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悪性リンパ腫 : 研究経緯と本学の悪性リンパ腫について

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総 説

悪性リンパ腫

〔東女医大誌 第62巻 第2号頁 97∼106 平成4年2月〕

一研究経緯:と本学の悪、性リンパ腫について一

      東京女子医科大学 第二病理学教室(主任      *同 病院病理科(科長:河上牧夫教授) カサジマ   タケシ ァンドウ  アキコ  ニシカワ  トシオ  ァイバ

笠島. 武・安藤明子・西川俊郎・相羽

笠島 武教授) モトピコ  カワカミ  マキオ 元彦*・河上 牧夫* (受付 平成3年8月23日γ Reivew 6n Malignant Lymphoma:On the Proceeding of the Research alld         the Cases in Tokyo Women,s Medical Co皿ege Takeshi KASAJIMA, Akiko ANDOH, Toshio NISmKAWA, Motohiko ABA*and       Makio KAWAKAMI*          Department of.Pathology(Head:Prof. Takeshi KASAIIMA)        *Department of Surgical Pathology(Head:Prof. Makio KAWAKAMI)        Tokyo Women’s Medical College   Hodgkin’s report of seven cases of lymphoid disorders in 1832 was followed by 150 years of publication and discussion of research. At present, malignant lymphoma if mainly two major categories, Hodgkin’s.lymphoma(disease)and non・Hodgk玉n’s lymphoma. Malignant lymphomas are neoplasms of immune system. Understanding lymphomas requires familiar童ty with the basic mechanisms of cellular components of the immune system, i。e., lymphocytes, reticuium cells, macrophages, histiocytes and divergent cells, which have been classif藍ed as members of the lymphoid system or reticuloendothelial system.   Striking evidence of lymphocyte blastogenesis三n response to viruses, lectins and other reagents has introduced to the classification and treatment of malignant lymphoma. Recent advanced immunological research and techniques have led to a revis孟on of the concept and classification on malignant lymphoma.   The present authors rev{ewed current research on malignant lymphoma and related cond童tionsl We have also reported a profile of cases of malignant lymphoma at Tokyo Women’s Medical College.       はじめに  かつて,成熟リンパ球は,それ以上分裂しない 細胞であると考えられていたが,EBウイルスで 芽球化し,旺盛な:分裂をし,腫瘍化することが証 明された.Burkitt腫瘍が悪性リンパ腫であるこ とが明確になったのは1958年である1).これまで Hodgkinの“7例の系統的リンパ節腫脹と脾腫を きたした症例”2)に端を発したりンパ網内系腫瘍 研究の歴史は,網内系に属した細胞種の帰属の論 議の歴史ともいえる.リンパ腫細胞の形態が多岐 にわたる変容を示し,さらにこれらのリンパ組織 構築の支持細胞の意義づけの展開とあいまって, リンパ肉腫,細網肉腫,Hodgkin肉芽腫, Hodgkin 肉腫などリンパ腫研究者以外の領域の人達にとっ ては,その論議の焦点と真意も不可解な点が多い といえそうである.  本稿では,この領域の研究の展開と推移,Hodg・ kin病,非Hodgkin悪性リンパ腫の現在の考え方 を概説する.したがって,悪性リンパ腫の細かい 分類詳説は,文献を紹介するにとどめる3)動.

一97一

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表1細網内皮系統(Ascho貨,1924) 表2 単核食細胞系統(van Furth,1980) 広 義 の 網 内 系   1。血管およびリンパ管の内皮 狭  2.線維芽細胞

