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博 士 ( 理 学 ) 藤 原 英 夫

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 藤 原 英 夫

学 位 論 文 題 名

気 体 電 子 回 折 によ る ト リ メチ ル ア ミ ンと

プ ロ ピ レ ン イ ミ ン の 熱分 解 生 成 物の 分 子 構 造決 定

学 位 論 文 内 容 の要 旨

く 序 >  熱 分 解 、 光 分 解 反 応 に よ っ て 生 成 す る 短 寿 命 種 の 構 造化 学 的な 研究 は、 分光 法 に より 数 多 く 行 わ れ て き た 。 こ れ ら の 手 段 を 用 い て 分 子 内 振勁 の 情報 (赤 外分 光)

や 回 転定 数 な ど の 分 子 定 数 ( マ イ ク 口 波 分 光 ) が 得 ら れ る 。 回転 定 数は 分子 構造 を敏 感 に 反映 す る 物 理 量 で あ る が 、 多 原 子 分 子 の 場 合 、 榊 造 を 決 定す る ため には 幾っ かの 同 位 体置 換 穏 の 回 転 定 数 を 得 る こ と が 必 要 で あ る 。 気 相 の 分 子榊 造 を決 定す るた めの 有 カ な手 段 と し て 気 体 電 子 回 折 が あ る 。 高 速 電 子 線 と 気 体 分 子の 衝 突は 弾性 的で 、工 ネ ル ギー の 移 動 を 伴 わ す 、 解 離 な ど を 起 こ さ な い 。 そ の た め 原理 的 には 短寿 命種 の研 究 に 向い て い る が 、 実 験 と 解 析 の 両 方 の 技 術 的 な 困 難 さ か ら 、短 寿 命穏 の研 究に 気体 電 子 回折 を 応 用 し た 例 は 非 常 に 少 な い 。 本 研 究 で は 、 主 に 解 析の 面 で対 策を 施し 、気 体 電 子 回 折 を 卜 リ メ チ ル ア ミン (TMA) と プ 口 ピ レ ン イ ミン (Pl) の 熱 分 解 反 応 系 に 適 用 し、 不 安 定 穏 の 分 子 榊 造 を 決 定 し た 。 ま た 、 反 応 経 路 に つい て も考 察を 行っ た。

く 実 験 >  TMAとPIに 共 通 の 部 分 に つ い て 述 べ る 。r3― セク タ ー を 備 え た 装 區 を 用 い た 。245.l mmの カ メ ラ 距 離 で 、 回折 像 を写 真乾 板に 撮影 した。 電子 線の 加速 電圧 は約 37 kVで 、 波 長 は 二 硫 化 炭 素 の 回 折 像 か ら 決 定 し た 。 短 寿命 の 分 子 穏 を 効 率 よ く 散 乱 点 に 供給 す る た め に 熱 分 解 用 の ノ ズ ル を 製 作 し た 。 熱 分 解 の 状態 を 調べ るた めに 四重 極 質 量分 析 計 を 用 い た 。 回 折 写 真 の 撮 影 の 前 に 加 熱 試 験 を 行 い、 質 量ス ベク トル のピ ー ク 強度 の 温 度 変 化 か ら 加 熱 条 件 を 決 定 し た 。

《 卜 リ ヌ チ ル ア ミ ン 系 》 く 実験 冫 試 料 は 、 市 販 のTMA塩 酸塩 を 大 過 剰 のNaOH水 溶 液 で 中 和 し て 得 た 。 質 量 ス ベ ク トル に よ る と 反 応 温 度450℃ から 親 分 子 の ピ ー ク 強 度 が 減 少 し 始 め 、CH4の ピ ー ク 強 度 が 急 激 に 増 加 し た 。 こ の こ とか ら 分 解 反 応 が 起 き て い る こ と が分 か る 。 回 折 写 真 は 室 温 と 反 応温 度515℃ 、535℃、 試料 圧30↑Offで撮 影し た。

    −265―

(2)

く 解 析 > 最 初 に 室 温 の 分 子 散 乱 強 度 か らTh(Aの 分 子 構 造 を 決 定 し た 。 反 応 温 度515℃ の デ ー タ の 解 析 は 、TMA、N‑メ チ ル メ チ レ ン イ ミ ン (NMMI、 不 安 定 種 ) 、CH4の 存 在 を 仮 定 し て 行 っ た 。 各 分 子の 存 在比 とNMI¥11の 結 合距 離 と 結合 角 を バラ メ ータ ー と して 分 子 散 乱 強 度 とNMMIの 回 転 定 数 に っ い て 最 小 二 乗 計 算 を 行 っ た 。 そ の 際 、 各C―H結合 距 離 間 の 差 、 及 び 各NCH結 合 角 問 の 差 をhIP 2/6―31G**の 計 算 結 果 に 固 定 し た 。 く 結 果 > ゛T &IA、NMMI、CH4の3成分 系 で反 応 温 度515℃ の実 験 デ ータ を よく 再 現 した 。 これらの分子の存在比は63(3): 19(2):18(4)であり、NMMIとCH4の存在比は誤差の範囲 内 で一 致 し た。 こ の こと は この 実 験 条件 でTMAが 単純にNMMIとCH4に分解す ることを 示.゛

