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博 士 論 文 概 要

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早稲田大学大学院 創造理工学研究科

博 士 論 文 概 要

論 文 題 目

Study of Design Technology in Mid-Century Chinese Architecture Technical Books

中国中世建築技術書における設計技術に関する研究

申 請 者

朱 寧寧

Ningning ZHU

建築学専攻・比較建築史方法研究

20125

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中世は中国から周辺の国へ広く建築の様式や設計技術が伝わった時代である。建築の細部様式 の影響についての既往研究は、日本と中国の伊東忠太、関野貞、田邉泰、関口欣也、田中淡、張 十慶などの研究者が日本建築様式を溯るために、両国建築様式史の比較研究を行った。しかし、

設計方法に関する比較研究はあまり行われていない。本論は中国中世建築技術書『営造法式』(1100)

と『新編魯般営造正式』(1271~1368)の解読から、アジア比較建築史の視野のもとに、周辺国 へ影響を与えた中世中国の設計技術内容、即ち尺法、配置、木割方法の研究を試みたものである。

第 1 章では、アジアにおける尺法の伝播について溯ることを目指して、『新編魯般営造正式』

における魯般尺法と圧白尺法の設計技術に関する研究を行っている。『新編魯般営造正式』は元 代の工匠が中国南部の建築技術について記した書籍である。現在唯一の版本は寧波の天一閣に所 蔵されている。本の中の「魯般尺法および圧白尺法」と「門および構架寸法」が中心的な内容で ある。「尺法」とは尺の制度、用法、法則などを指す。中国では尺法中数字に対して占う意味が 込められている。その中でも、魯般尺法および圧白尺法は一般的に見られるもので、門と民家の 架構の寸法を決定する際に用いられる設計技術である。本書は魯般尺法と圧白尺法について詳細 に記載されており、特に本書中の「門および民家構架尺寸」は尺法を説明するための具体的な寸 法の例であり、尺法研究に根拠を提供している。本章では、原文解読と寸法分析により、二つの 結果が分かった。まず一つは、魯般尺法の八字は大吉、小吉、小凶、大凶という 4 つの等級を持 ち、八種類の門に応じて、吉凶の結果が変化して、複雑な人生の意味に対応できる卜占になって いることが分かった。さらに、元代福建地方の住宅内の門が住民の吉凶を占う上で重要な意義を 持っていたことが推測できる。二つ目は、魯般尺法と圧白尺法の使用方法についてである。『新編 魯般営造正式』の原文によると、門および民家架構おいて、この二つの尺法を併せて用いると書 かれている。しかし、寸法の検証結果からは、門を造る時のみに魯般尺法と圧白尺法を併せて用 い、民家架構には圧白尺法だけが用いられていることが確認できた。このような原文に記載され ている内容と実際の寸法の適用が合致しない点、さらに、この本の「古」「今」尺法の差異の記載 から、魯般尺法は元代の福建地方の方法で、圧白尺法は外部から転入した方法であると推測した。

なお、設計方法において圧白尺法が建築平面寸法の完数制からの変化をもたらした可能性を示し、

魯般尺法の八字が住宅の門の性格と対応していることも合わせて論述した。

第2章では、宋代建築の組物の影響を検討することを目指して、『営造法式』における小木作と いう模型のような小さな建築の設計技術に関する研究を行っている。『営造法式』は中国北宋(960

―1127)の時代に、建築行政の汚職を防止するために編纂されたいわゆる建築法令書である。この 本の中の小木作には組物に関する九つの小項目がある。その内の斗八藻井、小斗八藻井は室内天井

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の装飾的な造作である。井亭子、佛道帳、牙脚帳、九脊小殿、壁帳、転輪經蔵、壁藏などは模型的 な小建築である。小木作の組物は、大木作(即ち建築)の組物を参照して記述されており、形式が 似ているが、規模は小さい。このように、大木作は別項目の小木作に影響を与えたと考えられるが、

同様に、同時代北方王朝遼、金の組物と海外の高麗、室町の禅宗様組物やさらに元代の建築の組物 にも影響を与えたと考えられる。その同起源の組物からの様々な変遷と変化の差異についてはアジ ア比較建築史における意義あるテーマと考えられる。そのテーマの一環として小木作の組物と大木 作の比較研究は重要である。『営造法式』の小木作の組物に関する研究は、1971 年に発表された竹 島卓一の『営造法式の研究(二)』では全ての小木作について原文と原図によって復元図が描かれ たのが最初である。続いて、1980年には梁思成の『営造法式注釈』では小木作の遺構を参考にして、

