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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 佐 藤 幸 作

学 位 論 文 題 名

至適 シ ャ ン ト 血 流 量 下 門脈 部分 動脈 化術 の有用 性に 関す る実験 的検 討 4 週間観察結果一

学位論文内容の要旨

I. 目 的

  近年、肝 動脈血流途絶による急性肝 不全に対応する手段として動 脈血流の一部を門脈内に還 流させる方 法が注目さ れ、実験的にその肝血行動 態、肝酸素需給動態が明かに されつつあり、急性期の肝 不全を回避 する手段と しては有効であることが証 明されつっある.しかし、臨 床例においても指摘されて いるように 門脈動脈化 術後の時間経過とともに門 脈圧亢進症など肝門脈血行動 態異常を来たすことも判明 し、長期経 過後の病態 を解明することが急務とな っている.これまで行なわれ てきた短期観察実験の結果 から門脈内 に流入させ るべき動脈血流量の至適域 が推測されているが、本研究 では、この至適域内の動脈 血流を門脈 内に流入さ せるモデルを用いて門脈部 分動脈化術後の肝血行動態、 肝酸素需給動態に関する経 日的変化を 観 察 し 本 法 が 長 期 経 過 後 に も 有 用 な 肝 不 全 対 策 と な り 得 る か 否 か を 中 心 に 検 討 し た .

I【.対象及び方法

  1. 実 験動 物及 び実 験群 の 作成 :ビ ーグ ル 犬18頭を 使用 した . 門脈 部分 動脈 化を 行 った 実験 群は 無 作 為 に 観 察 期 間 別 に3群 に 分 け 、1)2日 観 察 群 (I群 、N‑6) 、2)1週 間 観 察 群 ( 【I群 、N‑6) 、 3)4週間観 察群(H【群、N=6)とした .

  2.手 術方 法 :肝 への 動脈 性血 行 を全 て遮 断す るた め に胃 十二 指腸 動 脈、 右胃 動脈 、固有肝動 脈、肝十 二 指腸 靭帯 の 結合 織、 小網 を全 て 結紮切 離したうえで、肝動脈中枢側 切離端と門脈本幹を8 ‑OPolyplop ‑ yreneで一 点支持連続縫合による端側吻 合にて動脈門脈シヤントを 作成した.

  3. 測定 項目 および測定方法:各群とも 肝動脈遮断前と犠牲死時に門 脈ー動脈吻合部の開存を確 認の上、

門脈血流量 及ぴ.肝動脈血流量、門脈 圧及び肝静脈圧、肝組織血流 変化畳、肝動脈、門脈、肝 静脈の血色素 濃 度、 酸素 飽 和度 を測 定し 、総 肝 血流量 、門脈血管抵抗、肝組織血流 畳変化率、肝酸素供給量、 肝酸素消 費畳、肝酸 素消費率を算出した.

  4.生化学 検査:GOT,GPT,末梢血胆 汁酸濃度,AKBR,m・GOTを測 定した.

  5.組 織学 的 検討 :犠 牲死 後摘 出 した 、肝 臓、 門脈 お よぴ 胆管をHematoxylin ‑ Eosin染色法、Azan染色 法にて鏡検 した.

Hf. 結 果

  1.総肝血流量:総肝血 流量は、肝動脈ー門脈吻合 後に、各群とも有意に上昇し 術前値のr群118%,  II 群126%,【I【群134%と なった.犠牲死時に動脈ー門脈吻合部は全例開存していることが確認され、総肝血 流 量 は 各 々 術 前 値 の121%,119%,126%で 肝 動 脈 ー 門 脈 吻 合 後 と 有 意 差 を 認 め な か っ た .

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  2.肝血行動態:門脈血流量各群とも有意に上昇した.肝組織血流量比は各群とも術前の90〜110%を 維 持 し た . 門 脈 圧 、 門 脈 血 管 抵 抗 は 各 群 と も 術 前 値 と 有 意 差 を 認 め な か っ た .   3.肝酸素需給動態:肝酸素供給畳、肝酸素消費畳、肝酸素消費率は、各群とも術前値と有意差を認め なかった.

  4.生化学検査値:GOT、GPT、総胆汁酸は【群で有意な上昇を認めたが、【I群II工群では術前値と有意 差 を 認 め な か っ た . AKBR、 mGOTは 各 群 と も 術 前 値 と 有 意 差 を 認 め な か っ た .   5.組 織 学 的所 見 : 各群 の 肝 組 織、 門 脈 、胆 管 に は虚 血 性 変化 に 伴 う所 見 を認 めなか った.

