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発達障害を知る

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(1)

発達障害の理解と対応

平成16年6月24日(小樽聾学校)

道立札幌肢体不自由児総合療育センター

小児精神科 長沼 睦雄

(2)

発達障害とは

(宮本信也)

徴(今のところ明確な定義は存在しない)

高次脳機能障害

非進行性

発達期(18歳未満)に生じる

表現型(問題の行動への表れ方)

遅れ

(同じ年齢の子どもの大多数ができること

ができない)

:知的発達障害

偏り

(通常の子どもに見られる行動ではあるが、

その程度が通常範囲を超える):ADHD

歪み

(通常の子どもには見られない行動が見ら

れる)

:広汎性発達障害

(3)

発達障害の分類

1.広汎性発達障害 自閉症・アスペルガー症候群 レット症候群・小児崩壊性障害 2.言語障害 発達性言語障害・吃音・選択緘黙 3、 学習障害 読み書き障害・算数障害 4、運動障害 脳性麻痺・発達性協調性運動障害・チック障害 5.注意欠陥・多動性障害 不注意型・多動衝動型・混合型 反抗性挑戦性障害・行為障害 6.知的障害 最重度・重度・中度・軽度・境界線知能

(4)

軽度発達障害とは

(宮本信也)

・配慮と対応が必要とされている子どもたち

を総称

して示すために使用されるようになった。

・わが国でこの数年来、使用されるようになったが、

正式に定められ使用されている用語ではない。

「軽度」とは「発達障害が軽い」という意味では

なく、「知的障害がない」(IQ70以上)とい

う意味である。

(5)

軽度発達障害の特性

(1)

高次脳機能障害

と考えられる

(2)

遺伝素因

胎児期外因

が関係する

(3)

乳幼児早期の

環境との相互作用

が影響する

(4)

見た目には

障害とは思えない

(5)

正常範囲との

線引きが難しい

(6)

様々な

発達特性が重なり合う

(7)

専門家により

診断が違う

こともある

(8)

発達的に

特性が変化

しうる

(9)

特有の心理反応

が生じやすい

(10)

自己認識

自己表現

が苦手である

(11)

放置すれば

問題行動に発展

しやすい

(6)

診断の考え方

特性モデル

:本人を特徴づける一つの質あるいは属性

状態モデル

:本人が時々入るある特殊な意識行動状態

正常から病的に至る幅広い体験を一つの連続体とする

(スペクトラム概念)

正常状態

:不適応的な反応との連合が存在しない状態

病的状態

:障害を含めて不適応を増大させる状態

(7)

軽度発達障害の種類と頻度

(2003、杉山ら)

・高機能広汎性発達障害(

8∼10人

・注意欠陥多動性障害

30人)

・学習障害

30人)

・発達性協調性運動障害(

・境界性知能

(

140人

)

・軽度精神遅滞

(18∼20人)

児童1000人あたり

6%

(Palatajko, 1999)

(8)

発達特性把握表

(リソースセンター

one

作成, 一部改変)

心理検査

(全検査IQ、言語性IQ、動作性IQ)

認知特性

(認知のアンバランス)

下記の傾向の各々の種類と程度をチェックする

LD傾向

(読字障害、書字障害、算数障害)

ADHD傾向

(不注意優位、多動・衝動性優位)

PDD傾向

(高機能自閉症、アスペルガー症候群

特定不能の広汎性発達障害)

運動障害

(粗大運動、微細運動、チック)

感覚障害

(視覚、聴覚、触覚、前庭覚)

(9)

発達障害診断の記載ない性質

共感性

が強いか、弱いか

好奇心

が強いか、弱いか

不安

が強いか、弱いか

五感

が過敏か、鈍感か

直感

が敏感か、鈍感か

時間

に敏感か、鈍感か

性格

が内向か、外向か

音楽

が得意か、音痴か

方向

が得意か、音痴か

運動

が器用か、不器用か

(10)

軽度発達障害診断の優先順位

国際的診断基準(DSM−Ⅳ)

・PDD

ADHD

・PDD

DCD

・PDD

LD

・ADHD

LD

PDD=広汎性発達障害

ADHD=注意欠陥多動性障害

LD=学習障害

DCD=発達性協調性運動障害

(11)

人間の発達

(12)

発達障害(人間)の理解

行動

(13)

発達障害へのアプローチ

神経的要因

行動

精神的要因 概念的要因 遺伝的要因 経験的要因 環境的要因 応用行動分析学 認知神経科学

(14)

「自己の複数の行動状態」

の調整に対する制御力の獲得

感情

思考

行動

(15)

臨床心理士など

感情

思考

行動

行動主義的視点 ストレス→防衛機制→感情 認知主義的視点 出来事→結果→行動 精神力動的視点 信念・情報処理⇔思考・感情 教育心理士など 福祉心理士など

(16)

脳の機能分担と相互連絡

非言語系 表出系 認知系 右 左 前 上 覚醒・情動系 言語系 受容系

(17)

出力依存性学習

過去から将来を先読みし、現在に対応する

( 「情と意の脳科学」 松本 元、2002 )

① 脳はまず「学習」によって答え(アルゴリズム)を 予め用意し、これによって「先読み」をする。 ② 入力情報は、脳から答えを引き出す「検索情報」 として用いられる ③ 脳は入力情報を得るとそれによって答えを出力する 必要があるかを判断し、必要があれば出力する ④ 脳から出力があると「学習効果」が生じ、答え (アルゴリズム)が書き改められる。 (学習は「出力依存性」であり「先読み」を可能にする)

(18)

遺伝子と環境はどう作用するか

遺伝子・環境相関

( 「情と意の脳科学」 松本 元、2002 )

回路の大まかな設計 脳 遺伝子 回路の選択的淘汰圧 環境 行動

(19)

遺伝子と環境はどう作用するか

遺伝子環境相関

( 「情と意の脳科学」 松本 元、2002 )

・脳の神経回路は、将来必要のない配線も含めて遺伝的に決 定される形で大まかな配線ができあがるが、学習によってよ く使われる神経回路では特異性の強い結合ができるが、後天 的に不要とされる回路は間引きされていく(神経回路の選択 淘汰) ・環境の影響を受けながら発達する脳は、逆に性格や行動を 介して個人をとりまく環境に影響を及ぼす。 (例)生まれつきの才能に適切な環境が与えられれば、さら にその能力に磨きがかかる。 (例)生まれつき愛想のよい子は親の愛情を引き出しやすく、 それを学習することにより(神経回路は強化され)さらに愛 想のよい子に育つ。

