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(1)

第一章 はじめに

R P法の概要と制定史 第二章

R P法の経済分析 第三章

R P法の弊害是正1あり得べき改善措置

おわりに

別 対 価 に 関 す る 研 究 序 説

,   9 9 9 9 9 ,  

麟説{︱

9 9 9 9 9 9 9 9 ,   9 9 9 9 9 9 ,  

土 佐

米国のロビンソン・パットマン法を手がかりにして

一四

(2)

差別対価︵一般指定三項︶

一般に︑この公正競争阻害性の判断は︑競争者ないし取引相手の取引自由に対する

侵害の有無という行為の対象主体からみた評価基準というよりも︑むしろ行為の市場での競争に対する影響から測る

(2 ) 

評価基準によるとされる︒すなわち︑当該行為が差別対価にあたるか否かを個別具体的に判断するとき︑それが競争 者を排除したり︑取引相手の競争上の地位を著しく不利にするような場合︑または独禁法上違法な行為もしくは不当

(3 ) 

な目的を実現する手段として用いられる場合には規制が及ぶことになる︒

この思考の構造それ自体は妥当であり︑問題はない︒しかし︑

機構の核心に関わるだけに︑もし過剰規制となればかえって競争促進に役立たないことにもなる︒したがって︑競争

者の排除というように一見明白な場合は別段︑取引相手の競争上の地位を著しく不利にするかどうかなど抽象度の高

い枠組の焦点を個別具体の事案に適用可能な程度に︑おのおのの類型レベルを具体的に落としてゆくことが必要であ

る︒そのためには︑まず関連する審判決例にあたるのが筋であろう︒だが︑差別対価の規制事例は僅少で︑とりわけ

昭和五七年の一般指定の全面改正以降は︑管見の限りない︒それゆえ︑判断枠組の具体化という課題は理屈で詰める

ほかないことになる︒この点︑当然これまでの学説の努力はあるものの︑問題を十分に掘り下げ︑これを独占禁止の

思考の基本ラインと自覚的に接合させた議論は必ずしも成熟していないようにも思われる︒もっとも︑こう言うから

といって︑筆者にその研究準備はないから︑本稿で直ちにそれを行えるはずもない︒ 害性を有する場合に禁止される︒

は じ め に

は︑法定の行為要件を満たすもののうち︑それが﹁不当﹂な場合︑すなわち公正競争阻

むしろ︑本稿の目的は︑その前 っとに指摘される通り︑事柄が価格設定という市場

一四

14‑2 ‑340 (香法'94)

(3)

提ないし準備のための予備作業として︑差別対価という定型的カタログで把握しようとする行為が何なのか︑

制の根拠と方法ないし手段はいかにあるべきなのか︑といった諸問題を︑米国のロビンソン・パットマン法︵正しく

はクレイトン法修正二条など︑以下では

R

法と略記する︶およびその法運用に示される論理と構造を問題考察のた

P

めの︱つの糸口として検討することにある︒

ところで︑何故いま差別対価を問題とするのかについて︑筆者なりの問題意識を示しておきたい︒第一に︑米国の

R

法の制定史が教えるように︑差別対価規制は︑不当廉売規制などと共に流通プロセスの革新的変化に対する中小

P

事業者の反応の一形態として主張される場合がある︒わが国経済社会が︑国際化の進展と経済構造の変革︑そして規

制緩和のなかで大きな曲がり角に立っている今日︑つとに非効率であると諸外国に指摘を受けている流通のあり方も

いずれ構造変化を見せるかも知れない︒

による直接販売などの伸長に示されるように︑

一四

その規

メーカーのアウトレット︑通信販売等

その端緒ともいうべき現象も散見され︑また消費者の意識も価格と品

質とサービスのミックスを適切に判断する方向に高まりつつあるように思われる︒したがって︑今後︑差別対価規制

(6 ) 

に一定の社会的要請が集まることが予測できなくもない︒その際︑前述のような問題を整序しておくことには意味が

(7 ) 

あると思われるのである︒第二に︑

R

P

法に関する日本語文献は意外に少ない︒ことに︑なぜ一九七

0

年代後半以降︑

ハイパーストアなど大規模安売小売︑

司法省反トラスト局によるこの法律の執行が事実上停止され︑

あるであろうし︑

かつ

FTC

が審判開始決定をするものとて︑大部分は

販売手数料に関わる事例になってきたのかという事情を︑そのスタンス変更の基礎にある理論の内容にわたって詳し

(8 a)

8

b)  

く伝える文献はほとんどない︒したがって︑この点を紹介することには︑米国反トラスト法研究として相応の意義が

また付随的には今後のわが国で差別対価規制の問題を考察するときに一定の参考となるだろう︒

次に

R

法を検討の素材とする意義について述べておきたい︒わが国独禁法の旧一般指定四号が

P

R

P

法の強い影

(4)

周知のように︑ の差別対価を考える上で︑なお の公正競争阻害性評価へと置き換えたが︑その他では趣旨の明確化以外に基本的に変更はない︒だとすれば︑わが国 響の下に制定されたことに異論はないだろう︒なるほど新一般指定三項は差別対価を原則違法から個別具体的な行為

R

P

法を参照する意義はあるだろう︒

こう さて︑以上のような問題関心から︑

R

法が規制対象とする行為が何なのか︒何故それを規制する必要があるのか︒

P

どのような規制手法を予定しているのかなどの検討課題を立てるとして︑あらかじめ本稿での検討の手順を示してお

まずその制定史ないし背景を正確に理解することが重要である︵第一章︶︒この

R

P

法による規制を知るには︑

法律は︑確かにこれまで反トラスト法の一部と見なされてきたし︑また現在もそうである︒しかし︑

さと批判論の強さにおいて︑反トラスト法のなかでこの法律ほど特異なものはない︒

これを大企業の経済支配から中小企業を保護するために不可欠であるとする︒他方︑これを反競争的性格をもつ規制 法であり︑米国経済にとって益するところはないとする批判も強力である︒この点を考察するには︑やはりこの法律