IV. 考察

  本研究における肝動脈血行遮断後の門脈血流量は、各群で術前値の160Yo以上を維持し、総肝血流量は 術前比で早期群119〜121%、4週後12 6%であり、動脈門脈吻合により肝動脈性血行の欠如が補われ、術 後4週にわたり維持されたことが確認された.また、レーザードップラー血流計による肝表面領域の血流 量の測定では、門脈動脈化術後は各群とも術前比で9090以上の値を認め、比較的肝動脈血流に依存される 肝表面領域においても門脈動脈化術により血流が術後4週にわたり維持されたと考えられた.また、肝酸 素需給動態は、各群とも酸素供給畳は維持され、肝酸素消費畳の有意な上昇を認めなかった.肝酸素供給 量に対する肝酸素消費量の割合を示す肝酸素消費率では、各群において術前値と有意差を認めなかった.

これらの結果から、動脈血行が途絶した肝臓に対し、門脈部分動脈化により術後4週をへても、良好な肝 酸素代謝が営まれたことが確認された.このように、本研究で用いた門脈部分動脈化モデルにおいては術 後4週にわたり肝血行動態、肝酸素需給動態は良好に保たれた.したがって、門脈部分動脈化術におぃて 総肝血流量が術前値の120%程度になるよう動脈門脈吻合を行うことで至適域内シヤント血流量が得られ ると考えられた.

  門脈動脈化術後は高圧系の動脈血を低圧系の門脈に流入することから、門脈圧の上昇による合併症の併 発を考慮する必要がある.本研究においては各群とも有意な門脈圧の上昇を認めなかった.したがって、

至適域内シャント血流量による門脈部分動脈化術においては門脈圧は術後4週をへても有意な上昇を示さ ないことが確認された・

  生化学検査では、GOT、GPT、総胆汁酸は術後早期には上昇を認めたが、4週後においては術前値と比 較して有意な上昇は認めなかった.また、門脈動脈化術における肝ミトコンドリア機能の障害を評価する ために、動脈血中ケトン体比とmGOTを測定したが、各群とも、ケトン体比の低下は認めず、mGOTは各 群において有意な上昇を認めなかった.したがって、至適域内シヤント流量下の門脈部分動脈化術におい ては術後4週をへてもミトコンドリア機能障害は認められず、経門脈的に供給された酸素をミトコンドリ アが有効に利用し得ることが示唆された.

  組織学的観察においては、肝小葉構造中に動脈虚血性変化を認めず、また門脈、胆管におぃても虚血性 変化を認めなかった.したがって、至適域内シャント血流量における門脈部分動脈化術では術後4週をへ ても肝、門脈、胆管に組織学的変化が生じないと考えられた.

V. 結 語

  至適域内の動脈血流を門脈内に流入させるモデルを用いて門脈部分動脈化術後の肝血行動態、肝酸素需 給動態に関する経日的変化を検討した.実験結果から、動脈血行が遮断された肝臓に対し至適域内シャン ト血流量を維持した門脈部分動脈化術を行うことにより、少なくとも術後4週間にわたり、総肝血流量、

肝酸素供給畳、肝酸素代謝が良好に維持され、門脈圧の上昇などの肝血行動態異常を呈しないことが確認 された.このことから、本法は肝動脈再建不能時における新たな血行再建法として臨床応用が可能である ことが示唆された.

一 ・133

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

至 適 シ ャ ン ト 血 流 量 下 門 脈 部 分 動 脈 化 術 の 有 用 性 に 関 す る 実 験 的 検 討

     一 4 週 間 観 察 結 果 一

   近年、 肝動脈血 流途絶に よる急性 肝不全に 対応する手段として門脈部分動脈化術の有用 性が注 目され、 その有効 性が明か にされつ っある.しかしながら、術後の時間経過ととも に門脈 圧亢進症 を伴う肝 門脈血行 動態異常 を来たすことも判明し、長期経過後の病態を解 明する ことが急 務となっ ている. 本研究で は、これまでに行われた門脈部分動脈化術後の 1 週間ま での観察 結果で得 られた至 適シャン ト血流量 となるモデ ルを用い て門脈部分動脈 化術後 の肝血行 動態、肝 酸素需給 動態に関 する経日 的変化を観 察し、本 法が術後 4 週間経 過後に も有用な 肝不全対 策となり 得るか否 かを検討 した.