(20)

遺伝子と環境はどう作用するか

遺伝子・環境相関

( 「情と意の脳科学」 松本 元、2002 )

・不安傾向の強い親が、その遺伝子を子に伝えるとともに、 子どもの不安を助長する環境を作り、その遺伝子の表現型の 形成が強化される。 (受動的・遺伝子環境相関) ・生得的に反社会的な性格傾向を持った人は、その性格傾向 のために、周囲の人間の懲戒的な態度を招き、後天的にもそ の性格傾向が促進される。 (喚起的・遺伝子環境相関) ・車を運転する時に、損害回避傾向の強い人は、慎重な運転 を心がけるために、事故に合う頻度や事故時に受ける障害の 程度が下がる。 (能動的・遺伝子環境相関)

(21)

虐待とネグレクトの心理的影響

(静療院・黒川新二)

ー親との心の結びつきを経験せずに育つとー

精神発達に必要な体験ができない

→(探索経験の欠乏)知的発達の遅れ

→(経験や情報を構造化する指導役の不足)

親との共通のものの見方ができない

共感性や感情処理能力が育たない

→パーソナリティの偏り

「基本的信頼」の欠如

→(神経症やうつ病など

精神医学的障害)

(22)
(23)

高次脳機能障害

(1)認知障害

①記憶障害

②注意障害

③遂行機能障害

④失語症

⑤失認症

⑥失行症

(2)行動・情緒障害

①依存性・退行性

②感情調整障害

③欲求調整障害

④意欲・発動性低下

⑤固執性

⑥多弁・多幸

⑦共感性低下

(24)

記憶障害

(1) 記憶の要素

①登録 ②保持 ③再生

(2)記憶の分類

①意味記憶(言葉、知識)

②エピソード記憶(思い出、イメージ)

③運動記憶(習慣、技能)

④感情記憶(感覚、感情)

(3)記憶の保持

①即時(分) ②近時(時) ③遠隔(日年)

(25)

遂行機能障害

(前頭葉機能)

注意機能障害

(右前頭葉∼

頭頂葉機能)

① 動機

② 計画

③ 試行錯誤

④ 持続

⑤ 反省

① 持続性(安定性)

② 選択性(集中性)

③ 変換性(易動性)

④ 分配性(同時性)

(26)

2系統の情報処理

継次処理

同時処理

1つづつ、正確に、

順序だてて、言語的に

(前頭葉∼側頭葉)

一度に、大まかに、

全体的に、視覚的に

(頭頂∼後頭∼側頭葉)

(27)

作動記憶容量

(ワーキング・メモリー)

Just&Carpenter(1992) の3CAPS model

「処理」と「保持」は

トレードオフ

の関係にある

保 持 処 理

(28)

脳の発達

(PETによる研究)

(畑澤 順、医学のあゆみ 204,2003)

大脳皮質ブドウ糖代謝(消費量)

• 1歳児では成人の60∼70%にすぎないが、3∼ 5歳には成人のレベルに達し、6∼8歳には約2倍 の代謝活性を示す。 • 8∼10歳からはじまる代謝の低下は、10∼20 歳の10年間に徐々に低下し、20歳には成人のレ ベルとなる。 • これらの変化は、大脳皮質におけるシナプスの過剰 形成とその後の選択的除去を反映している。

(29)
(30)

脳深部の構造

基底核

帯状回

海馬

小脳

(31)

感覚情報と扁桃体(核)

扁桃体 触覚 味覚 超感覚 嗅覚 聴覚 視覚 あらゆる感覚情報は扁桃体に集められ意味(価値)付けされる

(32)

情動をつかさどる脳部位

(Antonio・R・Damasio、2003) 右半球内側面 左半球内側面 扁桃体 脳幹核 前頭前・腹内側 前脳基底部視床下部 前部帯状回

(33)

直感情報処理システム

(松本 元)

感覚器官から直接情報を受け取り

、大脳皮質が事

態を完全に把握できる前に反応を開始する。

情動の反応や記憶

には、

意識や認知とは全く無関

に形成されるものがある。

・「視床から扁桃核へ」

の直通ルート

は、感覚情報

の一部を伝えるだけで、

速いが不正確な情報

しか

伝わらない。

・「扁桃核」

に起因する情動の興奮

を抑えるのは、

「前頭前野・腹内側部」の働きである。

(34)

「理性と感情」の神経システム

(「生存する脳」アントニオ・R・ダマシオ著 ) 一連の神経システムが3つの領域の機能に関係している 扁桃体(核) 前頭前野 腹内側部 前頭前野 背外側部 右脳 体性感覚 領野 「推論・意思決定」 ⇔ 「情動・感情」 ⇔ 「身体信号処理」

(35)

Urbach-Wiethe病

(扁桃体のみが変性する後天性の病

気)

(症例)ステファヌス・コンラティ(49歳)

・この病気により

恐怖を感じなくなった。

・ 妻が悲しんだり悩んだりしていることがわからなく

なった。

・人が誰かはわかるが、

人の顔の表情が読めず、感情

を読み取れなくなった(特に恐怖の感情を)

・感情とは、

感覚情報に扁桃体がつけた「情報の重

み」

であるため、感情がないと決断ができなくなる

・両側の扁桃体を切除したサルは、

本来怖がるはずの

ヘビをまったく怖がらなくなってしまう。

(36)

社会性の脳

(アントニオ・R・ダマシオ)

「前頭前皮質の腹内側部」が損傷されると

・基本的な知識や言語は無償であっても、それまでに

身につけた

社会的習慣や倫理的ルールを守ろうとす

る力

が失われてしまう。

• そこは

意思決定を生み出す

のに必要な構造であり、

正常な知性を持っていながら、個人的な問題や社会

的な問題についての適切な決断ができなくなる。

「右半球の体性感覚皮質」が損傷されると

推論・意思決定

情動・感情

の双方の機能を衰退さ

せ基本的な身体信号のプロセスも阻害されてしまう。

(37)

強化学習

予測を伴う・目標指向型の・試行錯誤学習)

環境刺激を認知

し、それに対するさまざまな行動の

報酬を予測する

報酬予測

に基づいて最適な行動を選択し実行する

③予測された報酬と行動によって得られた報酬の差で

ある

報酬予測誤差

を計測する

④報酬予測誤差を最小とするように

報酬予測を改善

(学習)する

• 大脳基底核―前頭連合野系

が担っている

• 黒質―線条体ドーパミン系

が報酬予測誤差信号を大

脳基底核に伝えている

(38)

