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博 士 ( 薬 学 ) 古 沢 祐 二

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 古 沢 祐 二

学 位 論 文 題 名

パ ラ ジウム触媒に よるカルバベナム・ ベネム骨格構築法 の開発 お よ び 含 窒素 複 素環 化合 物 合成 への 展 開

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

序論

1976年 のMerck社の研究 陣のよ るチェナ マイシンの発見は、p‐ラクタム系抗生物質の歴史において ペ ニ シ リン (1928年 )、 セファロ スポリ ン(1945年) の発見 と並ぶ、 重要な 発見の1っであ る。

それ以来カルバベナム系抗生物質については、化学的、生物学的研究が継続的になされ、その結果、既 にいくっかの抗菌剤が市販されるに至っている。しかし、現在市販されているカルバペネム剤はいまだ に化学的安定性、生体内安定性、安全性など多くの課題を有しており、それらの早期の解決が望まれて いる。

当研究室では次世代のカルバペネム系抗生物質の探索を目指し、有機金属錯体を用いた新たな方法論に 基づく、カルバペナム骨格の合成法の開発を検討している。その基本的な考え方は、B_ラクタム環を含 む二環性のメタラサイクルからの還元的脱離によルカルバペナム骨格を構築するというものであり、既 に著者はルテニウム触媒を用いることによってカルバペナム骨格の構築に成功している。今回、著者は パラジウム触媒を用いた炭素一窒素結合形成反応によるカルバベナムおよびペネム骨格の構築法の確 立に成功した。またその成果を踏まえ、新しい含窒素複素環化合物の合成へと展開した。これらについ て以下に述べる。

第1章ピニルハライドを用いたカルバペネム骨格の構築

近 年パラ ジウム触媒を用いた炭素一窒素結合形成反応については、BuchwaldやHartwigらにより精力 的な研究がなされており、多くの知見が見い出されている。その多くはアリールハライドとアミンとの カップリング反応であるが、分子内反応の場合、アミドを用いても満足のいく収率で反応が進行するこ とが知られている。著者はカルバペナム骨格の新規合成法の確立を目指し、ビニルハライドから生成す るビニルパラジウム錯体に注目した。すなわち、p―ラクタム環の側鎖にビニルハライドを持っ基質1に 対し、パラジウムが作用すれば、ビニルパラジウム錯体IIを与える。次いで窒素原子がパラジウムと反 応するならば、六員環パラダサイクルIIIを与え、続く還元的脱離によルカルバベネムIVが生成するの ではないかと考えた。

この考えに基づき、カルバベネム系抗生物質の活性発現に重要である、3位にカルボキシル基、1位に p.メチル基を有するカルバペネムを合成することにした。基質として、ブロモ体1a、ヨード体1bを用

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い て 、 パ ラジ ウム 錯体 、配 位 子、 塩基 につ いて 種 々反 応条 件を 検 討し たと ころ 、Pd(OAc)2、DPEphos、 K2C○3を 用い ると よい 収率 で カル バペ ネム2を 与え るこ と を見 い出 した 。ま た 興味 深い こと に 、こ のと きK2C03の 非 存 在 下 で 基 質 、Pd(OAc)2、DPEphosの み で 短 時 間 加 温 し 、 そ の 後 、K2C03を 加 え る と2 の 収 率 は 飛 躍 的 に 向 上 す る こ と が わ か っ た 。

第2章 プ ロ パ ル ギ ル 化 合 物 を 用 い た 六 員 環 パ ラ ダ サ イ ク ル を 経 由 す る カ ル バ ペ ナ ム 骨 格 の 構 築 著者 は 次に 、プ ロパ ルギ ル 化合 物と パラ ジ ウム との 反応 によ っ て得 られ る、 アレ ニ ルパ ラジ ウム 錯 体に 注目 し た。 すな わち 、p.ラ クタ ム 環の 側鎖 にプ ロパ ル ギル エス テル を 持っ 基質Vに 対し 、パ ラジ ウ ムが 作 用 す れ ぱ 、 ア レ ニ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体VIが 生 じ る。 次い で 窒素 原子 がパ ラジ ウ ムと 反応 し、 六員 環 パ ラ ダ サ イ ク ルVIIを 与 え 、続 く還 元的 脱離 に よル カル バペ ナ ム骨 格VIIIが 生成 す るの では ない かと 考 え た。

