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〈研究ノート〉連邦取引委員会13条(b)項に基づく消費者救済 : 旅行代理店の詐欺的慣行の場合

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93 〈研究ノート〉

連邦取引委員会法13条(b順に基づく消費者救済

旅行代理店の詐欺的慣行の場合一

田  耕

作 1 はじめに  連邦取引委員会による消費者救済(consumer redress)の法的根拠となりう        1) るのは,連邦取引委員会法5条(b)項,13条(b)項および19条である。しかし,1980 年代に入ってからは,連邦取引委員会による消費者救済は,主として,13条(b) 項の次のただし書に基づいて行われるようになった。すなわち,「適切な事件で は(in proper cases),委朝会は,終局的差止命令(permanent injunction)を 求めることができ,かつ裁判所は,適切な立証が行われたのち,それを発する ことができる。」  そこで,本稿において,13条(b)項に基づく消費者救済が問題となった具体的 事件を取り上げ,連邦取引委貝会による消費者救済の一端を紹介することにす る。        2)  取り上げるのは,旅行代理店の詐欺的慣行が問題となったワールド・トラベ        3) ル事件およびエイミー・トラベル事件である。両事件は,相補って,13条(b)項 1)なお,この点については,別途,やや詳しい検討を行うことを予定している。 2)なお,本稿で問題にする旅行代理店は,詐欺を目的とするものであり,通常の旅行代理 店とは大きく異なっている。この点については,別稿で触れる予定である。 3)なお,同意判決により事件が終結したものとして,Vacation Travel Club,Inc.,5Trade Reg. Rep. S 22,734 (1989), g 22,822 (1990> ; Bliss Holidays lnternational, lnc., 5 Trade Reg. Rep. g 22,517 〈1988),g22,830 〈1990); Jet Set Travel, lnc., 5 Trade Reg, Rep. S g 22,928,23,031(1991)等がある。

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94  彦根論叢 第278号 に基づく消費老救済の問題状況をひと通り明らかにしてくれるように思われる。        4)  紹介の焦点は,次のところに置かれる。すなわち,第1は,事件の概要を明 らかにするということである。まず,どういつだ事実関係のもとで消費者救済 が求められたのかについて述べる。そして,その後,当該事件はどのように推 移したのかについて述べる。  第2は,消費者救済の法理を明らかにするということである。まず,どのよ うな解釈のもとに,また,どのような事件で,13条(b)項の当該ただし書に基づ く消費者救済は可能と考えられているのかについて述べる。そして,その後, どういつだ理由で個人責任が追及されうると考えられているのかについて述べ る。  そして,第3は,消費者救済の実際を明らかにするということである。まず, どのように返還額が算定されているのかについて述べる。そして,その後,ど のように救済基金が処分されているのかについて述べる。 II ワールド・トラベル事件  以下,事件の概要,消費者救済の法理,消費者救済の実際の順に紹介をする。  (1)事件の概要  まず事実関係について,続いて事件の推移について述べる。       5)  (a)事実関係  本件における被告は,2つの会社および2人の個人である。 2人目個人は,被告会社をコントロールしている。  本件においては,次の2つのことが問題とされた。すなわち,1つは,被告 が,ハワイへのバケーションを購入するよう消費者を誘引するために,詐欺的 広告を用いたということである。そして,もう1つは,被告が,クレジットカ ード詐欺を行い,解約されたクレジット購入の払戻しに関する連邦法に正確に 従わなかったということである。 4)したがって,問題とされた行為または慣行が欺隔的であるかどうかという問題や,差止 命令それ自体にかかる問題には,触れない。 5) See FTC v. World Travel Vacation Brokers, lnc., infra note (7), at 1021, 1022−23.

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        〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済   95  被告は,29ドルの証書を広告し,かつそれを購入するよう消費者を誘引した。 その証書は,消費者が追加的な条件を満たせば,ハワイまでの往復運賃のため に償還されうるというものであった。最も重要な条件は,消費者が,被告会社 の1っであるワールド・トラベルの計算した「ホテル費用」で,最低7泊8日 のホテル予約をワールド・トラベルを通じて行うということであった。被告は, また,1人当り100ドルの保証金を予約に先立ち要求した(そのことは,消費者 が証書を受け取るまで開示されなかった)。  ハワイへの航空運賃は29ドルとの広告主張にもかかわらず,被告は,消費者 に航空運賃とホテル料金の全額を請求した。被告は,3つの部分からなる計算 方法を通じて,「ホテル費用」の真実の側面を隠蔽しようとした。まず,被告 は,卸売のバケーション費用を計算するために,航空費用および宿泊費用を合 算した。次に,1人当り50ドルの追加的な利潤を査定した。なお,29ドルの証 書の価格は,航空運賃の価格からもそのパッケージの全体の購入価格からも差 し引かれなかった。最後に,被告は,この数値  卸売費用プラス利潤一を 8(予約日数)で割った額をバケーション1日当たりの「ホテル費用」として 消費者に表示した。  被告はどこにも,航空運賃が「ホテル費用」の決定に加算されているという ことを開示しなかった。また,割算の方法一一「宿泊」に基づいて価格を表わ すという旅行産業の慣行に代えて,ホテルに滞在する「日にち」の数に基づい ている一は,一層,消費者が負担する実際の費用を歪曲した。  ワールド・トラベルは,29ドルのハワイへのバケーション証書を60万から70 万販売した。  他方,ワールド・トラベルの顧客の約99パーセントは29ドルの証書をクレジ ットカードで購入したが,ワールド・トラベルは,そのクレジットカードの運 用に関する紛争を惹起した。というのは,とくに,顧客がワールド・トラベル にクレジットの払戻しを要求したからであり,また,顧客が,そのクレジット カードに関して入金取消しを求める書面をそのクレジットカード発行者に提出 したからである。

