短期的なトレーニングがテニスのサーブにおける球速と回転数に及ぼす影響
―個人のプレースタイルに合わせた指導事例―
Effects of training on ball speed and spinning frequency of the serve in tennis
― A case study of the according to play style ―
高 橋 雅 子
1)・酒 井 雅 弘
2)・城 田 雅 幸
3)・村 上 俊 祐
4)・
水 谷 未 来
4)・亀 田 麻 衣
4)・高 橋 仁 大
4)・
前 田 明
4)・椿 武
5)Masako TAKAHASHI, Masahiro SAKAI, Masayuki SHIROTA, Shunsuke MURAKAMI,
Mirai MIZUTANI, Mai KAMEDA, Hiroo TAKAHASHI,
Akira MAEDA, Takeshi TSUBAKI
要 旨
本研究では、個人のプレースタイルに合わせた短期的なトレーニングが、テニスのサーブにおける球速と 回転数に与える効果を検証することを目的とした。被験者は、A大学の女子テニスボール部員3名とし、それ ぞれのプレースタイルは、被験者A「1stサーブはフラットサーブ、2ndサーブはスピンサーブを用い、サー ブを武器とし、多彩なショットで攻撃を行うプレースタイル」、被験者B「弾道の低いスライスサーブを用い、 ラリーを軸として相手のボールを生かしたカウンターからの攻撃を用いるプレースタイル」、被験者C「左利 きのスライスサーブを用い、フットワークを活かした攻撃テニスを行うプレースタイル」であった。トレー ニングは被験者のプレースタイルに合わせて選定し、週2回3か月間実施した。その結果、被験者Aは「トッ プスピンから→サイドスピンへ」、被験者Bは「サイドスピンから→スライススピンへ」回転軸を変化させ回 転数が高まるサーブになり、被験者Cは「サイドスピンからトップスピンへ」回転軸を変化させ球速が高まる サーブになった。 キーワード:テニス、サーブ、トレーニング、球速、回転数 1)本学発達教育学部ジュニアスポーツ教育学科非常勤講師 2)本学テニス部監督、有限会社マーズプランニング 3)尚美学園大学総合政策学部ライフマネジメント学科 4)鹿屋体育大学体育学部 5)本学発達教育学部ジュニアスポーツ教育学科1
.緒 言
大森(2005)は、現代の最先端のテニスにお いて勝敗を左右する重要な因子としてサービスを 位置づけ、筋力はサービススピードを決定する重 要な因子であると述べている。祝原ら(2009)は、 テニスプレーヤーの各体力的要素と競技成績との 関係について検討を行い、両者には関係性がある ことを明らかにし、体力要素の充実が競技力を向 上させる一要因となることを報告している。梅林 ら(1998)は、速いサーブを打つためには上腕 部の筋群および体幹部の筋群を強化することの重 要性を報告し、上腕三頭筋の伸張性および短縮性 収縮要素を考慮した高速度トレーニングと、その 切り替えの弾性トレーニングとしてのプライオメ トリックトレーニングを行うことが、さらに一層 のサーブカの強化につながることを報告した。ま た、12週間のトレーニングプログラムにより、 形態および体力において増加を示し、テニスにお ける体力要素についても効果的に向上し、オフ シーズンにおける体力トレーニングの必要性を述 べている(梅林ら、1994)。小屋ら(2011)は、 テニス選手に最も必要な能力は、短時間での爆発 的なハイパワーの発揮であることを述べている。 ラケットスポーツにおいてボールスピードも重 要な要素であるが、近年注目されているのがボー ル の 回 転 数 で あ る( 村 松 ら、2015 村 上 ら、 2016)。村上ら(2016)は、ボールに回転を与え ることにより、ボールの軌道やバウンド後の挙動 に変化が現れるため、ボールに回転を与えられる ということは、テニスにおいて重要な能力の一つ であると報告している。