ま ず 基 質 の 脱 離 基 に っ き 種 々 検 討 し た 。 メ チ ル カー ポネ ー ト3a、酢 酸エ ステ ル3b、 安息 香酸 エス テ ル 3c、 ジ ェチ ルリ ン酸 エス テ ル3d、フ ェニ ル エー テル3eを 用い 、 トル エン 中でPd2(dba)3、P(o‑TOIyI)3ヽ Cs2C03を 加 え70℃ で 反 応 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、3a、3bで は カ ル バ ペ ナ ム4が 得 ら れ る も の の 、 基 質 の 分 解 が 伴 う た め に 低 収 率 で あ っ た 。 反 応 性 の よ り 低 い 安 息 香 酸 エ ス テ ル3cで は、 驚 くべ きこ とに4 の 収 率 は44% に ま で 向 上 し た 。 ま た 反 応 温 度 を55℃ ま で 下 げ た と こ ろ 、 収 率 は さ ら に57% に ま で 向 上した。リン酸エ ステル3dを用いた場合も3cと ほぼ同様の結果が得られた 。

次に本反応の配位 子の効果について検討した。その結果、興味深いことに、P(0−Tolyl)3、P(2‐FuツI)3、 P(CyClohexy| )3のよ うな 単座 配 位子 を用 いる と目 的とするカル バペナム4が得られるのに対 し、DPPF、 BINAP、DPPBの よ う な 二 座 配 位 子 を 用 い る と 予 想 外 な こ と に 六 員 環 骨 格 を 持 っ カ ル バ セ フ ァ ム5、6 が 得 ら れ た 。 特 にDPPFを 用 い た 時 に65% と 高 収 率 で あ っ た 。 こ の 予 想 外 の 生 成 物5、6は 、 ア レ ニ ル パラ ジ ウム 錯体Vlと 平衡 状 態に あるn3ー プ ロパ ルギ ルパ ラジ ウ ム錯 体IXへの 窒素 原 子の 求核 反応 に よっ て得られたものと 考えられる。

第3章プ ロパ ルギ ル 化合 物を 用い たn3― プロ パル ギル パ ラジ ウム 錯体 を経 由するカルバペナム骨格の構 築 先に 基質3cはニ 座配 位子 の 存在 下、 パラ ジウ ム を作 用さ せる と、 窒 素原子 が113―錯体の中心炭素と反 応 し 、 六 員 環 を 持 っ カ ル バ セ フ ァ ム を 与 え た。 した が って 、も し側 鎖の 炭 素鎖 が基 質3cよ りー つ短 い基 質に 対し 二 座配 位子 を用 い た反 応を 試み たな ら ば、 五員 環の カル バ ペナ ム骨 格が 構 築で きる と考えら れ る 。 す な わ ち プ ロ パ ル ギ ル 化 合 物Xは 、 パ ラ ジ ウ ム と の 反 応 に よ ル ア レ ニル パラ ジウ ム 錯体XIと 平衡 状態 にあ る113− プ ロパ ルギ ルパ ラジ ウ ム錯 体XIIを形成する。次いでラク タムの窒素原子が中心炭素ヘ 求 核攻 撃す る こと によ って 兀 ―ア リル パラ ジウ ム 錯体XIIIが生じ、B一水素脱 離によルカルバペナムXIVが 得 られ ると 考 えら れる 。

基 質 と し てip‑メ チ ル 基 を 有 す る ジ ェ チ ル リ ン酸 エス テル7を 用い 、種 々 反応 条件 を検 討 した 結果 、溶 媒 と し てTHF、 塩 基 と し てMeCOONaを 用 い 、 反 応 温 度 を40℃ ま で 下 げ た と こ ろ 、 反 応 は 高 立 体 選 択 的 に 進 行 し 、 ア リ ル エ ス テ ル を 有 す るip‑メチ ルカ ルバ ペ ナム8を78% の高 収率 で得 る こと に成 功し た。

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第4章プロパルギル化合物を用いた単環式含窒素複素環化合物の合成

第2章、第3章では、単座配位子、二座 配位子をそれぞれ用いたニつの環化反応による新しいカルバペ ナム化合物の合成法を確立した。著者はそれらの成果を踏まえ、本反応が他の含窒素複素環化合物の合 成に適用できないかと考えた。