運動の制御と学習

(銅谷賢治)

「教師あり学習」

(小脳)

誤差信号をもとに作った「内部モデル」により

ある行動が状態のどういう変化につながるかを予測

する

「強化学習」

(大脳基底核)

ドーパミン細胞が伝える報酬信号により、長期的な

報酬を最も大きくするように状況に応じた行動をす

「教師なし学習」

(大脳皮質)

感覚運動情報に潜むモジュール構造(意図)を取り

出す

(39)

強迫性障害の脳内機構

強い不安感情

繰り返し生じる同一思考

尾状核 淡蒼球内節 視床 前頭葉眼窩面 扁桃体 取り越し苦労情報 脱抑制性興奮 不安回路

(40)

不安への対処法

心の支えとなる人がいること

見守り 信頼 安心

状況不安

(どうしてよいかわからない)

感覚不安

(感覚刺激に耐えられない)

予告

リハーサル

スケジュール

援助

モデル

成功体験

先の見通しがたつこと

具体的手だてがあること

(41)

聴覚系認知に障害があると

耳からの情報処理がうまくいかない

・音や声がみんな同じ強さに聞こえてしまう

・教室の中で先生の話に集中できない

・集団の中で指示が聞き取れない

・似た音を聞き誤る

・声での指示がわかりにくい

・一生懸命に聞いていても内容が理解できない

・周りの様子を見ながら行動するので出遅れる

・勘違いのような行動が見られる

・落ち着きがないように見える

(42)

聴覚系認知と短期記憶の障害があると

言葉の短期記憶がうまくいかない

・話しているうちにどんどん話がずれてしまう

・指示されたことを忘れて何度も聞き返す

・いくつかの用事を頼んでも、それらをこなせない

・計算で「となりから借りたこと」を忘れてしまう

・ある行動を始めたのに、他の言葉や音につられて

違う行動にそれてしまう

(43)

視覚系認知に障害があると

目からの情報処理がうまくいかない

・すべてのものが同じ強さで目に飛び込んでくる

・他の箇所に焦点が合ってしまう

・落ち着きが無いように見える

・教科書の文字をおえない

・よく似た文字を読み間違ったりする

・行を飛ばし読みする

・漢字を書くと、線が足りなかったり多かったり、

細かいところが不正確である

(44)

空間系認知に障害があると

ものの位置関係の情報処理がうまくいかない

・鏡文字がみられる

・筆算の桁がずれやすい

・迷子になりやすい

・地図の見方がなかなかわからない

・自分の体の身体部位の感覚が悪い

・左右前後などがすぐにわからない

・ロッカーの位置をなかなか覚えられない

・高さや方向を変えてみると混乱する

(45)

社会的認知に障害があると

対人関係の情報処理がうまくいかない

・相手が誰であっても同じ調子で話してしまう

・わかりきっていることをずっと話す

・ことばの裏の思いを推し量ることができない

・相手がどう思っているのかわからない

・周囲の状況が把握できない

・その場の雰囲気がわからない

・冗談が通じない

(46)

身体的認知に障害があると

身体知覚の情報処理がうまくいかない

・運動がギクシャクして滑らかさにかける ・手足の動きが不自然な感じを受ける ・スキップができない ・ボール運動が苦手である ・遊戯や体操を覚えるのが苦手である ・リズムに合わせることが難しい ・同じ姿勢を維持できないで、絶えず動かしている ・姿勢がくずれやすいく、きちんと座れない ・バランスが悪く転びやすい・力の加減ができない

(47)

認知的アンバランス

(WISC−Ⅲ)

(48)

WISC−Ⅲ(知能検査)の解釈

言語性能力 注意・記憶

(継次処理)

構成能力 (同時処理)

(49)

HFPDD

同時(構成)>

継次(記憶)

>>

言語

84 91 101

(50)

HFPDD

: 継次(記憶)

>>同時(構成)>

言語

84 79 78

(51)

PDD+ADHD

同時(構成)>

言語

>>

継次(記憶)

100 104 106

(52)

PDD+ADHD

言語

>>

継次(記憶)

>同時(構成)

100 89 78

(53)

PDD+MR

同時(構成)>

継次(記憶)

>>

言語

58 64 78

(54)

PDD+MR

: 継次(記憶)

言語

=同時(構成)

58 52 54

(55)

ADHD+MR

同時(構成)=

言語

>>

継次(記憶)

66 65 72

(56)

ADHD+MR

言語

継次(記憶)

=同時(構成)

66 56 56

(57)

言語性LD

同時(構成)>

継次(記憶)

言語

62 82 107

(58)

非言語性LD

言語

継次(記憶)

> >同時(構成)

132 104 73

(59)

自閉症スペクトラム障害

(1)社会性障害

(2)コミュニケーション障害

(3)想像力障害

特定不能の

広汎性発達障害

【広汎性発達障害】

自閉症

診断基準 1∼2/1000人 6∼7/1000人 親を求めない、目があわない、双方向の交流ができない、人の気持ちが読めない 言葉の遅れ、オウム返し 比喩や冗談がわからない 気持ちの交流が難しい 疑問文による要求 会話が困難 自己刺激行動の反復 特定のものへの強い興味 順番や位置へのこだわり

(60)

高機能広汎性発達障害 (HFPDD)

高機能=知的障害なし(IQ70以上)

高機能といっても、やはり自閉症である

(1) 高機能自閉症 (HFA)

社会性障害(+)コミュニケーション障害(+)想像力障害(+)

(2) 特定不能の広汎性発達障害 (PDDNOS)

社会性障害(+)コミュニケーション障害(+)想像力障害(ー) 社会性障害(+)コミュニケーション障害(ー)想像力障害(ー)

(3) アスペルガー症候群 (AS)

社会性障害(+)コミュニケーション障害(ー)想像力障害(+)

(61)

高機能自閉症(HFA)と

アスペルガー症候群(AS)の違い

二つの考え方

(1)ASとHFAは

質的にほぼ同じ

である

自閉症のうち、知的障害がなく

言語が発達している人たちのこと

(2)ASとHFAは

質的に別

である

(一部で重なるというのも含める)

HFA→ 言語能力<視空間能力

AS→ 言語能力>視空間能力、不器用

(62)

HFA(高機能自閉症)

