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博 士 ( 薬 学 ) 後 藤 正 樹

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 後 藤 正 樹

学 位 論 文 題 名

炎 症 性 夕 ン パ ク 質 の 遺 伝 子 発 現 に お け る 転 写 因 子 の 役 割 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近年の分子生物学的な研究から、腫瘍壊死因子(TNF‑a)やインター□イキン‑lt3 (11‑

1[3)がマク口ファージなどの細胞から過剰に産生することが、炎症性疾患や自己免疫疾患 の発症・症状の増悪に関係していることが明らかとなってきた。これらのタンバク質の量 的な変化は、その遺伝子の転写量の異常が引き金となっていることが考えられ、異常にな ったタンバク質遺伝子の発現を正常に戻すというストラテジーは、新しい創薬の切り口に なる と予想される。転写因子 のnuclear factor‑kappaB(NF‑KB)やactivator protein‑l (AP‑1)は、細胞外から刺激を受けたときに活性化され 、炎症や免疫反応の鍵となる多く のタンパク質をコードする遺伝子発現に関与することが知られてきた。従って、NF‑KBや AP‑1の活性化や活性を抑制する薬剤は、炎症性疾患や自己免疫疾患の新しい治療薬になる ことが期待できる。筆者は、転写因子に働きその活性を制御する薬剤に関する探索研究を 行ってきた。その研究結果を、本論文の以下6章にまとめる。

第1章 簡 便 で 高感 度な 転写 活性 測定 系で あるPLAP遺伝 子発 現系 の 構築

  転写調節因子の活性化や不活性化に作用する薬剤を研究するためには、簡便で精度の高 い転写活性測定法が不可欠である。本章では、この目的を達成するために、レポーター遺 ほ子 に、 ヒト 胎盤 型ア ル カリ ホスファター ゼ(PLAP)を選択し、PLAP遺伝子のク口ーニ ン グ 、 分 泌 型PLAPを コ ー ド す る遺 伝子 への 変換 、発 光 基質AMPPDを 用い たPLAP活 性 の高感度測定法について述べる。

第2章LPS刺 激 に よ る ヒ トTNF‑a遺 伝 子 転 写 の 活 性 化 に お け るNF‑KBの 役 割

  リ ポポ リサ ッカ ライ ド(LPS)刺 激によるマウスTNF‑a遺 伝子転写の活性化においては NF‑KBが 重要 な役 割を 果 たし てい ることが報告されていた。本章では、ヒトTNF‑a遺伝 子転写の活性化におけるNF‑KBの役割の検討を行った結果について述べる。筆者は、ヒ卜 rNF‑a遺伝 子エ ンハ ンサ ー 上に4ケ 所のNF‑KB結合 配列 を見 出し 、こ れら の配 列にLPS 刺激 によ り細 胞内 で活 性化 され るp50とp65の ヘテ ロ ダイ マーから構成されるNF‑KBが 結合すること、さらにこれらの領域に変異を導入したTNF‑a‑PLAPプラスミドを作製し、

このプラスミドを一過性に発現させた細胞をLPS刺激すると転写活性が低下することがわ かっ た。 以上 の結 果か ら、LPS刺 激に よる ヒトTNF‑a遺伝 子転写の活性化におけるNF‑

〈Bが必須であることを明 らかにした。

第3章ヒ トIL‑1{3遺伝 子の 遺 伝子 転写 の活 性化 にお けるNF‑KBの役 割

LPS刺激 によ るヒ 卜IL‑ip遺 伝子発現においては、転写開 始部位から‑3134〜‑2729領域 と‑131〜+12領域がシスエレ メントとして重要であることが報告されている。本章では、

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この領域をさらに絞り込むために、ヒ卜IL‑1[3遺伝子の‑3134〜‑2987領域中のシスエレメ ントおよびこの領域 に結合する転写因子について詳細に検討した結果について述べる。

この領域の欠損遺伝 子を作成して、LPS刺激による転写活性を調べると、‑3134〜‑3059領 域の欠損により転写 活性が低下することがわかった。この領域の塩基配列を検索して、2 ケ 所のNF‑KB結合 結合 配列 を見 出し、これらの配列にLPS刺激により細胞内で活性化さ れ るp50とp65の へテ 口ダ イマ ーか ら構 成 され るNF‑KBが結 合すること、さらにこれら の領域に変異を導入 したTNF‑a‑PLAPプラスミドを作製し、このブラスミドを一過性に発 現させた細胞をLPS刺激すると転写活性が低下することがわかった。以上の結果から、LPS 刺激によるヒトIL‑1[3遺伝子転写の活性化におけるNF‑KBが必須であることを明らかにし た。