トシル基で保護されたアミンとプロパ ルギル安息香酸とを併せ持っ基質9を用い、第2章と同様の条件 で反応を行ったところ、予想通りP(o‑TOIy|)3を用いると、アレニルパラジウム錯体を経由し五員環化合 物10が得られた。一方、DPPFを用いる とn3−プロパルギルパラジウム錯体を経由し六員環化合物11 が得られた。さらに鎖長をかえたものや鎖上に置換基を持っものなど他の基質を用いても、配位子の使 い分けによる二種の環化体のっくり分けが可能であった。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査   教 授    森   美和 子 副 査    教 授    橋 本 俊 一 副 査   助 教 授   中 島    誠 副 査   助 教 授   佐 藤 美洋

学 位 論 文 題 名

パラジウム触媒によるカルバベナム・ベネム骨格構築法の開発 および含窒素複素環化合物合成への展開

本論文は以下の4章からなっている.

1976年 のMerck社の 研 究 陣の よ る チェ ナ マ イシ ン の 発見 は 、B― ラ クタ ム系抗生 物 質 の 歴 史 に お い て べ ニ シ リ ン (1928年 ) 、 セ フ ァ 口 ス ポ リ ン (1945年 ) の 発 見と 並ぶ、 重要な発 見の1つであ る。それ 以来カ ルバペナ ム系抗 生物質については、

化学 的、生 物学的研 究が継 続的にな され、既 にいくっかの抗菌剤が市販されるに至っ てい る。し かし、い まだに 化学的安 定性、生 体内安定性、安全性など多くの課題を有 して おり、 それらの 早期の 解決が望 まれてい る。有機金属錯体を用いた新たな方法論 に基 づく、 カルバペナム骨格の合成法の基本的な考え方は、p‐ラクタム環を含む二環 性の メタラ サイクル からの 還元的脱 離により カルバペナム骨格を構築するというもの であ る,既 に古沢氏 はルテ ニウム触 媒を用い ることによってカルパベナム骨格の構築 に成 功して いる。今 回、古 沢氏はパ ラジウム 触媒を用いた炭素―窒素結合形成反応に よる カルパ ベナムお よびべ ネム骨格 の構築法 の確立に成功した。またその成果を踏ま え、 新しい 含窒素複 素環化 合物の合 成へと展 開した 。

第1章ピニルハライドを用いたカルパペネム骨格の構築

近 年パラ ジウム触 媒を用い た炭素 一窒素結 合形成反応にっいては、精力的な研究がな されている。その多くはアリールハライドとア ミンとのカップリング反応であるが、

分 子内反 応の場合 、アミドを用いても満足のいく結果が得られている。古沢氏は,B− ラ クタム 環の側鎖 にピニル ハライ ドを持つ 基質に対し、パラジウムが作用すれば、ビ ニ ルパラ ジウム錯 体を与え ,次い で窒素原 子がパラジウムと反応するならば、六員環 パ ラダサ イクルを 与え、続 く還元 的脱離に よりカルパベネムが生成するのではないか と 考えた .この考 えに基づ き、カ ルパペネ ム系抗 生物質の 活性発 現に重要である、3

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位 に カ ル ボ キ シ ル 基 、1位 にp− メ チ ル 基 を 有 す る カ ル バ ベ ネ ム を 合 成 す る こ と に し た 。 基 質 と し て 、 ビ ニ ル ブ 口 ミ ド 体 、 ビ ニ ル ヨ ー ド 体 を 用 い て 、 バ ラ ジ ウ ム 錯 体 、 配 位 子 、 塩 基 に つ い て 種 々 反 応 条 件 を 検 討 し ,K2C03の 非 存 在 下 で 基 質 、Pd(OAc)2` DPEphosの み で 短 時 間 加 温 し 、 そ の 後 、K2C03を 加 え る と 収 率 は 飛 躍 的 に 向 上 す る こ と を 見 い 出 し た 。 本 法 は 従 来Rh錯 体 を 用 い て カ ル パ ベ ネ ム 骨 格 を 合 成 し て き た 方 法 に 匹 敵 す る も の で あ り , 極 め て 興 味 の も た れ る 結 果 で あ る .

