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学位名 博士(薬学)

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緩和医療におけるオピオイド鎮痛薬の身体依存を中 心とした副作用対策の基礎的検討

著者 小宮 幸子

学位名 博士(薬学)

学位授与機関 星薬科大学

学位授与年度 2014年度

学位授与番号 32676乙第210号

URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000691/

(2)

緩 和 医 療 に お け る オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 の 身 体 依 存 を 中 心 と し た 副 作 用 対 策 の 基 礎 的 検 討

Basic Research for Management of the Adverse Drug Reactions Associated with Opioid Analgesics In Palliative Care: How to manage withdrawal symptoms of opioids

小 宮 幸 子 ( Sachiko, Komiya )

論 文 内 容 の 要 旨

が ん 疼 痛 治 療 に お い て 、 モ ル ヒ ネ を は じ め と す る オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 に よ る 薬 物 療 法 が 中 心 的 役 割 を 果 た す 。 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 は 優 れ た 鎮 痛 効 果 を 示 す が 、 三 大 副 作 用 と し て 知 ら れ る 悪 心 ・ 嘔 吐 、 便 秘 お よ び 眠 気 は 患 者 に と っ て 苦 痛 な 症 状 で あ り 、 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 を 継 続 使 用 す る 上 で の 問 題 と な っ て い る 。 し か し な が ら 、 副 作 用 発 現 の 詳 細 な メ カ ニ ズ ム は 明 確 に な っ て い な い 。 そ こ で 本 研

究 で は 、 特 に が ん 患 者 の QOL を 低 下 さ せ る 消 化 管 機 能 障 害 を 中 心 に 検 討 し た 。 第 1 章 Morphine 誘 発 悪 心 ・ 嘔 吐 、 便 秘 に 対 す る ム ス カ リ ン M

1

受 容 体 拮 抗 薬 の 有 用 性

オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 に よ る 悪 心 ・ 嘔 吐 お よ び 便 秘 の 機 序 を 解 明 す る と と も に 、

既 存 医 薬 品 の 新 た な 適 応 拡 大 の 可 能 性 を 検 討 し た 。 過 去 の 報 告 で 、 olanzapine が オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 に よ る 難 治 性 悪 心 ・ 嘔 吐 に 対 し て 有 効 で 、 M

1

受 容 体 へ の 親 和 性 が 高 い こ と が 示 さ れ て い る こ と か ら 、 M

1

受 容 体 拮 抗 薬 で あ る trihexyphenidyl お よ び pirenzepine を 用 い て morphine 誘 発 悪 心 ・ 嘔 吐 お よ び 消 化 管 輸 送 能 に 対 す る 影 響 を 検 討 し た 。

Trihexyphenidyl な ら び に pirenzepine は 、 フ ェ レ ッ ト に お け る morphine 誘 発 悪 心 ・ 嘔 吐 反 応 を 有 意 に 抑 制 し た こ と か ら 、 morphine 誘 発 悪 心 ・ 嘔 吐 の 発 現 に は M

1

受 容 体 を 介 し た 機 序 が 一 部 関 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 ま た gastrointestinal

transit 法 を 用 い た 小 腸 輸 送 能 お よ び beads 法 を 用 い た 大 腸 輸 送 能 の 測 定 で は 、

pirenzepine は morphine に よ る 消 化 管 輸 送 能 抑 制 作 用 を 改 善 し た が 、 trihexyphenidyl

(3)

は 用 量 依 存 的 に 消 化 管 輸 送 能 を 悪 化 さ せ た 。 以 上 の 結 果 よ り 、 pirenzepine は 、 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 に よ る 腸 管 輸 送 能 抑 制 作 用 に 対 し て 改 善 効 果 を 期 待 出 来 る 事 が

示 唆 さ れ た 。 さ ら に 、 trihexyphenidyl お よ び pirenzepine が morphine に よ る 中 枢 神 経 系 の 活 動 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て tilting cage 法 を 用 い て 自 発 運 動 量 を 指 標 に 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 trihexyphenidyl 前 処 置 に よ る morphine 誘 発 自 発 運 動 量 促 進 作 用 に は 増 加 傾 向 が 認 め ら れ た が 、 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方 、 pirenzepine 前 処 置 で は 全 く 影 響 を 与 え な か っ た 。 し た が っ て 、 morphine と 併 用 し た 場 合 、

pirenzepine は morphine に よ る 中 枢 作 用 に 影 響 を 与 え に く い と 考 え ら れ た 。

こ れ ら の 結 果 よ り 、 pirenzepine は M

1

受 容 体 拮 抗 作 用 を 介 し て 、 morphine 誘 発 悪 心 ・ 嘔 吐 お よ び 便 秘 を 改 善 し 、 中 枢 性 の 副 作 用 に 影 響 を 与 え 難 い こ と か ら 、

morphine に よ る 悪 心 ・ 嘔 吐 、 便 秘 に 対 し て 有 用 性 の 高 い 薬 剤 と な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