原文を現代中国語で注釈して明確に説明した。近年では、2005年に藩谷西・何建中の『「営造法式」

解読』が発表されて、小木作を種類によって分けて説明した。2010年に陳明達の遺作『「営造法式」

辞解』では小木作の原文の名称を項目毎に解説した辞典であり、小木作の実物の写真も入れて、明 瞭に表現している。しかし、それらの小木作の組物に関する研究は小木作の組物と大木作の組物を 比較する重要な視点が欠けている。本章では、中国と日本の先学の研究を踏まえつつ、これまでの 研究には小木作の組物と大木作の組物を設計技術の方法として、比較する重要な視点が欠けている 点を補うものである。小木作に記述されている組物の配置方法を明確にし、大木作の組物を踏襲し た上で、独自な特徴と工夫が見られることを検証した。文章から小木作と大木作の組物の寸法を復 元して、お互いに比較することにより、小木作の組物の寸法や工数や様式や性質などの考察を行っ た。さらに、それらの復元寸法から均等割、組物の「間隔/幅」の比、垂木の「幅/間隔」の比、

組物に対応する垂木数などの比較考察も行った。その結果小木作では大木作の組物を細部様式とし ては踏襲しているが、寸法秩序において全く同じという訳ではなく、独自の工夫と変化がみられた。

小木作の組物の材(肘木の断面の大きさ)は大木作の 1/3~1/7.5 であり、構造性がなく、形式的 に複雑になる傾向があり、組物の正確な均等配置の可能性に道をひらいたものと結論した。

第3章では、宋代建築の設計技術およびその技術の影響を検討することを目指して、『営造法式』

小木作の木割方法に関する研究を行っている。『営造法式』の大木作では中心的な内容は部材の寸 法値は「実寸値」ではなくて、「材分値」で計算されていることである。しかし『営造法式』以外 の文献の中に「材分値」で部材寸法を記述する方法は見つけられなかった。だから、「材分値」の 設計方法は建築法律を確立するために一時期創造された部材寸法の計算方法であり、当時一般的に

通用する設計方法ではなかったと考察した。一方、『営造法式』の小木作部分の設計方法は「材分 No.2

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値」と違って、日本の木割方法と似ている設計方法である。即ち「一寸」という意味は基準寸法の

「1/10倍」である。その基準寸法は全体基準、各層基準、部材基準の3つの種類がある。全体基 準について、40項目の中の8項目は全体の広さを基準として、2項目は全体の長さを基準として、

2項目は平面全体の径を基準とする。それ以外の 28 の項目は全体の高さを基準とする(轉輪經藏 など多層の小建築は各層の高さを基準とする)。部材を基準とするものについては、全体の中に重 要な部材を選択し、それを基準として、部材の髙、深、長、廣、厚などの寸法を求める。以上の基 準寸法(全体、各層、部材)を分割して、部材寸法を決定する木割方法が生まれた理由は、実物よ り小さい設計比例図で、全体(または各層、部材)の寸法を決定した上で、細部の部材はその一部 として寸法を求める時、比例値は実寸値より設計者の考え方が表現しやすいためだと推測した。宋 代の建築の設計技術についての既往研究は、『営造法式』の大木作の「材分値」と遺構の分析が扱 かわれてきたが、公認できる結論はまだ出てこなかった。その小木作の設計方法が同時代の建築に も実用された可能性を検討した。その上に、日本の初期木割において1寸は「1/10倍」という意 味の記述方法は中国から伝来した、即ち、『営造法式』における12世紀の木割方法の影響を受けた 可能性について探求する必要性を論じた。

『新編魯般営造正式』や『営造法式』について中国および日本では多くの研究がなされてきた。

しかし、中日ともそれらは、中国国内の建築史のための史料としてのみ研究される傾向にあった。

しかし、中世当時の中国文化の他国への影響を考えれば、アジア比較建築史の立場から、これら の資料を改めて研究する必要があることを論じている。そのため、尺法、組物の配置、木割方法 を含まれた設計技術の伝播と影響という新しい観点で、これらの二書を再検討して、今後のアジ ア比較建築史に資する研究としてまとめたのが本論文である。以上各章の考察を要約し、結論と した。

No.3

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No.1

早稲田大学 博士(建築学) 学位申請 研究業績書

氏 名 朱 寧寧 印

(2012年5月 現在)

種 類 別 題名、 発表・発行掲載誌名、 発表・発行年月、 連名者(申請者含む)

論文

講演

朱寧寧、『新編魯般営造正式』における魯般尺法と圧白尺法に関する研究、日本建 築学会計画系論文集、第678号、第77巻、2012年8月

朱寧寧、『営造法式』における小木作の組物の配置について-『営造法式』の小木 作に関する研究(その1)-日本建築学会計画系論文集(再査読中)

ZHU Ningning, “On the Water Landscape of Village Xiao Qi” Journal of Xuzhou Institute of Technology, vol.21 NO.6 JUN 2006, pp.81-83

WANG Jin, ZHU Ningning, “Big Problem and Small Problem of Conservation Planning”, ARCHITECTURE &CULTURE, vol.28 NO.6 JUN 2006, pp.66-70

朱寧寧、『新編魯般営造正式』の注釈と研究、日本建築学会大会学術講演梗概集、

日本建築学会、2010年7月、F-2、pp.453-454

ZHU Ningning, “Rating Beam in Chinese and Japanese Traditional Timber Frame”, submitted to International Conference on East Asian Architectural Culture ,Kyoto 2006,pp.І359- І366

参照

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