広汎性発達障害(特定不能)
自閉症理解のキーワード(1)
(1) Single Focus (単一焦点)
Mono Track (単一路線)
① 一度に一つのことしか意識できない
(部分的意識、木をみて森をみず)
② ものごとの二重構造が理解できない
(表面的理解、字義どうりの解釈)
③ 同時に2つのことが行えない
(系列的実行、一回に一個)
「中心的・首尾一貫性」の障害
(セントラル・コヒーレンス)
複雑な社会的状況の中心に 首尾一貫して存在している
意味合いを把握する能力
・自らの体験にとって、体験のどの部分が重要で、どの部分が 重要でないかを判断することに困難さがある
・体験の部分をつなげて自らの体験を理解していくので、一つ 一つの体験が、その本質的な意味合いから離れた具体的な事実 のつながりとなってしまう。
・自らが理解した事実のつながりが少しでも変わってしまうと、
理解全体がこわれてしまい不安感やパニックにおそわれる。
自閉症理解のキーワード(2)
(3) Anxiety (不安)
① どうしてよいかわからない(状況不安)
② どうしても耐えられない (感覚不安)
(4) Flash back ( フラッシュバック)
過去の記憶が鮮明に視覚的感覚的に想起される
(5) Visual thinking ( 視覚的思考)
言葉が映像になり映像で記憶したり考えたりする
(6) Hyper-sensitivity (感覚過敏性)
特有の感性を持ち、外界の刺激に引き付けられる
自閉症理解のキーワード(3)
(1)
Single Focus(単一焦点)
① 一度に一つのことしか意識できない
→ 複雑なものは部分に分ける
② ものごとの二重構造が理解できない
→ 意味理解よりも模倣して行う
③ 同時に2つのことが行えない
→ 一回に一つのことを、部分から全体へ
(2)
Anxiety(不安)
① どうしてよいかわからない→視覚的・具体的・肯定的
② 感覚に耐えられない→慣れさせるより無理させない 刺激を制限する、遮断する
自閉症の理解と対応
自閉症と多動症の合併(1)
自閉(不安)
vs多動(好奇心)
・多動のお母さんが、気まぐれに無計画に自閉の娘を連れまわ してパニックを起こさせている状態を一人でやっているような もの。(一人二役、二人羽織、鼻うどんママ)
・自閉が口を開けて待っていたら、多動が勢いよく鼻にうどん をつっこむ状態
・他者を他者と認識できない時から他者の反応を観察していた。
・すぐには活用できないなりにデータを蓄積することができた。
・意義がわからないうちから現場で鍛錬できた。
「教えて私の脳みそのかたち」 ニキ・リンコ著より
自閉症と多動症が合併(2)
認知や記憶のコマギレ
・自閉は記憶を後で再生して考えることで、その場での理 解の悪さを補っているのに、「不注意」や「せっかち」や
「ぐうたら」があると、後で一人でおさらいする段階でツメ が甘くなってしまう。
・因果関係が記憶に残るためには、ある程度の時間、注 意が向き続けていなければいけないのに、興味が途中 で途切れてしまい因果関係の観察データが集まらない。
・言葉で覚えたり、理屈で覚えた因果関係は頭に残って いるが、実体験からはあまり入ってこない。
「教えて私の脳みそのかたち」 ニキ・リンコ著より
21世紀の自閉症教育の課題 異文化との自閉症との共生
杉山登志郎
自閉症スペクトラム研究 創刊号 2002、Vol1.1−8
広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)
(自閉症スペクトラム研究・創刊号・2003・杉山登志郎)
昔の自閉症の概念
高機能自閉症
アスペルガー症候群 小児崩壊性障害
重度 広汎性発達障害
障害軽度
低い 知的 高い
自閉症の「山」
・従来の自閉症概念は自閉症の「山の頂」にすぎない。
・この山は「広い裾野」を持ち、右の裾野は「健常児・健常 者のなかの性格の偏奇」に広がりを持ち、左の裾野は「重 度の遅滞」に広がりを持つ。
・自閉症の診断基準を機械的に用いると、知的障害が重 度であればあるほど、「自閉症を合併」する割合が増える
(
Happe, 1994)
・重度のダウン症において、「自閉症が合併」することは一 般的である。
・「知的な障害を伴わない群」の割合が、全体の約半数を
占める(
Honda, 1996)
ASD は増えているか?
・自閉症スペクトラム障害(ASD)が「100人に1人」のレベルになる と、増えたとしか考えざるをえない。
・自閉症の発現に関して関与が最も明らかなのは「遺伝的な負因」
である。(Bailey et al, 1995)
・ASDは多岐的な要因が絡み合って生じることは疑いがない。
(Happe, 1994)
・ASDは少なくとも乳幼児期には相当程度「可塑性」がある問題と 考えられる。
・ASDを生じうる乳幼児は多く存在し、その一部は顕在化せずに、
次第に適応の範囲に入っていき、その一部が顕在化してASDとい う形での発現をするのではないか。
・従来は適応の範囲に入ってしまった問題が、現在の状況の中では 多くが顕在化するようになったのではないか。
ASDを顕在化させる要因はなにか?