第 2 章 μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 作 動 薬 誘 発 退 薬 症 候 の 発 現 に お け る 中 枢 お よ び 末 梢 μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 の 関 与

オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 を 継 続 使 用 す る 上 で 注 意 す べ き 事 項 と し て 、 急 激 な 減 量 や 断 薬 、 オ ピ オ イ ド ス イ ッ チ ン グ に よ る 退 薬 症 候 が 挙 げ ら れ る が 、 臨 床 に お い て は 退 薬 症 候 に 関 す る 注 意 な ら び に 対 処 法 に 関 す る 知 識 が 十 分 に 得 ら れ て い な い の が 実 情 で あ る 。 ま た 、 欧 米 に お い て 、 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 に よ る 副 作 用 を 軽 減

す る 目 的 で 使 用 さ れ る 末 梢 性 μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 拮 抗 薬 で あ る methylnaltrexone が 、 脱 水 症 状 を 伴 う 致 死 性 の 下 痢 を 引 き 起 こ し た 症 例 も 報 告 さ れ て い る こ と か ら 、 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 を 安 全 に 使 用 す る た め に は 副 作 用 マ ネ ジ メ ン ト と 同 様 に 退 薬 症 候 の マ ネ ジ メ ン ト も 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら 、 退 薬 症 候 の 詳 細 な メ カ ニ ズ ム は 明 ら か に な っ て い な い 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 身 体 依 存 の 形 成 機 序 の 解 明 と 、 退 薬 症 候 に 対 す る 対 処 法 を 検 討 し た 。

Morphine 、 oxycodone お よ び fentanyl 処 置 マ ウ ス で は 、 naloxone 処 置 に よ り 体 重 減 少 を 含 め た 種 々 の 退 薬 症 候 の 発 現 が 認 め ら れ た 。 Morphine 処 置 マ ウ ス に

naloxone を 処 置 し た と こ ろ 体 重 減 少 、 振 戦 、 立 ち 上 が り な ら び に 下 痢 が 観 察 さ れ た 。 Oxycodone 処 置 マ ウ ス に お い て も 、 morphine 処 置 マ ウ ス と 同 様 の 退 薬 症 候 が 観 察 さ れ た 。 一 方 、 fentanyl 処 置 マ ウ ス で は 、 morphine お よ び oxycodone 処 置 マ ウ ス と は 異 な り 軟 便 や 鎮 静 が 多 く 観 察 さ れ た 。 以 上 の 結 果 よ り 、 morphine お よ び oxycodone は 類 似 の 退 薬 症 候 の 発 現 機 構 を 有 し て い る の に 対 し 、 fentanyl は 異 な っ た プ ロ フ ァ イ ル を 有 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

末 梢 選 択 的 な オ ピ オ イ ド 受 容 体 拮 抗 薬 で あ る naloxone methiodide は 、 naloxone

(4)

投 与 時 と 同 様 に 下 痢 や 軟 便 を 伴 っ た 有 意 な 体 重 減 少 を 発 現 し た 。 し か し な が ら 、 naloxone 群 と の 間 に 、 体 重 減 少 お よ び 退 薬 症 候 の 総 ス コ ア に 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た 。 ま た 、 fentanyl 処 置 群 に お い て 、 naloxone 投 与 時 に 観 察 さ れ た 鎮 静 は 、 naloxone methiodide 投 与 で は 観 察 さ れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 μ オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 退 薬 時 の 体 重 減 少 の 発 現 に お い て 末 梢 に 局 在 す る μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

退 薬 症 候 発 現 に お け る μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 結 合 部 位 の 関 与 を 検 討 す る た め に 、 morphine お よ び fentanyl 処 置 マ ウ ス に naloxonazine を 前 処 置 し た と こ ろ 、 naloxone に よ る 退 薬 症 候 の 総 ス コ ア お よ び 体 重 減 少 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 し