1⊥::鞍鰺∴瓢鷺1錨

内   毛細血管(Kupffer星細胞),骨髄,副腎皮質 系および下垂体の毛細血管の細網内皮   5.結合組織内の組織球   6.脾髄細胞(splenocyten),色素摂取能を持つ    単球(内皮性白血球,血液組織球)  1.細網細胞とリンパ球  メチニコフが1892年に貧血細胞にマク・ロファー ジとミクロファージと名付けて以来6),この旺盛 な食機能をもつマクロファージの細胞起源と帰 属,その病的変貌に現在まで論議が続けられてい る.清野はAschoffと共に,超生体染色の陽性度 を基盤としてこの食細胞を組織球と呼んだ7).こ の仕事から,Aschoffの提唱した細網内皮系統 (RES)は細網細胞,内皮細胞,線維芽細胞などを 包含したものであり,爾来この系統の細胞に組入 れられ.た細胞概念として腫瘍もとらえられて来た (表1).  しかし,検索技術の進歩とともに新しい見解や 事実が発表されるに至り,RESの概念の再検討が なされて来ている.即ち,細網内皮とされたもの は固有内皮の一部であり,細網細胞とは異なるも のであること,Kupffer細胞は一種の在住マクロ ファージである組織球性細胞,あるいは単球由来 細胞,細網細胞は組織球と発生,機能,形態が異 なるものであることなど多くの訂正をせざるを得 なくなって来ている.一方,マクロファージの起 源を血液単球に求める歴史もCarre1らにはじま り,van Furthらにより1969年,多くのマクロ

ファージが血液単球由来とするmononuclear

phagocyte system(MPS)説が提唱され,多くの 細胞種をこれに統括した(表2)8).  さらに1885年,Flemmingがリンパ節の胚中心 でリンパ球が産生されることを提唱したが9),幾

多の論争を経てHe11manlo), Ortega&

Mellors11>,小島12)らにより,胚中心は免疫応答の 心心球  ↓ 前単球  ↓ 単 球  ↓ 単 球  ↓ マクロファージ

1骨髄

末梢血 組 織 結合組織(組織球) 肝 臓(Kupffer細胞) 肺(肺胞マクロファージ) リンパ節(遊離および固定マクロファージ:inter−     digitating cell?) 脾臓(遊離および固定マクロファージ) 骨髄(固定マクロファージ) 漿膜腔(胸腔および腹腔マクロファージ) 骨(破骨細胞) 皮膚(組織球,Langerhans細胞) 神経組織(小膠細胞) 滑 膜(A型細胞?) 場であって,さらにこの場が悪性リンパ腫の発生 の場の1つであることを明確にした.リンパ球は 骨髄で産生され,一部は骨髄を出て胸腺で教育を うけ分化,成熟しTリンパ球に,一部は骨髄内, あるいはリンパ組織で分化成熟し,免疫グロブリ ン産生を含む機能を有するBリンパ球に大別さ れることが現在では周知の事実である.したがっ て,細網肉腫,リンパ肉腫をはじめとして分類さ れたリンパ系腫瘍のほぼ全てが悪性リンパ腫の概 念の中で論じられ,分類されている.  2.Hodgkin病について

 Hodgkin病は,前述のHodgkinの発表した7

例を中心とした後の検索過程の中で,Wilksが命 名して以来13),その本態について現在でも検討さ れ続けている.Hodgkin自身の7例の報告中,今 日我々が本疾患と了解しうるものは3例であった とFoxが述べている.かつてHodgkin病は,肉芽 腫性病変から肉腫病変にわたる形態をもつことか ら結核説や細菌説が挙げられていたが,Jackson とParkerによりはじめて系統的に分類され14), 肉芽腫と悪性の肉腫までの病型を整理した. Lukesらは臨床的な特徴,予後との関連に重視し

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表3 Hodgkin病組織分類(1971) Ryeの分類 Lymphocyte predominance(LP)   (リン/ノぐ球優勢型) Nodular sc!erosis(NS)   (結節硬イヒ型) Mixed cellularity(MC)   (混合細胞型) Lymphocyte depletion(LD)   (リンパ球減少型) て,Jacksonらの分類を廃止して新たな分類を提 唱した15).1966年,RyeでLukesを含む学者達で