近年、ラケットの軽量化 やガットの高反発化により、以前よりもボールに 多くの回転を与えることが可能となっていること を報告している。さらに、村上ら(2016)は、 打球されたボールの挙動(あるいは特質)を評価 するにあたり、速度と回転数は重要な指標になる と述べている。村松ら(2015)は、速度と回転 数の関係を考察することは、どちらか一方により 打球を評価するよりも、選手が打球する技術をよ り的確に評価できる指標になると述べている。こ れらのことから、テニスにおいては試合の勝敗を 左右するサーブは非常に重要な要素であり、その サーブの能力を高めるには体力的要素を高めるト レーニングを行う必要性が示唆される。 本学硬式テニスボール部は、強化部に指定され 将来実業団選手やプロ選手として活躍を目指して いる学生も在籍している。各選手のプレースタイ ルは様々であり、プレースタイルに合ったサーブ を身に付けることは競技力の向上に直接的に影響 するものと示唆される。しかしながら、これまで にサーブの能力を客観的なデータから評価を行っ たことはない。これらのことから、サーブの球速 と回転数を効果的に高めるトレーニング方法や指 導方法を明らかにすることが出来れば、選手の競 技力向上だけではなく、初心者への指導を行って いく上で、非常に有益な知見となると考えられる。 そこで本研究では、個人のプレースタイルに合 わせた短期的なトレーニングが、テニスのサーブ 時における球速と回転数に与える効果を検証する ことを目的とした。2
.方 法
2.1.被験者 被験者は、A 大学の女子テニスボール部員3名 とした。各被験者の特性は以下の通りであった。 被験者 A は、年齢:21歳、競技歴:16年、身長: 164㎝、体重:77㎏、右利き、主な競技成績:平 成28年度関西学生テニス選手権大会女子シング ルス準優勝、北海道の国体選手であった。プレー スタイル: 1 st サーブはフラットサーブ、2 nd サーブはスピンサーブを用い、サーブを武器と し、多彩なショットで攻撃を行うプレースタイル である。 被験者 B は、年齢:22歳、競技歴:12年、身長: 153㎝、体重:48㎏、右利き、主な競技成績:第 70回国民体育大会和歌山県代表選手であった。 プレースタイル:弾道の低いスライスサーブを用 い、ラリーを軸として相手のボールを生かしたカ ウンターからの攻撃を用いるプレースタイルであ る。被験者 C は、年齢:20歳、競技歴:12年、身長: 159㎝、体重:54㎏、左利き、主な競技成績:イ ンカレダブルス出場選手であった。プレースタイ ル:左利きのスライスサーブを用い、フットワー クを活かした攻撃テニスを行うプレースタイルで あった。 なお、本研究では、被験者 A・B をトレーニン グ群、被験者 C をコントロール群とした。被験 者には、実験参加前に本研究におけるトレーニン グ及び測定における危険性の有無について、得ら れた情報の使用方法について事前に説明を行い、 実験参加の同意を得た。 2.2.トレーニング方法 本研究におけるトレーニング方法は、通常の練 習に加えて、被験者のプレースタイルごとにト レーニングの種目を選定した。トレーニングは、 週2回3か月間(7月∼9月の期間)実施した。 また、本研究のトレーニング期間中に試合期(8 月)が重なったため、7月と9月が主なトレーニ ング期間であった。 被験者 A は、サーブの際にジャンプ動作を入 れた全身を使ったプレースタイルのため、全身の 筋力強化を目的としたトレーニングを行った。通 常の練習に加えて、①ナロー・ベンチブレス 15RM ×3セット、②ダンベルフライ15RM ×3 セット、③サイドレイズ15RM ×2セット、④バー ベルスクワット15RM ×3セット、⑤スプリット スクワット15RM ×2セット、⑥カーフレイズ(つ ま先立ち)30回を実施した。 