【知的能力】

全体的遅れがない、言語性<動作性

同時処理(構成)が強い、意味理解が弱い

【運動能力】

協調性運動や集団競技が苦手

【社会能力】

マイペースで、集団に合わせられない

ルールを理解しにくい、変化に弱い

【注意能力】

自分の世界にいて、周囲を気にしない

【学習能力】

言語性(話す聞く)LDを伴う

【感覚能力】

感覚過敏性が目立つ

【どのような様子が見られたら疑うか】

友達ができない、

一人でも平気、自分の世界にいる、偏った興味、言葉が

少ない、物忘れ、不安がつよい、切り替えが苦手、パニッ

クになる

(63)

AS (アスペルガー症候群)

【知的能力】

全体的遅れがない、言語性>動作性

継次処理(順番記憶)が強い

【運動能力】

運動音痴や不器用さが目立つ

【社会能力】

マイペースで、こだわりが強い

【注意能力】

外界や内面に気が散りやすい

【学習能力】

LD(読み書き障害)を伴うことがある

【感覚能力】

感覚過敏や自律神経過敏あり

【どのような様子が見られたら疑うか】

友達ができにくい、

一人を好む、おとなしい、ものしり(・・・博士)、変わった興味。

こだわる、大人びた口調、だらしない、物忘れ、パニック

規則を守る、正義感が強い、記憶がよい、繊細

(64)

広汎性発達障害(特定不能)

PDD(NOS)

【知的能力】

標準範囲(IQ85~)、知的境界領域(IQ70~85)

言語理解系が弱い傾向がある

【運動能力】

集団競技が苦手

【社会能力】

社会性・共感性が弱く、自分勝手な言動あり

【注意能力】

多動・衝動性よりは、不注意が目立つ

【学習能力】

読みは強いが、LD(話す聞く)を伴うことあり

【感覚能力】

感覚過敏や鈍麻がある

【どのような様子が見られたら疑うか】

友達は作れるが、

上手く遊べない、集団行動が苦手、会話が苦手、読解が苦

手、感情表現が苦手、自己表現が苦手、自己認識が弱い

(65)

自閉症理解のキーワード(1)

(1) Single Focus (単一焦点)

Mono Track (単一路線)

一度に一つのことしか意識できない

部分的意識

、木をみて森をみず)

ものごとの二重構造が理解できない

表面的理解

、字義どうりの解釈)

同時に2つのことが行えない

系列的実行

、一回に一個)

(66)

「中心的・首尾一貫性」の障害

(セントラル・コヒーレンス)

複雑な社会的状況の中心に

首尾一貫して存在している

意味合いを把握する能力

・自らの体験にとって、体験のどの部分が重要で、どの部分が 重要でないかを判断することに困難さがある ・体験の部分をつなげて自らの体験を理解していくので、一つ 一つの体験が、その本質的な意味合いから離れた具体的な事実 のつながりとなってしまう。 ・自らが理解した事実のつながりが少しでも変わってしまうと、 理解全体がこわれてしまい不安感やパニックにおそわれる。

自閉症理解のキーワード(2)

(67)

(3) Anxiety (不安)

① どうしてよいかわからない(

状況不安

② どうしても耐えられない

感覚不安

(4) Flash back (フラッシュバック)

過去の記憶が鮮明に視覚的感覚的に想起される

(5) Visual thinking (視覚的思考)

言葉が映像になり映像で記憶したり考えたりする

(6) Hyper-sensitivity (感覚過敏性)

特有の感性を持ち、外界の刺激に引き付けられる

自閉症理解のキーワード(3)

(68)

(1) Single Focus (単一焦点)

① 一度に一つのことしか意識できない

複雑なものは部分に分ける

② ものごとの二重構造が理解できない

意味理解よりも模倣して行う

③ 同時に2つのことが行えない

一回に一つのことを、部分から全体へ

(2) Anxiety (不安)

① どうしてよいかわからない→

視覚的・具体的・肯定的

② 感覚に耐えられない→

慣れさせるより無理させない

刺激を制限する、遮断する

自閉症の理解と対応

(69)

自閉症と多動症の合併(1)

自閉(不安)vs 多動(好奇心)

・多動のお母さんが、気まぐれに無計画に自閉の娘を連れまわ してパニックを起こさせている状態を一人でやっているような もの。(一人二役、二人羽織、鼻うどんママ) ・自閉が口を開けて待っていたら、多動が勢いよく鼻にうどん をつっこむ状態 ・他者を他者と認識できない時から他者の反応を観察していた。 ・すぐには活用できないなりにデータを蓄積することができた。 ・意義がわからないうちから現場で鍛錬できた。 「教えて私の脳みそのかたち」 ニキ・リンコ著より

(70)

自閉症と多動症が合併(2)

認知や記憶のコマギレ

・自閉は記憶を後で再生して考えることで、その場での理

解の悪さを補っているのに、「不注意」や「せっかち」や

「ぐうたら」があると、

後で一人でおさらいする段階でツメ

が甘くなってしまう。

・因果関係が記憶に残るためには、ある程度の時間、注

意が向き続けていなければいけないのに、興味が途中

で途切れてしまい

因果関係の観察データが集まらない。

・言葉で覚えたり、理屈で覚えた因果関係は頭に残って

いるが、

実体験からはあまり入ってこない

「教えて私の脳みそのかたち」 ニキ・リンコ著より

(71)

21世紀の自閉症教育の課題

異文化との自閉症との共生

杉山登志郎

自閉症スペクトラム研究 創刊号 2002、Vol1.1−8

(72)

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)

(自閉症スペクトラム研究・創刊号・2003・杉山登志郎) 昔の自閉症の概念 高機能自閉症 アスペルガー症候群 小児崩壊性障害 重度 広汎性発達障害 障害 軽度 知的 低い 高い

(73)

自閉症の「山」

従来の自閉症概念

は自閉症の「山の頂」にすぎない。

・この山は「広い裾野」を持ち、右の裾野は「健常児・健常

者のなかの性格の偏奇」に広がりを持ち、左の裾野は「重

度の遅滞」に広がりを持つ。

・自閉症の診断基準を機械的に用いると、

知的障害が重

度であればあるほど

、「自閉症を合併」する割合が増える

(Happe, 1994)

重度のダウン症

において、「自閉症が合併」することは一

般的である。

・「知的な障害を伴わない群」の割合が、

全体の約半数

占める(Honda, 1996)

(74)

ASDは増えているか?