所謂Rye分類を提唱し,さらに1971年にAnn−

Arborで診断基準と病期分類などの統一化を示 し,現在広く汎用されている(表3)16).  Hodgkin病は圧倒的に西欧に多く,アメリカや カナダでも悪性リンパ腫の50%を占める,本邦で は,ほぼ15%程度といわれている.Hodgkin病は 現在では4型に分けられ,表に示す順に予後の不 良なものとされている(表3).本疾患の診断の基 本は組織内に核小体の明瞭な大型核と豊富な胞体 を有し,単核または多核,時として鏡面像を呈す るReed−Sternberg(R−S)細胞, Hodgkin細胞の 存在と背景がリンパ球,好酸球,形質細胞や組織 球など必ずしも単一な腫瘍変化を呈していないこ となどを特徴とし,病冠によりリンパ球とR−S細 胞の割合を異にする.臨床的には頚部リンパ節腫 大の主訴が80%で,発熱を伴うことが多い。本疾 患が腫瘍であることは永い論議を経て了解されて 来ている.しかし,}{odgkin細胞の細胞起源はT リンパ球,Bリンパ球,組織球説など多岐にわたっ ている17).これは免疫遺伝子の再構成が生じる以 前に細胞が腫瘍化を起こし,二次的に各方向へ分 化し,夫々の抗原を発現したと考えるむきもある. Hodgkin細胞の起源の診断のために免疫組織学 が応用されているが,症例により各種リンパ球 マーカー,組織球マーカーが表出されて来ている. 近年,Leu M1, Ki−1といった単クローン抗体,と くにKi−1(CD30)が本細胞の特異抗原として脚光

をあびた.しかし,これも他の近傍疾患

lymphomatoid papullosis, AILD(angioim一

munoblastic lymphadenopathy with

dysproteinemia)やanaplastic large cellリンパ 腫(Ki−1リンパ腫)にもみられることが漸次報告さ れており18),未だ不明の点を残している.また,か つて本疾患と診断された中に非Hodgkin性多形 細胞型として扱われたものやその逆もある.

 3.非Hodgkinリンパ腫

 冒頭に述べたごとく,リンパ球の芽球化の証明, 網内系の概念の変貌,血液幹細胞説そして免疫学 の急激な進展に伴ったりンパ組織腫瘍は,リソバ 肉腫,細網肉腫などの名を捨てて悪性リンパ腫の 名のもとに集約再編成された.リンパ腫の発生起 源をリンパ球の分化,成熟の経緯からB細胞性, T細胞性に大別した試み,発生母地との関連から 分類する試みなど各国の学老により,各々の国で の分類が提案された.近年,互いにその統一への 努力がなされつつある.  Rappaportらは臨床との相関性を重視した分 類を提唱し19),永くその有意な相関性から慣用さ れたが,形態,起源などに少なからず疑問点が指 表4 LSG分類(1981) 1.濾胞性リンパ腫 follicular lymphoma 1)中細胞型(B)   medium・sized cell type 2)混合型(B)   mixed type 3)大細胞型(B)   1arge cell type II,びまん性リンパ腫 diffuse lymphoma 1)小細胞型(B,T)   Small Cell type 2)中細胞型(B,T, N)   medium・sized cell type 3)混合型(B,T)   m三xed type 4)大細胞型(B,T, N)   large cell type 5)多形細胞型(T)   Pleomorphic type 6)リソバ芽球型(T)   lymphoblastic type 7)Burkitt型(B, N)   Burkitt type B;Bリンパ球性,TITリンパ球性, N:Non・T・Bリンパ球性

一99一

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摘された.Lukesらは形態学と免疫学的知見に留 意し,腫瘍リンパ球をT・Bリンパ球の性格によ り大別したことを主眼とする分類をした20).Len− nertらは悪性度の傾斜を加味した分類を試みて いる21).最近さらにモノクローナル抗体の広汎な 開発,新たな知見,ウイルスとの関連からATLに 代表される新しいリンパ腫の参入などで,本邦で