の立法的背景にまで遡って︑前提問題を明らかにしなければならない︒

次に

その上で︑この法律の経済活動に対する具体的効果を︑

があ

る︵

第二

章︶

そのコストとベネフィットの両面から吟味する必要

かりにこの法律が規制法的性格を有するとしても︑執行の社会的コストが低く︑

れる便益が多大であるとすれば︑ その規制の複雑

なおかつもたらさ

その存在には意味があることにならざるを得ない︒結論の先取りになるが︑ここで の評価が極めてネガティブなものであったが故に︑前述の通り一九七

0

年代後半以降︑執行当局によるこの法律の運

最後に︑ではそのような評価を受ける

R

P

法を改善するために︑一体どのような方策があるのであろうか︵第三章︶︒

一九

0

年代中期に司法省などを中心として

R

法の改正案が出されたが︑成立しなかった︒しかし︑

P

用に大きな抑制的制御がかかってきたのである︒ 一方で︑この法律の擁護者は︑

一四

14‑2 ‑342 (香法'94)

(5)

そこでの議論に盛り込まれていた論点は各々重要であり︑

一四

また実際には実務運用において生かされているという側面

それら諸点を正確に理解しておくことは︑現代の米国経済社会におけるこの法律の生きた姿を確認するため

( 1 ) 消費者法講座3︵日本評論社︑一九八四年︶一三八頁以下︵舟田正之執筆部分︶を参照︒(2)例えば、今村成和•新版独占禁止法(有斐閣、昭五八年)―二0頁以下、実方謙ニ・独占禁止法(有斐閣、昭六二年)三0二頁以

下︑注解経済法︵青林書院︑昭六0年︶一八四頁以下︵金井貴嗣執筆部分︶等を参照︒

( 3 )

新・不公正な取引方法︵青林書院新社︑昭五八年︶一〇九頁以下︵根岸哲執筆部分︶等を参照︒

( 4 )

審決集からは︑第二次北国新聞事件︵東京高決昭︱︱︱︱一年・審決集八巻八二頁︑地域による差別対価︶と東洋リノニウム事件︵昭五

二年勧告審決・審決集二六巻八五頁︑相手方による差別対価︶が確認される︒しかし︑それ以降︑審決集三九巻︵平成四年度末まで︶

までで見あたらない︒

( 5

)  

1 5

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13 . 

( 6 )

このような課題認識から︑不当廉売規制に関し︑カナダの法執行基準を比較法的に検討したものとして︑拙稿﹁カナダの略奪的価

格設定に関するガイドラインの紹介と解説﹂︵香川法学一三巻二号七五頁以下︶があるので︑併せて参照されたい︒

( 7 )

部分的な引用は別段︑概説的に解説するものとして︑松下満雄・アメリカ独占禁止法︵東大出版会︑一九八二年︶第九章﹁価格差

別 ﹂

Th

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著︑野木村忠邦・加藤直隆訳﹁米国反トラスト法の理論と実際①ー反トラスト法による価格カルテル

の規制およびロビンソン・パットマン法による価格差別の規制︿特別講義﹀﹂日本法学五0巻一号一︱五頁以下などが︑判例研究と

して︑江上勲﹁価格差別に関するアメリカ反トラスト法判例の研究①﹂法学論集[駒沢大学]三九号二貝以下︑﹁同②﹂政治学論集

[駒沢大学]二九号一頁以下︑﹁同③﹂政治学論集三0号一頁以下︑﹁同④﹂法学論集四0号一頁以下︑﹁同⑤﹂駒沢大学法学部研究

紀要四八号一頁以下などがある︒また経済学の観点から米国での議論を比較的詳しく紹介するものとして︑三輪芳朗・独禁法の経済

学︵日本経済新聞社︑一九八一一年︶一六二頁以下がある︒

(8 a)

あるいは︑この事情は︑一般指定の昭和五七年改正の時点で︑関係された実務家や研究者をはじめ︑少なくない部分に自明の事

柄かも知れないが︑かりにそうだとしても︑より目に見える形でこの間の議論を検討︑紹介することには︑それなりの意義があると にも重要なことであろう︒ も

ある

(6)

手順としては︑

制定史を具体的に眺める前に︑この法律の概要を一瞥しておくのが便宜であろう︒ 論述の

そし

て︑

たとえ要点しか辿れないとしても︑

本章

では

( 9 )  

(8 b)

 

R P

が︑

第一章

いかなる時代背景のもとに︑

もっとも︑米国法に関する前記認識は︑連邦最高裁判決の

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7 

93 . 

また︑山本顕一郎﹁機能割引とロビンソン・パットマン法の価格差別﹂公正取引五一六号六四頁以下も参照︶の意義と射程をどのよ

うに考えるかによって︑若干ゆらいできているのかも知れない︵少なくとも︑米国において︑今日的な新しい目をもって価格差別問

題を再考しようという気運の糸口とはなったであろう︵この点︑例えば︑

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5 

75 . 

