博 士 ( 医 学 ) 山 田 聡
学位論文題名
Novel quantitative assessment of myocardial perfusion by harmonlCpOWerDOpplerlmaglngduring
myOCardialCOntraSteChOCardiography
(ハーモニックパワードプラ画像を用いた心筋コントラストエコー法 による心筋灌流の新しい定量的評価法)
学位論文内容の要旨
心筋 コ ン ト ラス ト エ コ ー法(MCE)にお い て 、心 筋組織 内の気 泡密度 は単位体 積当り の心筋 内 血 液量 す な わ ち心 筋 内血液量 分画を 反映す る。従 来のグ レース ケール .ハー モニック 画像 を用 いたMCEに おける コント ラスト 輝度は 、気泡 密度を反 映する と考え られて おり、 心筋内血 液 量 を表 す 定 量 的指 標 として使 用され てきた 。近年 、心筋 染影の 認識に 優れる ハーモニ ック パ ワ ー ドプ ラ 画 像(HPDI)がMCEに 用 いら れ る よ うに な っ た が、HPDIを 用 い た心 筋 内 血 液量 の 定 量評 価 の た めに は 、 解 決す べ き 問 題点 が ぃ く っか 残 さ れ てい る 。 第一に 、気泡密 度と HPDIのコ ントラ スト輝 度との 関係が 不明で ある。 第二に 、コント ラスト輝度は入射超音波の音 圧に 強く依 存する ため、MCEにおい て、音 圧の異 なる心筋 各部位 での心 筋コン トラス ト輝度を 比較して心筋内血液量を推定することには大きな限界がある。
我 々 は 、 音 圧 の 等 し い 条 件 下 で はHPDIの 受 信 信号 パ ワ ー が気 泡 密 度 に比 例 す る との 仮 説 を 立 てた 。MCEに おい て 、 心 筋領 域 と そ の近 傍 の 心 腔内 血 液 領 域と は 、 空 間的 に 近 い た め、音圧がほば等しいと考えられる。従って、心筋コントラスト輝度を近傍の血液領域のコントラ スト 輝度で 補正す ること が可能と 考えら れる。そこで、血vitro実験により気泡濃度とHPDIの輝 度 と の関 係 を 明 らか に し、さら に臨床 例で、 新しい 定量法 が音場 不均一 性を克 服して心 筋梗 塞による灌流異常を識別することが可能か否かを検討した。
方 法
超 音波 造 影 剤 とし て 、 空 気の 微 小 気 泡か ら 成 る 経静 脈 性 造 影剤 レ ボビ ストを 用いた 。種々 の濃度 のレボ ビスト 溶液を 作成し 、超音 波減衰の ほとん どないゼリー塊を介して単回照射を行 い 、HPDI画 像 を 記録 した。 水溶液 の水面 直下で は照射 音圧は 一定であ ると考 え、こ の部位 の 輝 度 を 測 定 し 、 造 影 剤 濃 度 と コ ン ト ラ ス ト 輝 度 と の 関 係 を 検 討 し た 。 健 常成 人11例と 陳 旧 性 心筋 梗 塞 患 者(OMI) 25例で 、 レ ボ ビス ト の 持 続静 注 下 に6心 拍に 1回 、 収 縮 末 期 同 期 の 問 歇 送 信 法 に てHPDI画 像を 記 録 し た。 心 尖 部 断面 上 の5区 域 で、 心 筋コン トラス ト輝度(CImyo)をdB値 で計測 し、さ らに、 心筋の計 測部位 に隣接 する左 室内腔血 液領域のコントラスト輝度( Clbl。0d)を計測して、補正心筋コントラスト輝度(RelCI)=Clmyo ‑
abl。od(dB)を算出し た。CImy。とRelCIの各々に っき、健常例の5区域問で値を比較した。また、
健 常 例 の 正 常 区 域 とOMI例 の 梗 塞 区 域 と の 問 で 、ClnyoとRelCIを 比 較 し た 。
結 果