はLSG分類(Lymphoma Study Group)(表

4)22),欧米ではInternational Working Formu− lationが提言され,それぞれ汎用されている(表 5)23).  このリンパ腫は腫瘍細胞の増殖パターンによっ て,. 潟塔p濾胞の構造に類した濾胞構築を示すも の,これがくずれて濾胞様の結節構造を失ってい るもの,あるいはT細胞性のものにみるようにび まん性に増殖するものなどを分けて,濾胞性とび まん性に大別されている.濾胞構造をとるものは, B細胞領域であるリソバ濾胞と胚中心に存在する リンパ系細胞から発生するもので,B細胞の性格 .を表出する.このうち,濾胞性リンパ腫はリンパ 濾胞胚中心細胞由来の腫瘍性格を示し,形態学的 にも胚中心細胞の性格に準じた型に分けられる. この型の腫瘍は,比較的緩慢な進展を示すことが 多く,欧米に多い型で,本邦ではリンパ腫中10% 程度と言われている.腫瘍細胞が濾胞様結節を形 づくるもので,反応性のリンパ濾胞の過形成と比 べ,胚中心を囲むmantle zoneとの境界が不明か 欠くことが多い.腫瘍結節内で細胞の多くに免疫 グロブリン産生を認め,これらの細胞に介在して 樹状細網細胞が網状の細胞突起networkを作る.  この濾胞構築は腫瘍の進展,成育が進むにつれ て不分明となり結節構造を失い,びまん性リンパ 腫になる.この場合でも胚中心細胞の細胞性格に より細分類される.多くは胚中心細胞の特徴を呈 する核陥凹(cleavation)の形が見られる.細胞型 は小型から中型,大型,これらの混合したものが あり,免疫染色ではB細胞性格,モノクローナル 抗体で各種のBリンパ球亜性格を表出する.  最近,Isaacsonらは,リンパ濾胞周囲のmar− ginal zone cellからのリンパ腫のあることを提言 表5 1nternational working formulation on malignant lymphoma(1980) A,small lymphocytic    ±consistent with CLL    ±plasmacytoid B.follicular predominantly small   cleaved cell    ±diffuse areas    ±sclerosis C.fo玉licular mixed, small   cleaved’and璽arge ce11    ±diffuse areas    ±SClerosis D.follicular predominantly   large cell    ±diffuse areas    ±sclerosis E.diffuse small cleaved cell    ±sclerosis F,d量ffuse mixed, small cleaved   and董arge cel蓋    =ヒsclerosis    ±epithelioid ceil component G.diffuse large ce11    ±cleaved cell    ±non−cleaved cell    ±sclerosis H.large celHmmunoblastic    ±plasrnacytoid    ±clear ce】1    ±polyrnorphous    ±epithelioid ceU     component I.lymphoblastic    ±convoluted ceU    ±non・convoluted cell J,small non・cleaved cell    ±Burkitt’s    ±follicular areas Miscellaneous composite mycosis fungoides h三stiocytic extramedullary plasmacytoma unclassi五able other

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PF 蒙 連

 際

0111cu.Z8 y冊ρho皿a ③・、。。。a  ’ceエエ ηobエa5亡’C ρhoπ7a et .

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疫芽球性リンパ節症(AILD),須知らのim・

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munodysplastic disease(IDD)などの異同,さら

に本邦に多いAILD型Tリンパ腫の扱いについ

て論議がつみ重ねられて来た.これらは症例によ り,また病変の部位によっても増生細胞の優勢さ が異なり,また増殖するT細胞が淡明細胞の形を とる特徴がある.また,臨床的には血清学的に単 クローンの免疫グロブリンの異常を必ずしも示さ ないことが多く,これはTリンパ球の免疫機構ゐ 乱れに伴ったBリンパ球の不適応な反応と解釈 されている.しかしこれらの疾患は必ずしも予後 が良くないこと,Tリンパ腫に移行することなど からこの疾患群の中にIBL・like T−ce11リンパ腫 が存在することを下山らが報告している.AILD, IBLなどは悪性リンパ腫の時時に組み込まれて いるといって過言ではないようである.Tリンパ 腫にはその他皮膚と深い関連を示す菌状息肉腫 (mycosis fungoides)とその白1血化亜型である S6zary症候群があるが,近年は一括されて皮膚T 細胞性リンパ腫(CTCL)とよぼれることがある.  悪性リンパ腫は全ての年齢層に発生するが,中 年以上の成人に多く,男性に多く,人口10万対で 本邦では男性5.7,女性2.1といわれている.しか し悪性リンパ腫自身の発生率はおしなべて日本人 では低く,アメリカ白人の半数にもみたない.年 間6,000人の発生で,4,000人程度が死亡している と推定されている.  組織型からみると欧米ではHodgkin病,濾胞 性リンパ腫が多いのに反して,本邦ではそれぞれ の悪性リンパ腫に占める割合は10%である,本邦 ではリンパ節ではT細胞びまん性のものが多く, またリンパ節外に発生するものが半数で,欧米が リンパ節発生が圧倒的に多い.本邦ではWal− deyer輪・胃の順に多く発症している.しかし今後 の予想として他の疾患もそうであったように,順 次欧米のそれに近づくことが予想される.  4.本学における悪性リンパ腫,とくに剖検と生 検からの傾向  東京女子医大病理学教室で,病理解剖を開始し たのは,記録が残っているもの即ち第1例は昭和 23年(1948年)で平成3年5月(1991年)まで12,240 例の剖検が行われており,これに付属第二病院の 330例を加えると12,570例となっている.これらの 記録から,かつて細網肉腫,リンパ肉腫などの名 で記載された悪性リンパ腫の剖検例は176例で,う 50 q5 40 35 3% 30 25 2%  20 15 1%  10 5 qg 層■■総数