被験者 B は、サーブの際にジャンプ動作を行 わないプレースタイルのため、主に上半身の筋力 強化を目的としたトレーニングを行った。通常の 練習に加えて、①ナロー・ベンチブレス15RM × 2セット、②ダンベルフライ15RM ×2セット、 ③サイドレイズ15RM ×2セット、④バーベルス クワット15RM ×2セットを実施した。 被験者 C は、通常の練習(4時間程度)のみ であった。 通常の練習は、以下の通りであった。 ① アップ練習(約30分間):ショートラリー、 ボレーボレー、ロングラリー、クロスラリー ×両サイド、ボレーアンドストローク、スマッ シュ、サーブアンドリターン ② サーブ(約20分間):センター、ワイド、ボ ディーに的を置き、約200球連続で打つ。 ③ 展開練習(約2時間):シングルス、ダブル ス ④ 試合形式(約1時間):シングルス、ダブル ス ⑤クールダウン:ジョギング、ストレッチ 2.3.測定方法 2.3.1サーブの測定方法 本研究におけるサーブの測定においては、鹿屋 体育大学のスポーツパフォーマンス棟の施設を使 用させていただいた。サーブの測定には、トラッ クマンテニスレーダー(アプライドオーフィス 社;以下、トラックマン)を使用して、ボールの 球速及び回転数を求めた。また、球速と回転数の 関係や、ボールの回転軸、インパクト位置につい ても分析を行った。 測定方法は、村上ら(2016)の方法を参考に、 トラックマンの中心がセンターマークの延長線上 になるようにし、レーダーがコート全体を捕捉す るよう、可能な限り後方に設置した(図1)。トラッ クマンとは、ボールの挙動を簡便に測定可能な機 器であり、打球されたボールの各種挙動を解析す るために開発されたシステムである。3D ドップ ラーレーダーを使用し、ボールの初速度や打球直 後の回転数などの打球データ、ボールの軌道など の軌跡データ、着地位置などの接地点データを算 出できるものである。村上らの研究において、ト ラックマンによるボールの速度と回転数の測定 は、従来行われてきたハイスピードカメラ及びス ピード測定器による測定と同等の精度があり、即 時にフィードバックできることから、トレーニン グ現場で有用なデータを提供できるものであるこ とが報告されている。 本研究においては、トレーニング前後に、ファー
ストサーブ、セカンドサーブをそれぞれ10本成 功試技が出るまで行わせた。なお、ファーストサー ブとセカンドサーブの間には十分な休息時間を設 けた。 図1 測定風景 2.3.2. 体力テスト 本研究における体力テストは、祝原ら(2009) を参考に、日本テニス協会(2005)が考案・推 奨するテニスフィールドテストを使用した。な お、測定に際し疲労を伴う種目(5方向走、往復 走、シャトルスタミナ)は連続して行わないよう 配慮し、それぞれランダムに行うことにより測定 項目間の順番による影響を少なくするよう配慮し た。 本研究で行った体力テストの内容は以下の通り であった。 ① 立ち幅跳び:両足を肩幅よりやや狭く開いて 立ち、助走をつけずに両腕や体で十分モー ションをつけて、前方上方向に跳躍しできる だけ遠くに着地させた。 ② 上体起こし:仰向けの姿勢から、「はじめ」 の合図で上体を起こし、両肘を大腿部中央付 近につけ、もとの姿勢に戻る。この動作を30 秒間繰り返し、その回数を記録した。 ③ 長座体前屈:被験者は2人1組で向かい合っ て座り、長座において膝を伸ばした状態で両 者の足裏を合わせる。膝が曲がらないよう 徐々に前屈し、両手の指先が自分の足のつま 先から出た長さを測定した。 ④ シャトルスタミナ:1 m 間隔で11個のボー ルを置いた10m のコースを用意し、そこを 3分間走り続ける。終了時の往復回数とボー ルとの位置をもとに、その移動距離をメート ル単位で計測した。 ⑤ 往復走・10m 走:被験者はベースラインの 延長線上に立ち、スタートの合図で反対側の ベースライン方向へダッシュし、線をタッチ し方向を変え、スタートしたサイドのサービ スラインの延長線上まで走り抜ける。