・自閉症スペクトラム障害(ASD)が「100人に1人」のレベルになる と、増えたとしか考えざるをえない。 ・自閉症の発現に関して関与が最も明らかなのは「遺伝的な負因」 である。(Bailey et al, 1995) ・ASDは多岐的な要因が絡み合って生じることは疑いがない。 (Happe, 1994) ・ASDは少なくとも乳幼児期には相当程度「可塑性」がある問題と 考えられる。 ・ASDを生じうる乳幼児は多く存在し、その一部は顕在化せずに、 次第に適応の範囲に入っていき、その一部が顕在化してASDとい う形での発現をするのではないか。 ・従来は適応の範囲に入ってしまった問題が、現在の状況の中では 多くが顕在化するようになったのではないか。

(75)

ASDを顕在化させる要因はなにか?

・乳幼児が受ける「情報の絶対量の過多」なのではないか! ・乳幼児の受ける、特に「対人的な情報の絶対量の不足」が早期 の発達遅滞をもたらすことは、第二次世界大戦後のドイツの乳児 院で明らかになった。 ・かつての子育ての時には当たり前であった、「子どもと親が見つ め合う静かな環境」が、現在たいへん得難くなったのではないか。 ・ASDにおいては「意識のあり方」そのものが、「通常の我々の意 識のあり方」とは相当に異なっていることが、過去10年間の自閉 症者の回想や自伝により明らかになった。 ・自閉症が、知的障害の教育とは全く異なった教育的対応が必要 であることが、ようやく認識されるようになった。

(76)

高機能自閉症者が語る「自閉症体験」

・「幼児期は耐え難い騒音と異臭に満ち、何もかも恐ろしく、母親です ら恐怖であった。特に生き物は怖く、犬にいたっては成人にいたって も避けることが続いていた。数字を知った時に、世界が変わった。同 一性保持とは、物事のかくあるべき秩序である。」(症例Jerry) (Bemporad, 1979) ・「人に近寄られるのが好きではなかった。触られるなど論外で、触ら れると、どんな触られ方であれ痛いし、とても怖かった」(Williams, 1992) ・「人の目をみると話が分からなくなってしまう。45歳をすぎてから『目 がものを言う』ことを学んだ」(Grandin,2000) ・「まわりが一定のリズムで動いている状態が幸福感をもたらし、砂の 一粒一粒が見飽きずに面白く、それに没頭してしまう」(Sacks, 1995)

(77)

なぜ会話が苦手なのか?

・「自分は全て一度に一つのことしかできないので、自分の語ったこと すら自分に向かってもう一度言い直さなくては理解できない」 (Williams, 1996) ・「その場でも自分に向かって言い直して、一歩遅れて理解はしてい るが、本当に理解できるのは、あとで一人になって落ちついてからで ある。」(ニキ・リンコ) ・「人と話をする時には会話に専念すれば自分の感覚や意思は見え なくなってしまう。」(会話のキャッチボールを維持するのに全力を使っ てしまうため)(ニキ、2001) ・自分の感覚や意思が見えないと不便なもので、心にもない返事をし てしまう。(それを自分では気がつかない) ・相手の顔や目をみると、なおさら自分のことが分からなくなる。

(78)

自閉症の表情認知

・通常の我々の認知は、「部分よりも全体に注意が傾斜する」強い選 択性を持っている。(中枢性統合) ・人を見たときに、通常の人であれば顔を見て表情を読みとるが、自 閉症の認知では、「服の一部分、顔の一部分のみに注意が集中して しまう」。(過剰選択性)(Frith, 1989) ・我々がガラスのコップを見るときには、見た瞬間にコップという「概念 化」をおこない、直ちに「慣れ」が生じる。 ・自閉症では、「概念化」がおこなわれずに、自分自身がコップをみず にその表面に写る模様になり、「汎化や慣れ」が生じにくい。 ・しばしば自閉症では、作業能力は劣るにしても、最初の5分間と8時 間後の5分間を全く同じペースでやり遂げられる。

(79)

視覚による思考

・自閉症の中には、言語が意識の中軸として働かずに、

思考を視覚的イメージで行っている

場合がある。

(Visual thinking)

・言葉はすべて、

いったん視覚的イメージに翻訳しなおし

それにより言葉の理解が可能になる。

(Visualizing)

(Grandin, 1995)

・現在の出来事が引き金になって、しばしば

遠い過去の出

来事がフラッシュバック

し、

現在の事がらと重なり合って体

験される

ことがある。

(time slip)

(杉山、1994)

(80)

知覚過敏性

・音や触覚などの「知覚に対する過敏性」があり、それに著しい不快 反応を示す児童が、徐々にそれが生じた状況に対して同じようにパ ニックを呈するようになる。(およそ40%の人に存在) ・これは状況が引き金となって「タイムスリップ」により不快体験がフ ラッシュバックするためと考えられる。 ・これは「心的外傷体験の侵入症状」によく似ており、処理される記憶 の部位が通常とは異なっている。(Liberzon, 1999) ・知覚過敏性に対抗するために、「解離」をあやつって適応している場 合もあり、「他者から借りた人格の仮面」を使い分けて社会的な適応 をする場合もある。(Williams, 1994)

鈍感(Tough but Dull)敏感(Vulnerable but attentive)の異なる意 識状態(モード)を使い分けている場合もある。(ニキ)

(81)

知覚過敏性への配慮

・自閉症児の教育に際しては、「過敏性に対する配慮」が常に必要 とされる。 ・「特定の状況に結びついたカギ構造」を持つ知覚過敏性に対処す るためには、その様な視点で「過敏性に対する情報」を集めること が唯一の解決法である。 ・「過敏性の中に生きてきた者」にはそれがあたりまえであるので、 過敏性の問題はほかの人から指摘されてはじめて本人にわかる。 ・現在の学校は、養護学校ですら雑多な情報で溢れかえっている。 さらに、教室は様々な用途に使われ、その性格を変えてしまう。

(82)

認知に慣れが生じ難く、汎化ができない

・自閉症の場合、何度も体験したからといって

徐々に慣れ

てくるということが期待できない。

・汎化(応用)ができず

変化に対しては常に強い抵抗があ

る。

・こだわっている方が、

他の情報処理にエネルギーを使う

ことが少なくなり、

楽に暮らせる。(ニキ・リンコ)

「こだわりの尊重と活用」が必要不可欠である。

「予定を変更せず」、どうしても変更が必要な時には

必ず「予告を行う」ようにする。

(83)

「私の障害 私の個性」

Lawson, 1998)

「レスリーは

私の体に近づきすぎたりはしなかった

ので、

そういう意味では怖くなかった。関心を示すためには、体に

触れるのではなく、

私に仕事をくれて、手伝わせてくれた。

洗い上がった包帯を巻き取ったり、滅菌釜の内皿に道具を

並べたり。

何か失敗をしても、

レスリー

は怒らなかった。

声を荒げる

のでもなく、仕事を取り上げるのでもなく、

正しいやり方を、

一歩一歩、小分けにして教えてくれた。

30年たったいま思い返してみても、レスリーは、

私の人生

に最も大きな影響を与えた人

の一人であったといえる。」

(84)