消化管

ワルダイエル輪 42 〔=コ脳

Tリンパ腫

その他

ホジキン雇 32

% 悪性リンパ腫症例/全剖検数 29 2.9窺% 2.06% 1.39% L49% 0.95% 1.OI% 10 6      5 0.q8% 3 0.50%    19可8−     1955−     1960−     i965−     1970−      1975−     1980−     1985一 図2 東京女子医大病理部門での悪性リンパ腫剖検例と全剖検例に対する比率の推移

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ち非Hodgkinリンパ腫161例, Hodgkinリンパ腫 15例である.非Hodgkinリンパ腫の原発部位を みる.とリンパ節119例,胃10例,Waldeyer輪5例, 肺3例の順に多い(図2).このように,原発部位 が圧倒的にリンパ節に多いことは,本邦での傾向 と相反する,これは少なくとも40年余にわたる本 学での剖検史のデータから臨床上の初発部の記載 が明瞭でないものを含んでおり,実際には節外の ものを可成り含んでいる可能性も否定できないこ とをおことわりしておく必要があろう.組織学的 にはびまん性のものが多い.治療に伴って組織型 の詳細を全ての例で決定することは困難である が,おおまかにいって剖検症例であることを反映 して,予後不良群が多い.  年次別にみると,年々増加の傾向を示している. 実数と剖検総数との割合の変化を表に示した.こ れとは別に悪性リンパ腫の生検,あるいは手術例 を関連施設の病理部門の協力で得た数からみると 現在まで病院病理科では最近6年間で233例(う ち,Hodgkin病24例)で,消化器病センターの胃 悪性リンパ腫手術例は過去23年で52例,脳神経セ ンターの脳原発悪性リンパ腫は過去19年で59例が あり,皮膚科で最近5年間で経過を追ったもの8 例と他科から皮膚生検を依頼されたもの23例,ま た第二病院第二内科(血液)の最近6年間で32例 (うち,Hodgkin病1例)の症例を数えており,そ れぞれが少しずつ増加の傾向をとっている(図 3).また近年の免疫学的解析方法の進展に伴っ て,少なからず過去の症例でもT細胞性リンパ腫 の存在が確認されているが,近年その頻度が高く なりつつある.本邦でも生活環境や生活水準の向 上により,疾患の内容も西欧化している中で悪性 リンパ腫も増加することは必至であり,加えて AIDS,臓器移植に基づく免疫抑制剤の多用,抗腫 瘍剤の投与からリンパ球の成熟と分化の障害に起 因した本腫瘍の増加も窺われる.すでに腎移植例 後の悪性リンパ腫の報告は多くなっており26),本 学の剖検例でも2例を体験している. 30 25 20 15 10 5 8S 86 87 38 99 90    85 86 8了 88 89 90    85 86 87 88 89 90    85 86 87 羽 胸 90    聞 86 田 関 89 90    85 86 8τ 関 89    防 8τ 88 89 90 非・・・・… @}1・d8kin l妻匡il・d・ki・・1…k・・;  l l l   リンパ節原発   1   節外リンパ腫   ;脳リンパ腫1胃リンパ腫1全リンパ腫1 トー一一一一一一一一病院病理一一一一一一一一一一一一1ト脳外科一{ト渉外→ト第二病院一1       内科       図3 悪性リンパ腫(主な機関の生検・手術例)

