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博士論文概要書 美術館の教育的作用に関する研究 -感性に着目して-

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博士論文概要書

美術館の教育的作用に関する研究

-感性に着目して-

藤澤まどか

(2)

1.本研究の目的

本研究では、美術館の教育的作用について、感性を育む側面に着目して考察することを 目的とする。

現在、日本の美術館は902館で、各都道府県に複数設置されているため1、館数のみに着 目すれば広く浸透し、身近な施設として存在していると考えられる。しかしながら、実際 に美術館を訪れる人々は限られており、人々の美術館に対する興味・関心の有無や美術館 イメージによって、美術館への“親しみ”が生まれたり、美術館との“距離”が生じたり する。

また、指定管理者制度等の制度的変化や財政的に厳しい美術館の状況を鑑みると、美術 館の役割や美術館の人々や社会への影響とは何か、という問いに対峙しなければ、美術館 の本質や人間存在との関わりが不明瞭となり、美術館が人々や社会にとって不必要な機関 として捉えられる危険性もある。そのため、美術館の役割や人々や社会への影響を明らか にする手がかりとして、美術館の教育的作用に焦点を絞る。

例えば、倉田公裕・矢島國雄が博物館を構成する要素として「モノ(物)、ヒト(人)、

バ(場)」が不可欠であり、「単なるモノ、ヒト、バ」ではないと指摘している2。この指摘 を踏まえると、美術館を複合的・総合的に捉えなければ、美術館に特有の教育的作用も明 らかにできないと考えられる。

本研究では、美術館の教育的作用に焦点を絞るが、「教育的存在としての人間」を考える さいには、「意図的、計画的な狭義での教育だけではなしに、あらゆる場と機会において行 われている無意識的、機能的な教育をも考えなければならない」ことからも3、美術館の教 育的作用は幅広い視点で捉えなければならないと考える。つまり、美術館の教育的作用も

「教義での教育」としてではなく、日常生活や認識のフレームの形成に関与しているため、

人間として生きる行為と密接に関わっている。そのため、美術館を作品や資料だけを取り 扱う機関として捉えるのではなく、人々や社会への影響に注目し、人間形成に関わる機関 として捉えていく。したがって、人間形成の視点も含めながら、美術館の教育的作用を全 体的に捉えることとする。

美術館での教育の活動としては、展覧会に代表される展示活動に加えて、鑑賞教育やワ ークショップ等の取り組みがある。従来から、美術館教育の重要性や教育的作用は認めら れており、主に作品鑑賞の仕方や作品への親近感の形成といった側面が強調されていると 言える。

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しかしながら、美術館活動によってもたらされる教育的作用は、作品や資料にまつわる 内容だけでなく、“美術館”という空間を創出する美術館建築や美術館の周辺環境・周辺地 域とも結び付いているのではないだろうか。美術館は、作品鑑賞のためのバとしての機能 だけでなく、美術館建築からの影響や美術館の周辺環境・周辺地域の関係性やまちづくり といった複合的な要素から成り立っている。そのため、美術館の教育的作用を明らかにす るには、これらの要素を総合的に捉える必要がある。

そこで、美術館の教育的作用を明らかにする視点として、感性を中心に据えて考察する。

なぜなら、感性は、上記の作品鑑賞、美術館建築や美術館の周辺環境・周辺地域の関係性 やまちづくりといった複合的な要素を感じ取れる土台になるからである。感性は、単に作 品鑑賞を円滑に行える基礎として位置付けられるものではなく、自己が他者とどのように 関係しているのかということや日々の生活や学びの内容にも影響を与えるものである。し たがって、美術館の人間形成の側面からも、感性に着目することは大きな意味を持つと考 えられる。しかしながら、管見の限りでは、美術館の教育的作用について感性を中心にし た研究はほとんど見られない。そのため、美術館の教育的作用を作品鑑賞に限定すること なく、総合的に捉え、感性に着目しながら明らかにしたい。