   実 験 動 物は 体 重 7 ―12 kg のピ ー グ ル犬 18 頭 を 使 用し た . 門脈 部 分動 脈 化術を 行った 実 験 群 は 観 察 期 間 別 に 3 群 に 分 け 、 2 日 観 察 群 ( I 群 、 N=6 ) 、 1 週 間 観 察 群 ( II 群 、 N = 6 ) 、 4 週 間 観 察 群( III 群、 N=6 ) 、と し た .実 験 犬は 、 全 身麻 酔 下に 肝 へ の動 脈 性血行 を全て遮 断するた めに胃十 二指腸動 脈、右胃動脈、固有肝動脈、肝十二指腸靭帯の 結合織 、小網を 全て結紮 切離した うえで、 肝動脈中 枢側切離端 と門脈本 幹を8 −0 Polyp‑

lopyrene で 端側 吻合に て動脈ー 門脈シャン トを作成 した.各 群とも肝 動脈遮断 前と犠牲 死時に 動脈ー門 脈吻合の 開存を確 認の上、 門脈血流量及び肝動脈血流量、門脈圧及び肝静 脈圧、 肝組織血 流量、肝 動脈、門 脈、肝静 脈の血色素濃度、酸素飽和度を測定し、総肝血 流量、 門脈血管 抵抗、肝 組織血流 量変化率 、肝酸素供給量、肝酸素消費量、肝酸素消費率 を 算 出 し た . 生 化 学 検 査 は GOT 、 GPT 、 末 梢 血 胆 汁 酸 濃 度、 AKBR 、 mGOT を測 定 し た.

犠牲死 時摘出し た肝臓を H.E .染色法 にて検鏡 した.

   肝 血 行 動態 は 、 総肝 血 流量 は 各 群各 々 術前 値の121 % 、 119 %、126 % となった .門脈 血流量 は各群と も有意に 増加した .肝組織 血流量変 化率は各群 とも 90 〜110 %であった.

門脈圧 、門脈血 管抵抗は 各群とも 術前値と 有意差を認めなかった.肝酸素需給動態は、肝 酸素供 給量、肝 酸素消費 量、肝酸 素消費率 は各群とも術前値と有意差を認めなかった.生 化 学検 査 は GOT 、 GPT 、末 梢 血 胆汁 酸 濃 度は I 群 で 有意 に 増 加し た が、 II 群、III 群 では 術 前 値 と 有 意 差 を 認 め な か っ た . AKBR 、 mGOT は 各 群 とも 術 前 値と 有 意差 を 認 めな か

   

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っ た , 肝 組 織 は 光 顕 レ ベ ル の 観 察 で は 正 常 肝 と 差 を 認 め な か っ た .    以 上の結果より動脈血行遮断肝に対し至適シャント血流量下門脈部分動脈化術を行うこ とに より 、少 なく とも 術後4 週間 にわたり、肝血行動態、肝酸素需給動態が良好に維持さ れる ことが確認された.このことから、肝門部胆管癌に対する拡大肝切除に際しての予定 術式 として、あるいは、不測の状況下で肝動脈末梢枝の再建が不可能な症例に門脈部分動 脈術 を試みることにより、本法が急性期の肝不全を回避する手段として、有用であること が示唆された.

   口 頭発表において藤堂省教授より、本法施行後予想される門脈圧亢進症の発生時期、観 察期 間を 4 週間 とし た意 味、 門脈 血流が増加するにもかかわらず門脈圧が変化しないこと に関 する機序について、臨床応用に際し必要な追加実験について、また浅香正博教授より 臨床 応用の際の門脈圧亢進症の発生、肝内動脈門脈シャントと門脈圧亢進症の因果関係、

発表 の際提示した以外の生化学検査データーについて、加藤紘之教授より今後の実験展望 に つ い て 、 質 問 が あ っ た が ャ 申 請 者 は お お む ね 妥 当 な 解 答 を し た .    肝動脈血行再建術として門脈部分動脈化術の有用性を明かにした本研究の意義は大きく、

審 査 員 協 議 の 結 果 、 本 論 文 は 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 授 与 に 値 す る と 判 定 し た .

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