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 悪性リンパ腫近傍疾患としての悪性細網症,組 織球症の剖検例も多く,これらは明らかにウイル ス感染に基づくもの,免疫抑制によるもの,薬剤 による. 烽フ,他の感染によるものなど多岐にわた る27).近年この疾患は小児にみる家族性赤血球貧 食:組織球症,ウイルス親和性赤血球貧食組織球症, 悪性組織球症などに分けられて来ているが,いず れも予後の不良な疾患である.本学での剖検例で もこの範時に入るものは30例に及んでおり,臨床 家にとっても極めて対応に苦慮するものとみられ る.  5.最近の悪性リンパ腫の解析への展望  悪性リンパ腫の病理学的な解析,免疫学的検索 は臨床家との予後,治療への提言と密接な関連を 有している.悪性リンパ腫に対する化学療法の進 歩はめざましいものがあり,1963年では著効率 22.5%,平均生存期間中央値は5.6−7.9カ,月にすぎ なかった.抗癌剤の開発の努力により,低悪性群 では生存期間中央値は60ヵ月以上,高悪性群で, 最も悪い予後をもつといわれるリンパ芽球性のも のでも15ヵ月と向上している28).現在では,第三世 代の薬剤で多剤併用を行っているが,T細胞リン パ腫でもその寛解率が漸時向上しつつあるが,未 だその率はB細胞性のそれに比して低いといえ る.  このように,悪性リンパ腫の臨床的対応に応え るべく,.病理側ではその組織型の正確なreportが 求められる..この他に最近では悪性度の高低を知 るために,単にパラフィン切片のHE染色にとど

まることなく,免疫組織化学,細胞のHow

cytometry, Southern blottingによるDNAの再 構成の有無,免疫グロブリンの表現形式,T細胞 受容体の再構成,DNA一ポリメラーゼの解析を行 うことが,リンパ腫の予後を知ることに深い関連 を示している29)30).  免疫組織化学は各種のモノクローナル抗体がパ ラフィン切片でも応用される範囲が拡大してきて おり,最近ではDNA一ポリメラーゼ(PCNA)の 染色も可能となってきている31).このような解析 の進歩から,従来組織球とみられた細胞腫がリン 表6 悪性リンパ腫診断に必要な組織固定液・その手技と適応 ホルマリン固定パラフィン包埋    PLP固定凍結 iperiodate4ysine @   −paraformaldehyde) 電顕用標本 新鮮凍結 スタンプ標本i塗抹標本) 固定液 20%ホルマリンまた 2%∼4%paraformaldehyde 1%∼2%glutar・ 一 100%エタノール固定 は10%中性緩衝ホル を含むPLP固定液(4に記す) aldehyde マリン 免疫染色 可/不可のものあり .  可(光顕および電顕) 一部可 可 可

組織検索 HE, PASなど組織 HE,免疫染色(T, Bリンパ球, 細胞,核など微細構 迅速標本(細部にわ Giemsa Papanico・

染色免疫染色 組織球・マクロファージ,リン 造検索 たる検索には不向 laou染色などの細r パ組織の性格などの検索) ぎ) 胞診 方 法 固定(24時間) 固定(7時間). 固定(7時間) OCT・coInpound包 air dry後固定し,染 ↓ ↓ ↓ 埋ドライアイス・ア 色 100%エタノール 10%Sucrose加えたPBS カコジル酸緩衝液 セトン凍結(または ↓ ↓ ↓ 液体窒素)  キシレン @  ↓パラフィン包埋 @     ↓15% 〃 Q0% 〃 @     ↓25%  〃 十グリセリン5% @     ↓ nCT−compoundで包埋後ドラ Cアイス・アセトン,または液 オスミウム固定 @  ↓ T0%アルコール @  ↓ P00%アルコール @  ↓エポン樹脂包埋 体窒素で凍結 ・1.組織は,摘出後速やかに固定液に浸す.そのために,固定液はあらかじめ用意する. 2.標本の2/3程度はホルマリン,残りの大半(3/5)をPLPに,ごく僅かのものを電蹟用glutaraldehydeに入れる.標本が大ぎい場  合(余る場合)や特殊な目的の場合は新鮮凍結とする。なお,新鮮凍結は,感染症のものはでぎるだけ行わないか,管理に充分留  曝する. 3.固定は,4℃で行う.(PLP,グルタールの固定) 4.PLP固定液(渡辺慶一,他編:改訂版 酵素抗体法,学際企画,1985参照)