た が っ て 、 μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 作 動 薬 に よ る 退 薬 症 候 の 発 現 に は 、 naloxonazine 非 感 受 性 の μ オ ピ オ イ ド 受 容 体 が 関 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 さ ら に 、

naloxonazine を 前 処 置 し た morphine 処 置 マ ウ ス に naloxone methiodide を 脳 室 内 投 与 あ る い は 腹 腔 内 投 与 を し た と こ ろ 、 腹 腔 内 投 与 に お い て は naloxone 処 置 群 と 同 様 に 著 明 な 体 重 減 少 を 示 し た 。 こ れ に 対 し 、 脳 室 内 投 与 で は 、 強 度 に 跳 躍 行 動 お よ び 全 身 性 の 振 戦 を 誘 発 し た が 、 下 痢 や 体 重 減 少 は 認 め ら れ な か っ た 。

こ れ ら の 結 果 か ら 、 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 依 存 動 物 に お い て は 中 枢 神 経 系 の naloxonazine 非 感 受 性 部 位 に 由 来 す る 退 薬 症 候 と 末 梢 神 経 系 の naloxonazine 非 感 受 性 部 位 に 由 来 し た 部 位 特 異 的 な 退 薬 症 候 が 発 現 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。

第 3 章 Morphine 退 薬 時 の 下 痢 の 発 現 に お け る セ ロ ト ニ ン 5-HT

2

受 容 体 の 関 与 Morphine 退 薬 時 の 下 痢 の 発 現 に お い て は 、 末 梢 の セ ロ ト ニ ン 神 経 活 性 化 の 関 与 が 報 告 さ れ 、 臨 床 で は ア セ チ ル コ リ ン 受 容 体 拮 抗 薬 が 下 痢 の 治 療 薬 と し て 用

い ら れ て い る 。 そ こ で 、 morphine の 退 薬 時 の 下 痢 に 焦 点 を 絞 り 、 ム ス カ リ ン 受 容 体 拮 抗 薬 お よ び セ ロ ト ニ ン 受 容 体 拮 抗 薬 の 関 与 な ら び に そ の 機 序 を 検 討 し た 。

Morphine 処 置 マ ウ ス で は 、 atropine お よ び ondansetron 前 処 置 に よ り 、 naloxone 誘 発 体 重 減 少 は 有 意 に 抑 制 さ れ た が 、 下 痢 の 発 現 に は 影 響 を 与 え な か っ た 。

一 方 、 ritanserin は naloxone 誘 発 体 重 減 少 お よ び 下 痢 の 発 現 を 強 力 に 抑 制 し た 。 さ ら に 、 5-HT

2

受 容 体 お よ び ド パ ミ ン D

2

受 容 体 拮 抗 作 用 を 持 つ olanzapine は naloxone 誘 発 退 薬 時 の 体 重 減 少 と 下 痢 の 発 現 を 強 力 に 抑 制 し た が 、 D

2

受 容 体 拮 抗 薬 で あ る sulpiride の 前 処 置 で は 抑 制 効 果 は 認 め ら れ な か っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、 morphine 処 置 マ ウ ス に お け る naloxone 誘 発 退 薬 時 の 下 痢 は 、 5-HT

2

受 容 体 を 介 し て 発 現 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

Morphine 処 置 マ ウ ス に お い て 、 fullerene 処 置 に よ り 退 薬 時 の 体 重 減 少 は ほ ぼ

完 全 に 抑 制 さ れ 、 ま た 退 薬 症 候 の 総 ス コ ア も 有 意 に 減 少 し た 。 以 上 の 結 果 か ら 、

(5)

μ オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 に よ っ て 誘 発 さ れ る 退 薬 症 候 の 発 現 に は フ リ ー ラ ジ カ ル が 関 与 し て お り 、 フ リ ー ラ ジ カ ル ス カ ベ ン ジ ャ ー が オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 の 退 薬 症 候 に 対 す る 新 た な 治 療 薬 と な る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。 さ ら に 、 臨 床 上 使 用 可 能 で

あ る N-acetyl-L-cysteine も 、 下 痢 に 伴 う 体 重 減 少 の 有 意 な 抑 制 効 果 を 示 し 、 同 様 に 退 薬 症 候 の 総 ス コ ア も 有 意 に 抑 制 し た 。

最 後 に 、 morphine の 退 薬 症 候 発 現 に お け る 5-HT

2

受 容 体 お よ び フ リ ー ラ ジ カ ル の 相 互 作 用 を 明 確 に す る た め に 、 セ ロ ト ニ ン 誘 発 下 痢 の 作 用 機 序 を 検 討 し た 。