計測は スタートから10m 地点とゴール地点とし た。その際、往復走と10m 走の2項目を同 時に計測した。 ⑥ 5方向走:被験者は、図2のようにセンター マークを中心としてつま先をベースラインの 外側(コート内に入らない)に合わせる。ス タートの合図で①に向かって走り、交点に置 いたボールにタッチし、センターマークに戻 る。これと同様に②、③、④、⑤と繰り返す。 ⑤にタッチしたのち、センターマークを駆け 抜け、要した時間を計測した。 図2 5方向走の測定方法 スタート・ゴール ② ③ ④ ⑤ ① 2.3.3. 統計処理 本研究の結果は、平均値と標準偏差で示し、各 被験者のトレーニング前後比較においては対応の ある t 検定を行った。いずれも有意水準が5 % 未満を有意とした。
3
.結 果
3.1. 球速の測定結果 図3は、トレーニング前後のサーブの球速を ファーストサーブ、セカンドサーブに分けて示し た。その結果、被験者 A はファーストサーブにおいてトレーニング後に有意に球速が低下した (p<0.001)。また、被験者 C は、セカンドサー ブにおいてトレーニング後に有意に球速が高く なった(p<0.001)。被験者 B においては、ファー ストサーブにおいてトレーニング後に球速が低下 傾向を示した(p=0.061)。 図3 トレーニング前後の球速 3.2. 回転数の測定結果 図4は、トレーニング前後のサーブの回転数を ファーストサーブ、セカンドサーブに分けて示し た。その結果、全ての項目において有意な変化は 認められなかった。 図4 トレーニング前後の回転数 3.3. ボールの回転軸の測定結果 図5は、トレーニング前後のサーブの回転軸を ファーストサーブ、セカンドサーブに分けて示し た。その結果、被験者 A はセカンドサーブにお いてトレーニング後に回転軸がトップスピンより からフォアハンドサイドスピンよりに有意に変化 した(p<0.05)。また、被験者 B は、ファースト サーブにおいてトレーニング後に回転軸がフォア ハンドサイドスピンよりからスライスサーブより に変化する傾向がみられた(p=0.078)。被験者 C においては、セカンドサーブにおいてトレーニ ング後に回転軸がスライスよりからバックハンド サイドスピンよりよりに変化する傾向がみられた (p=0.079)。 図5 トレーニング前後の回転軸 3.4. 球速と回転数の関係 図6・7はトレーニング前後の球速と回転数の 関係をファーストサーブ(上段)とセカンドサー ブ(下段)に分けて示した。全ての被験者はファー ストサーブの方が球速が高く、セカンドサーブの 方が回転数が高かった。また、球速と回転数はト レーニング後の被験者 B のセカンドサーブ以外 において全て負の相関関係が見られた(図7)。 図6 トレーニング前の球速と回転数の関係 (上段:1st ,下段:2nd)
図7 トレーニング後の球速と回転数の関係 (上段:1st ,下段:2nd) 3.5. インパクト位置 図8・9はトレーニング前後のインパクト位置 をファーストサーブ(上段)とセカンドサーブ(下 段)に分けて示した。 図8 トレーニング前のインパクト位置 (上段:1st ,下段:2nd) 図9 トレーニング後のインパクト位置 (上段:1st ,下段:2nd) 3.6. 体力テスト結果 表1にトレーニング前後における体力テストの 結果を被験者ごとに示した。全被験者のほとんど の測定項目において、トレーニング後の値の方が 低い測定結果であった。 表1.トレーニング前後の体力テスト結果
4
.考察
