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博士論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学大学院アジア太平洋研究科. 博士論文審査報告書 論 原題名 Original Title. 英訳 In Japanese. 文. Research on Vertical Integration and the Advancement of Management in the Agricultural Sector in Japan. 申. 名. Name 学籍番号 Student ID. 目. 日本における農業法人の 6 次産業化と経営高度化に関する研究. 姓 Last Name. 氏. 題. 請. 者. Middle Name. 石戸. 名 First Name. 修. 4013S301-1. 2018 年 4月. 0.

(2) 1.. 本論文の主旨. 日本の農業は大きな転換期を迎えている。就農者数は減少傾向にあり、また、2016 年時 点の基幹的農業従事者の平均年齢は 66.8 歳であるため、今後、近い将来においてもリタイ アする就農者が多く出ることが見込まれる。それに伴い耕作放棄地が増加することや、品質 の高い作物の生産技術の承継がスムーズに行われないこと、さらには安定した生産基盤が 失われることも懸念される。収益性を改善し安定した所得や雇用が見込める環境を作ること で、国内農業の衰退傾向に歯止めを掛けることは喫緊の課題である。収益性を改善するた め、限られた農地内での生産効率を改善し生産量を増やすことや、生産コストの削減を図る といった従来からの継続的な取組みは重要であるといえる。しかし、生産における取組みの みでは付加価値を生み出す機会が限定され、収益性を改善するための手段が限られると いった課題がある。そのような状況に対応するため、各経営体レベルで収益獲得機会を拡 大する試みを模索することが求められ、それには生産した農産物を原料とした商品加工に 取組むことや、独自の販路開拓を通じてより経済的に見合った価格での販売を実現すると いった取組みが拡大することが期待される。 これら事業の垂直的な拡大に関する取組みを「6 次産業化」と呼び、政府も農業において 自由な経営展開ができる環境を整備し、6 次産業化を促進する方針を掲げている。一方で、 6 次産業化を進める上では課題も指摘され、地域では人材を含めた資源が不足することや、 農業経営における管理体制の不備が、促進に向けた制約となる可能性がある。 本研究では、関連分野の先行研究や農業経営の現状分析を踏まえ、①経営体の特徴 による 6 次産業化の取組状況の傾向、②農業法人における女性の活躍と 6 次産業化の進 展との関連性、③各経営体の属性や抱える経営課題による経営高度化に向けた ICT 活用 の取組への影響、という 3 つの点に関するリサーチクエスチョンを設定して、検証を行った。 日本の農業は多様であり、全国的に展開され、また幅広い作物がある。それぞれの経営 体の特徴によって事業展開の方法は異なるが、6 次産業化の取組には何らかの傾向がみら れる可能性がある。また、加工や販売といった取組みの促進に伴い、経営高度化の必要性 が増すと考えられ、この点についても経営体の特徴により取組状況が異なる可能性もある。 しかし、これらの点については、十分な分析が行われていないため、6 次産業化の更なる促 進や農業における経営高度化について検討する上で、これらの実態の把握が求められる。 このような背景から、本研究では、農業法人による 6 次産業化や経営高度化の取組みに関 する実証的な要因分析を通じて、今後これらをさらに促進する上での課題や対策について 考察することを目的とした。 本論文の分析には、農業法人協会による全国的なサーベイ調査から得られたデータを 活用した。これには、分析対象が扱う作物や地域といった質的なデータを含む。そのため、 本研究の主な分析には質的データの解析に広く利用される数量化Ⅱ類を用いた。 6 次産業化を図り事業範囲が拡大する中で、農業における経営高度化が求められる状況 にある。そのような状況下で、管理体制や販売の強化といった点を含め ICT の導入が有効 な手段の一つとなることが期待される。本研究の分析結果からは、ICT の活用状況につい ても扱う作物による影響があることが明らかになった。また、売上高でみた経営規模が拡大 すると、生産、販売、加工、会計、労務といった各部門で ICT の活用が進む傾向がみられる。 地域間での ICT 活用状況にも差がみられ、これらの要因が各経営体での ICT の導入の判 断に影響すると考えられる。. 1.