本文後述のように︑一般指定三項に実質要件すなわち公正競争阻害性判断の点で

R

P法二条

a項とかりに開きがあるとしても︑形

式的な行為の要件に関してはなお参照するに足る実益もある︒

R

法の概要と制定史 P

どのような議論を経て︑

体的規制手段を用意しつつ制定されたものなのかを明らかにしたい︒ 何を目的として︑

の際に依拠された経済的な思考がどのようなものであったかも確認しておきたい︒問題の理解を助けるため︑ そ そしてどのような具

一四

14‑2 ‑344 (香法'94)

(7)

の幾つかの基準を︑これまで形成されてきた判例に沿ってあらまし概括的に示すならば︑①州境を越える取引であり︑

かつ行為者が問題の取引に係る商業に従事していなければならない︵商業要件︶゜②問題の価格は︑リベートやコミッ

ション等があれば︑これらを控除した正味価格となる︒また︑直接の価格差別だけでなく︑支払条件や輸送条件等に

一見して低い価格であっても︑機能的な意味でよる差別も間接的価格差別となる場合がある︒さらに︑比較の結果︑

の正当化要因があるならば︑それを合法とする場合もある︵価格差別の意義︶︒

③実際に︑同一の売手から販売が同時に行われなければならない︵販売要件︶︒したがって︑真正の委託販売︑代理 る︒同条

a

項で

は︑

さ て

︑ 2 

R

法は︑価格差別を規制する法律である︒しかし︑周知のように︑この法律概念としての価格差別は︑経済学上

P

の価格差別概念と同一ではない︒経済学的に言えば︑価格差別とは︑同一の︵あるいはほとんど同一の︶財に対して

市場によって異なった差別的な価格をつけることである︒したがって︑同一の財を違う価格で販売することも︑また

違う費用がかかった同一の財を価格差なしで販売するのも価格差別とされる︒だが︑

R

法は︑価格差がある場合の

P

みを問題にする︒また︑州際取引のみに適用がある︒さらに︑役務の取引には適用がない︒このように︑

R P

法の適

用対象は経済行為・現象としての価格差別の一部であり︑その全てではない︒

二条

a

より

具体

的に

概 要

一四

(2 ) 

R

法はどのような定め方で価格差別を捉えようとしているか︒同法の中核規定は二条であ

P

一般に︑商業に従事する売手が違う買手の間で価格を差別することを禁じている︒その要件面で 1法律概念としての価格差別

(8)

関係内部でのやりとり︑リース取引︑知的財産のライセンス取引︑交換契約の取引︑販売の申込︑取引拒絶︑企業内

取引などは適用が除外される︒ただし︑加えて︑既に履行された契約が存在し︑

申込

があ

り︑

またそれが長年の継続的関係の一部であるような場合には︑

もないではない︒④複数の異なる買手に対する販売でなければならない︵買手の複数性︶゜⑤商品の販売に対してのみ

適用があり︑役務や物品リースには適用がない︵商品要件︶︒したがって︑不動産リース︑映画やレコード・テープの

ライセンス︑特許ライセンス︑金銭消費貸借︑医療上の治療役務︑有価証券

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︑優待券ブック

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鉄道クーポン︑請求明細書

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t ) の番組プログラム︑競争馬の所有︑競馬︑訓練などは適用が

CATV

除外される︒また︑商品の販売と役務の提供が混成した取引に関しては︑当該取引の支配的要素がいずれなのかによ

り判断される︒なお︑宣伝広告については法規の適用上︑込み入った構造になっており︑独自の領域を形成している︒

⑥問題の商品は同等ないし同質でなければならない

の立証があれば足りるが︑

の企

て︶

の場

合︑

シャーマン法二条︵独占行為ないしそ 一方はメーカーのブランド商品と ︵商品の同等・同質性︶︒しかし︑ブランド名やラベル表示がそ

れ自体として決定的な判断要素というわけでもない︒すなわち︑同一商品につき︑

︵売

手の

競争

者と

の関

係︶

して︑他方が買手のプライベート・ブランド商品として販売されている場合︑この二つの商品が同等・同質とされる

(4 ) 

余地がある︒⑦﹁競争に対する侵害

( i n j

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) ﹂には︑売手段階でのそれと

買手段階でのそれ︵買手の競争者との関係︶がある︵競争阻害要件︶︒前者の場合︑略奪的意図または現実の競争阻害

この意図が推定される定型的状況如何については︑

における略奪的価格設定に係る議論︵例えば︑アリーダ・ターナー基準︶とかなり重複する︒また︑現実の

競争阻害の立証は︑単に取引数量の変動のみならず︑事案の全体の事情を総合考慮するものとなってきている︒後者

モートン・ソルト事件連邦最高裁判決の射程をいかに考えるかによって︑競争保護ではなく競争者保護とい この販売要件からの例外が認められる余地 かつ通常の商慣行における意味での

一五

14‑2 ‑346 (香法'94)

(9)

形で顧客に対し支払う手数料を対象とし︑ さらに︑同条d項ないし

e

項では︑同一の利益が比例的に等しい条件で全ての競争関係にある買手に提供される場

合は別段︑売手が︑当該商品の取扱いの代償として︑販促援助ないし広告宣伝を供与し︑またはその費用ないしその

一部を支払うことを禁じる︒そして︑d項は︑顧客の側が何がしかの販促援助を行うのを条件として︑売手が金銭の

e

項は︑売手による顧客に対する直接の前記役務等の提供を対象とする点 5 

二条

d項ないし

e

れる

さらに︑商法上の贈収賄のごとき行為も︑ここで禁止されている︒ 4 

なる

︒ 3 

一 五

う形での運用に傾きがちとなる︒⑧価格差別の正当化のための抗弁として︑

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) を許容するが︑これは差別的な販促手数料や販促サービスには認められない︒なお︑

a

項は︑市場の諸条件の変化に対応するための随時の価格変更︵例えば︑腐敗し易い商品の販売︶も許容している︒

二条

b項

次に︑同条b項は︑競争

t

の対抗の抗弁

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) を定める︒この抗弁は︑価格差別と差別的

な販促料の両方において主張できるが︑同条

c

項に係る違法なブローカー料に関しては持ち出せない︒そして︑法律

上︑当該事案において一旦価格差別の推定が働くと︑差別がなかったことの立証責任は行為者の側に置かれることに

二条

c

また︑同条

c

項は︑売手が買手に対し︑この法律の規制対象となる商品の販売ないし購入のための取引に関わって︑

当然なすべきサービスを除き︑ブローカー料︑手数料その他の報酬など何らかの経済的価値を有するものを支払い︑

また︑偽装されたブローカー料

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または買手がこれを受領するのを禁止する︒) の支払いも規制さ

a

項自体がコストにもとづく正当化の抗

(10)