本研究は、個人のプレースタイルに合わせた短 期的なトレーニングが、テニスのサーブにおける 球速と回転数に与える効果を検証することを目的 とした。以下に被験者ごとに考察を行うこととす る。 4.1. 被験者Aについて 被験者 A は、サーブの際にジャンプ動作を入 れた全身を使ったプレースタイルのため、全身の筋力強化を目的としたトレーニングを行った。そ の結果、表1のように体力テストにおいては、上 体起こし、長座体前屈、5方向走に若干の効果が 見られたものの、他の測定項目において効果は認 められなかった。サーブの測定では、図3のよう にファーストサーブにおいて有意に球速が低下し た。また、回転数に関しては有意な変化は認めら れなかった。回転軸では、セカンドサーブにおい てトップスピンよりの回転軸からフォアハンドサ イドスピンよりに回転軸の有意な変化が認められ (図5)、ファーストサーブでも同様の変化がみら れた。このことから、球速の低下はボールの回転 軸の変化が影響したものと思われる。図6・7の ように、球速と回転数には負の相関関係があるた め、被験者 A がトレーニング後の測定において、 回転数を重視したサーブを行った可能性が考えら れる。内省報告において、被験者 A はトレーニ ング後の測定において、「よりサーブの回転数が 得られるようにグリップの握りを薄く(コンチネ ンタルグリップから右側に少しだけ持ちかえる) 握り、スライス回転が掛かりやすいサービスを 行った」との回答が得られた。このことから、ト レーニング前後の変化は、ラケットの保持方法や 操作が影響した可能性が示唆された。 4.2. 被験者Bについて 被験者 B は、サーブの際にジャンプ動作を行 わないプレースタイルのため、主に上半身の筋力 強化を目的としたトレーニングを行った。その結 果、表1のように体力テストにおいては、5方向 走のみに若干の効果が見られたものの、他の項目 においては有意な向上は認められなかった。サー ブの測定においては、図3のようにトレーニング 後ファーストサーブにおいて球速の低下傾向がみ られた。また、回転数に関しては有意な変化は認 められなかった。回転軸においては、ファースト サーブにおいてトレーニング後に回転軸がフォア ハンドサイドスピンよりからスライスサーブより に変化する傾向がみられた(図5)。被験者 B 内 省報告においては、グリップの握りや動作の変化 に関する回答は得られなかった。 4.3. 被験者Cについて 被験者 C は通常練習のみ行い、体力テストに おいては全ての項目で低下が認められたものの、 球速ではセカンドサーブにおいて球速が有意に高 くなった(図3)。回転数においては有意な変化 は認められなかった。回転軸では、セカンドサー ブにおいてトレーニング後に回転軸がスライスよ りからバックハンドサイドスピンより変化する傾 向がみられた。内省報告においては、グリップの 握りや動作の変化に関する回答は得られなかっ た。 本研究で行った体力テストにおいては、多くの 測定項目においてトレーニング前と比較して値か 低かった。この原因としては、トレーニング期間 の短さや、トレーニングの強度(負荷設定)が低 く、筋持久力を高める内容であったことが示唆さ れる。また、トレーニングを行った時期(トレー ニング期間中に試合期が重なった)と測定日の環 境(気温・風速など)が影響したと思われる。被 験者の内省報告から、気温が低く動きにくいなど の回答が多く得られた。今後の検討課題として は、測定環境が一定になるような工夫や配慮を行 う必要性が示唆された。しかしながら、コントロー ルの被験者 C は全ての項目で低下が認められた ものの、トレーニング群の2名はいくつかの項目 で改善が見られた。このことから、試合期が途中 1カ月間入ったにもかかわらず、トレーニングに よって体力の維持や若干の向上が得られたことか ら、試合期においても適度なトレーニングの実施 は重要であると示唆された。 サーブの測定においては、トレーニング後の測 定においては台風接近によって時折強風が吹く中 で測定を実施した。そのため、被験者の内省報告 には「トスの安定性に欠けた」や「風の影響を受 けた」などの回答が得られた。実際に、トレーニ ング前後のインパクト位置をみてみると、トレー ニング後の方がインパクト位置にバラつきが見ら れた(図8・9)。このことから、トレーニング 後はサーブの測定を行う際に通常のインパクト位
