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博 士 ( 理 学 ) 藤 猪 英 樹

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 藤 猪 英 樹

     学位論文題名

B7 −1 遺伝子導入癌細胞を用いたワクチン療法とRGD 擬似ペプチド      を用いた抗接着療 法による癌転移抑制とそれらの併用効果

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  癌 の転移に 関する基 礎的研 究は、近 年急速 な発展を 遂げ、その複雑なメカニズムが分 子レ ベルで解明されつっある。この転移形成過程において癌細胞は、宿主細胞(血管内皮 細胞や免疫系細胞など)や周辺組織(細胞外マトリックスや基底膜など)と接着相互作用す るこ とによ り、転移 を形成 している ものと 考えられ る。それゆえ、その担い手となる細 胞接 着分子 およびそ の機能 の重要性 が注目 されてい る。これらの接着分子は、本来は細 胞の 発生、 分化、増 殖、炎 症、創傷 治癒、 血液凝固 などの生命現象の調節、維持を司る 分子 である 。癌細胞 は転移 の各段階 で関る 接着分子 の基質特異性や親和性、あるいは量 的 な 違 い な ど 巧 み に 使 い わ け な が ら 遠 隔 臓 器 へ 転 移 す る と 考 え ら れ る 。 接着 分子を 介した細 胞の接 着相互作 用の機 能を細胞 接着性ペプチドを用いて転移のいく っか の段階 を調節、 制御す ることに より、 癌の転移 ・浸潤を抑制しようとする試みが以 前 か らな さ れ て いる 。特 に、フィ ブロネ クチン分 子中のRGDS配列やラ ミニン 分子中の CDPGYIGSR配 列 を用 い た 研究 が 数 多く な さ れて い る。一 方、転移 形成過 程におけ る免 疫系 細胞と 癌細胞と の接着 相互作用 は、む しろ亢進 することにより抗腫瘍免疫や殺腫瘍 作 用 を 誘 導 し 、 結 果 と し て 転 移 の 抑 制 に 導 く こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 本研 究では 細胞接着 性ペプ チドが生 体内で 各種プロ テアーゼによる切断を受けやすいこ とを 改善す る目的で 、プロ テアーゼ 耐性の 高い化合 物の探索を行うとともに、癌転移の 抑制 効果を検討した。さらに、癌細胞にB7分子を強制発現させ、免疫系細胞と癌細胞との 接着 相互作 用を亢進 するこ とにより 、免疫 系細胞を 効率良く活性化させ抗腫瘍免疫を誘 導し 、その 抗腫瘍免 疫に基 づく癌転 移の抑 制効果と 、B7を発現した癌細胞を癌ワクチン と し て 応 用 可 能 か ど う か に つ い て 検 討 し た 。 本 論 文 の 要 旨 は 以 下 の4点 で あ る 。

1. 転移 性 癌 細胞 にB7‑1あ るい はMB7−2分子を 強制発 現させる ことによ り、同 系マウ スヘ の静脈内 移植に よる癌転 移を有 意に抑制 するこ とを示た 。この転移抑制効果はT細 胞を 介した免 疫反応 が関係し ている ことを明かにした。癌細胞上のB7分子の発現が癌細 胞 の 浸潤 能には 影響を 及ぽさず 、RGDS配列 を認識す るイン テグリン レセプ ターが浸 潤 に関 与してい ること を示した 。

以上 の結果よ り、癌 細胞と免 疫系細 胞(T細胞)の 活性化 にはB7分子 が、一方癌細胞の

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基 底膜浸 潤にはイ ンテグ リンレセプターが関与していることが示され、癌の転移過程に お い て 異 な っ た 接 着 分 子 が 巧 み に 使 い 分 け ら れ て い る こ と を 示 唆 し て い る 。

2.予 めX線照 射 し 不活 化 し たB7‑1゛ /BL6細 胞 で免 疫す ることに よって 、BL6細 胞の静 脈内移 植による 肺転移 を、BL6細胞ある いはB7‑1'/BL6細胞で 免疫した 群と比 較して有 意に抑制することを示した。この抑制効果(ワクチン効果)は腫瘍特異的であることを明 かにし た。