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パ球性格を表現することが明らかにされ,最近で はmonocytoid B−cellリンパ腫32), mantle zone lymphoma, Ki−1リンパ腫な:ど新しい命名でリン パ腫分類の新たな再構成の動きも窺われる.学内 でも血液部門を中心として,これから増加するで あろう悪性リンパ腫,細網症などのリンパ網内濠 腫瘍に対応する緊密な関連が要求されると思われ る.この際の検索手段についても,基本的な知識 を各方面で函養され臨床と病理とのより緊密な関 係.をもつ努力が必要であることを痛感している.  以上の悪性リンパ腫の臨床的対応に対して少な からず病理側としても努力をしているが,正確で 且つ広汎な対応を行うには腫瘍摘出の際の標本の 処理について理解を求めなけれぽならない.周知 のごとく,リンパ球や組織球の形態学は勿論,免 疫学的検索にはできる限り新鮮標本を必要とす る.とくに消化管はじめ節外腫瘍の場合,摘出臓 器の検討,肉眼標本の記録,患者への説明などに 固定までの時間の必要性を理解しているが,でき る限り早期での処理が疾患の研究解析に必要な条 件の一つである.ここでは標本の病理学的検索に 必要な処理方法について表にまとめた(表6).こ のような手技に御話解いただくことも本稿の目的 の一つであることをつけ加えたい.          おわりに  すでに本誌57巻にマクロファージとリンパ節の 名のもとに樹枝状細胞について総説を書かせてい ただいた.その折,リンパ節に関連して悪性リン パ腫については論文の主旨にはずれるためにあえ てふれなかった.今回は,悪性リンパ腫の概況を 本学での動向を含めて紹介することも必要と考え て述べた.樹枝状細胞もまた悪性リンパ腫の進展 に深い関わりがあるが,今度はこれにふれると総 説的でなくなるきらいがあり,あえて除外した. この点については別誌に投稿中である.悪性リン パ腫のうちリンパ球についてのみふれたが,樹枝 状細胞や組織球由来の悪性リンパ腫も症例は少な いが興味のある腫瘍で’?驕D今回,白血病の詳細 に関したものやAIDS, ATLなどに深い関連のあ るangiovascular tumor(Kaposi肉腫)などに付 言しなかったことをおことわりし,稿を終える.  悪性リンパ腫症例について御教示下された各機関 と担当の先生方に御礼申し上げます.第二病院内科 II:川内喜代隆講師,消化器病センター外科:鈴木博 孝教授,小熊英俊助手,脳神経センター外科:久保長 生助教授,皮膚科学教室:石黒直子助手  また,悪性リンパ腫症例の整理や図表の製作および 論文の製作に多大の助力をされた渡辺真理嬢に深く 感謝します.          文  献  1)Burkitt D:Asarcoma involving the jaws in   African children. Br J Surg 46:218−223,1958  2)Hodgkin T:On some morbid appearances of   the absorbent glands and spleen。 Trans Med   Chir Soc Lond 17:68−112,1832  3)J誼eES:Surgical pathology of the lymph   nodes and related organs. Vol 16,1勿Series of   Major Problems in Pathology. WB Saunders,   Philadelphia(1985)  4)小島 瑞:リシパ節の病理.文光堂,東京(1985)  5)小島 瑞:悪性リンパ腫.現代病理学大系1813    リンパ節・脾臓・網内内・胸腺(飯島宗一,他編),   pp56−89,中山書店,東京(1987)  6)]Metchnikoff E: Lecons sun la pathologic   comparee de l’innammatioa. Masson, Paris,   1892(飯島宗一,角田力四川:メチニコフ炎症論,   文光堂,東京,1976)  7)清野謙次:生体染色の研究.南江堂,東京(1921)  8)van Furth R, Cohn Z, Ilirsch JG et al: The   mononuclear phagocyte system:A new   classification of macrophages, monocytes and   their precursor cells. Bull WHO 46:845−852,   1972  9)Flemming W:Studieren Uber Regeneration   der Gewebe. Arch Mikro Anat 24:50−91,1885  10)Hellman T:Die Lymphknotchen und die   Lymphknoten.、肋 Handbuch der normalen   mikroskopischen Anatomie des Menschen(Bd   VII), pp282−396, Springer, Berlin(1930)  11)Ortega LG, Mel雇ors RC: Cellular sites of   fo㎜ation of gammaglobulin. J Exp Med 106:   627−631, 1957  12)小島瑞:リンパ節の細胞病理学的研究,特に2   次小節を中心に.1日病会誌 58:3−28,1969.  13)Sir Wilks S:Cases of lardace6us disease and   some allied affection, with remarks. Guy’s   Hosp Rep 17:103護32,1856  14)Jackson H, Parker F:Hodgkin’s disease and   allied disorders. Oxford Univ Press, New York   (1947)