置とは異なる所でインパクトを強いられた可能性 が示唆される。 以上のように本研究で得られた結果は、トレー ニング前後の測定環境を同様の条件を設けること が困難であったため、本研究の結果からトレーニ ングの効果を述べることは難しいと思われる。し かしながら、トレーニング群の被験者の内省報告 では、トレーニング後の方が回転がかかったサー ブを打てるようになったなどの回答が得られた。 また、本研究では測定を行っていないが、被験者 A は筋力面の向上を回答していた。これらのこと から、被験者Aにおいては、主観的ではあるがサー ブに対してトレーニングの効果があった可能性が 示唆される。 今後の課題としては、本研究ではサーブ時にお ける動作の比較を行っていないため、トレーニン グによってサーブ動作にどのような変化がもたら されるのか、あるいはラケットの握りや操作を同 じ条件で測定を行った場合、サーブの球速や回転 数、回転軸にどのような影響を与えるのか検討す る必要がある。 板橋(2014)は、テニスの実施が最も盛んに なるのは大学であると述べている。「スポーツに 限らず、どのようなことでも始めたての頃に受け た印象はその後の継続率に大きな影響を及ぼすも のであり、生涯スポーツとしてのテニスを定着さ せるためには テニスが楽しかった またやり たい と思わせるような授業内容でなければなら ない。」と述べ、大学の体育実技の授業における テニスの重要性を報告している。本学においても 多くの学生が履修する基礎体育学の内容にテニス を取り入れており、中学校・高校の保健体育科教 諭を目指す学生に向けに、テニスの授業を開講し ている。高等学校の学習指導要領では、ネット型 の競技では、「サービスでは、ボールに変化をつ けて、ねらった場所に打つこと」や、「ボールを 相手側のコートの守備のいない空間に緩急や高低 をつけて打ち返すこと」、「ボールに回転をかけて 打ちだしたり、回転に合わせて返球したりするこ と」などが例示として挙げられている。また、山 口(2009)は、テニス授業受講によりテニスス キルが向上すると述べ、中でもスキルの向上が明 確に認められたものはオーバーハンドサーブで あったと報告した。これらことから、サーブを題 材とした指導事例を検討していくことは、大学体 育におけるテニス授業の充実や指導方法の選択肢 を増やすことにつながるため、非常に重要なテー マであり、今後も継続して研究を進めていきたい。
5
.まとめ
本研究で行った短期間のトレーニングによって 以下の結論が得られた。 ⑴ 被験者 A は、トレーニング後のサーブ測 定の際にグリップを薄く握り、スライス回転 がかかりやすいサーブを行うことによって、 ボールの回転軸を変化させた。それに伴っ て、ファーストサーブにおいて有意に球速が 低下した。 ⑵ 被験者 B は、回転軸が変化する傾向が見 られたものの、サーブの球速、回転数に有意 な変化は認められなかった。 ⑶ 被験者 C は、体力テストにおいては全て の項目で低下が認められたものの、球速では セカンドサーブにおいて球速が有意に高く なった。その原因として、セカンドサーブの 回転軸において、トレーニング後に回転軸が スライスよりからバックハンドサイドスピン よりに変化する傾向がみられた。6
.謝 辞
本研究を実施するに当たっては、鹿屋体育大学 のスポーツパフォーマンス棟の使用を快く受け入 れて下さいました前田明教授、並びにトラックマ ンのオペレーションや測定時の助言をいただきま した高橋仁大准教授、村上俊祐助教、大学院生の 方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。7
.文 献
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