金沢大学 十全 医学 会 雑誌 第8 5 巻 欝2 。 3 号 1 3 5 ‑1 53 (1 9 7 6)
ヒ ト骨 肉 腫 由来 培 養細胞 の マ ウ ス並び に ラ ッ トへ の異 種 移 植 に関する実験 的研 究
金沢大 学 医 学 部 整 形 外 科学 講座 ( 主任: 高 瀬 武 平教 授)
竹 林
生き た ま まの細 胞を光顧 レ ベ ルで動 的に捉えよう と いう発 想のも とに始まった組 織 培 養の歴史は , 1 8 8 5年
Ch ick e mbryo の神 経 板を組塙 培 養し た Ro u x32)
を創 始 者とレ, 1 9 0 6年には Ha r ris o n12) が神 経 線
推の培養を試み, その後 Ca r r e15 ) がはじ めて と 卜悪
性 腫 瘍細 胞 ( 紡 錘 形 細胞 肉腫) の組 織 培 養を 試 み. つ
づい て Gey川) が と 卜線 絶 軟 骨 肉腫 の長 期 絶 代 培 養 を行い・ 更に
▲ Gey
一り は子 宮 頸 部痛か ら HeLa 細胞 株を樹 立して以来, 組 織 培 養によ る腫瘍細 胞の研 究 は
め ざ ま し く躍進し た.
骨 腰痛 細 胞の組 織 培 養に関 して, 阿部2), 太 田… が 骨 巨細 胞 腫の組 織 培 養に成 功し たの につづき, 1 96 4年 高歯ら37) は骨 肉 腫患 者の切 断肢よ り骨 肉腫 細 胞 の培 養. 線 化に成功し. これ を O S T 細 胞と命 名し た.
こ の O S T 細 胞に関して形態 学 的 観 察29)3 丁)4 3). 増殖サ イ ク ル柑), Ⅹ線25)及び各種 薬 剤に対す る影 響ほ)27)36) な ど につ い て数々 の研 究が な さ れ, 更に O S T 細 胞を Rab b it a nti‑M o u s e‑T hym u s Se r u m で処 理 した マ
ウ ス に異 種 移 植しマ ウ スを腫瘍死 さ せ ることに成功 し た20 )〜23 )28)38)39)
他 方,1 9 7 4年に金沢大 学 医学 部整 形 外 科学 教 室に於
て . 新たに骨 肉 腫患 者より骨 肉 腫細 胞の継 代培養に成 功し, これ を O S T Ⅱ細 胞と呼称し. 現在掴代に継 代 培養さ れて いる. 著 者はこ の継 代培養 初期の O S T II 細 胞につ い て 拍: ひ抽化 で の細 胞の性 状及び形態 学 的観 察を行う と と もに O S T Ⅱ細胞 をマ ウスに異 種 移 植を試み た. 更に O S T 細 胞と O S T Ⅱ細 胞を Rab. b it a nti‑Rat・T hym u s Se r u m で処理 し たラ.ソ ト に
異 種 移植を行う と と もに生 後2 4時間 以内の新生 児ラ ッ
ト に両細 胞を静注 し, 肺に移 植を成 立さ せ‑ これ ら 2 種類の骨 肉腫 細胞に つい てその移植 性t 頬骨 形 成能. 悪 性 度な ど を比較 検 討して若干の知 見 を得たの で報告 す る.
Expe rim e ntal stud ie s on t he he te r olo go u s
hu m a n o steoge nic s a r c o m a c e11s into mic e m e nt of Ort hopa edic Su r g e r y (D ir e cto r :
Ka n a z a w a u niv e r sity.