(3) 2.. 本論文の構成と概要. 第 1 章「序論」では、就農者人口の著しい減少といった農業分野における背景について 触れた上で、同分野の活性化のために、経営体レベルにおける収益性の改善が求められ る状況にあるという問題意識について述べている。それを踏まえ、「農業法人による 6 次産 業化と経営高度化の取組みに関する実証的な要因分析を通じて、今後これらを更に促進 する上での課題や対策について考察すること」を目的として掲げている。 第 2 章「先行研究」では、6 次産業化とその類似する概念を定義し、また製造業を含めた 一般的な産業における垂直的統合に関する研究・文献について整理した。加えて、当研究 領域において多くみられる事例分析についても整理した上で、これら先行研究を踏まえた、 本研究の必要性・重要性について述べている。 第 3 章「農業関連政策と制度の変遷」では、近年における農業界を取り巻く環境の変化 について言及するため、主に 2009 年(平成 21 年)の農地法抜本改正以降の、一連の制度 変更について整理している。 第 4 章「農業経営に関する現状分析」では、11 の経営体に対して実施したヒアリング調査 の結果についてまとめている。これらのヒアリング調査結果は、本研究におけるリサーチクエ スチョンの設定に加え、分析結果の解釈においても役立てられている。 第 5 章「分析の枠組みと手法」では、主に第 2 章の先行研究と第 4 章の農業経営におけ る現状分析を踏まえ、3 つのリサーチクエスチョンを設定している。その上で、分析に用いた データと分析手法について説明している。 第 6 章「農業法人の 6 次産業化に関する要因分析」では、どのような経営体が 6 次産業 化を図るかを明らかにするため、経営体属性に関する要因を基に、数量化Ⅱ類を用いた実 証的な分析を行っている。分析結果からは、果樹や工芸の分野で 6 次産業化を図る経営が 多い一方で、畜産分野では、生産を主体とした経営が多い傾向にあることを明らかにしてい る。加えて、加工や販売といった事業展開を図る上では、食や食品加工に関する知識や能 力が求められる状況にあり、これらの分野では、女性の活躍促進が期待される状況にある。 そのために、農業法人における女性の従事と 6 次産業化の進展との間に、関連性がみられ るかという点について確認する目的で、相関分析を実施している。分析結果からは、女性の 従事者数と 6 次産業化の進展との間では、有意な相関があることを確認した。 第 7 章「農業法人の経営高度化における ICT 活用」では、経営体の属性や経営者が抱 える課題といった要因が、農業法人における ICT 活用判断に与える影響を検証するため、 数量化Ⅱ類を用いた実証的な分析を行っている。分析結果からは、事業規模(売上高)、 作物分類、地域といった経営体属性の要因による影響が大きいことを明らかにしている。規 模が大きい経営で ICT 活用が進む傾向にあることに加え、扱う作物や地域間でICT 活用の 状況が異なることが示されている。 第 8 章「考察と結論」では、第 6 章と第 7 章における分析結果の要約に基づき、設定した リサーチクエスチョンに対する回答とこれら分析結果に関する解釈を提示した。事例分析が これまで主であった当該研究領域において、実証的な分析を実施した研究成果を提供す るという、本研究の意義を明らかにした。6 次産業化や ICT 活用の傾向が地域間で異なる点 に関しては、その要因について追加的な検証が求められるという今後の課題も挙げた上で、 本研究を総括している。. 2.