第4章LPS刺 激 に よ るNF‑KBの 活 性 化 に 及 ぼ すTNF‑a産 生 抑 制 剤E3330の 影 響   E3330 (4‑methoxy‑4‑(3‑phosphatephenyl)spiro(l,2‑dioxetane‑3,2.‑adamantane))は、

エーザイ(株)筑波 研究所で合成された新規キノン誘導体であり、LPSで刺激した単球や マ クロ ファ ージ から のTNF‑a産 生を 抑制 する 。本 章で は、E3330のTNF‑a産生抑制効果 の メカ ニズ ムを 探る ため に、LPS刺 激に よるTNF‑a遺伝 子の 転写活性の上昇及びNF‑KB の活性化に対するE3330の作用を検討した結果について述べる。筆者は、単球/単球系細胞 を 用い てE3330がLPS刺激 によ る、TNF‑a mRNAの転 写量 の上 昇を抑制すること、TNF‑a 遺伝子の発現の上昇 を抑制すること、NF‑KBの活 性化を抑制すること、NFKBの抑制夕ン バク質であるIKB‑aのりン酸化を抑制すること、IKB‑aのりン酸化に重要と考えられる活 性 酸素 の産 生を 抑制 する こと を見 出した。以上の結 果から、E3330のTNF‑a産生を抑制 す る作 用は、E3330が、IKB‑aのりン酸化を抑制することによりNF‑KBの活性化が抑制さ れ 、そ の結 果TNF‑a遺 伝子 の転 写活 性が 低下 し、TNF‑a mRNAの 産生量が低下したこと に基づくと考えられ た。E3330のIKB‑aのりン酸化を抑制には、活性酸素の産生抑制作用 が関与している可能性が示唆された。

第5章LPS刺 激 に よ るNF‑KB活 性 化 に 及 ぼ す コ ハ ク 酸 ト コ フ ェ ロ ー ル(TS)の 影 響   TSが、TNF‑aで刺 激し たヒ トT細 胞株 のジ ャー カッ ト細 胞においてNF‑KBの活性化を 抑制 することが報告され た。本章では、TSのNF‑KBの 活性に及ぼす作用が、単球系細胞 にお いて も見 ら れ可 能性 につ いて 、LPS刺 激 によ るNF‑KBの活性化とTNF‑a遺伝子の転 写活性の上昇に及ぼすTSの影響を検 討した結果について述べる。筆者は、単球系細胞を 用 い てTSがLPS刺 激 に よ る 、NF‑KBの活 性化 を抑 制す るこ と、TNF‑a遺伝 子の 発現 の 上昇を抑制することを見出した。これらの作用は、a.トコフウロールには見られなかった

。さ らにTSの 作 用の 特異 性を 調べると、TSがAP‑1の 活性には影響しないこと、ベータ アクチン遺伝子の発現を抑制するこ とを見出した。また、実験を通してTSは培養液中で 安定であり、細胞内でも未変化体で存在していることがわかった。以上の結果から、TSは 単球 系細胞においてもNF‑KBの活性化を抑制する作用 があり、その作用はTSの構造によ り発揮されていることが明らかとなった。

第6章AP‑1とAP‑1結合 配列 を有 する オリ ゴヌ ク レオ チドとの結合を阻害する新 規アン ト ラキ ノン 誘導 体K1115Aの 薬理 作用

  筆者は、ゲルシフトアッセイを用いた抗炎症剤のスクリ一二ングの過程で、 Str eptomyces gr奮eばu施加卵us(Mer・K1115A)の培養上清中にAP.1とAP.1オリゴヌクレオチドとの結 合を抑制する新規アントラキノン誘導体、3,8.dihydroxy.1.propylanthraquinone.2・ carboxyhcacid(K1115A)を見出した。本章では、AP・1とAP.1オリゴヌクレオチドと の結 合反応に及ぼすKl115Aの阻害作用の特異性、またAP・1が関係すると考えられる反 応の ラット滑膜細胞のコラ ゲナーゼ産生、さらにPMAを 皮膚へ塗布したマウスの表皮組 織 に お け るODC活 性 の 上 昇 に 及ぼ すK1115Aの影 響 を検 討し た結 果に つい て述 べる 。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 助教授 助教授