・乳幼児が受ける「情報の絶対量の過多」なのではないか!
・乳幼児の受ける、特に「対人的な情報の絶対量の不足」が早期 の発達遅滞をもたらすことは、第二次世界大戦後のドイツの乳児 院で明らかになった。
・かつての子育ての時には当たり前であった、「子どもと親が見つ め合う静かな環境」が、現在たいへん得難くなったのではないか。
・ASDにおいては「意識のあり方」そのものが、「通常の我々の意 識のあり方」とは相当に異なっていることが、過去10年間の自閉 症者の回想や自伝により明らかになった。
・自閉症が、知的障害の教育とは全く異なった教育的対応が必要 であることが、ようやく認識されるようになった。
高機能自閉症者が語る「自閉症体験」
・「幼児期は耐え難い騒音と異臭に満ち、何もかも恐ろしく、母親です ら恐怖であった。特に生き物は怖く、犬にいたっては成人にいたって も避けることが続いていた。数字を知った時に、世界が変わった。同 一性保持とは、物事のかくあるべき秩序である。」(症例Jerry)
(Bemporad, 1979)
・「人に近寄られるのが好きではなかった。触られるなど論外で、触ら れると、どんな触られ方であれ痛いし、とても怖かった」(Williams, 1992)
・「人の目をみると話が分からなくなってしまう。45歳をすぎてから『目 がものを言う』ことを学んだ」(Grandin,2000)
・「まわりが一定のリズムで動いている状態が幸福感をもたらし、砂の 一粒一粒が見飽きずに面白く、それに没頭してしまう」(Sacks, 1995)
なぜ会話が苦手なのか?
・「自分は全て一度に一つのことしかできないので、自分の語ったこと すら自分に向かってもう一度言い直さなくては理解できない」
(Williams, 1996)
・「その場でも自分に向かって言い直して、一歩遅れて理解はしてい るが、本当に理解できるのは、あとで一人になって落ちついてからで ある。」(ニキ・リンコ)
・「人と話をする時には会話に専念すれば自分の感覚や意思は見え なくなってしまう。」(会話のキャッチボールを維持するのに全力を使っ てしまうため)(ニキ、2001)
・自分の感覚や意思が見えないと不便なもので、心にもない返事をし てしまう。(それを自分では気がつかない)
・相手の顔や目をみると、なおさら自分のことが分からなくなる。
自閉症の表情認知
・通常の我々の認知は、「部分よりも全体に注意が傾斜する」強い選 択性を持っている。(中枢性統合)
・人を見たときに、通常の人であれば顔を見て表情を読みとるが、自 閉症の認知では、「服の一部分、顔の一部分のみに注意が集中して しまう」。(過剰選択性)(Frith, 1989)
・我々がガラスのコップを見るときには、見た瞬間にコップという「概念 化」をおこない、直ちに「慣れ」が生じる。
・自閉症では、「概念化」がおこなわれずに、自分自身がコップをみず にその表面に写る模様になり、「汎化や慣れ」が生じにくい。
・しばしば自閉症では、作業能力は劣るにしても、最初の5分間と8時 間後の5分間を全く同じペースでやり遂げられる。
視覚による思考
・自閉症の中には、言語が意識の中軸として働かずに、
思考を視覚的イメージで行っている場合がある。
(
Visual thinking)
・言葉はすべて、いったん視覚的イメージに翻訳しなおし、
それにより言葉の理解が可能になる。
(Visualizing)(
Grandin, 1995)
・現在の出来事が引き金になって、しばしば遠い過去の出
来事がフラッシュバックし、現在の事がらと重なり合って体
験されることがある。(
time slip)(杉山、1994)
知覚過敏性
・音や触覚などの「知覚に対する過敏性」があり、それに著しい不快 反応を示す児童が、徐々にそれが生じた状況に対して同じようにパ ニックを呈するようになる。(およそ40%の人に存在)
・これは状況が引き金となって「タイムスリップ」により不快体験がフ ラッシュバックするためと考えられる。
・これは「心的外傷体験の侵入症状」によく似ており、処理される記憶 の部位が通常とは異なっている。(Liberzon, 1999)
・知覚過敏性に対抗するために、「解離」をあやつって適応している場 合もあり、「他者から借りた人格の仮面」を使い分けて社会的な適応 をする場合もある。(Williams, 1994)
・鈍感(Tough but Dull)と敏感(Vulnerable but attentive)の異なる意 識状態(モード)を使い分けている場合もある。(ニキ)