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96  彦根論叢 第278号  実際のところ,被告は,解約期間内に証書を返したとの証拠書類を消費者が 提出したにもかかわらず,いくらかの場合,消費者に払戻しをするのを拒絶し た。  また,ワールド・トラベルは,迅速にクレジットの払戻しをする旨消費者に 表示していたけれども,これらの払戻しは,多くの場合,消費者が苦情を述べ るまで遅らされた。しかも,払戻しが引き延ばされた資金は,個人被告の個人 勘定に移された。  (b)事件の推移  被告の旅行代理店がハワイへのバケーション・パッケー ジの費用を不実表示しているとの多数の消費者苦情を受け取ったのち,連邦取 引委員会は,1987年9月28日,地方裁判所に訴状を提出することにより本件訴      6) 訟を開始した。  当該訴状は,被告が連邦取引委員会法5条違反の虚偽かつ圧穿的な取引慣行 を行ったと申し立てた。また,当該訴状は,消費者信用報告書を迅速に発しな いことで被告は貸付真実法に違反したと申し立てた。  加えて,訴状は,返還およびその他の適切な衝平法上の救済を含む,暫定的 差止救済および終局的差止救済を求めた。さらに,連邦取引委員会は,訴状の 提出と同時に,詐欺的と申し立てた慣行を被告が行うのを阻止するために一方 的緊急差止命令を求めた。  1987年9月28日,地方裁判所は,被告の会社資産および個人資産すべての凍 結を含み,かつ,会社および個人の財産にかかる一定の記録を作成するよう被 告に強制する一方的緊急差止命令を求める連邦取引委員会の申立を認めた。  暫定的差止命令を求める連邦取引委員会の要請は治安判事に付託されていた が,7日間の審理ののち,1987年12月16日,治安判事は,被告すべてに対して 暫定的差止命令が発せられるべきであると勧告し,また,会社および個人の資 産の凍結が継続されるべきであると勧告した。  地方裁判所は,治安判事の勧告を暗黙のうちに採択し,1987年12月18日,暫 6)以下,See FTC v. World Travel Vacation Brokers, Inc., infra note(7), at le21−22, 1023−24.

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        〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済   97 定的差止命令を発した(なお,当該差止命令は3日後の21日,訴訟費用および 弁護士報酬の支払いを許すよう修正された)。その差止命令はとくに,連邦取引 委員会法5条違反の欺隔的な広告を被告が行うのを禁じ,また,貸付真実法の 諸規定に被告が従うよう命じた。  そこで,被告は,暫定的差止命令の正当性を争う中間上訴を提起した。しか       7) し,控訴裁判所は,1988年11月9日,地方裁判所の当該判決を認容した。  なお,その後,個人被告の1人が連邦取引委員会による損害賠償額の算定を 問題にしたが,1991年4月11日,地方裁判所は,連邦取引委員会による損害賠          8) 償要請の全額を認めた。  ② 消費者救済の法理  まず13条(b)項のもとでの衡平法上の権限について,続いて13条(b)項に基づい て消費者救済が認められる適切な事件について,そして最後に個人責任につい て述べる。        9)  (a)13条(b)項のもとでの衡平法上の権限  被告は,次のように主張した。 すなわち,13条(b)項の最後のただし書に基づいて終局的差止救済を求める訴訟 においては,地方裁判所は,暫定的差止命令,または終局的差止命令を補助す るその他の救済を付与する権限をもたない。  他方,連邦取引委員会は,次のように主張した。すなわち,ここで要請され ているタイプの暫定的救済を付与するという,内在的な衡平法上の権限を裁判 所がもっということは,充分に確立されている。議会は,補助的救済の利用可 能性を明示的にも必然の暗示によっても制限しなかったので,この衡平法上の 原則は完全に適用されるべきである。制定法の立法史もまた,この主張を支持 する。  それに対し,控訴裁判所は,終局的差止救済を付与する権限がまた,中間的 救済を付与する権限を含むとの結論に同意した。そして,シンガー事件判決の 7) FTC v. World Travel Vacation Brokers, lnc., 861 F. 2d 1020 (7th Cir. !988). 8) FTCLv. World Travel Vacation Brokers, lnc., 1991−1 Trade Cases g 69,433 (N. D. lll. 1991). 9) See FTC v. World Travel Vacation Brokers, lnc., supra note (7), at 1024−26.

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98  彦根論叢 第278号         10) 次の判示を引用する。すなわち,「議会は,委員会によって執行される法の諸規 定の違反に対して終局的差止命令を付与する権限を地方裁判所に与えたとき, 完全な正義を達成するのに必要な補助的救済を付与する権限もまた地方裁判所 に与えた。というのは,議会は,明示的にも必然かつ不可避の推論によっても, その伝統的な衡平法上の権限を制限しなかったからである。」        11)  (b)13条(b)項に基づいて消費者救済が認められる適切な事件  被告は,「適 切な事件」においては終局的差止命令を発する権限を制定法は地方裁判所に与 えていると注記する一方,本件は「適切な事件」ではないと述べた。その見解 によれば,「適切な事件」は,詐欺の立証を要求する。  他方,連邦取引委員会は,次のように主張した。すなわち,制定法は,「適切 な事件」の定義をそのように限定していない。13条(b)項の当該ただし書のもと では,終局的差止命令は,連邦取引委員会によって執行される法のどのような 規定の違反に対してであれ得られうる。たとえそうでないにしても,本件は, 「定型的な詐欺」(routine fraud)を含んでいる。  この点,控訴裁判所は,次のように判示した。立法史とともに読まれるとき, 制定法の文言が次のことを許しているということについては実質的な議論の余 地がある。すなわち,連邦取引委員会によって執行される制定法のいかなる違 反をも,連邦取引委員会が,13条(b)項の最後のただし書に基づいて訴追すると いうことである。  この解釈は,当該地方裁判所によって認容され,また,いくつかのその他の 裁判所によって明示的に認容されてきた。しかし,現下の事件は,我々が,そ のただし書のそのような広い解釈が心要であると断定することを要求していな い。  我々は,次のことが全く明白であると信じる。すなわち,行政手続を通じて, 新規の規制上の争点に連邦取引委員会の専門性を適用する必要のない5条目あ からさまな違反を中止させようとするとき,このただし書に連邦取引委員会が 10) FTC v, H.N. Singer, lnc,668 F. 2d 1107, 1113 (9th Cir. 1982). 11) See FTC v. World Travel Vacation Brokers, lnc., supra note (7), at 1026−28.