長 澤 滋 治 有 賀 寛 芳 高 橋 和 彦 松 本 健 一

学 位 論 文 題 名

炎 症性夕ンパク質の遺伝子発現における 転写 因子の役割に関する研究

  生 体 は 、 様 々 な 器 官 や 組 織 が 相 互 に 複 雑 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を と り な が ら 、 生 命 現 象 を 営 ん で い る 。 個 々 の 器 官 や 組 織 は 分 化 し て 特 別 な 機 能 を 有 す る よ う に な っ た 、 様 々 な 細 胞 群 か ら 形 成 さ れ て い る 。 近 年 の 分 子 生 物 学 的 な 研 究 から 、細I胞から分泌されるタンバク質、細I胞膜や細胞内に存ね:するタン ノヾク質 の 産 生 や 発 現 と 、 こ れ ら を 制 御 す る タ ン バ ク 質 の 産 生 と の 平 衡 関 係 の 破 綻 が 、 自 己 免 疫 疾 患 を 初 め と す る 疾 病 の 発 症 ・ 症 状 の 増 悪 に 関 与 す る 事 が 明 ら か に な っ た 。 特 に 、 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン の イ ン タ ー 口 イ キ ン(ILー1B) や 腫 瘍 壊 死 因 子(TNF‑Q) は 慢 性 関 節 リ ュ ウ マ チ な ど の 病 態 で 増 加 し 、 症 状 の 増 悪 に 関 連 す る こ と が 明 ら か に さ れ てい る 。こ れら 炎症 性夕 ンノ ヾク 質の 遺伝 子転 写を 制 御 す る と い う ス ト ラ テ ジ ー は 新 し い 創 薬 の 切 り □ に な る と 予 想 さ れ る 。   本 論 文 は 新 し い 転 写 活 性 の 測 定 系 を 榊 築 し 、 炎 症 性 夕 ン バ ク 質 の 発 現 に お け る 転 写 因 予 の 役 割 に つ い て 検 討 を 進 め て 、 下 記 の 成 果 を 挙 げ た 。   ! ; PALP7:y主 ゴ 丞Q撞 築

  著 者 の 開 発 し た 系 は 、 従 来 の 転 写 活 性 測 定 系 で あ るCATア ッ セ イ に 比 較 し 、 高 感 度 で 、 簡 便 で あ り 、 再 現 性 が 高 く 、 汎 用 性 の 点 で も 優 れ た も の で あ る 。 本 系 は 、 遺 伝 子 発 現 を 制 御 す る 遺 伝 子 配 列 の 解 析 や け っ そ に 電 子 の 転 写 活 性 を 棚 互 比 較 す る た め に 極 め て 有 用 な 測 定 系 で あ る 。

  2: ヒ ト TNF‑g遺 伝 壬 発 現 ! 三 塑 竝 る NF‑kB活 性 化 Q重 要 性   ヒ トTNF‑a遺 伝 子 の5― プ 口 モ ー タ ー 領 域 に 、4力 所 のNFーkB結 合 配 列 を 見 い だ し た 。 さ ら に 、 こ の4力 所 の 結 合 配 列 の い ず れ に 変 異 を 導 入 し て も 、I)PS 刺 激 に よ る 転 写 活 性 化 が 著 し く 低 下 す る こ と をI卯 ら か に した 。 ヒトj弭 球をLPS

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で刺激するとNK ー kB が活性化すること、これら4 力所のNK ―kB 結合配列に、

p50 と p65 から構成される NK ―kB ヘテ口ダイマー一が結合することを見いだし た。これらの結果は、 LPS 刺激によるヒトTNF‑a 遺伝子の転写活性化におい てNF ―kB の活性化が重要なことを示唆する。

  3 : ヒ 上 IL‑1 臼 遺 伝 壬 発 現 ! 三 茎 竝  NF‑kB 活 性 i ヒ c 重 要 仕    ヒト IL 一iB 遺伝子工ンハンサー領域において、LPS 刺激による転写活性化に 必須と考えられる領域を叨らかにした。さらにゲルシフトアッセイにより2 力 所のNK ーk13 結合配列を見いだし、その領域の遺伝子配列を決定した。ヒト単 球 をLPS 刺 激す ると 、この 2 力所のNK 一kB 配列にp60 とp65 から構成される NK ← kB ヘテ口ダイマーが結合することを見いだした。この知見は、LPS 刺激 によるヒ卜IL 一iB 遺伝子発現においてNF ーkB の活性化が重要な事を示唆す る。

  4 : E3330 a)NF ーkB 活性化抽制佐目

  TNF‑a 産生を抑制する化合物としてE3330 を発見し、これがNF −kB の転写 活性の上昇並びにTNI‑ ‑Q のmRNA 転写量の上昇を抑制することを見いだし た。E3330 は、LPS 刺激による IkB‑a のりン酸化を抑制し、NK 一 kB の活性化 を抑制する事を明らかにした。

以上の研究成果は新しい抗炎症薬の開発研究に有カな方法を与えるものであ

り 、 博 士 ( 薬 学 ) の 学 位 を 受 け る に 値 す る 業 績 と 評 価 し た 。

参照

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