し て い る 。 NMMIの 零 点 平 均 構 造 の う ち で 主 要 な も の は 次 の 通 り で あ っ た 。 f(N:C) : 1. 278(6)A.r(N―C)=1. 458(8)A.ZCNC=116. 62(12) . 。 く 反 応 温 度535℃ の デ ー タ の 解 析 と 結 果 >TMA、N‖MI、CH4の3成 分 系 を 仮 定 し 、 存 在 比 の み を バ ラ メ ー タ ー と し て 解 析 を 行 っ た が 動 径 分 布 曲 線 の 実 測 値 を 再 現 し なか っ た 。 上 記 の3分 子 にHCNを 加 え て 解 析 し た と こ ろ 、 動 径 分 布 曲 線 の 実 測 値 を よ く 再 現 した。これらの分子の存在比はTFIA:NhrfMI:CH4:HCN:42(2):30(2):19(4):9(2)であった。

TMAがNMMIとCH4に 分 解 し 、NMMIがHCNとCH4に 分 解 す る な ら は 、NMM| はCH4よ りも 多 く 存 在 す る こ と は な い 。 し た が っ て 他 の 反 応 が 起 こ っ て い る 可 能 性 が あ る 。

《 プ ロ ピ レ ン イ ミ ン 系 》 く 実 験 >  試 料 は 市 販 の も の を 用 い た 。 質 量 ス ベ ク 卜ル に よ る と 反 応 温 度 約400℃ か ら 親 分 子 と 同 じ 質 量 数 の ピ ー ク 強 度 が 増 加 し 、470℃ で 極 大に な っ た 。 そ れ 以 上 の 反 応 温 度 で はCHら の ピ ー ク 強 度が 急 激 に増 加 した 。 こ のこ と か ら4 70℃ ま で は 主 に 転 位 反 応 が 、 そ れ 以 上 の 温 度 で は 分 解 反 応 が 優 勢 と な る こ と が分 か っ た 。 回 折 写 輿 は 室 温 と 反 応 温 度 470℃ 、 530℃ 、 試 料 圧 30 Torfで 撮 影 し た 。 く 非 経 験 的 理 論 計 算 >MP 2/6‐31Gl*で 親 分 子 の 転 位 生成 物 で ある 不 安定 穏cis―Nーメ チル ビニルアミ ン(c−N IVA) 、trans−N‑メチ ルビニルアミン(t−NiV VA)、trans−N− メチルエチリデンイミン(【ーNMEI)の榊造最適化を行った。

(3)

果 に 固 定 し た 。 骨 格 構 造 と 存 在 比 を バ ラ メ ー タ ー と し て 最 小 二 乗 計 算 を 行 っ た 。 く 結 果 >c−NMVA、t−NMVA、t―NMEIの 構 造 を 決 定 し た 。CーNMVAの 構 造 か ら 計 算 し た 回 転 定 数 は 実 測 の 回 転 定 数 と 誤 差 の 範 囲 内 で 一 致 し た 。

3分 子 種 の 存 在 比 は63(7) :28(8) :9(4) で あ っ た 。 く 反 応 温 度 530℃ の デ ー タ の 解 析 と 結 果 > 上 記 の 3 成 分 系 を 仮 定 し 、 存 在 比 の み を バ ラ メ ー タ ー と し て 解 析 を 行 っ た が 実 測 の 動 径 分 布 曲 線 を 再 現 し な か っ た 。 CH4の 生 成 は 質 量 ス ベ ク 卜 ル か ら 明 ら か で あ る 。t−NM EIの 分 解 生 成 物 と 考 え ら れ るCH3CNとCH4を 加 え て 解 析 を 行 っ た が 、 勤 径 分 布 曲 線 の1.1−1.4Aに 残 差 が 見 ら れ た 。CH4が 生 成 す る 他 の 反 応 と し てNMVAが 分 解 し て ケ テ ン イ ミ ン (HN=C=CH2.Kl) を 生 成 す る 反 応 が 考 え ら れ る 。KIを 加 え た 解 析 で は 、 実 測 の 動 径 分 布 曲 線 を 再 現 し た 。 存 在 比 を 以 下 に 示 す 。cーNMVA:t―NMVA:I‑N

   CH3

        ( Pl)

      H2C.  .CH H2'('1¥l/: /I /'H3

            ... H

                :H4 + HN=C=CH2

                                                ( Kl) H−cヽ、H ‑'H4

MEl:CH4:CH3CN:K1=25(IO):26(10):18(2):19(4):4(2):8(2)。  図1.PIの熱反応経路

く 考 察 > 反 応 温 度470℃ と530℃ で のC−NMVAとt←NMElの 存 在 比 の 変 化 に 注 目 す る と 、 c−Nld VAは0.63(7)から0.25(10)に減少し、t−NMEIは0.09(4)から0.18(2)に増加した。P lの 熱 転 位 反 応 と し て 、 リ ン グ の 開 裂 の 後 直 接t‑NMEIが 生 成 す る 反 応 と 、 い っ た んc‑N hIVAが 生 成 しt―NMVAを 経 て1―NMEIが 生 成 す る 反 応 の2種 類 が 考 え ら れ る 。 前 者 が 後 者