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        〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済   99 依拠することができるということを議会は少なくとも予期していたということ である。  立法史が明確にするように,13条(b)項を制定するにあたっての議会の目的は, できるだけ迅速に,5条によって禁止される活動からアメリカの消費者を保護 することであった。欺隔的慣行の性質が広範な行政的精緻化を必要としない「定 型的な詐欺」にかかる事件においては,連邦取引委員会は,即座の差止救済を 求め,かつ,その行政上の資源を他のところに割り当てる権限が与えられた。  明らかに,連邦取引風雲会によって提出された申立,すなわち,ハワイへの バケーションをワールド・トラベルから購入するよう消費者を誘引するために, 被告が虚偽かつ欺計的な広告を用いたということは,当該ただし書に基づく差 止救済のためには,定型的な詐欺となる。したがって,地方裁判所が本件訴訟 を,13条(b)項の最後のただし書のための適切な事件と考えたのは,適切であっ た。       12)  (c)個人責任  控訴裁判所は,次のように判示した。我々はまた,地方裁 判所が個人被告を暫定的差止命令に従わせたとき,それはまちがっていなかっ たということに疑いをもたない。個人被告がワールド・トラベルの経営の中心 にいたことは明らかである。彼らは,ワールド・トラベルの唯一の株主である。 個人被告の1人は社長であり,もう1人は秘書役である。個人被告はまた,も う1つの被告会社の主たる株主であり,役員である。  個人被告は,広告キャンペーンを含む会社被告の活動を命じ,かつ監督した。 たとえば,個人被告の1人は,問題とされた広告物を作成するために広告代理 店と密接に協働した。また,彼らは,ハワイへの往復航空運賃はたったの29ド ルであると消費者に言うようワールド・トラベルの電話勧誘員に指示した。さ らには,彼らは,ワールド・トラベルのクレジット払戻し政策を実施し,かつ 監督した。  個人被告が,いくらかの州の法務長官を満足させるために,販売台本のいく らかを変更したことは明らかであるけれども,それらの行為は,国中の消費者 12)See FTC v. World Travel Vacation Brokers, lnc., supra note(7), at 103ユ.

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100 彦根論叢第278号 が欺計的広告物から保護されるであろうということを確実にしない。裁判所は, 法の遵守を確実にするために,個人被告がその権限内のすべてのことをするよ う要求することができる。個人被告が欺隔的慣行を完全には正さなかったとい うことは明らかである。それゆえ,地方裁判所が個人被告を個人として暫定的 差止命令の範囲に含ましめたのは,適切であった。  個人被告はさらに次のように主張する。すなわち,彼らを暫定的差止命令の 範囲に含ませることが適切であったとしても,彼らの資産の凍結を正当化する のを許す根拠は存在しなかったということである。しかしながら,本件におい て提示されている状況のもとでは,我々は,地方裁判所が個人被告の資産を凍 結したとき,それ.はその裁量の範囲内で行為したと信じる。  地方裁判所は,本案の最終判断において連邦取引委員会が勝訴するというこ とはありうることであると決定した。そこで,返還は,その手続の終結に当た って適切な救済となるであろう。それゆえ,地方裁判所は,侵害された顧客に 対して返還をするのに,会社被告の資産が利用可能となるよう確実にする義務 があった。  この点,ワールド・トラベルから個人被告に対して資産のかなりの移転があ ったということが明らかにされた。また,個人被告も会社被告も,関連ある財 務情報を開示するようにとの裁判所の命令に応じなかったので,あまりドラス ティックでない救済が適切であったかどうかを見極めるのは極めて困難である。  (3)消費者救済の実際  まず返還額の算定について,続いて救済基金の処分について述べる。         13)  (a)返還額の算定  連邦取引委員会は,次の2つのクラスの消費者のため に損害賠償を求めた。すなわち,①ワールド・トラベルの証書を購入したすべ ての消費者,および②ワールド・トラベルに保証金を入れたが,ハワイへのバ ケーションを行わなかったすべての消費者,である。  最初のクラスの消費者の損害賠償請求額がいくらになるかを算定するに当た り,連邦取引委貝会は,ワールド・トラベルの財務諸表に依拠した。それによ 13) See FTC v. World Travel Vacation Brokers, lnc., supra note (8) , at 65779.