俊 一 郎
1 3 5
Ⅰ. 実 験 材 料
1 . 骨 肉 腫由 来 培養 細 胞 1) O S T 細 胞
1 96 3年1 0月2 8 日に金沢大 学 医学 部 整 形 外 科学教 室に 於て1 5才 女 子の左 大腿骨骨 幹 郎に発 生し た 骨肉腫 を ( 写 真1 , 2), 左 下肢 切 断 後, これ を 摘出. 分 離し て組 織 培 養を行い. 総 代 培 養 後19 6 4年6 月に株化細胞 と な り, Oste oge nic Sa r c o ma Taka s e str ain
(O S T 細 胞) と命 名し た もの で 、1 9 7 5年1 1 月 現在5 4 9 代で長 期絶 代 培養 中であ る.
2 ) O S T Ⅱ細 胞
1 0才 女 児の左大 腿 骨 下 端部に発 生し た骨 肉腫 を ( 写 真3 , 4 ), 1 97 4年1 2月2 3 日金沢大 学医学 部 整形外 科 学 教 室で切断 後, 摘 出, 分離し直ちに初 代 培 養を行
い, その後l 継 代 培 養に成功し, 1 9 7 5年1 1月現在4 4代
で継 代培 養 続 行 中で, これ を O S T Ⅱ 細胞と呼 称し た.
2 . 移 植 動 物
上 記の細 胞の異種移 植に ラッ トとマ ウ ス を使用 し た. 即ち, 大 腿 骨 部移 植には生 後2 4時間 以 内 の新 生 児. 生後1 過, 生 後2過の W ista r 系 姓ラ ッ トを . 静 注 移植には生 後2 4時 間以内の W ista r 系地所 生児 ラッ トを各々使用 し た. ま た O S T Ⅱ細胞 を 生 後 2 過
d d N堆マ ウ ス の大 腿骨 部に移植し た.
Ⅱ. O S T 細 胞及 び O S T Ⅱ細胞の/〃 ∨/rr o での
実 験
O S T 細 胞に関しては 既に報 告さ れて いるの で1 3 ユー5)Z 2)
25) 祁)3 ‖ 舶 3)
主 と して O S T Ⅲ細 胞の実験 に つ き 記載す る.
実 験 方 法 1 . O S T Ⅲ細 胞の初 代 培養
tr a n spla nt a tio n of tw o k inds of cultured
a nd r ats.S h un ‑ich ir o Takeba y a sh i,De p art・ Pr of・ B uhei Takase) Sch ool of M ed icine.
1 3 6 竹
O S T ‡細胞の初代 培 養には高 瀬ら36) の方 法に従い.
採取し た 腫瘍 組織を生理的 食塩 水で数回 洗浄し た後,
無 菌 的に鋏で細 切し, ガー ゼ で濾過 し た. ま た 細切 後 0.2 5 % try psin を加えて1 5分 間 pipet t ing して try psiniz atio n さ せ た後, 燐 酸 緩 衝 食塩 水で try p‑ sin 作用を阻 止し, ガー ゼ で濾 過 し た, そ れ ぞ れに Ha nks 液を加えて細胞 浮 遊 液と し. 1 .0 0 0r.p.m .5 分 間 遠心 にか け た. 沈溝細 胞を T C M ediu m 1 9 9 に牛 胎児 血 清2 0 % 含 有の培 養 液に1 05個/ ml と なるよ うに入 れ た後. 角型大培 養 瓶に こ の細 胞 浮 遊液 1 0n ll を注 入, 3 70C で静 置, 毎日観 察し た.
2 . O S T 細 胞及 び O S T Ⅲ細 胞の形態学 的 観 察 O S T 細 胞は5 4 5代 目, O S T Ⅱ細 胞は 2 代 目, 4 代 目, 4 0代 目のものを使用 し た. 短冊 を 入 れ た/ト培 養 瓶
に培 養 液1 ml づっ 5 ×1 05個の細 胞を 注 入 し, 培 養 後 経 時 的に取り出し. G ie m s a 染 色及 び H・E 染 色を 行い観 察し た.