自閉症の認知の特徴

(1)

情報の雑音の除去が困難で、

同時に一つのことしか処理できない。

(2)

認知に慣れが生じ難く、

汎化ができない。

(3)

認知したものと心理的距離がとれず、

見通しを持つことができない。

(85)

同時に一つのことしか処理できない

(1)「二つ以上の感覚が同時に使えないので、テレビは字幕 の方が楽である」(「音声を聞かずに画面と字幕を同時に見 る」とか「画面を見ずに音声だけ聞く」かのどちらかになって しまう) (ニキ・リンコ) (2)自閉症の子どもに「印刷された紙を読んでもらう」ので あれば「声かけしながら紙をみせる」といったことは厳に慎ま なくてはならない。 →「声かけを少し待って、おもむろに紙を子どもの前に置き、 少し待って後ろに下がり、少し待って紙を読むように求める」 ような細心の配慮が必要。 (3)自閉症の子どもに「色分けペグさし」をやってもらうの でも、一度に複数の色やペグを出しても、混乱して投げ出すか もしれない。 → 「一回に一個のペグ」を渡してやってもらえば、色を間違 えずにペグをさせるであろう。

(86)

見通しを持つことができない

・行うべきことをスケジュールカードなどによって一列に並べる方法が 有効である。 ・目標とすべきは、少ない手がかりで一連の課題が可能となることで あり、自主性を育てることではない。 ・写真やカードなどで視覚的な提示をしても、視覚的に入りにくい場合 もある。 ・聴覚優位の場合、「理解」するのには視覚がよいが「記憶」するのに は聴覚がよい。聴覚では不要な情報まですべて入ってくるので、理解 には不向きである。(ニキ・リンコ) ・聴覚的入力が入りずらいのは、少し複雑な言い回しが子どもの注意 に追いつかない場合があるためである。

(87)

集団での活動

自閉症文化を基本とした教育的対応の原則

・小学校低学年において自閉症スペクトラム障害への教育は個別 教育が原則であり、基本を固めた後に初めて集団への参加を行う ことが好ましい。 ・早期療育を受けていて集団での活動を獲得した子どもの場合に は、必ずしも原則どうりではないが、高機能の子どもでも集団が非 常に難しい事例が決して少なくない。 ・自閉症スペクトラム障害への適切な教育は集団教育になじまな い部分が存在する。 ・個別教育によって集団教育のための基本を身につかせる準備な しに、行事に駆り立てることは子どもを混乱させるだけである。

(88)

リタリンの効果

(ニキ・リンコ) ・自分の言ったことをその場で自分に向かって言い直して、一歩遅 れて理解はしているが、本当に理解できるのは、あとで一人になっ て落ちついてからである。 ・話の内容は、自らもう一度自分に向かって再構成して言い直さな いと理解できない。 ・家に帰って落ちついた後でリタリンを(1/4錠くらい)服用すると、 この再構成が桁違いに上手にできる。 ・リタリンをのまないと、後で落ちついたときに、何が何だか忘れて いたり、新しいことに気を取られてどうでもよくなっていたりして、再 構成の機会を持ちそこねてしまう。

(89)

学校の授業について

(ニキ・リンコ) ・1日に6科目も内容が変わるのでは、自分は今何をやっているの か迷子になってしまった。 →黒板の横に時間割を書いて、今行っている授業にマグネットで印 をつけてくれれば助かった。 ・今やっていることはどれくらい重要なのか、というディレクトリー構 造がわからないと困ってしまう。 →大見出し・小見出しの区別、単元・章・節・段落などの階層構造が わかるようにしてほしかった。 ・単元や時限の変わり目が苦手であった。変わるたびに深読みをし て、ありもしない意味を汲み取ってしまう。

(90)

自閉症体験

落合みどり(ペンギン) ・幼児期にロッキングをしていた時は、ぼーとした意識で恍惚感に 浸っていた。とにかく、ある程度やらないと落ち着かなかった。 ・自分には始めから自分にとって快適でいられる「感覚刺激や形で 埋め尽くされた(内的)な環境」があって、その中に「人」は配置され ていなかった。 ・「人」の存在はそれほど不快ではなかったけれど、自分には「もっ と快適な楽園」があった。 ・「対人的な情報への絞り込みが自動的に作動しない」ことがわかっ ていて育つのとそうでないのとでは全く違う。(かといって、普通にな れるわけではないけれど)

(91)

対人的な情報への自動的絞り込み

落合みどり(ペンギン)

対人的な情報への自動的な絞り込みが機能しない障害を

もった人は、多かれ少なかれ下記の戦略を用いている。

(視覚優位、聴覚優位の違いもあれ)

1、視覚的イメージの利用

2、言葉の丸呑み

3、社会的キャラクターへの同化

4、モードの切り替え

これらの使用がうまくいって間違いが少ない自閉症者が

「適応がよい部類に属する人」と呼ばれているのだろう。

(92)

環境をうまく活用できず負担になる

・たとえ幼児期に行動障害があったとしても、「早くから公的な集団に 入ることを強要されなかった」ために、さほど問題にはならなかったの ではないか。 ・地域には「子どもたちだけの集団」があり、そこには「子ども社会の 決まり」があった。そこでは先輩後輩、年上年下の役割がハッキリし ていて、直接の付き合いや友だち関係を個人裁量で行わなくてよ かった。 ・日常の 場 であった「公園」でさえも、身なりを正してデビューしなけ ればならないような「公共の場所」になってしまった。 ・「発達の遅れた子ども」や「アンバランスな発達の仕方をしている子 ども」を抱えた親御さんは、常に強い緊張状態のままおかれ、その緊 張感は子どもとの関係にも端的に反映される。

(93)

環境をうまく活用できず負担になる

・学校の勉強では、「昔は先生が教えたことをそのまま丸暗記すれば よかった」のに、今では先生は、「答えや解き方を教える人」ではなく、 「問題提起をしてまとめをする人」になってしまった。 ・生活に必要な基礎学力を習得する段階の授業から、「自分で気づ く」「自ら仮説を立てて証明する」「討論によって答えを導く」ことが重 視されるようになった。 ・ASDの子どもがこういう状況におかれたら、混乱するか退屈するか のどちらかに陥って当然である。 ・かっての教室は、習字やお知らせや当番表などの掲示物が余計な 装飾もなく整然と貼られていた。今は教室の壁には様々な展示や飾 りがあり、子どもも大人も大声を出し合っており、音楽がかかってい たりする。