In vitro実験 にお いて 、コントラスト輝 度のdB値は造影剤濃度に対 してきわめて良好な対数 相 関 を 示し 、輝 度の 増 分X(dB)は造 影剤 濃度 の比10moを 表す こと がわ か った 。た とえ ぱ 、造 影 剤 濃 度 が 倍 増 す る と 、 輝 度 は3 dB増 加す る。dB値を 逆対 数変 換し て 求め た、 信号 パ ワー に 比 例 す る 単 位 AUzは 、 造 影 剤 濃 度 と き わ め て 良 好 な 直 線 相 関 を 示 し た 。 健 常 例に おい て、amy。は5区 域間 で異 な り(pく0.0001)、 画像 上の 深 部に 位置 する 区 域ほ ど 値 が 低 か っ た 。 こ れ に 対 し 、Reiaは5区 域間 で差 を認 め ず(p=0.083)、同 一区 域で の 個体 問の ばら っ きもamyoより 小さかった。Clmyoは正常区域(胆55)に比し 梗塞区域(n=39)で有意 に低かったが(14.2t6.4 vs 11.3t5.4 dB,pく0.05)、両群での重なりが大きかった。RelCIは正常 区域に比し梗塞区域で 有意に低く(‑15.1士1.6 vs―18.3s:2.8 dB,pく0.0001)、両群での重なりは amy,より小さかった。
考 察
今 回の 研究 で は、HPDIの受 信信 号 パワ ーが レボ ビス ト 濃度 と比 例す ることが わかった。この 関 係 をMCEに 利 用 し て 、 左 室 内 腔 血 液 領 域 に 対 す る 心 筋 の 気 泡 密 度 比 を 推 定 す る 指 標 RelCIを考 案し た。RelCIは 、音 場 不均 一性 によ る心 筋 染影 の部 位差 を克服し て、心筋梗塞に よる灌流異 常を識別することができた 。
今 回の 実験 結 果を 用い ると 、理 論 的に はRelCIから 心筋 内血 液 量分 画を 算出 す るこ とも 可 能 であ る。 す なわ ち、 血液に対する心筋の気泡密度 比は10ReICI/10であり、内 腔血液領域の血 液量分画は100%であることから、心筋 内血液量分画は10RcICI/10x100(%)と算出される。本研 究 での 健常 例 のRelCIか ら 計算 され る心 筋 内血 液量 分画 は3.1% であ り、ブタ で報告されてい る鋳型によ る心筋内血管容積分画の4.5%と大きな違いはない。 .
こ のよ うに 、ReICIは従 来 の心 筋コ ント ラ スト輝度 と比べ心筋内血液量分画を より正確に反映 す る指 標と 考 えら れ、 今後 、様 々 な疾 患に おけ る心 筋 微小 循環 レベ ルでの病 態生理の解明に 役立っもの と期待される。
結 語
新 し い 定 量 評 価 法 は 、MCEに よ る 心 筋 灌 流 評 価 の 際 に 問 題 と な る 音 場 不 均 一 性 を 克 服 で き る。RelCIは 、 血液 領域 に対 する 心 筋の 気泡 密度 比 を表 し、 心筋 内血 液 量分画 を正確に反 映 する 指 標で ある と考 え られ た。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Novel quantitative assessment of myocardial perfusion ●
harmonic power Doppler imaging lurin byharmonlCpOWerDOpplerlmaglng ( ・ g myocardial contrast echocardiography
(ハーモニック・パワードプラ画像を用いた心筋コントラストエコー法 による心筋灌流の新しい定量的評価法)