セ ロ ト ニ ン 処 置 に よ り 、 vehicle お よ び morphine の 両 群 で 同 様 に 下 痢 お よ び 軟 便 に 伴 う 著 明 な 体 重 減 少 が 認 め ら れ た 。 Ritanserin は 、 vehicle 処 置 マ ウ ス に お い て セ ロ ト ン 誘 発 体 重 減 少 お よ び 下 痢 に 有 意 な 影 響 を 与 え な か っ た 。 一 方 、

morphine 依 存 マ ウ ス に お い て は 、 体 重 減 少 お よ び 下 痢 を 有 意 に 抑 制 し た 。 さ ら に 、 fulleren は morphine 依 存 マ ウ ス に お け る セ ロ ト ニ ン 誘 発 体 重 減 少 お よ び 下 痢 を 有 意 に 抑 制 し た 。 一 方 で 、 vehicle 処 置 マ ウ ス に お い て は 下 痢 を わ ず か に 抑 制 し た が 、 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、 morphine 依 存 下 で は 、

5-HT

2

受 容 体 お よ び フ リ ー ラ ジ カ ル 産 生 な ど の 機 能 的 変 化 が 、 退 薬 時 の 下 痢 に 関 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 morphine 処 置 マ ウ ス の 大 腸 に お け る 5-HT

2

受 容 体 mRNA レ ベ ル に 変 化 が 認 め ら れ な か っ た こ と か ら 、 morphine 依 存 マ ウ ス で は 、 大 腸 に お い て 5-HT

2

受 容 体 の 変 化 を 伴 わ ず に 5-HT

2

受 容 体 機 能 の 変 化 が 起 こ り 、 フ リ ー ラ ジ カ ル が 形 成 さ れ 、 morphine 退 薬 時 の 下 痢 に 付 随 し て 起 こ る 体 重 減 少 を さ ら に 促 進 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

以 上 本 研 究 の 結 果 よ り 、 morphine 依 存 マ ウ ス に お け る 退 薬 時 の 下 痢 の 発 現 に

は 、 末 梢 の 5-HT

2

受 容 体 の 活 性 化 と 、 引 き 続 い て 起 こ る フ リ ー ラ ジ カ ル 産 生 が

重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら の 知 見 か ら 、 5-HT

2

受 容

体 拮 抗 薬 お よ び フ リ ー ラ ジ カ ル ス カ ベ ン ジ ャ ー は 、 オ ピ オ イ ド 鎮 痛 薬 の 退 薬 症

候 の う ち 、 特 に 下 痢 に 対 す る 新 た な 治 療 薬 と な り う る と 考 え ら れ る 。

(6)

学 位 授 与 機 関 星薬科大学

コミヤ  サチコ

小宮 幸子 (神奈川県)

学 位 の 種 類 博士(薬学)

学 位 記 番 号 乙 第210号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月10日 学 位 授 与 の 要 件

学 位 論 文 の 題 名 氏 名 ( 本 籍 )

学位規則第4条第2項該当者

緩和医療におけるオピオイド鎮痛薬の身体依存を中心とした副作用対策の

基礎的検討

(7)

論文審査の結果の要旨及び担当者

二    .

小宮 幸子

主 査   教 授

論文審査担当者

副 査   教 授

鈴木 勉 上取ノ

ミ ノ

成田年 ㊨

副 査  教 授    武藤 章弘   印

題  目

緩和医療におけるオピオイド鎮痛薬の身体依存を中心とし た副作用対策の基礎的検討

WHO方式がん痺痛治療法において、オピオイド鎮痛薬は中心的役割を担ってい る。オピオイド鎮痛薬は優れた鎮痛効果を示すが、便秘や悪心.嘔吐など患者 にとって苦痛となる副作用が継続使用する上で問題となるo さらに、継続使用 における注意事項として、急激な減量や断薬、オビオイドスイッチングによる 退薬症候が挙げられるが、臨床においては退薬症候に対する注意が払われてい ないと同時に、その対処法に関する知識も十分には得られていないのが現状で ある。欧米では、便秘の予防に用いられる末梢性〃オピオイド受容体括抗薬 methylnaltrexoneにより脱水症状を伴う致死性の下痢が発現した症例が報告 されている。このような事から、オピオイド鎮痛薬を安全に使用するためには 副作用および退薬症候のマネジメントが非常に重要である。そこで本学位論文 では、オピオイド鎮痛薬による消化器系副作用と退薬症候の発現機序および治 療薬の可能性について検討を行なっている。