(94)

混沌とした情報の洪水の中に晒された状況

・一般家庭でも街中でも、そこら中にカラフルな色が満ち溢れ、 様々な情報が感覚を刺激する。 ・これでは、かき乱された感覚刺激の不快感を排除して落ち着きを 取り戻すために、「自閉状態に飛んでいってしまいたくなる」のも無 理はない。 ・「正常と言われる範囲内の人たち」にとっては、たまたま何も感じ ないか、多少の快感・不快感はあっても異常反応を起こすほどひ どくはない、というだけのことかもしれない。 ・家庭環境の変化というより、もっと大きな根本的な変化が起きて いる気がしてならない。 ・今の社会のあり方は、自閉症の人に対して、「対人関係」と「過剰 刺激」の両面で、ダブルダメージを与えている。

(95)

高機能自閉症とアスペルガー症候群

月間『実践障害児教育』(2004,1月号) 知的発達には遅れはないが、社会性や コミュニケーション上の課題により学校や 職場に適応しずらい人たち。 幼児期から思春期・青年期に至るそれ ぞれの年代で正しい対応を受けることが 何よりも大切である。(杉山登志郎)

(96)

イジメからの保護が何故大切か!

小学校高学年になると、彼らは「他者の心理を読む」ことが可能とな るため、社会的なルールに従えないというトラブルは激減する。しかし、 同時に周囲を気にするようになり、それまでの我関せず然とした態度 から一転して、「ささいな働きかけに対し被害的に受け取る」ようにな る。 大多数の子どもでは、しばらく時間を置いてトラブルは激減するが、 一部は著しく被害的な状況が続き、ささいなことでパニックを頻発させ るなど、むしろ不適応状態が高じてしまう。 小学校低学年ではイジメを受けていても比較的無関心な子どもが 少なくないが、高学年になって周囲を気にするようになると、タイムス リップ現象によって、ささいなきっかけで昔の不快場面のフラッシュ バックが生じ、大騒ぎを繰り返すようになる。

(97)

なぜこの障害への教育が難しいのか!

自閉圏の子どもたちは社会性の障害にハンディキャップの中心が ある。このため、たとえ高機能の子どもであっても、一般的な子ども への常識は通用しない。 教師は専門家である。教育を行うものが、教育を行う子どもについ て無知のまま教壇に立つことは、子どもに失礼きわまりない。 自閉症やアスペルガー症候群に教師として接する人にぜひお願い したいのは、彼らによる自伝や手記を一冊でも読んでほしい。 ドナ・ウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』(新潮社) テンプル・グランディン『自閉症の才能開発』(学研) ニキ・リンコさん、コアラさんらの手記

(98)

暴力的な噴出を繰り返すグループ(1)

高機能広汎性発達障害の子どもの中に、周囲の大人が脅威を覚 えるような噴出を伴う発作的興奮を繰り返す者が存在する(5%程 度)。 全症例が、ささいなきっかけで顔色が変わったり、あたかも変身す るかのように急に激高して暴れ出すが、興奮がいったん収まると平 静な表情にもどった。 全員が不安が強く、自分が達成できないと感じると、学校の課題を 回避してしまう傾向がみられた。 広汎性発達障害の子どもは、「全体的な場面の理解」や「他者の意 図や気持ちを把握すること」が困難なために、「行動の因果関係を 一面的にとらえやすい。」

(99)

暴力的な噴出を繰り返すグループ(2)

<3つのグループ> ① ファンタジーへの没頭と戦闘型TVゲームへの偏向があり、ス トレス場面で急にゲームの世界に切り替わる ② 対人的な過敏性が著しく高く、ささいな働きかけや接触に対し て激高する ③ 診断が遅れ、他児との交流がことごとく被害的・迫害的に受 け取られ、暴力的な反撃が繰り返される ・学校内での対応のみでは解決は難しい場合も多い。 ・薬物療法と強力な環境調整が不可欠である。 ・通常クラスでの対応はほぼ不可能であり、学校全体の協力が 必要である。

(100)

暴力的な噴出を繰り返す子どもA君

(並木典子) 最近になってサッカーに興味を持ったA君が、友だちのやって いるサッカーに参加したが、ボールがすぐに取られてしまい、 大声で叫んで相手の子どもを殴りつけ足を蹴った。

<暴れる背景を考える>

A君は「自分が蹴ろうとするのに、かってにボールを持っていっ て邪魔をした」と考えて逆上した。 A君は、これまで他児との交流を避けてきたために、自分の行 動を止められた経験もなく、そのために行動を止められたこと に怒ってしまった。 A君は、腹が立ったときに状況を理解できず、暴れる以外の方 法を知らないのである。

(101)

暴力的な噴出を繰り返す子どもB君

(並木典子) B君は、自分の得意なことや興味のあることならばとりかかりは よいのであるが、授業を終わってもやめようとしない。無理に止 めさせようとすると大暴れをすることがある。 また、苦手な授業を避け、促しても悪態をつき、暴れだす。

<暴れる背景を考える>

B君は、学校での基本的なルールの理解や教師の指示や働き かけを受け入れる下地ができていない。 また、苦手に直面した時にどのように周囲に助けを求めればよ いか学んだ経験がなく、そのような場面で、暴れたり悪態をつい たりする行動のみをひたすら繰り返してきている。 したがって、そのような場面での対応方法を学んでいないだけな のである。

(102)

暴力的な噴出を繰り返す子どもC君

(並木典子) C君には禁句がある。「それは違うよ」と言われると、「ワーッ!」 となって混乱して叫び続けて、そばにある物を投げつけたり、寝 そべったり、人を蹴ったりする。人を不快にさせることを平気で言 い、注意されると 逆ギレ する。

<暴れる背景を考える>

「違う」という言葉だけで自分をすべて否定されたようになり、「違 う」中身に考えが至らない。 「違う」という言葉と不快だった過去の場面が結びついて、反射 的に「違う」という言葉を引き金にパニックを起こす。 「相手が嫌だと思っている」ということもピンとこないし、相手が 怒っている理由も検討がつかない。

(103)