さらに 、腫瘍移 植前の みならず後にX線照射B7‑1゛/BL6細胞で免疫を行っても、BL6細胞 の静脈 内移植に よる肺 転移の抑 制に有効 である ことを示 した。

一方、自然肺転移モデルにおいても、X線照射B7‑1゛/BL6細胞で原発巣切除前あるいは後 に免疫 した群は 、いず れも肺へ の転移を 抑制し 、その効果は、免疫の回数に依存した。

3.  RGDペプチドにおいて血中プ口テアーゼに対して切断されやすいアルギニンとグリシン の間のアミド結合を反転させた、レトロ型擬似ペプチドFC‑63は、強いプロテアーゼ耐性を獲得 すると共に、in vitroにおける基底膜浸潤、実験的および自然転移のいずれにおいても、RGDSと 比較して非常に強い抑制効果を示した。さらに、FC‑63のアミド結合をアルキルアミノ基に置き 換 え たカ ル ボ ニル エチ レン型擬 似ペプ チド(FC‑303)お よびFC‑303を二 分子含 む誘導体 (FC‑336)は、FC‑63に比べて強い転移抑制効果を示した。特に、FC‑336はin vitroにおける細胞 外マトリックスへの接着、移動および基底膜浸潤を抑制し、RGDSでは見られなかったHT1080 細 胞 由 来 のMMP―2, ‐9に よ る 基 底 膜 分 解 活 性 を 阻 害 す る こ と が 認 め ら れ た 。

4.上 記2お よ び3の 結 果に 基づき、 不活化B7‑1゛′BL6細胞を 用いた「 癌ワクチ ン」と RGD関連擬似ペプチドFC‑336による「抗接着療法」との併用は、それぞれ単独使用群に比較し て強い転移抑制効果が認められ、それぞれの療法の効果を互いに干渉、相殺することなく 増強効果が得られることを明かにした。

以 上、癌転 移過程 において 、癌細 胞ー免疫 細胞、癌細胞ー細胞外マトリックスで見られ る 相互作用 で、異 なった接 着分子 を用いた 制御機構が存在することが示唆された。癌細 胞 と細胞外 マトリ クスとの 接着相 互作用をRGD関連 擬似ペ プチドに よって阻害する「抗 接 着療法」 と、癌 細胞とり ンパ球 との接着 相互作用を高める目的で、B7‑1分子を癌細胞 に 導入し免 疫を行 う「癌ワ クチン 療法」を 併用することにより、転移抑制効果が増強す る ことが明 かとな ったこと から、 癌転移抑 制の新たな治療法として臨床応用可能である か もしれな い。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    東    市郎 副査   教授   菊池九二三 副査    教 授    谷ロ和彌 副査    講 師    劉    永春

     学位論文題名

B7 ―1 遺伝子導入癌細胞を用いたワクチン療法とRGD 擬似ベプチド を用いた抗接着療法による癌転移抑制とそれらの併用効果

  癌の転 移に関 する基礎 的研究は 、近年 急速な発 展を遂げ、その複雑なメカニズムが分 子レベルで解明されつっある。この転移形成過程において癌細胞は、宿主細胞(血管内皮 細胞や免疫系細胞など)や周辺組織(細胞外マトリックスや基底膜など)と接着相互作用す ること により、 転移を 形成して いるも のと考え られる。それゆえ、その担い手となる細 胞接着 分子およ びその 機能の重 要性が 注目され ている。これらの接着分子は、本来は細 胞の発 生、分化 、増殖 、炎症、 創傷治 癒、血液 凝固などの生命現象の調節、維持を司る 分子で ある。癌 細胞は 転移の各 段階で 関る接着 分子の基質特異性や親和性、あるいは量 的 な 違 い な ど 巧 み に 使 い わ け な が ら 遠 隔 臓 器 へ 転 移 す る と 考 え ら れ る 。 接着分 子を介し た細胞 の接着相 互作用 の機能を 細胞接着性ペプチドを用いて転移のいく っかの 段階を調 節、制 御するこ とによ り、癌の 転移゛浸潤を抑制しようとする試みが以 前 から な さ れて い る。特に 、フィ ブ口ネク チン分 子中のRGDS配 列やラ ミニン分 子中の CDPGYIGSR配列 を 用 いた 研 究 が数 多 く な され てい る。一方 、転移 形成過程 におけ る免 疫系細 胞と癌細 胞との 接着相互 作用は 、むしろ 亢進することにより抗腫瘍免疫や殺腫瘍 作 用 を 誘 導 し 、 結 果 と し て 転 移 の 抑 制 に 導 く こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 本研究 では細胞 接着性 ペプチド が生体 内で各種 プロテアーゼによる切断を受けやすいこ とを改 善する目 的で、 プ口テア ―ゼ耐 性の高い 化合物の探索を行うとともに、癌転移の 抑制効果を検討した。さらに、癌細胞にB7分子を強制発現させ、免疫系細胞と癌細胞との 接着相 互作用を 亢進す ることに より、 免疫系細 胞を効率良く活性化させ抗腫瘍免疫を誘 導し、 その抗腫 瘍免疫 に基づく 癌転移 の抑制効 果と、B7を発現した癌細胞を癌ワクチン と し て 応 用 可 能 か ど う か に つ い て 検 討 し た 。 本 論 文 の 要 旨 は 以 下 の4点 で あ る 。