多元受容体標的化抗精神病薬であるolanzapineは、モルヒネ誘発悪心・嘔 吐を抑制し、さらにムスヵリンMi受容体への親和性が高いことが報告されてい る。そこで、Mi.受容体括抗薬であるtrihexyphenidylおよびpirenzepineを 用いて、morphine誘発悪心・嘔吐および消化管輸送能への影響を検討している。

そして、trihexyphenidyl−および pirenzepine は、フェレットにおける morphine誘発悪心・嘔吐反応を有意に抑制することを兄いだしている。また、

マウスを用いた小腸輸送能(gastrointestinaltransit法)および大腸輸送能

(beads法)の測定では、pirenzepineはm。rphineによる消化管輸送能抑制作 用を改善したが、trihexyphenidylは用量依存的に大腸輸送能を悪化させた。

以上の結果より、morphine誘発悪心.嘔吐および便秘の発現にはMi受容体が

関与し、pirenzepineは便秘改善効果を併せ持つ制吐薬としてmorphineの副作

用対策薬になりうる事を明らかにしている。

(8)

次に、各〝オピオイド受容体作動薬による退薬症候の遣いおよび〝オビオイ ド受容体作動薬依存動物の退薬症候発現における中枢および末梢〃オピオイド 受容体の関与について検討を行なっている。Morphineおよび。xyCodone処置 マウスにnaloxoneを処置したところ体重減少、振戦、立ち上がりならびに下痢 等の退薬症候が観察されている。一方、fentanyl処置マウスでは軟便や鎮静が 多く観察されている。これらの結果より、morphineと.oxycodoneは類似の退 薬症候を発現し、fentanylとは異なる表現型の退薬症候を発現することを示唆

している。末梢選択的なオピオイド受容体括抗薬である naloxone methiodide は、nal。xone と同様に下−痢を伴う有意な体重減少を発現した。さらに、

nalox。nazine を前処置した morphine 処置マウスにおいて、naloxone methiodide腹腔内投与ではnal。xone処置群と同様に著明な体重減少を示し たo一方、脳室内投与では強度に跳躍行動および全身性の振戦を誘発したが、

下痢や体重減少は認められていないoこれらの結果から、オピオイド鎮痛薬依 存動物においては跳躍行動など中枢神経系のnaloxonazine非感受性部位に由 来する退薬症候と、下痢など末梢神経系のnaloxonazihe非感受性部位に由来

した退薬症候が発現することを示唆したo

最後に、下痢への関与が報告されているムスカリン受容体およびセロトニン 受容体の括抗薬を用い、m。rphine退薬時の下痢発現へのムスヵリン受容体およ びセロトニン受容体の関与とその機序を検討しているo Morphine処置マウスで は、atr。pineおよびondansetron前処置により、naioxone誘発体重減少は有 意に抑制されたが、下痢の発現には影響を与えない。一方、5−HT2受容体括抗薬 であるritanserinおよび5−HT2受容体括抗作用を持つ oianzapineは nalox。ne誘発体重減少および下痢の発現を強力に抑制する事を兄いだしてい

る。さらにritanserinは、Vehicle処置マウスにおいてセロトニン誘発下痢と それに伴う体重減少に有意な影響を与えないが、morphine依存マウスにおいて は有意な抑制を示す事も兄いだしている。これらの結果から、morphin。退薬時 の下痢発現には末梢の5−HT2受容体の活性化が重要な役割を果たしており、

5−HT2受容体括抗薬は退薬時の下痢に対する治療薬となりうることを示唆したo

本学位論文ではmorphine誘発悪心.嘔吐および便秘の発現にMi受容体が関

与し、pirenzepineが便秘改善効果を併せ持つ制吐薬としてmorphineの副作用

対策薬になりうる事を明らかにしたo さらに、オピオイド鎮痛薬依存動物にお

いては跳躍行動など中枢神経系のnaloxonazine非感受性部位に由来する退薬

埠候と、下痢など末梢神経系のnaloxonazine非感受性部位に由来した退薬症

候が発現することを示唆したo加えて、m。rphine退薬時の下痢発鄭こは末梢の

5−HT2受容体の活性化が重要な役割を果たしており、5−HT2受容体括抗薬は退薬

時の下痢に対する治療薬となりうることを示唆した。これらの内容は、科学的

にも、臨床的にも価値があり、関連分野に大きく貢献している。また、本論文

は正確に記載されており博士(薬学)の学位論文として相応しいと判断した。

参照

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