ミド(3 mg)
の 14日間投与に減量し加療を継続している。
Ⅱ 考 察
多発性骨髄腫における同種造血幹細胞移植 は,治療関連死と再発率が高く他の造血器腫瘍 に比べ積極的には施行されない。しかし,本症 例のような若年症例で多剤併用化学療法抵抗性 かつ自家末梢血幹細胞移植後再発例においては 考慮されるべき治療選択肢である。難治再発例 の多発性骨髄腫に対する治療効果を移植群と非 移植群で検討した報告によると,治療関連死亡 の影響で Over al lsur vi val (OS)では差がつか な か った も の の,Pr ogr essi onf r eesur vi val
(PFS)では移植群で有意に良好であった
3)。 また,レナリド ミドはサリドマイドやポマリ ド マ イドとともに免疫機能調整薬(i mmuno- modul at or ydr ugs,I Mi Ds)に分類される。直 接的な抗腫瘍効果に加え NK細胞の活性化を誘 導することによる免疫調整作用による効果があ るため,同種移植後の維持療法にも有効ではな
いかとされ
4),同種移植の奏功を高める試みと してレナリドミド単独維持療法の報告がなされ て い る。Knepperら が 報 告 し た HOVON76 st udy で は 同 種 移 植 後 の レ ナ リ ド ミ ド 10mg/ dayの内服は 26/ 30例が内服中止して おり不耐容であるとされた
5)。中止した理由は 13/ 26例(50%)が GVHDによるものだった。
同種移植後一方で,Kr ogerらは同種移植後の 多発性骨髄腫に 24例にレナリドミド投与(投与 開始中央値 168日,投与量中央値5 mg)を行 い,PR以上の奏功が 83%で得られた。24例の うち7例で GVHDを発症しこのうち GVHDに よる中止例は3例のみであった
6)。この報告で は最少量の5 mgからレナリドミドの内服を開 始し徐々に増量することで最大 25mgの内服量 の増量が可能であった。同種移植後のレナリド ミドの内服による GVHDの発症については,
開始時期と開始量を工夫することで投与可能で あることが示唆される。本症例も既報
7)と同様 にレナリド ミド内服直後から GVHDの増悪を きたし,レナリドミドの投与終了により速やか に皮膚状態の改善を認め,レナリド ミドによる GVHDの増悪と考えられた。
本症例ではその後レナリド ミドを使用せず厳
重な経過観察をしていたが Day350に増悪を認
めたためポマリド ミドを使用している。同種移
植後のポマリド ミド使用報告は調べうる限り肝
障害を呈した1例のみの報告である
8)。その報
告では,肝生検を施行し病理学的検討を行って
おり,胆管周囲に反応性リンパ球を認めたが炎
症性変化や壊死所見はなく,肝動脈や門脈周囲
の変化は明らかではなかった。このため肝障害
の原因として GVHDや VOD/ SOSの可能性は
低く薬剤性肝障害と考えられた。本症例では経
過中 Gr ade4の好中球減少 ,血小板減少,貧血
などの有害事象を認め内服の中断やポマリドミ
ドの減量を行ったが,レナリドミド使用時のよ
うな GVHDの増悪なく経過し 2015年 12月現
在,病状の改善を得ている。本症例において
は,同 種 移 植 後レ ナ リド ミド 投 与 に よ って
GVHDを発症した症例においても,ポマリドミ ドを安全に使用できた。移植後1年ほどの時間 経過によって GVHDを発症しなかった可能性 はあるが,現在のところ同種移植後早期にポマ リド ミドを使用した報告はなく,同種移植後の 化学療法の可能性としてポマリド ミドの投与例 についてさらに安全性,有効性の検討を行う必 要があると考える。
Ⅲ お わ り に
自家末梢血幹細胞移植後増悪の難治性多発性 骨髄腫に対して同種移植を施行し,その後レナ リド ミド,ポマリド ミドの投与を行った一例を 経験した。多発性骨髄腫に対する同種移植は症 例数が少ないものの再発が多いため,同種移植 後も維持療法は必要と考えられる。また,近年 本邦でも新規薬剤の販売が開始されており,こ れらの同種移植後使用についても症例の集積が 必要と考えられる。
文 献
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