暴力的な噴出を繰り返す子どもへの対応

(並木典子) ① パニックを起こした時と同様に「落ち着かせること」が重要で あり、「周囲に危険が及ばないような配慮」をする。 ② 暴れたことに対して「罰」を与えるのではなく、暴れないで済 むようなスキルを身につけられるように援助していく。 ③ 「パニックを起こさせないようにする配慮」が大切。 ④ できなかった体験は極力少なくしたいが、逆に、失敗体験か ら学ぶ姿勢を持つようにする。 ⑤ 音声や表情などを絞り、肝心の話の中身が伝わるように話 す。 ⑥ 「背景のハンディキャップ」を理解する。 ⑦ 周囲の子どもたちからのイジメを防ぎ、支え合う関係を作る。

(104)

自己同一性の障害

・青年期になると、自分とほかの人との比較が可能となるため「自 己の独自性」をある程度は認識するようになる。 ・しかし、「他者の目を持たない」がために、深く悩み、また、しばし ば無関係の問題を持ち出して責任を転嫁することもある。 ・この同一性の障害は、「性」同一性の障害へと発展することもま れではなく、男性が女性になることを望み、女性が女性であること を拒否することなどが見られる。 ・したがって、この年齢に至ったとき、彼らに直接に障害告知を行 うことが必要になってくる。 ・10歳を越え、自我に悩み始めた時期に、本人に対して直接「障 害の告知」を行うようにしている。

(105)

不登校

・不登校は、継続して治療的な介入を受け続けてきたグループで は比較的まれであるが、未診断のグループにおいては一般的に 生じる問題である。 ・このグループに生じる不登校は、学校に行きたいけどいけない という葛藤を抱える一般的な不登校とは異なって、登校を巡る悩 みがほとんどない。 ① 深刻なイジメ体験を抱えていて、学校という不愉快な場への 参加を拒否するようになったという場合(被害的な対人関係)→ 「安全が確保された教育の場」を提供すること(特別支援学級の 活用が必要なことが多い) ② それ以前の集団行動への意欲が全く存在せず、「つまらない から」と登校を拒否する場合(集団からの回避) →「積極的な登校への引き出し」が有効である。(トークンエコノ ミーを用いることも有効である)

(106)

統合失調症様症状

・高機能広汎性発達障害の青年の中には、統合失調症、あるい は統合失調症型人格障害と誤診をされたものが少なからず存在 する。 ・そのような青年について丹念に臨床像を検討すると、一見「幻 覚」と思われる症状がタイムスリップによるフラッシュバックである など、その大半は「自閉症圏の発達障害の病理」で説明が可能で あった。 ・しかし、ごく一部に「統合失調症の併発」と考えざるをえない青年 が存在し、この場合には抗精神薬を用いた薬物療法が必要にな る。 ・これまで成人精神科臨床において発達障害という視点が欠けて いたために、この群が非定型的な薬物無効の統合失調症として 見過ごされてきた可能性がある。

(107)

解離性障害

・広汎性発達障害に普遍的に認められる「ファンタジーへの没頭」 と「解離」との間には連続性がある。 ・過敏性から自己を守るために、「意識モード」を意図的に切り替 えるすべを身につけている者が存在する。 ・中には、まれではあるが多重人各障害に発展した例がある。 ・高機能広汎性発達障害においては、「健常者であれば解離に属 する自己意識の変容状態」と「一般的な意識状態」との間の敷居 が著しく低い。 ・このような「意識状態の変容」自体が高機能広汎性発達障害に おいては「発達の過程」とみる必要もあるのではないか。 ・これまでパニックを起こして不適応が非常に強かった子どもが、 学校で問題なく着席するようになったが、授業中は目を細めて口 の中で何かを言っている状態になったケース。

(108)

強迫性障害

・強迫性障害は、自閉症圏の障害の「こだわり行動」

や「同一性保持行動」、また「チック障害」などとの連

続性が認められ、

どの時点から強迫性障害の併発と

考えるべきか不明な場合が多い。

・不適応が高じた場合に、この群の青年がしばしばと

る防衛機制は「強迫の強化」であり、不適応と強迫と

が悪循環をつくり、高機能といえども強度行動障害と

なることもある。

(109)

不適応行動を防ぐためには何が必要か!

・「早期発見による早期療育」が最も有効な治療である。 ・早期療育を受けた者のほうが、そうでない者よりも青年期に至っ たときの適応は明らかに良好で、また、学童期におけるトラブル、 青年期の精神科的合併症なども生じにくい。 ・幼児期においては、「集団行動の練習」と「養育者との愛着形成 の促進」 ・学童期においては、「非社会的な行動の是正」「学習の補助」「イ ジメからの保護」 ・青年期においては、「自己同一性への混乱への対応」「対人的 な社会性の獲得」「自立にむけた練習」「職業訓練」 ・高機能といえども、自閉症に有効な方法は、ほぼそのまま活用 が可能である。

(110)

教育上のチェックポイント

情報を一度に多く提示しすぎていて混乱させていな

いか?→

情報を必要なものだけに絞り込み、一度に

二つの情報を提示しないこと

が有効である。

同時に二つのことをするように求めていないか?

行うべきことを直線に並べ、並列的な処理が必要な

課題をできるだけ避けること

が有効である。

過敏性が行動の足を引っ張っていないか?

行動を止めてしまう刺激を見つけ出し、過敏性を軽

減できるための配慮を行うこと

が有効である。

(111)

教育上の配慮

・曖昧な課題は避け、課題を少し具体的に絞れば容易に取り組むこ とができる。→課題の具体化で学習が向上する。 ・過敏性に対して耳栓を用いて安心な状況を提供してやれば、しばら く後には、耳栓を用いなくともその場に耐えられるようになる。→よい 体験によって耐性が向上する。 ・個別学習により、水が砂に吸い込まれるように速いスピードで、取 り残したままになっていた学習を取り戻し、対人過敏性などの問題が みるみる改善した。→学習により適応が向上し、学習は子どもたちの 心の治療にもなる。 ・一般的な、スクールカウンセラーはあまりにも発達障害についての 知識と経験を欠いている。むしろ教師を一人増やし、きちんと個別学 習指導を行うことのほうが有効ではないか。

(112)

同じ仲間との交流は大きな力となる

「自分が学校の同級生とはどうも違っていることに悩み

出す

」年齢(10歳ころから)において、支え合う同じ仲間

との交流があることは、彼らにとって大きな支えとなる。

・しかし、このような交流は、

小学生・中学生年齢から親

しい交流がある者同士が共に青年になる

ということが必

要で、いきなり青年を集めても支えあうことは困難である

ようだ。

(113)

マイペースの軽減、社会的状況の理解

社会性スキルの獲得を支援する

安達 潤

(北海道教育大・旭川校)

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