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       〈研究ノート〉連邦取引委貝会法13条(b)項に基づく消費者救済  101 れば,ワールド・トラベルは,およそ68万8,498の証書を総額2,136万4,113ドル で販売していた。また,それによれば,およそ18万9,433の証書が消費者から返 還され,その結果,全体で587万8,107ドルが払い戻されていた。総売上高から 払戻し分を差し引いて,連邦取引委員会は,最初のクラスの消費者が総額1,548 万6,006ドルの損害を被ったと決定した。  第2のクラスの消費者に関しては,連邦取引委員会は,ワールド・トラベル の貸借対照表からその損害総額を引き出した。それによれば,ワールド・トラ       14) ベルは,顧客の保証金として49万1,600ドルをもっていた。  両クラスの消費者の損害額を合算して,連邦取引委員会は,1,597万7,606ド ルという全体の損害総額に到達した。  連邦取引委員会の損害賠償要請に対応して,個人被告の1人は,販売された 証書の全体数に依拠して損害賠償額を裁定することはできないと主張した。そ の理由は,次のところに置かれる。すなわち,すべての購入者がワールド・ト ラベルの広告によってだまされたわけではなく,また,ワールド・トラベルが 提供するサービスに不満足であったわけではないということである。そこで, 彼は,個々の証書所持人の各々が実際にだまされたかどうかに関する決定を裁 判所が行うよう主張した。  しかし,裁判所は,次のように判示した。すなわち,証書を購入したほとん ど70万近い消費者の心理状態を個別に調べるという,果てしのない仕事に取り 組む必要はない。連邦取引委員会が正しく指摘するように,販売された証書の 数は,損害賠償額を裁定するための適切な根拠を提供する。  というのは,29ドルの証書は,事実上価値がないからである。証書購入者は, 航空運賃およびホテル代の全部を請求された。被告は,バケーション・パッケ ージの全費用から証書の価格を引きさえしなかった。  個人被告の1人は,割引の航空運賃およびホテル料金を獲得するワールド・ 14)なお,ワールド・トラベルから証書を購入した60万から70万あ消費者のうち,実際にハ  ワイへのバケーションを予約したのは,9,500人である。See FTC v. World Travel  Vacation Brokers, lnc., supra note (7), at 1031.

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102  彦根論叢 第278号 トラベルの能力を誇るけれども,彼は,自分の見解を支える記録に言及したこ とは一度もなかった。たとえワールド・トラベルが有利な料金を獲得したとし ても,ワールド・トラベルがその低料金をその顧客に順送りしたということを 示唆するものは何もなかった。ワールド・トラベルの顧客は,それゆえ,払戻 しの資格がある。  かくして,裁判所は,連邦取引委員会による損害賠償要請の全額を認めた。 そこで,連邦取引委員会は,総額1,597万7,606ドルという損害賠償額を裁定さ れた。 (b)救済基金の処分  1991年,第1次分として,およそ1,300人の消費者       15} が,総額47万ドルの払戻しを受けた。払戻しを受けた消費者は,29ドルの証書 を購入し,かつその後,宿泊に関して保証金を入れたものに限られた。1人当 りの払戻しは大部分が,約100ドルであった。       IIIエイミー・トラベル事件  以下でも,事件の概要,消費者救済の法理,消費者救済の実際の順に紹介を する。  (1)事件の概要  まず事実関係について,続いて事件の推移について述べる。       16)  (a)事実関係  本件における被告は,3つの会社と2人目個人である。2 人目個人は,被告会社の所有者兼取締役である。  被告会社および個人被告は,旅行証書(「バケーション・パスポート」または 「バケーション・バウチャー」として知られているもの)を販売していた。  被告は,バケーション・パッケージの販売のためにテレマーケティングを用 いた。提供されるサービスは,伝統的な旅行代理店が行うものに似ていた 航空運送およびリゾート地での宿泊を含むバケーション・パッケージの組み合 15)See Washington Post, April 28,1991, E8.なお,第2次分の払戻しも予定されている  旨,伝えられている。 16) See FTC v. Amy Travel Service, lnc., infra note (21), at 566−70.

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       〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済  103 わせ  が,そのパッケージを販売するために用いられる方法は,旅行産業に おける常態とは全く異なっていた。  被告は,書類を組み合わせて「バケーション・パスポート」と称し,289ドル から329ドルで消費者に販売した。当該パスポートは,次のような文言を含んで いた。すなわち,このパスポートの成人所持人は,1人分の無制限・往復・標 準・通年・完全エコノミー(エコノミークラス)航空運賃を超えない価格で, 2人分の往復航空券プラス7泊8日の宿泊を享受する資格が与えられる。成人 単独旅行者は,無制限・エコノミークラス運賃の50パーセントで,同一の便益 を享受する資格が与えられる。  そのパスポートは,また,予約手続を詳しく述べていた。それは,とりわけ, 被告会社の1つであるエイミーを通じてすべての旅行手配がなされなければな らないという要件を含んでいた。  さらには,そのパスポートは,次のような陳述を含んでいた。すなわち,エ イミーは,当該日程による旅行の最低価格を保証し,事実に反しておれば差額 の3倍を現金で支払うであろう,ということである。  電話によるパスポート販売を促進するために,個人被告は,電話販売員が用 いる「台本」を開発した。その基本となる台本は,わずかの特別の顧客だけに その提供がなされているということをほのめかす文言を含んでいた。しかし, 旅行見込者がバウチャーに加えて購入する必要があった航空運賃の価格は与え られなかった。  顧客が告げられたのは,1人分の無制限・往復(エコノミークラス)・完全エ コノミー航空運賃を超えない費用で,7泊8日の全額前払いのバケーションと 2人分の往復航空運賃を亨濡する資格をバウチャーの費用は顧客に与えるとい うことだけであった。顧客は,また,マスターカードまたはビザの会員番号を 与えるよう求められた。  台本が読まれたのち,販売員は電話を監督者に回し,監督者は,顧客に対し, 「購入者同意書」として知られている文書を電話越しに読んだ(なお,この同 意書のコピーは,バケーション・バウチャーとともに顧客に送付された)。この