よ り も 起 き や す い 反 応 な ら ば 、 反 応 温 度 が 高 く な っ た と き にt−NMEIの 存 在 比 が 増 加 す る と は 考 え ら れ な い 。 解 析 結 果 は 後 者 の 反 応 を 支 持 し て い る 。

‑ 267 ‑

      c/ cH    

Y

´

ff          C      

C    H C

H C

<       H

H

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

小中 市川 佐々木 井川

学 位 論 文 題 名

重 弘     勝 不 可止 駿 一

気 体電子回折によるトリメチルアミンと

プ口ピレ ンイミンの熱分解生成物の分子構造決定

   気体電子回折は簡単な分子を除けば、気相の分子構造を決定するための轟も有カな 実験手段である。高速電子練と気体分子の衝突は弾性的で、エネルギーの移動を伴わ ず、解麗などを起こさない。そのため原理的には短寿命穫の研究に向いているが、実 験と解析の両方の困難さから、気体電子回折による短寿命種の研究はごくまれである。

   本研究では、実験、解析の両面で対策を施し、気体電子回折をトリメチルアミンと ブロピレンイミンの熱分解反応系に適用し、短寿命種の分子構造と存在比を決定し、

反応経路について考察を行っている。そのために、実験では石英靉の熱分解用のノズ ルを製作し、245.1 一一のカメラ距離で、回折像を写真乾板に撮影した。電子練の加速 電圧は約37 kV で、波長は二硫化炭素の回折像から決定した。熱分解の状態を翻ぺる ために四童極質量分析計を用いた。回折写真の撮影の前に加熱試験を行い、質量スペ クトルの強度の温度変化から加熱条件を決定した。

     まずトリメチルアミン(TMA )については、室温で親分子の構造を精密に決定し

(5)

そ の 際 、 各 C − H の 結 合 距 離 の 差 、 及 び 各 NCH の 結 合 角 の 差 を ab tnitio 計 真

( MP2/6 ― 31G ) 結 果 に 固 定 し た 。 TMA 、 NMM I 、 CH4 の 3 成 分 系 で、 反 応 温 度 515 ℃め分子散乱強度をよく再現した。これらの分子の存在比は 63 ( 3 ):19 (2 ).:

18 ( 4 ) であり 、 NMMI と CH. の存 在比 は誤差 内で 一致 した 。この こと は、    こ の実験 条 件 で 、 TMA が 単 純 に NMMI と CH4 に 分 解 す る こ と を 示 し て い る 。   NMMI の 零点平均構造のうちで主要なものは次の通りであった。

     ●

r ( N 〓 C ) = 1.278 ( 6 ) 晝 , r ( N ― C ) = 1 . 458 ( 8 ) A , ZCNC = 116.62 (12 )°。

   反 応 温 度 535 ℃ の 場 台 、 TMA 、 NMMI 、 CH. 、 HCN の 4 成 分 系 で 幼 径 分 布曲棟の実測億をよく再現した。これらの分子の存在比がTHA:NHlII:CB4:HCN =42 ( 2 )      .  J

: 30 (2 ): 19 (4 ): g (2 )であることは、反応が更に進んでいることを示すものである。

   プロ ピレ ンイ ミン ( PI ) につ いて もまず 室温 での 分子 構造を 決定 した 。反 応温度 約 400 ℃ か ら PI の 質 量 ス ペ ク ト ル 強 度 が 増 加 し 、   470 ℃ で 極 大 に なっ た 。 モ れ 以 上の 反応 温度 では 、 CH4 の 質量ス ペク トル 強度 が急滋 に増 加し た。こ のこ とか ら4 70 ℃ま では 主に 転位 反応が 、そ れ以 上の温 度で は分 解反 応が優 勢と なる こと が分か っ た 。 回 折 写 真 は 反 応 温 度 470 ℃ 、   530 ℃ 、 試 料 圧 30Torr で 撮 影 した 。 反 応 温 度 470 ℃ の デ ー タ 解 析 結 果 で は 親 分 子 の PI は ほ と ん ど 存 在 せ ず 、   PI の 転 位 生 成 物 である 反応 中間 体のcis‑N ― メチル ピニ ルア ミン、 trans ‑N −メチルピニルアミン trans ― N‑ メチルエチリデンイミンの構造と存在比を決定することができた。さらに反 応 温度 530 ℃で も実 農を 行い 、その 場合 N − メチ ルピ ニル アミン が、    メ タン とケテ ン イミン に分 解す ること を見い出し、    プロピレンイミンの反応経路を明かにした。

   この よう に蔗 原君 の研究 は高 度な 実験と 解析 手法 に基 づくす ぐれ たも ので ある。

参 考諭文 は印 刷中 のもの を含 めて 3 編 であ る。 いずれ も圏外の権戚ある学術雑誌に発 表 された もの であ る。以 上の所見に基づき、審査員一同は申請者が博士(理学)の学 位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

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参照

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