3 . O S T 細 胞及 び O S T Ⅱ細 胞の細 胞 数 変 化 O S T 細 胞は5 4 5代 臥 O S T Ⅱ細 胞は4 0代 目の もの を使用 し た. 両 細 胞を E D T A で剥 離 後, 充 分 p i p‑ et ting し単 個の細 胞と し たのち. 培 養液 1 mlに つ き 細 胞 数1 05個と な る よ うに調 整し. 細 胞 培 養液 を 正確
に1 ml づっ小 培 養 瓶に分注し培 養し た, 経 時 的に5 本の小 培 養瓶を取り出し E D T A で剥 離. pipet ting の後, 血 球 計 算 板を用い て細 胞 数を計測 した . 各
林
時毎の5 本の培 養 瓶 中, 細胞 数の最大のものと 最/トの ものを捨て , 中 間の3 本の培 養 瓶 申, 細 胞 数の平均 値 を とった.
4 . O S T Ⅱ細 胞のコ ロ ニ ー形 成能
O S T Ⅱ細 胞3代 目のものを使用 し た . E D T A と 0.2 % try psin 等 量 液で4分 間 try psin 作用の後. 充 分 pipet ting して単 離 細 胞と し た. 5 0個の O S T
Ⅱ細 胞を シャ ー レ に植えこみ, C O2・in c ubato r で培 養し. 2 過 後に コ ロ ニ ー 形 成の数を観 察し た.
5 . O S T Ⅱ細 胞の染 色 体 構 成の観 察
O S T I 細 胞3代 目のものを使用 し, 空 気 乾 燥 法2 5) 施行 後. 染 色 体 染 色を行い, 分裂 細胞の染色 体数 を算 定し た.
6 . オー ト ラ ジオ グラ フ ィ 一 によ る O S T ‡細 胞の Cy tok in etic s の検討
O S T Ⅱ細 胞8代 目の細 胞につ き継 代 培 葺4 8時間後
に 3H‑T hymi d in e (3H‑T d R と略す) を 用い て C u m ulativ e label ing m ethod, Single puls e‑mit‑
o sis ch a s e m ethod によ り本細 胞の Cy tOkin etic s
を検 討し た.
1) Cu m ulativ e labeling m ethod セは, 3H ・T d R を 0.1LL C/mlの濃 度で持続 的に培 養 液に添加し,
添加4 8時 間 後まで3 時 間 毎に標 本を取り出し た. 2) S ingle puls e‑mito sis cha s e m ethod で は上 記と同濃 度で 3日‑T d R を3 0分 間だ け作用 させ t
表1 0 T S Ⅱ細 胞の継代 培 養の経過
代 継 代まで の 所 要日数
通 算
所 要日数 継 代年 月日 備 考
初 代
2 代
3 代
4 代
5 代
6 代
7 代
8 代
9 代
1 0 代
> 1 9、日
> 1 4
四
> 6
> 5
> 4
> 7
> 7
> 6
1 9 日 3 3
4 4 5 0 5 5 5 9 6 6 7 3 7 9
1 9 74.1 2.2 3 1 9 7 5. 1.1 1 1.2 5
2. 5 2.11・ 2.1 6 2.20 2.27 3. 6 3.1 2
1.2 7 コ ロ ニ ー 培 養 1.2 8 走 査 電 顕
電 顕
1.3 1 初 代細 胞 を 窒 素 冷 凍 2. 3 染 色体 染 色
2.20 4 代, 5 代を
マウス に異 種 移 植
ヒト骨 肉膵 由 来培 養細 胞のマウス並びに ラットヘ の異 種移 植
その後5 1時 間目ま で 3時 間 毎に標 本を取り出し た.
以上の如く 3H・T d R で ラベ ルし た模 本を Ha nks
液 で数 秒 間洗 浄 後t 乾燥. メタノ ー ル固定を施し,
d ip ping 法によ るオ ー ト ラ ジ オグラフ ィ 一 棟 付3) を 行っ た. 以 上の方 法で得た模 本を G ie m s a 染 色 を 施し観察し た が, な お検 鏡に際しては, 1 個の細胞核 上に5個以上の感 光 粒 子を有す る ものを 1abeled
C ell と し た.