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104 彦根論叢第278号 同意書は,その購入の詳細を説明することを意図しており,次のような陳述を 含んでいた。すなわち,クレジットカードによる購入の結果,バケーション・ パスポート・バウチャーと引き換えに,あなたは,1人分の往復・標準・通年・ 完全エコノミー(エコノミークラス)航空運賃を超えない費用で2人のための 全額前払いのバケーションを享受する資格が与えられる。あなたは,それをバ ウチャーに名前があげられている旅行代理店から購入することに同意する。  これらの一連の手続は,常に文字通りに行われたというわけではなかった。 被告およびその販売スタッフは,標準の台本から逸脱した。たとえば,ある台 本では,利用可能なバウチャーの数は極めて制限されているとか,この電話は 販売を目的とするものではないといった一行が書き加えられていた。販売員は, 繰り返し行われる顧客の質問に対してはあらかじめ用意された返答を与えられ ており,たとえば電話でクレジットカードの会員番号を与えるのをしぶる顧客 には,次のように述べることによって対応するよう指令されていた。すなわち, 我々は,顧客の信用を確かめるためにマスターカード/ビザに問い合わせる。 もし我々が誤まってクレジットカードの会員番号を用いたなら,我々が加盟店 番号を失うだけではない。疑いもなく我々の銀行が,マスターカード/ビザに かかわりのあるすべての事業を全面的に監査するために我々の勘定を凍結する であろう。  また,いくらかの台本では,販売員にクレジットカードの会員番号を与える ことによって顧客はバウチャーの代金を請求されるであろうということが明確 にされていなかった。  被告は,そのバケーション・バウチャーを販売するのに完全に成功した。す なわち,およそ3万5,000の証書が他の会社に卸売され,2万5,000が直接消費 者に販売された。その経営が連邦取引委貝会によって閉ざされたとき,2万 5,000人が1万2,000から1万3,000の旅行を実施し,1万7,000人程度の顧客が 旅行を待っていた。およその総収益は1986年が150万ドルであり,1987年が450 万ドルであった。  被告についての消費者苦情は,被告の一連の慣行が原因であった。多くの消

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       〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済  105 費者は,そのクレジットカードの会員番号を被告が誤用したとの苦情を述べた。 すなわち,販売員は,購入のために請求されるであろうとは言わず,顧客の信 用価値を確かめるだけの目的でクレジットカードの会員番号を求めている,と 主張した。  被告は,そのクレジットカード取引を扱っている銀行と別のトラブルを起こ した。トラブルが起こったのは,被告が行った消費者勘定への請求を数多くの 消費者が争ったからである。これらの争いは,消費者が支払いを拒絶するとき, 被告の勘定への入金の取消しという結果に終った。一銀行は,結局,70万ドル 以上の消費者関連の入金取消しに遭遇した。また,いくつかの銀行は,消費者 苦情のために被告の勘定を廃止した。  他方,被告のセールス・ピッチについての主たる消費者苦情は,バケーショ ン・パッケージの真の費用についての誤解であった。バケーション・パスポー トそれ自体は289ドルから329ドルで販売された。そのパスポートに印刷されて いたのは,そのパスポートの価値についての説明,すなわち,1人分の無制限・ 往復・標準・通年・完全エコノミー(エコノミークラス)航空運賃を超えない 価格で,2人分の往復航空券と7泊8日の宿泊の資格が所持人に与えられると いうことであった。それゆえ,被告は,そのパスポートそれ自体の費用に加え て,エコノミークラスの航空運賃の費用までの額を消費者に請求することがで きた。  しかし,「エコノミー」ということばの使用は,低費用運賃を示唆するもので あった。エコノミークラス航空運賃は,「完全エコノミー」運賃と記述されてい るが,実際には,利用可能な最高価格の普通運賃である。このことは,バケー ション・パスポートの購入者に開示されることはなかった。真の価格は,旅行 見込者がバケーションを予約したのちにはじめて,開示された。  また,テレマーケティングの台本のことばづかいは,バケーション・パスポ ートの費用が全体のバケーション・パッケージの価格に等しいというミスリー ディングな印象を作り出した。  しかし,バケーション・パッケージの実際の価格は,バケーション・パスポ

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106  彦根論叢 第278号 一トそれ自体の費用をはるかに超えており,エイミーが請求した価格はバーゲ ンではなかった。たとえば,1987年4月28日のワシントン,D.C.からホノルルま での往復・エコノミークラス航空運賃は,1,936ドルであったが,7泊の宿泊と 航空運賃を含むワイキキまでの2人分の完全なバケーション・パッケージは 1,198ドルで別の旅行代理店から利用可能であった。  そのような事実に照らせば,バケーション・パスポートは,ほとんど実際的 な価値をもたなかった。セールスピッチは,バケーション・パスポートが大バ ーゲンであるとの欺隔的な印象を作り出すものであった。  (b)事件の推移  1987年8月3日,連邦取引委員会は,被告が連邦取引委 員会法5条に違反したと主張して,連邦取引委員会法13条(b)項に従ってその訴       17)18) 状を地方裁判所に提出した。連邦取引委員会は,暫定的差止救済および終局的 差止救済,資産凍結,解除,返還ならびにその他の衡平法上の救済を求めた。  その訴状において,連邦取引委員会は,次のように主張した。すなわち,被 告が販売したバケーションの真の費用について不実表示したり,それを開示し ないことによって欺回したり,また,無断で顧客に請求書を送ることを含む, その請求慣行について不実表示したりすることによって,被告は不公正および 欺隔的な販売慣行を行った。  同日,一方的緊急差止命令が発せられた。それは,次のことを命じた。すな わち,1つは,顧客に対する債務を支払うのに必要なものを除いて,被告の資 産を凍結するということであり,もう1つは,被告が,①三二的と申し立てら れた慣行をやめ,②バケーション・パスポートに関するすべての販売,解約, 払戻しおよびバケーションについて説明をするということである。その命令は, 後に,合理的な生活費および弁護士報酬の支払いを許すよう修正された。  1987年12月10日から16日にかけて,正式の事実審理が治安判事のもとで開か れた。 17)以下,FTC v. Amy Travel Service, Inc., infra note(21),at 570. 18)なお,一連の州の法務長官も被告に対して訴訟を提起した。実際,いくつかの州におい  て,被告に不利な判決が下されている。