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15)正ukes RJ, Butler JJ: The pathology and    nomenclature of Hodgkin’s disease. Cancer Res    26:1063−1081, 1966 16)Rappaport H, Berard CW,3utler JJ et al:    Report of the commi‡tee of histological criteria    contributing to staging of Hodgkin’s disease.    Cancer Res 31:1864−1865,1971 .17)森茂郎,寺嶋一夫:ポジキン病セミナー.日網    会誌 29:43−47,1989 18)中村栄男,高木規夫,小島 勝ほか:未分化大細    胞型リンパ腫(Ki−1リンパ腫といわゆる悪性組織    球症).日網会誌 29:293−311,1989 19)Rappaport H:Tumors of Hemat.opoietic    System. Atlas of. Tumor Pathology. Alrmed    Forces Institute of Pathology, Section 3. pt 8,    Washington(1966) 20)1.血【es RJ, Collins.RD: Immunological char−    acterization of human malignant lymphomas.    Cancer 34:1488−1503, 1974   』 21)1.ennert K, Stein H:Histopathologie der    Non・Hodgkin−Lymphoma. S.pringer Verlag,    Berlin・Heidelberg・New York(1980) 22)小島 瑞,飯島宗一,須知泰.山編:新分類による    悪性リンパ腫アトラス.文光堂,東京(1981) 23)The Non・H6dgkin’s I.ymphoma Pathologic    C翼assification Project: National cancer insti・    tute sponsored study of classificat.ion of non−    Hodgkin’s lymphomas, S㎜mary and 4escrlp・    tion of working formulation for clinical usage.    Cancer 49:2112−2135, 1982 24)Weisenburger DD, Kim H, Rappaport H:    Mantle zone lymphoma:Afollicular variant of    intermediate. lymphocytic lylnphoma..Cancer    49:1429−1438, 1982 25)Isaacson PG, Wright I):Extranodal malig・    nant lymphoma arising from mucosa・    assoclated lymphoid tissue. Cancer 53:    2515−2524, 1984 26)Purt量lo DT: Immunode且ciency predisposing    to Epstein−Barr virus−induced lymやhoprolifer・    ative diseases;the X・linked lymphoprolifer・    ative syndrome as a modeL Adv Cancer Res    34:279−312, 1981 27)社本幹博,白川 茂:悪性.組織球症とその周辺.    第26回日本網内系学会シンポジウム..日網.会誌    27:211−248, 1988 28)坂野輝男:悪性リンパ腫の化学療法一非ポジキソ    リンパ腫を中心に.臨床血液 32:453−460,1991 29)柵木信男,金子安比古,桜井雅温;悪性リンパ腫    における染色体異常と遺伝子再構成..日網会誌    29:121−126, 1989 30)飛内賢正,湊 哲輔,大津智子ほか:診断困難な    リンパ腫および類縁疾患における免疫遺伝子解析    の有用性.日網会誌 29:145−154,1989 31)Garcia RL, Coltrera MD, Gown AM:Analy・    sis of prollferative grade usihg anti・PCNA/    cyclin monoclonal antibodies in fixed, enlbed−    ded tissues. Am J Pathol 4:733−739,1989 32)Ngan BY, Wamke RA, Wilson M et al:    Monocytoid B−cell lymphoma:Astudy of 36    cases. Hum Pathol 22:409−421,1991 1

参照

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