で︑規制範囲の棲み分けを行っている︒また︑抗弁としては︑競争上の対抗の抗弁しか認められず︑

ところで︑法律上これらの販促援助や広告宣伝は当該商品の再販売と関わって行われなければならない

両者の区別は重要である︒というのは︑

ての顧客にとって利用可能であり︑

︵再

販売

連の要件︶︒しかし︑売手と買手の関係からみるとき︑これらd

項ないし

e

項と同条

a

項の規制範囲とが重なってくる

ようにも考えられる︒実際︑両者の規制対象とその区別が必ずしも常に明確というわけでもない︒だが︑実益面では︑

まず両者は相互に排他的である︒また︑前者の規定群は当然違法の類型であ かつ競争に対する侵害という競争阻害効果を立証する必要がないからである︒

d

項ないし

e

項の規制対象となら ない︑すなわち当該商品の再販売に関連づけられた経済的利益の供与と見なされないものとしては︑運送手数料︑信 用供与の諸条件︑広告宣伝や販促活動に対する過払い

( o v e r p a y m e n t s )

︑期待なしに行われる当然なすべきサービスの 提供︑顧客に対する展示会場でのブース等の提供などがある︒ところで︑販促援助等の提供ないしその費用負担が全

かつその条件が比例的に平等であるならば︑法律上違法とされないわけだが︑当 然この前者の利用可能性

( a v a i l a b i l i t

y ) を知らしめる責任は売手の側にある︒売手は自己の販促プラン等を顧客に対し

通知しておかなければならない︒また︑そこでは︑全ての競争関係にある顧客にとって当該プランが実際に利・活用 できる必要があり︑外見上の利用可能性だけでなく実質的な意味でそれが確保できなければならない︒

以上のような規制を行うため︑実際問題としては詳細かつ非常に煩雑なルール設定が必要となる︒これが︑

Fr ed Me ye

rガイドである︒

ここでは︑前述の再販売関連の要件が強調されており︑許容される販促援助 のためのサービスないし設備の例示として︑共同で行う広告宣伝︑ビラやチラシの類︑実物宣伝

( d e m o n s t r a t i o n ) ︑ 商 品カタログ︑陳列棚

( c a b i n e t

) ︑商品展示

( d i s p l a y

) ︑販促コンテストの賞ないし賞品︑特別の包装方法ないしパッケー

一般

に︑

く正当化の抗弁は許容されない︒

いわゆ コストにもとづ

一 五

14‑2 ‑348 (香法'94)

(11)

R

法が制定された一九三

0

年代とは︑米国において︑

P

半は不況の克服にあった︒あらゆる産業分野での破滅的な倒産率︑低下する賃金︑

GNP

の急速な減少を連邦議会も

無視できなかった︒経済生活の崩壊は自由経済体制に対する信頼を失わせ︑人々は競争ではなく政府の保護を激しく

要求したのである︒そして︑不況とほぼ同時期に販売革命が起こった︒一九二

0

年代後半から三

0

年代初頭にかけて︑

( 1 5 )  

チェーン・ストアが新たな販売チャネルとして急速に発展してきた︒このようなチェーン・ストアの伸長は中小企業

の倒産が増加していた時期に重なっていたことから︑連邦議会は︑チェーン・ストアの成長が中小企業の倒産に関わ

っていると考えたのである︒したがって︑かかる販売パターンの変化が警鐘をもって見られたのは驚くにあたらない︒

そこで︑議員の多くは︑中小の独立卸業者や小売業者が消滅の危機にあり︑

( 1 6 )  

ると確信してしまったわけである︒

また︑チェーン・ストアの伸長は︑数多くの不況の脅威の人格化とも受けとめられた︒反チェーン・ストアかつ親

中小企業の感情は︑

R

P

法以外でも自己増殖していた︒例えば︑

R

P

法案が上程される直前︑パットマン下院議員

( R

二条

f項

最後に︑同条f項は︑買手が︑同条

a

項に照らして違法な差別価格により︑それと知りつつ

( k

n o

w i

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l y

) 当該商品を

( 1 3 )  

誘引し︑または購入することを禁じている︒なお︑この買手の責任は売手の責任から派生するものである︒

一九

0

年代の危機

制 定 史

ジのサイズなどがあげられていか︒

( 1 4 )  

どのような時代であったのか︒この時代の経済的関心の大

その窮状の原因はチェーン・ストアにあ

一五

(12)

門を通じた商品の横流しから卸売業者を保護することによって︑卸売機能を規制していた︒また卸売規約は︑

ーに最低限の卸値の引き下げしか認めないよう求めており︑他の顧客に対する卸売価格を引き合いに出すことでメー 公正競争規約も︑その一例である︒例えば︑

R

法だけが不況とチェーン・ストアに対する立法的対応ではなかった︒これは独立の小売業者の存在とこれに代

P

( m )   表される生活様式を守る試みの︱つに過ぎなかった︒全国産業復興庁が販売プロセスを厳格に規律するために課した

危機への対応

まりを反映している︒ えたのは明らかである︒例えば︑生活から慈善精神を奪う点に︑に非難の目が向けられたのである︒消え行く生活のあり方に対する懸念からして︑連邦議会が独立事業者や自分が奉仕してきた地域社会を守るために明確な決断を下さなかったとしたら︑政治的にはそのほうが驚くべきことであったろう︒チェーン・ストアの発展は共謀によるとの理論に陥っていた