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        〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済  107        エ ラ  1988年2月10B,治安判事は,次のような結論を下した。すなわち,被告が 商業における一門的な慣行を行い,表示および不表示を行い,合理的な顧客を ミスリードする蓋然性がある態様で行為し,かつ合理的な顧客を実際にミスリ ードしたということである。治安判事はまた,被告の不実表示,慣行および不 表示が取引にとって重大であると認定した。  1988年5月4日,治安判事は,連邦取引委員会が連邦取引委員会法違反を立       20) 証したと認定して,最終的に,終局的差止命令を発した。それにおいて被告は, 連帯して,また個々に,救済として連邦取引委員会に662万9,100ドルを支払う よう命じられた。  そこで,被告は上訴し,当該の救済を命じる裁判所の権限を問題にした。し        21) かし,控訴裁判所は,1989年4月19日,事実審裁判所の判決:を認容した。  なお,その後,救済基金の処分を要請する連邦取引委員会の申立に個人被告 の1人が反対したが,1990年8月27日,地方裁判所は,連邦取引委員会が勧告       22> した態様で当該基金を処分するよう命じた。  (2)消費者救済の法理  まず13条(b)項のもとでの衡平法上の権限について,続いて個人責任について 述べる。       23)  (a)13条(b)項のもとでの衡平法上の権限  被告は,次のように主張する。 すなわち,地方裁判所は,13条(b)項の終局的差止訴訟においては,解除および 返還のような衡平法上の金銭的救済を付与する権限をもたない。この主張をす るにあたり,被告は,制定法それ自体の文言を示し,次のように主張する。す なわち,制定法は,裁判所が,終局的差止命令を付与する権限をもつというこ 19) See also FTC v. Amy Travel Service, lnc., 1988 U. S, Dist. LEXIS 13371 (N, D. lll.  1988). 20) See also FTC v. Amy Travel Services, lnc., 1988 U. S. Dist. LEXIS 7380 (N. D. lll.  1988). 21) See FTC v. Amy Travel Service, lnc., 875 F. 2d 564 (7th Cir. 1989). 22) See FTC v. Amy Travel Service, lnc., 1990−2 Trade Cases g 69,160 (N. D. lll. 1990) . 23) See FTC v. Amy Travel Service, lnc., supra note (21), at 571−72,

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108 彦根論叢第278号 とだけを明記しているので,裁判所の権限は,それを越えて進むことはできな い。  それに対し,控訴裁判所は,次のように判示した。すなわち,本件における 地方裁判所の権限を縮減しようとする被告の努力は,13条(b)項によって付与さ れた衡平法上の権限が広いことを明確にする本裁判所の最近のいくつかの判決 によって挫折させられた。        24)  ワールド・トラベル事件においては,本裁判所は,次のような立場をとった。 すなわち,終局的差止権限の付与は,完全な正義を達成するのに必要な補助的 救済を付与する権限をも地方裁判所に与えた。というのは,それは,その伝統 的な衡平法上の権限を明示的にも,また必然かつ不可避の推論によっても制限 しなかったからである。そして,当該事件において,本裁判所は,地方裁判所 が,終局的差止救済とならんで中間的救済を付与する権限を13条(b)項のもとで もっていると判示した。       25)  エルダーズ・グレイン事件においては,本裁判所は,とくに,地方裁判所が 13条(b)項の手続において解除を命じることができると認定した。当該事件にお いて,我々は,13条(b)項の暫定的差止権限の付与は,その他の衡平法上の権限 の付与を随伴しているかどうかを扱った。そして,我々は,権限のそのような 付与は,付与された権限の効果的な行使に必要であれば,衡平法上のどのよう な補助的救済であれ,それを発する権限を随伴していると認定した。  この理由づけは,終局的差止権限の付与が,衡平法上の補助的救済に訴える 権限をも随伴しているかどうかの争点に同様の説得力をもって当てはまる。解 除および返還は,補助的救済の適切な形態でありうる。この争点を扱った他の 巡回区のすべてが,その他の必要な衡平法上の救済を発する権限を13条(b)項が 付与していると認定してきた。  それゆえ,我々は,13条(b)項に基づく手続においては,終局的差止命令を発 する権限の地方裁判所への制定法上の付与は,付与された権限の行使を効果的 24)本件については,すでに紹介をした。前述II参照。 25) FTC v. Elders Grain, lnc., 868 F. 2d 901 (7th Cir. 1989).