1. 転 移性 癌 細 胞にB7‑1あ る いはMB7‑2分 子を 強 制 発現 させるこ とによ り、同系 マウ ス ヘの静脈 内移植に よる癌 転移が有 意に低 下するこ とを示し、この転移抑制効果はT細

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胞 を介した 免疫反 応が関係 してい ることを 明かにした。さらに癌細胞上のB7分子の発現 が 癌 細 胞の 浸潤能に は影響 を及ぽさ ず、RGDS配 列を認識 するイ ンテグリ ンレセ プター が 浸潤に関 与して いること を示し た。

2.予 めX線照 射 し 不活 化 し たB7−1゛/BL6細 胞 で 免疫 すること によっ て、BL6細胞の 静 脈内移 植による 肺転移 を、BL6細胞あ るいはB7‑1' /BL6細胞で免 疫した 群と比較 して有 意に抑制することを示した。この抑制効果(ワクチン効果)は腫瘍特異的であることを明 かにし た。

さらに 、腫瘍移 植前の みならず 後にX線照射B7‑1゛/BL6細胞で免疫を行っても、BL6細胞 の静脈 内移植に よる肺 転移の抑 制に有 効である ことを 示した。

一方、自然肺転移モデルにおぃても、X線照射B7‑1゛/BL6細胞で原発巣切除前あるいは後 に免疫 した群は 、いず れも肺へ の転移 を抑制し 、その 効果は、免疫の回数に依存した。

3.  RGDペプチドにおいて血中プロテアーゼに対して切断されやすいアルギニンとグリシン の間のアミド結合を反転させた、レトロ型擬似ペプチドFC‑63は、強いプロテアーゼ耐性を獲得 すると共に、in vitroにおける基底膜浸潤、実験的および自然転移のいずれにおいても、RGDSと 比較して非常に強い抑制効果を示した。さらに、FC‑63のアミド結合をアルキルアミノ基に置き 換え た カ ルボ ニ ル エチ レン型擬 似ペプ チド(FC‑303)お よびFC‑303を 二分子含 む誘導 体 (FC‑336)は、FC−63に比べて強い転移抑制効果を示した。特に、FC‑336はin vitroにおける細胞 外マトリックスヘの接着、移動および基底膜浸潤を抑制し、RGDSでは見られなかったHT1080 細 胞 由 来 のMMP‑2, ‐9に よ る 基 底 膜 分 解 活 性 を 阻 害 す る こ と が 認 め ら れ た 。

4.上 記2お よ び3の 結 果 に基 づき、不 活化B7‑1゛ /BL6細胞を用 いた「癌 ワクチ ン」と RGD関連擬似ペプチドFC‑336による「抗接着療法」との併用は、それぞれ単独使用群に比較し て強い転移抑制効果が認められ、それぞれの療法の効果を互いに干渉、相殺することなく 増強効果が得られることを明かにした。

この ように申 請者は、 癌細胞 一免疫細胞、癌細胞ー細胞外マトリックスとの相互作用を 制御 すること により転 移の抑 制が可能なことを明らかにし、癌転移の治療法を確立する う え で の 基 礎 的 研 究 に 対 し 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よっ て、申請 者は、 北海道大 学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認め た。

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参照

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