R

法の支持者は︑大企業︑ウォール街︑そして

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大都

市を

︑ かかる懐かしき生活様式に敵対するものと見たのである︒三

0

年代の議員達のムードは︑当時の危機の高

一部であった︒議員の多くが︑ r e

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は ︑

メーカ

チェーン・ストアのロビー活動を行うため設立されたとされる米国小売業連盟

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F e

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) による当該ロビー活動を調査する委員会の委員長となった︒この調査にもとづく決議が当時の感

情にある種のインパクトを与えたのである︒反チェーン・ストアの感情と︑販売革命の一環としてのチェーン・スト アの台頭が独立の小売業者の消滅を意味すると思いたい気分とは関わっていた︒これらは︑大企業とウォール街︑

れに大都市の侵略によって小さな町の生活が失われてゆくことからの保護を求める︑時代のノスタルジックな気分の

このような小さな町の生活の変化を︑立法的救済が必要な国家的緊急事態であると捉

また宗教的信条に反して日曜にすら開店する点など 一九三三年から三五年まで有効であった規約は︑販売チェーンの卸売部

一五

14‑2 ‑350 (香法'94)

(13)

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) の導入であった︒

の場

合に

は︑

ここでは確認しておきたい︒

一五

カーがある卸売業者をバイパスしようとすれば︑全ての規約構成員が当該メーカーをボイコットすべきものとされて

( 1 9 )  

いた︒公正競争規約は︑小売取引では最低価格を設定しようとした︒そして︑その手段は違っても︑小売業者を不公 正な価格競争と見られたものから保護するという目的は同じであった︒時には規約が実売小売価格を指示し︑

コストから価格を設定する計算式が与えられていた︒これらの規約の実質的な目標は︑不況以前に存在 し︑販売パターンの競争的変化によって脅威にさらされていた販売チャネルを保全することにあったのである︒

全国産業復典庁および

R

P

法と同様の︑販売プロセス規制のための二つ目の試みは︑公正競争諸法であった︒主と

て唱えられた公正取引キャンペーンは︑ して当時最も強力な事業者団体であるとされた全米小売薬局協会

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によ

( 2 0 )  

つの側面で行われた︒

法律の制定であって︑

格維持行為を反トラスト法の適用除外とする︑

さら

に︑

また別

︱つは州レベルでの再販売価格維持行為を容認する

一九三三年から四

0

年の間に四四の州で制定された︒二つに︑州法により容認された再販売価

( 2 1 )  

シャーマン法の一九三七年ミラー・タイディングス修正条項

( M i l

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( 2 2 )  

チェーン・ストアの発展に対する最も激しい攻撃は︑チェーン・ストア課税の提案という形で現れた︒課 税率の点からみて︑穏やかな嫌がらせから荒っぽい没収に等しいものまで様々だが︑大半の州が︑色々なチェーン・

ストア課税措置を行った︒連邦レベルでは︑チェーン・ストア課税を求める運動はパットマン下院議員がチェーン課

税法案を提案するまで続いた︒この法案によると︑

支払わなければならなかった︒しかし︑この法案は︑結果的には挫折せしめられた︒以上要するに︑全国産業復典庁︑

公正取引諸法︑チェーン・ストア課税︑

チェ

ーン

は︑

それが活動する州の総数によって乗じられた税金を

そして

R

P

法は︑全米の市場の構造に生じた︑急速かつ明らかな変化に対す

る連邦議会の一貫した対応の産物なのだという点だけ︑

(14)

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の顧問であった︑

この法案は︑公正競争規約に体現されていた目標を維持すべく︑製造業者︑卸売業者︑小売業者という三段階販売シ

( 2 3 )  

ステ

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の保護を目的とした︒これによれば︑消費者に対する再販売のために商品を

購入する顧客は小売業者と見なされることになり︑卸売業者としての割引を否定されることになった︒さらに︑法案

自体は費用節約を理由とする割引を定めていたが︑起草者はこれを限定的に解釈していたので︑値引きの可能範囲は

狭かった︒要するに︑この法案は︑厳格に定義された機能による値引きのシステムを構築し︑伝統的な販売網を飛び

越えてしまう︑購入量などによる割引を阻害するものであっだ︒

R

P法案が下院に上程されて後︑

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が委員長を努める下院法務委員会が七月一

0

日から公聴会を始めた︒六年に及ぶチェーン・スト

アの前記調査にもとづいて︑

日の目を見なかった︒ そして類似の同調法案が上院に上程されて数日後︑

FTC

が後押しする二つの法案もあったが︑

サムナーズ委員会の公聴会では︑卸売業者と中小小売業者対大規模小売業者とチェーンの間の

議論に終始した︒ところが︑上程以降なすところのなかった上院の同調法案が︑三六年二月三日︑それに対する公聴

会抜きで突然に上院法務委員会によって持ち出された︒同日︑

が長を努める下院の小委員会が下院の法案につき二回目の公聴会を開始した︒この時点までに︑

運は結晶しており︑明らかに小委員会のメンバーは公聴会を本案に関する議論の場としてではなく︑法案通過のため

の場として考えていた︒しかし︑実質的な議論を閉じようとするアッターバック委員会の傾向にもかかわらず︑ 連邦議会における法案の経緯

一九三五年六月一

一日

に提

案さ

れた

二回

二度と そもそもの

R

法案は︑合衆国卸売業者協会P

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) によって起草されたものである︒

サムナーズ下院議員

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サムナーズ委員会に委ねられて後︑

アッターバック下院議員

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法を支持する気P

一五

14‑2‑352 (香法'94)

(15)

目の公聴会でも

R

P

法案に反対する議論はなお多少残っていた︒

吹き出る場となった︒

R

法案の立法的進展の著しさに危機感をつのらせた製造業者︑農産物生産者そして大規模小売業者達の圧力によ

P

り︑三六年三月四日︑上院法務委員会はボラー・バンニズ法案

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の公聴会を開始した︒この法案

l )