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       〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済  109 にするのに必要な衡平法上の補助的救済を命じる権限を含むと判示する。       26)  (b)個人責任  会社慣行が,分別があるといってもよい人が通常依拠する 種類の不実表示または不表示であり,かつ消費者侵害が帰結したということを 連邦取引委員会がまず立証することができるなら,個人は,連邦取引委員会法 のもとで会社慣行のために責任を問われる場合がある。  いったん会社責任が確立されるなら,連邦取引委員会は,まず,次のことを 立証しなければならない。すなわち,個人被告が当該の行為もしくは慣行に直 接的に関与したか,またはそれらをコントロールする権限をもっていたという ことである。会社をコントロールする権限は,会社の役員の義務を引き受ける ことを含む,事業活動および会社政策決:定への積極的なかかわりあいによって 立証されうる。  そして,次に,連邦取引委員会は,個人が当該慣行についての知識をいくら かもっていたということを立証しなければならない。この知識要件が,本件に おける鍵となる争点である。  被告は,意図(intent)それ自体が連邦取引委員会法違反の必要要素ではない ということを認める一方,金銭返還の責任を個人が問われうる事件では,より 高い知識基準を本裁判所が適用することを求め,そのような制裁を課す前に不 実(bad faith)を認定することがベターであろうと主張する。  確かに,他の巡回区のいくらかの地方裁判所は,次のように判示してきた。 すなわち,13条(b)項に基づく返還に対して個人が責任があると認定するために は,その行為が不誠実(dishonest)または詐欺的(fraudulent)であるという ことを被告が知っていたか知るべきであったということを連邦取引虚貝会が立 証しなければならない。  しかし,我々の認定は,被告の側にだますという主観的な意図があるという ことを連邦取引生貝会が立証しなければならないという要件を課すことは,連 邦取引委員会法の背後にある政策と一致しないし,またあまりにも大きな負担 を連邦取引委員会に課すことになる,ということである。 26) See FTC v. Amy Travel Service, lnc., supra note (21), at 573−75.

(18)

110  彦根論叢 第278号  連邦取引委員会は,不実表示の知識(knowledge)または認識(awareness) を被告がもっていたかもつべきであったということを確証することが要求され るが,その知識要件は,次のことを立証することによって満たされうる。すな わち,個人が,①重大な不実表示についての実際の知識をもっていた,②その ような不実表示の真偽を意に介さず,無関心であった,または③真実の意図的 な回避に伴う詐欺の高い蓋然性の認識をもっていた,ということである。事業 活動への関与の程度もまた,知識の証拠となりうる。  この基準を本件に当てはめれば,次のようにいうことができる。すなわち, 個人被告が,バケーション・パスポートという仕組みの背後にいる人物であっ たということは明らかである。彼らは,当該会社の主要な株主兼役貝であった。 彼らは,当該事業を創出し,新しい事業を開設し,テレマーケティングの台本 を書き,かっ従業員を雇った。彼らは,会社の財務をコントロrルし,販売報 告およびその他の情報を審査した。個人被告の1人は,毎日の販売活動を監督 し,もう1人の個人被告と定期的に協議した。  彼らは,販売台本の著者として,確かに,それに含まれる不実表示について 認識していた。もし彼らがその台本を見ただけではトラブルが生じることがわ からなかったとしても,数多くの消費者苦情やクレジットカードの過剰な入金 取消しによって送られるシグナルを,彼らが見落したということはありそうに ない。        27)  なお,被告は,この結論に対して別の抗弁を申し立てた。すなわち,彼らは, 見た目とは違って,詐欺的な仕組みを作ることを意図していなかったと主張し, また,法に触れるのを避けるために骨折ったということ(たとえば,承認され た台本からの逸脱を阻止したり,クレジットカードの代金請求にかかる諸問題 を解決したりするという努力)を示す証拠を提出した。しかし,彼らの努力は はなはだしく不適切なものであり,消費者不満の流れをほとんどくいとめるこ 27)なお,被告は,返還の全額を個人被告に課すのは不適当であると主張したが,その主張  は時機に遅れたものであったので,返還の全額が全被告に査定された。See FTC v. Amy  Travel Service, lnc., supra note (21),at 575 n. 9.

(19)

       〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済  111 とができなかった。  また,被告は,その行為に対する別の正当化を申し出た。たとえば,個人被 告の1人は,販売時には航空券の将来の価格はわからないので,販売員はバケ ーション・パッケージの実際の価格を消費者に知らせなかったと主張した。し かし,費用の合理的な予測を顧客に与えることは容易であり,販売員が実際の 価格を知らせなかったのは,バケーション・パスポートの価値についての消費 者の期待を高めるためであった。  さらには,被告は,その活動のために弁護士の承認を得る努力をしたことか ら,彼らが金面的な慣行を行っているという,要件とされる知識をもっていな かったということが立証される,と強く主張した。実際,被告は,法の境界内 にいることを確実にするために台本および営業方針を弁護士に審査させた。し かし,弁護士の是認はテレマーケティングの台本を真実とするわけではなかっ た。弁護士の助言を得ることは,そのビジネスが面面的な慣行を行っていると いう事実を変更するものではなかった。  かくして,連邦取引委員会は,個人的に責任があると認定するのに充分な知 識を被告がもっているということを立証した。弁護士の助言に依拠することは, 知識問題における正当な抗弁ではない。つまり,弁護士は,まちがっていると 被告が知るべきであったことを認可することはできない。被告は,欺心的と認 定された台本の多くを書いたか審査したし,また消費者苦情の殺倒について疑 いもなく知っていた。個人被告は,個人的に責任を問われるのに必要な知識お よびコントロールをもっていた。  (3)消費者救済の実際  まず返還額の算定について,続いて救済基金の処分について述べる。         28)  (a)返還額の算定  被告は連帯しておよび個々に,その欺心的慣行に対す る救済として総額662万9,100ドルを連邦取引委員会に支払わなければならない ということが命じられた。 28) See FTC v. Amy Travel Services, lnc., supra nete (20), at 5−6 ; FTC v. Amy Travel  Service, lnc., supra note (21), at 572.