実 験 結 果
1 , O S T Ⅱ細 胞の初 代及 び縫 代培養の経過 初 代 培 養を行った O S T Ⅱ細 胞は2 4時 間目に は ガ ラ ス面に紡錘 形の細 胞と な り定着し始め, 2 日 目には 細 胞 突 起をのば して拡が り, 浮上細 胞と定 着 細胞 が 明 確 に別れ た 3 日目及 び更に7 日目に培 養液の交換 を行っ た. 7 日目よ り細胞は増殖 傾 向を示し, 2 週 後で は細 胞は 旺盛に増 殖し たの で (写真5 ), 1 9 日目に 2 代 目 の総 代 培 養を行っ た. 2代 培 養1 4 日目には 3 代目の継 代 培 養が 可能と な りt 3代 目継 代 培 養7 日 冒で ag g・ r egatio n 形 成を み た. 4代目に至って は継代 培 養 4
‑5 日目でガラ ス面いっ ぱい に細胞 が増 殖し た. そ の
5
点
7
・ 3
∧
ソー
ー
′ 1‑ n
U
篭
じ
嘗 琶
コ冨
血
刈
12 2486 48 3 4 5 6 7 ( 加) Day$ a触P C畑u 柑
図1 0 S T 細 胞及 び O S T II 細 胞の増 殖 曲 線
Chr o m o $ O m ¢N u m鵬P
図2 0 S T II 細 胞の染 色 体 構 成
1 3 7
後の縫代 培 養で本 細 胞は安定し た増 殖を示し (表1 ) 現 在に至っ て いる.
2 . O S T 細 胞と O S T 軋細 胞の形 態学 的観 察 各継 代 培 養 後1 2時 間で両 細 胞と も球 状の細胞 形態で
定 着し始め, 2 4時 間で紡錘形を 呈 し, 4 8時 間で は紡錘 形が更に明 瞭と な り. 原 形 質の両端に長い突 起を 認め る ものも出 現し た( 写 真6). 4 日目よ り 星状ま たは
多角 形に細胞は融 合し あって上皮 細 胞 様形態を 示 して 旺盛に増 殖し た(写真7). 7 日目以後で は. 両 細 胞 は重な り あって ag gr egatio n を 形成し, 個 々 の細 胞の判別 が 困難と なっ た.
3 . O Sナ細 胞及 び O S T I 細胞の細 胞 数 変化 両 細胞 系と も細 胞 数は培 養 後1 2時 間で 一 旦 減少を 示 し, 以後 増 加し4 8時 間では培 養 開 始時とほ ゞ同数にな り. 以後 更に増 加を示し た. 4 日目で両 細胞の細胞 数 は最高と な り. 以後減 少し た( 図 1).
4 . O S T ‡細 胞の コ ロ ニ ー 形成 能
5 0個の植え込みで平 均4 6.4 % の コ ロ ニ ー を 形成し た ( 写 真8). ま た 5個の シャ ー レ の総 数1 1 6 個 の コ ロ
ニ ー は全てほゞ円形を 呈 し, 各コ ロ ニ ー の細 胞は上皮 細 胞 様であ り (写真9) . 所々散 在 性に多 核巨細 胞の
出現 を み た.
5 . O S T Ⅱ細 胞の染色 体 構 成
O S T Ⅱ細 胞3 代 目につい て検討し た結果 , 染色体 数の頻度 分 布は図2の如くであっ た. 即 ち O S T Ⅲ細 胞は染 色 体 数2 8個〜3 0 6個と広 範な染 色 体数 変異 を 呈
し, 染 色 体 数モー ドは7 1個であっ た ( 写真1 0 ) .
6 . O S T Ⅱ細 胞の Cy tok in etic s
l ) Cu m ulativ e labeling m ethod で は各標 本
につ き細胞 数1.0 0 0個を数え . こ の中の Iabeled
8 0 3 9 15 別 2了 38 39 ( 佃 図3 0 S T II 細 胞
in ui hb c u m ulativ e Iabeling rn ethod