  第2章 プ ロ パ ル ギ ル 化 合 物 を 用 い た 六 員 環 パ ラ ダ サ イ ク ル を 経 由 す る カ ル バ ペナム 骨格の構築

古 沢 氏 は 次 に 、 プ 口 パ ル ギ ル 化 合 物 と パ ラ ジ ウ ム と の 反 応 に よ っ て 得 ら れ る 、 ア レ ニ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 に 注 目 し た 。B・ ラ ク タ ム 環 の 側 鎖 に プ ロ パ ル ギ ル エ ス テ ルを 持つ 基 質 に 対 し 、 パ ラ ジ ウ ム が 作 用 す れ ば 、 ア レ ニ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 が 生 じ る 。 次 い で 窒 素 原 子 が パ ラ ジ ウ ム と 反 応 す る な ら ば 、 六 員 環 パ ラ ダ サ イ ク ル を 与 え る の で は な い か と 考 え た 。 種 々 脱 離 基 を 検 討 し た と こ ろ 安 息 香 酸 工 ス テ ル の 場 合 , 収 率 は57% に ま で 向 上 し た 。 リ ン 酸 エ ス テ ル を 用 い た 場 合 も ほ ば 同 様 の 結 果 を 与 え た . 配 位 子 の 効 果 に つ いて検 討したとこ丶ろ、興味深いことに、P(o―Tolyl)3`P(2―Furyl)3`P(Cyclohexyl)3のよう な 単 座 配 位 子 を 用 い る と 目 的 と す る カ ル パ ベ ナ ム が 得 ら れ る の に 対 し 、DPPF、 BINAP、DPPBの よ う な 二 座 配 位 子 を 用 い る と 予 想 外 な こ と に 六 員 環 骨 格 を 持 つ カ ル バ セ フ ァ ム が 得 ら れ た 。 こ の 予 想 外 の 生 成 物 を 古 沢 氏 は 、 ア レ ニ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 と 平 衡 状 態 に あ る113− プ 口 パ ル ギ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 へ の 窒 素 原 子 の 求 核 反 応 によ って 得 られた ものと考えている。

第3章 プ ロ パ ル ギ ル 化 合 物 を 用 い たll3̲プ ロ パ ル ギ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 を 経 由 す る カ ル パ ペ ナ ム 骨 格 の 構 築

古 沢 氏 は も し 側 鎖 の 炭 素 鎖 が ー つ 短 い 基 質 に 対 し 二 座 配 位 子 を 用 い た 反 応 を 試 み た な ら ば 、 五 員 環 の カ ル バ ペ ナ ム 骨 格 が 構 築 で き る と 考 え た 。 基 質 と し てlp− メ チ ル 基 を 有 す る ジ エ チ ル リ ン 酸 エ ス テ ル を 用 い 、 種 々 反 応 条 件 を 検 討 し た 結 果 、 溶 媒 と し て THF、 塩 基 と し てMeCOONaを 用 い 、 反 応 温 度 を40℃ ま で 下 げ た と こ ろ 、 反 応 は 高 立 体 選 択 的 に 進 行 し 、 ア リ ル エ ス テ ル を 有 す る113― メ チ ル カ ル パ ペナ ム を78%の 高収 率 で 得 る こ と に 成 功 し た 。

第 4章 プ ロ パ ル ギ ル 化 合 物 を 用 い た 単 環 式 含 窒 素 複 素 環 化 合 物 の 合 成 古 沢 氏 は 上 記 の 成 果 を 踏 ま え 、 本 反 応 が 他 の 含 窒 素 複 素 環 化 合 物 の 合 成 に 適 用 で き な い か と 考 え た 。 ト シ ル 基 で 保 護 さ れ た ア ミ ン と プ ロ パ ル ギ ル 安 息 香 酸 と を 併 せ 持 つ 基 質 を 用 い 、 予 想 通 りP(o‑Tolyl)3を 用 い る と 、 ア レ ニ ル バ ラ ジ ウ ム 錯体 を経 由 し五 員環 化 合 物 が 得 ら れ た 。 一 方 、DPPFを 用 い る とq ー プ 口 パ ル ギ ル パ ラ ジウ ム錯 体 を経 由し 六 員 環 化 合 物 が 得 ら れ た 。 さ ら に 鎖 長 を か え た も の や 鎖 上 に 置 換 基 を 持 っ も の な ど 他 の 基 質 を 用 い て も 、 配 位 子 の 使 い 分 け る こ と に よ っ て 二 種 の 環 化 体 の っ く り 分 け に 成 功 し た ,

以 上 の 結 果 は 非 常 に 新 規 性 が 高 く 新 し い カ ル パ ペ ナ ム ・ ベ ネ ム 骨 格 構 築 の 方 法 と し て

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のみならず新しいへテ口環合成としても興味がもたれる.よって北海道大学の博士(薬 学)の学位を与えるに足ると審査員一同が認めた.

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参照

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