(4) 3.. 口述試験での質疑応答. 本論文審査委員会は、申請者から提出された学位請求論文を査読し、2018 年 1 月 20 日に 2 時間余にわたり口述試験を実施した。主な意見および質問は以下の通りである。 ・農業先進国の事例が参照されていないのはなぜか。 アメリカでは食肉業者の 6 次産業 化が進んでいるので、参考にすべきでないか。 ・分析結果の偏相関や相関比についても触れた方が良いのではないか。カテゴリースコア も個々のカテゴリーについて触れなくてよいか。 ・垂直的多角化に関して、経済学経営学の分野で研究蓄積があり触れるべきではないか。 ・作物別の女性従事者数の分布により何を見ようとしているのか。 ・女性の従事状況について、数量化Ⅱ類の変数として加えないのはなぜか。また、段階分 けの説明が明確でないのではないか。 ・「地域」について曖昧で、追加的な分析が必要ではないか。 ・今後の 6 次産業化の取組意向について、課題意識は、現在の課題を反映しているのでは ないか。 ・ヒアリング調査は関東近隣を対象にしており、他地域では条件が異なる可能性がないか。 ・図表の引用について統一されていない箇所がある。 口述試験では、指摘や質問に関して適切に回答が示され、修正すべき点については、 最終提出までに適切に修正することとなった。審査委員会は修正意見に対する対応表とと もに、修正が適切になされていることを確認した。 4.. 評価と審査結果. 以上のように、本論文では、日本の農業の 6 次産業化について、作物分類間で取組状況 に差が生じていることが明らかになった。農産物の特徴が、実際に事業展開のあり方に影 響すると考えられ、現状における作物分類間での 6 次産業化の取組状況の差に繋がって いることが明らかになった。また、農業法人における 6 次産業化の進展状況と、従事者数で みた女性の関与の増加との間に一定の関連性がみられた。特に、食や食品加工について 女性が有する知識や能力といった点が求められることが影響すると考えられ、農業における 女性の活躍促進が、今後の 6 次産業化の促進に向けた有効な対策の一つとなる可能性が ある。 これらの分析結果から、農業において今後より 6 次産業化や経営の高度化を促進する上 での課題や対策は、扱う作物を含めた経営体の特徴によって異なり、独自の加工または販 売が難しい分野や、高い専門性や知識が求められる分野では、より重点的に政策的な支援 を行うといった対応が求められる。また、加工や販売といった事業の拡大を図る上では、従 来よりも多様な能力を有する人材の確保といった点で、各経営体レベルでの更なる経営努 力も必要になることなどを明らかにしたことは、本論文の独創的な点であり、困難な研究を 成し遂げた貴重な成果が盛られている。 口述試験の内容を踏まえ、論文に関して慎重かつ総合的に審査を行なった結果、博士 学位請求論文としての水準を十分満たしているものと判断し、これを受理することに全委員 が合意した。. 3.

(5) 申請者名:. 石戸 修. 博士論文審査委員会 主査. Chief Examiner:. 氏 名 Name: 三友 仁志 ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: 早 稲 田 大 学 国 際 学 術 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 D e g r e e : 博 士 (工 学 ) 取 得 大 学 C o n f e r r e d b y :豊 橋 技 術 科 学 大 学 専 門 分 野 S p e c i a l t y : 情 報 通 信 経 済 ・政 策 副査. Head Deputy Examiner:. 氏 名 Name: 山 岡 道 男 ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: 早 稲 田 大 学 国 際 学 術 院 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 Degree: 博 士 (学 術 ) 取 得 大 学 Conferred by: 早 稲 田 大 学 専 門 分 野 S p e c i a l t y : 国 際 交 流 論 、経 済 学 教 育 論 、ニュージーランド研 究 副査. Deputy Examiner:. 氏 名 Name: 加 藤 篤 史 ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: 早 稲 田 大 学 国 際 学 術 院 大 学 院 アジア太 平 洋 研 究 科 職 位 Ti t l e : 教授 学 位 Degree: Ph.D. (経 済 学 ) 取 得 大 学 C o n f e r r e d b y : Uni ver sity of Michi gan 専 門 分 野 Specialty: 経 済 発 展 の政 治 経 済 学 副査. Deputy Examiner:. 氏 名 Name: 水 野 谷 剛 ㊞(Signature) 所 属 Affiliation: 筑波大学大学院生命環境系 職 位 Ti t l e : 准教授 学 位 D e g r e e : 博 士 (学 術 ) 取 得 大 学 Conferred by: 筑 波 大 学 専 門 分 野 Specialty: 環 境 総 合 評 価 、環 境 経 済 政 策. 2018年 4月 18日. 4.

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参照

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