は︑一定類型の価格差別に対し刑事制裁を予定するなど︑うわべは

R

P

法よりも厳格であったが︑実際にはとりわけ

購入量による値引きを容認するなど自由主義的であった︒この公聴会は︑ようやく巻き起こってきた反

R

法感情の

P

この公聴会は

R

法案を支持する上院議員達を弱めたのであった︒

P

上院での議論の間︑

でき

ず︑

結局

かく

して

する修正付きで

R

P

法案を可決した︒そして︑

その

意図

は︑

R

法案の二つのバージョン

P

一五

R

法の弊害を改善するため︑数多くの修正案が提示されたが︑結局︑上院は︑刑事制裁に関

P

れをとるかの決定を両院協議会

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に委ねる点にあった︒他方︑五月七日︑下院は上院案の修正

条項につき何等の付帯意見も付けずに

R

法案を可決した︒当然︑両院協議会はいずれの法案を採用するかの決定が

P

一方で下院案を現行二条とし︑上院案を現行三条︵なお︑これはクレイトン法二条の修正法ではなく︑

独立した若干の事項に関する刑事制裁規定である︶とする妥協により現行

R

P

法ができたのであった︒

さて︑連邦議会での議論は︑この法律の保護主義的目的を示すと思われる︒

R

法の支持者は競争の強化というこ

P

とを唱えたが︑その心中にある特定の事業者の保護があったことは明白である︒また︑彼らの最大の保護目標は中小

の独立小売業者であったが︑それ以外のグループ︑すなわち卸売業者の保護が潜んでいたことも明らかである︒

R

法の効果は︑当然︑伝統的な三段階販売システムを販売革命から守ることになる︒だからこそ︑多くの卸売業者がこ

の法律を熱心に支持したのである︒卸売業者の利益は立法史に明らかであって︑大量販売革命こそが販売網からその

機能を消失せしめる危険があった︒しかし︑かかる彼ら中間業者の受けている脅威からすれば︑

R

法でも手ぬるい

P

︵上

院案

と下

院案

のいず

(16)

詳細は後述するが︑連邦議会におけるこの法律の目的と効果に対する信頼は︑幾つかの経済的仮定に依拠していた︒

いう経済的仮定が重要であった︒

仮定

は︑

かかるチェーンに活用可能な値引きによって生じる以外にないと

( 2 6 )  

サムナーズ委員会がこの前提を受け入れていたことに︑疑問の余地はない︒第二の チェーン・ストアの台頭は︑結果的に川下の個人や事業者に転嫁されるほかないような︑損失を生じる差別 価格によっているに違いないというものであった︒すなわち︑チェーン・ストアに値引きを与えるように強いられる

売手は︑中小の独立卸売業者や小売業者に対する価格を引き上げることによって自分の損失を埋め合わせるであろう︒

逆に

チェーン・ストアは︑競争が既に消失している市場で消費者に対する価格を引き上げることで︑

小売販売で被った損失を埋め合わせるだろうというものである︒また︑

R

法の支持者には︑顧客によって価格が違

P

( 2 8 )  

うことの一事をもって直ちにコスト以下での販売の証拠と見なす傾向があった︒さらに︑かかる価格の違いから生じ

( 2 9 )  

る損失は他の顧客に対する価格を引き上げることによって償われるに違いないという考えもあった︒あるいは︑チェ

ーンが小売価格をコスト以下で設定していると考えられる場合には︑

地域市場において埋め合わされるであろうと考えられていた︒このような仮定からの結論として︑議員の中には︑こ

の結果︑長期的には︑独占と許容限度を越える高価格がもたらされると考える者もいたわけである︒しかし︑ と

りわ

け︑

チェーン・ストアが行う低価格販売は︑ 4

連邦議会における経済面での議論の核心

︑ 入

このと

とすら思われた︒例えば︑小売業者によるメーカーとの直接取引の絶対的禁止だとか︑卸売機能の重要性を引き下げ

( 2 5 )  

るような販売システムのいかなる変化も容認しないような制度だとかを主張する者さえいたのである︒立法史を注意 深く読み解けば︑連邦議会がこの法律で卸売業者および彼らが取引を行う中小小売業者を保護しようとしたことがわ

コスト以下の

その損失は当該チェーンが独占を形成している

一五

14‑2 354 (香法'94)

(17)

いたのである︒ ていたのである︒ 効率性を達成でき︑ いうよりもむしろ効率性によっているとした︒あるいは︑ ズ委員会やアッターバック委員会の公聴会でのある証人の議論は︑ き同時に︑連邦議会の経済分析の有効性に疑いを投げかける証拠も提示されていたのである︒例えば︑下院サムナー

さら

に︑

一五 九

より低い価格の要因は販売される商品のコストと

これらの委員会は︑中小小売業者でも激しい価格競争や共同購入を通じて かかる効率性の増大が大規模小売業者との競争に負けない能力を生み出しているという証言も得

もし中小小売業者が効率的な措置の採用を拒み︑激しい価格競争に携わることを嫌うなら

うとする立法は成功しないであろう︑ ば︑顧客の選択を通じて彼らの市場占拠率は低下するであろうとの証言もあった︒また︑

( 3 0 )  

という証人もいた︒ かかるプロセスを阻害しよ

以上のような証言に加えて︑連邦議会には

FTC

のチェーン・ストアに関する包括的調査研究の結果も参照できた

のである︒例えば︑サムナーズ委員会やアッターバック委員会の公聴会では︑

ャネルの発展に対し立法的に干渉しようとする試みの無益さを指摘していた︒また︑

費者の選択がチェーンの市場占拠率の急速な増大の理由であることを強調してもいる︒もちろん低価格販売はチェー ン・ストアが愛顧される理由としてしばしば引かれており︑消費支出の減退に伴い消費財をチェーン・ストアから購