心 筋 コン トラ スト エ コー 法(MCE)にお いて 、心 筋 組織 内の 気泡 密度 は 単位 体積 当り の心 筋 内 血 液 量 す な わ ち 心 筋 内 血液 量 分画 を反 映す る。 近 年、 心筋 染影 の 認識 に優 れる ハー モ ニ ック パ ワー ドプ ラ画 像(HPDI)がMCEに用 いら れる よ うに なっ たが 、HPDIを用 いた 心筋 内血 液 量 の 定 量 評 価 の た め に は 解決 す べき 問題 点が ぃく っ か残 され てい る 。第 一に 、気 泡密 度 と HPDIの コン トラ スト輝度との 関係が不明である。第二に 、コントラスト輝度は入射超 音波の音 圧に 強 く依 存す るため、音圧 の異なる心筋各部位での心 筋コントラス卜輝度を比較し て心筋内 血液 量 を推 定す るこ と には 大き な限 界が あ る。 そこ で、 音圧 の 等しい条件下での気 泡密度と HPDIの コン トラ スト 輝 度と の関 係を 明ら か にし 、MCEに おけ る音 場不 均 一性 を克 服し て心 筋 内血 液 量を 推定 する方法を見 出すことを目的とした。種 々の濃度のレボビスト溶液を 作成し、
ゼ リ ー 塊 を 介 す る 単 回 照 射でHPDI画 像を 記録 した 。 溶液 の水 面直 下 で輝 度を 測定 し、 造 影 剤濃度とコントラ スト輝度との関係を検討し た。その結果、コントラスト輝度のdB値は造影剤濃 度に 対 して きわ めて 良 好な 対数 相関 を示 し 、輝 度の 増分X(dB)は 造影剤濃度の比10x′10を表 すこ と がわ かっ た。 健 常成 人11例と 陳旧 性 心筋 梗塞 患者25例 で 、レボビストの持続 静注下に 6心 拍 に1回 、 収 縮 末 期 同 期 の 間 歇 送 信 法 に てHPDI画 像 を 記 録 し た 。 心 尖 部 断 面 上 の5 区域で、心筋コン トラスト輝度(amy。)をdB値で計測し、さらに、心筋の計測部位に隣接する左 室内腔血液領域の コントラスト輝度(CIbl。od)を計測して、補正心筋コントラスト輝度(ReICI)〓 Clmy。 ーClblwd (dB)を算出 した。健常例において、Clmy。は5区域間で異なり画像上 の深部に 位 置 す る 区 域 ほ ど 値 が 低 かっ た 。こ れに 対し 、RelCIは5区域 問で 差 を認 めず 同一 区域 で の ―116−
男 秀
良 之
和 慶
長 裕
坂 田
木 井
宮 安
玉 筒
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
個体問のばらっきも小さかった。Clmyoは正常区域に比し梗塞区域で有意に低かったが、両群 での重なりが大きかった。RelCIは正常区域に比し梗塞区域で有意に低く、両群での重なりは Clmyoより小さかった。本研究により、HPDIの受信信号パワーがレボビスト濃度と比例すること が明らかとなった。この関係をMCEに利用して、左室内腔血液領域に対する心筋の気泡密度 比を推定する指標RelCIが考案された。RelCIは、音場不均一性による心筋染影の部位差を 克服して、心筋梗塞による心筋内血液量の低下を検出することができた。本研究での健常例 のRelCIから計算される心筋内血液量分画は3.1%であり、ブタで報告されている鋳型による 心筋内血管容積分画の4.5%と大きな違いはなかった。
口頭発表に際し、副査の安田教授から心筋内血液量の負荷による変化、心筋の炎症による 変化などについて、副査の玉木教授から測定の再現性、技術的な限界などについて,副査の 筒井教授から心筋梗塞での臨床的意義について質問がなされた。さらに,主査の宮坂教授か ら動物実験で得られている心筋内血液量のスタンダードとの比較について質問がなされた。
申請者は研究結果に基づき、あるいは文献的知識を駆使し、誠実にかつ概ね適切に回答し 得た。
本論文 は、MCEの新しい解析法が超音波音場の不均一性を克服して心筋内血液量をより 正確に推定し得ることを示した。今後、様々な疾患における心筋微小循環レベルでの病態生 理の解明に役立っものと期待される。
審査員一同は、以上の研究成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるに充 分な資格を有するものと判定した。
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