(20)

112 彦根論叢 第278号  この額は,次の根拠に基づいて引き出された。すなわち,パスポートを購入 しかつバケーションを申し込んだが,旅行を行わなかった消費者の見積数(1 万7,406人)に,払戻しを要請したがそれを受けなかった消費者の見積数(4,691 人)を加えて,300ドルをかけたものである。  そこで,実際にバケーション旅行を行った顧客は,裁定される返還の額の算 定に際し除外された。というのは,実際に旅行を行っ孝顧客のどのくらいがバ ケーションに満足しなかったかは明らかではなく,また,不満足の顧客にどの 程度の救済が与えられるべきかの決定には困難が含まれるからである。そこで, 救済は,バケーション・パスポートの価格と引き換えに何ら価値あるものを受 け取らなかった顧客に限定することとされた。つまり,旅行に参加した顧客は, 満足したかいなかにかかわらず,救済の算定から除外された。  (b)救済基金の処分  被告は,裁判所の命令が発せられてから30日以内に,        29) 662万9,100ドルを当該裁判所の登録勘定に供託するよう命じられた。この最終 判決に従って支払われる基金は,連邦取引委員会が後に付託し,裁判所がその 命令によって承認する計画に従って分配されることとされた。  この点,裁判所は,実際には,2万3,636ドル50セントの供託を受けたにすぎ    30) なかった。この額は,被告から手に入れることができると連邦取引委貝会が知 るすべての基金を表わしている。  連邦取引委員会は,これらの基金が,全国消費者連盟の後援に基づく「テレ マーケティング詐欺阻止連合」すなわち,政府,産業,事業者団体のジョイン ト・グループによって設けられる別個の勘定に移されることを提案した。  そして,この基金は,テレマーケティング詐欺に関して消費者を教育するよ う企図されるプロジェクトのために用いられることが提案された。これらのプ ロジェクトは,連邦取引委員会の承認のもとに当該連合が開発することとされ た。  また,連邦取引委員会は,将来の回収は合衆国国庫に供託されるべきことを 29)以下,See FTC v. Amy Travel Services, Inc., supra note(20),at 5−6. 30)以下,See FTC v. Amy Travel Service, Inc., supra note(22),at 64369−70.

(21)

       〈研究ノート〉連邦取引委員会法13条(b)項に基づく消費者救済  113 勧告した。  この点,裁判所は,連邦取引委員会の勧告の両者に同意した。裁判所は,次 のようにいう。今裁判所に供託されている2万3,636ドル50セントを,その基金 が消費者教育に使用されることになっている勘定に移すことは,当該基金の最 も適切な処分である。これらの基金を消費者に分配する試みは,不可能ではな いにしても,誰の便益ともならないであろう。これらの基金から救済を受ける 資格のある消費者は,2万2,097人にのぼるとみられる。当該訴訟に利害関係が あると表明した数千人の消費者に分配するとしても,個々人にとっての回収は わずかにすぎないであろう。実際,全体への分配を行う費用は,利用可能な基 金を超えるかもしれない。そのような状況では,詐欺的な取引慣行に関して消 費者を救済する努力を促進すると思われる基金に金銭を移すことが,当該金銭 を最も有効に使用することになるであろう。  他方,本件における判決に基づく将来の支払いに関しては,裁判所は,これ らの基金が合衆国国庫に供託されるべきであると信じる。そのような救済は, 個別の請求者に返還を行うことが実際的ではない場合には適切である。  この点,被告の1人目,基金が合衆国国庫に供託されることを命じる命令は, 本件訴訟を連邦取引委員会法5条(m)項のもとでの民事制裁訴訟に転換するであ ろうと主張した。そのような制裁金は,地方裁判所が一定の特定の認定をする ことなしには徴収されえない。  しかしながら,裁判所は,合衆国国庫へ基金が支払われるべきことを命じる ことによって,すでに下された判決に基づいて徴収されることとなる基金がど うずれば最適に処分されるかを決定しているにすぎないと判示した。連邦取引 委員会は,決して,被告の1人に対して民事制裁を求めているわけではなく, したがって彼は,そのような制裁に対して責任があるわけではなかった。そこ で,彼は,5条⑪項に従ってなされる認定がないからといって,侵害されるわ けではなかった。判決債務の一部が究極的に政府に行くという事実は,当該判 決債務が性質上返還的であるという事実を変えるものではない。  被告の1人は,また,過分に請求された者が誰であるかを連邦取引委貝会は

(22)

114  彦根論叢 第278号 正確に知っているので,合衆国国庫への直接支払いは不適切であると主張した。 しかし,裁判所は,次のように判示した。すなわち,裁判所に現在供託されて いる基金を,被告の行為によって侵害された個々人に分配することは,実現不 可能であり,また,費用からみて禁じられているも同然である。このことは, 分配のために利用可能な額が4ないし5倍大きい場合でさえ当てはまるであろ う。基金が100万ドル以上である場合には個々人に分配を行うことは価値がある であろうが,回収がそのような数値に達するであろうということは極めてあり そうにないという事実を考慮に入れなければならない。加えて,将来の回収は ほとんど確実に,わずかな増加をもたらすにすぎず,個々人への返還を行う仕 事を煩珀にするであろう。  また,裁判所は,将来の基金が消費者教育勘定に供託されるべきであると命 じなかった。というのは,この勘定または類似の勘定が将来も継続的に存在す るということを確証することができなかったからである。  そこで,裁判所は,連邦取引委員会が勧告した態様でその基金を処分するこ とを命じた。

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