入する傾向が高まっていることも指摘されている︒

さら

に︑

FTC

の報

告書

は︑

を決定するのだという証人もいた︒また︑

さら

に︑

FTC

のこの報告書は︑新たな販売チ

FTC

は︑略奪行為ではなく消

FTC

は︑連邦議会の討論ではチェーンに対し最も敵対 的であると考えられた小さな町の住民に対して聞き取り調在を行っている︒しかし︑実際にはチェーンの効用に関す る消費者の見解には鮮やかに対立的なものがあり︑小さな町でもチェーン・ストアの進出を歓迎する消費者も相当数

チェーン・ストアの成功の大部分がおとり廉売

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) の利用であるという広く コストは価格設定の最低基礎に過ぎず需給こそが最終価格

(18)

( 3 3 )  

信じられていた仮定にも疑問を投げかけていた︒

コスト以下での販売は思われているよりもずっと少なかった︒最後に︑この報告書は︑もし立法措置がなければ︑チ

ェーン・ストアが小売市場を独占してしまい︑独立の小売業者を排除してのちに価格を引き上げるであろうという仮

( 3 4 )  

定にも疑問を投げかけていた︒つまり︑

FTC

の至った結論は︑

R

法の制定という方向とは全く逆だったのである︒

P

さ て

R

P

法の立法史からは多くの示唆が導き出せる︒この法律の名分上の目的は︑中小企業の保護︑取引におけ

る公正さの確保および産業集中の阻止にあった︵そして︑今現在もそうであろう︶︒にもかかわらず︑この法律の実際

の支持者の多数は︑伝統的な販売形態を維持する点に特別の利益を有する者達であった︒

間業者と彼らが取引する独立の小売業者である︒彼らの声高な保護の要請は不況の圧力と裏腹であり︑連邦議会をし

て彼らを保護することこそが伝統的価値︑すなわち独立心︑自尊心︑権力分散︑親しみのある社会構造といった価値

( 3 5 )  

を維持する点で公共の利益となるのだと確信させたのであった︒感情的な議論が横行する時代風潮にあっては︑現時

点から振り返ってそれを行うようには︑問題の本質や法案が提起する救済措置の範囲などにつき冷静な分析を行うこ

とができなかったという点は︑驚くにあたらない︒しかし︑このような分析に失敗したことよりも一層重要な点は︑

R

法の基礎にある経済分析に疑問を提起する様々な事実の上での記録や証拠が︑感情的な議論のために軽視された

P

点である︒連邦議会は価格引き下げが略奪的でもなく経済的に正当化される場合もあるということの様々な証拠より

( 3 6 )  

いうところの略奪的価格設定行為にほかならないとの俗説の方を受け入れてしまったのである︒

翻っ

て︑

とい

えば

も ︑

5まとめ

FTC

によると︑目玉商品の活用は普通のことではあるが︑本当に

つまり︑卸売業者などの中

わが国にあっても︑米国において

R

P

法は反トラスト法の一部であるとされていることだけで︑どちらか

( 3 7 )  

その受けとめ方に︑割合批判的観点が薄いように思われる︒しかし︑大不況の時代の社会・経済構造の大

一六

14‑2 ‑356 (香法'94)

(19)

解し難いところがある︒しかし︑

1

価格は高い方が望ましい 変革という全体的文脈の中においてこそ︑実際的な

R

P

法の意義や役割を把握してゆく必要があることを指摘してお

きたい︒そして︑そのことは︑

経済理論上の前提

R

P

の起

草の

際︑

一 六

おそらく今後わが国で差別対価規制の問題を考えてゆく上でも有益な示唆を︑多少な

そのよって立つ経済理論に関して幾つかの前提があったように思われる︒これらはいずれも︑

一九

0

年代米国の経済条件にあって理解されたものであった︒それらを分析することは︑この法律の制度的な性格

を吟味する上で必要な作業であろう︒

R

P

法規制の論理をごく凝縮するならば︑ある特定の部分市場で費用その他の条件が変化したとしても︑事業者は

当該部分市場の顧客に対する価格を引き下げるに及ばない︒逆に︑値引きをすれば︑かえって事業者は

RP

法の禁止

範囲に入る︒この論理は︑事業者というものは標準価格から離れた特別の値引きを与えるものだという︑

R

P

法の起

( 3 8 )  

草者の懸念の中核を反映している︒

この前提は︑インフレ率をいかに下げるか︑生活コストをいかに安定させるかといった現在の懸念からすれば︑理 りとも与えるものになるであろうと思われる︒

一九三五年自動車運送業法や一九三八民間航空法は︑いずれも運

一九

0

年代の立法者にとって事情は全く違っていた︒当時は不況のまっただ中に

あり︑深刻なデフレを経験していた︒連邦議会は︑商品に低価格を支払うことは農民や労働者の賃金を低下させ︑経

済発展を阻害するものと憂慮した︒価格が上がれば賃金などが上昇し︑雇用水準も回復するという信念は︑この時期

に制定された他の法律にも共通している︒例えば︑

(20)

3価格差別は大規模購入者だけを優遇する 輸事業と航空旅客事業において最低料金規制を確立していた︒

2

選択的な値引きは別の顧客に対する価格の引き上げを必ず伴う

これは︑事業者とは値引きを選択的に与えるものだとして︑その代償には別の顧客に対する価格の引き上げを必ず

( 3 9 )  

や伴わなければならないとの前提である︒この法律の支持者が︑伝統的に薄利多売の低マージン率で特徴づけられる

卸売業者や小売業者であったことが︑この前提の背景にあると思われる︒通常︑そこでは︑販売価格は購入商品の費

用プラス経験則のマークアップによっていた︒したがって︑ごくわずかの価格の切り下げが︑特段の事情のない限り

しか

し︑

かりに小売業での価格差別についてそのように言えたとしても︑

R

P

法の適用は小売業に限られない︒

般的に考えれば︑価格は︑当事者の交渉上の地位︑各々の購入者の需要特性︑別の売手の存在などにも左右されるは

ずで

あり

かかる条件の下では︑最終価格に違いが生じるのはありそうなことである︒それに︑もし大規模購入者に

対する低価格販売から生じる損失を小規模購入者に対する高価格によって償うほどに売手が市場力をもつのならば︑

そもそもその者は誰に対しても高価格をつける能力があるとみて差し支えないだろう︒さらに︑売手に競争者がいる

とすれば︑不利に扱われる買手は当該競争者へと移動することになり︑

知れないが︑他方で不利に扱われる買手に対する高価格販売で売上を減少させることになる︒

どの程度の競争状態にあるかに応じて︑価格の引き上げを通じて︑かえって売手が利益を失うという局面すらあるは

ずで

ある

不当であると見なされたとしてもおかしくなかったわけである︒

一方で売手は低価格販売で売上を伸ばすかも

つまり︑売手が実際に

( 4 0 )  

前述のような立法当時の状況からみて︑この前提が広く共有されたことは容易に想像される︒そして︑もちろん︑

一 六

14‑2 ‑358 (香法'94)

(21)

この前提の憂慮するような︑計画的にある特定顧客だけを優遇する価格差別も実際にあり得るだろうそのような行

為は規制されるべきネガティブな評価を受けるほかない︒しかし︑全ての価格差別行為がそのようなものであるとま

では言えない︒今日の寡占産業において︑多くの場合︑価格差別は過大な価格水準を競争的な水準に下げるためのダ

イナミックなプロセスの一部であろう︒寡占産業では︑標準価格は粘着的であり︑この価格を変更するインセンティ

ブが売手の側に基本的にはほとんどない︒このインセンティブは︑大規模顧客を獲得したい︑競争者からさらに顧客

を奪取したいという製造業者の願いに︑

ている︒そして︑

または垂直統合によって製品を自ら生産するぞという顧客の脅しに表現され

その実現方法として価格差別が有効な手段であることも︑また確かである︒

コストにもとづく正当化の抗弁に象徴されるように︑

( 4 2 )  

思われる︒しかし︑現実はもう少し複雑である︒企業は︑生産される商品の量に関わりなく必要な様々な固定費用と︑ コストだけが価格を決定するという暗黙の前提もあるように

総生産量に応じて可変的な︑しかしある︱つの生産ラインにのみ割り当て得ない共通費用も負担する︒だが︑この共

︱つの考え方として︑販売価格によってそれらの費用をカバーする

最も効率的な方法は︑各々の市場の相対的な需要の弾力性に応じてそれらを配分すること︑つまりもっとお金を払っ

てもその商品を得たいと思う顧客にそれらの費用を配賦することである︒また︑需要が緩いとき︑

一 六 つまり過剰な生産

設備がある場合︑商品販売からの総収益は生産に関わる固定費用と共通費用もカバーできないかも知れない︒この場 合︑会社の倒産等を回避するため︑会社の総損失を最小化するやり方で商品価格を設定するだろう︒さらに︑価格交 渉に入ったとき︑通常の事業者ならば︑問題の販売が当該商品の共通費用をカバーするかどうかなど意に介すもので

ないだろう︒特定の取引については︑会社が増分費用を負担する以上に増分収入がもたらされる判断だけで十分であ 通費用と固定費用を正確に配賦する方法はない︒ 4価格の違いとは︑すなわちコストの違いである

(22)

6略奪的価格設定行為はありがちな行為である る︒このように︑現実の経済社会の複雑さの中では︑違う顧客︑違う地域でのある程度の価格差別は︑

また

︑通

常︑

コスト情報は既に会計処理の済んだものだけである︒事業者は将来の生産費用を予測できるに過ぎな

い︒かかる不確定な条件の下でいかなる価格が提ホされるべきかを判断する際︑事業者は︑購入の申し出が︑生産能

ど十分なものかを考慮しなければならない︒ 力を増大させるに足るほど十分なものか︑あるいはより低い価格で長期の供給契約を締結するリスクをとるに足るほ

また結果的な差別価格という経済行為・現象は避け難い︒

大規模購入者に対する価格も小規模購入者に対する価格も同時に決定され︑値引きがあったかどうかを判断するた

( 4 3 )  

めに同時に起こったものとして比較することができるという前提が︑これである︒この前提も︑食品や薬剤の卸売業

者および小売業者といった︑この法律の支持者が︑ほとんどの場合︑買手に交渉不可能な標準価格で取引が行われる

事業に属する者であったということと深い関わりがあると推察される︒

しか

し︑

今日

5価格は一回限りの取引市場で決定される じてしまいがちとなる︒

かく

して

どうしても生

とりわけ大規模組織間の取引では︑商品は長期契約にもとづいて購入されることが多い︒

約は︑インフレ率︑基礎的生産投入要素等の商品コストにおける変更および現実に取引される商品の品質の変更など

に対応するため︑様々なエスカレーター条項を備えているのが普通である︒したがって︑大規模小売業者への長期的

販売と多少とも現金取引で行われる中小卸売業者ないし小売業者への一回販売ないしスポット取引とを比較するの

は︑実態からやや離れた議論になりがちである︒

売手段階条項の基礎にある重要な前提がこれであり︑しばしば略奪的価格設定行為と価格差別行為は︑

一六

かかる契

その

意図

14‑2 ‑360 (香法'94)

参照

関連したドキュメント

場会社の従業員持株制度の場合︑会社から奨励金等が支出されている場合は少ないように思われ︑このような場合に

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

第一五条 か︑と思われる︒ もとづいて適用される場合と異なり︑

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費 等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロス 1 が発生している。食品

注)○のあるものを使用すること。

熱が異品である場合(?)それの働きがあるから展体性にとっては遅充の破壊があることに基づいて妥当とさ  

【こだわり】 ある わからない ない 留意点 道順にこだわる.

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