本研究では、美術館を中心に考察するが、博物館法第 2 条第1 項に規定されているよう に、美術館は博物館に含まれる概念である。また、museumや musée等の日本語訳として、

美術館と博物館の両方が使用されているように4、美術館が保有する特性によって使い分け がなされていると考えられる。そのため、美術館のみに関する事柄については“美術館”、

美術館と博物館全体に関する事柄の場合は、“美術館・博物館”と表記する。

2.本研究の意義

美術館に関する現状としては、前述したが、2003年の「地方自治法」の改正によって「公 の施設」に関する指定管理者制度が登場し、2006年度から本格的に導入されたこと5や市場 化テスト等の制度的な変化に加え、公立博物館の予算減や私立博物館の公益法人改革等が ある6。そして、2006年に設置された「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」

で博物館の定義や制度の見直しがなされたことを踏まえると7、美術館も大きな変化に直面 しており、美術館を取り巻く制度的・財政的状況は非常に厳しいと言える。特に、指定管 理者制度に関しては指定の期間が設定されたことから、指定管理者が変更する可能性が生 じ、施設・機関の継続性を保つことが課題になる。そのため、美術館活動の継続性を保つ

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には、美術館活動の根幹を支える基本的理念の確立や美術館・博物館学の定着が不可欠と なる。

美術館活動の基本的理念の確立には、美術館が作品や資料だけのためにあるという捉え 方ではなく、人間との関わりの中で成立する活動として把握することが必要である。この ような視点がなければ、美術館は、人々や社会から隔離された不必要な機関として捉えら れる可能性もある。そのため、本研究で美術館の教育的作用を明らかにすることは、美術 館活動の基本的理念の確立に寄与すると考える。美術館の基本的理念の確立に向けては、

その前提として1951年に制定された博物館法を確認する必要があろう。博物館法第2条第 1 項では、博物館の定義として、「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収 集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供 し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせ てこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関」8であることが規定されて いる。

つまり、美術館の基本的理念の確立には、美術館の基礎的活動である、収集、保管、調 査研究、展示・教育等の側面を踏まえなければならない。美術館の基礎的活動を通して、

美術館の目的の一つである「人類の文化遺産である美術作品の美術的・歴史的な価値を解 明して、これまでの美術・文化を継承するとともに、新しい美術・文化の創造に貢献する こと」9も実現できると言える。したがって、美術館は、現代の人々や社会に影響を与える だけでなく、作品や資料を通して過去と現在と未来をつなぐ役割を担っているのである。

しかしながら、過去、現在、未来の時間的なつながりを支えているのは、作品や資料と向 き合う一人ひとりの感性であり、感性を育むには、人々や社会の美的判断や美的・文化的 価値の継承による影響がある。そのため、作品や資料の鑑賞による効果だけでなく、作品 鑑賞のバとしての展覧会も人間形成に関与している。

以上のことから、美術館活動を作品や資料に関する知識の獲得に寄与するものと捉える だけでは、美術館の教育的作用は明らかにできないと言える。前述のように、美術館や美 術館活動が日常生活や学びと密接に関わっており、美術館は様々な関係性の中に存在して いることを忘れてはならない。具体的には、展覧会を通して、鑑賞者の個人的認識に影響 を与えるとともに、学芸員や作家の視点が反映されるため、社会的認識をかたちづくるバ にもなる。そのため、美術館の教育的作用を考察することは、美術館や美術館活動が、人々 や社会にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることにもなろう。その結果、

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美術館の社会的意義や役割を明確にできるだけでなく、本研究が美術館・博物館学の定着 に関しても、基礎的研究として貢献できるのではないかと考える。

3.先行研究と本研究の位置付け

美術館に関する先行研究の中で、思想や理論を取り扱った理論的研究については、倉田 公裕・矢島國雄『新編 博物館学』(6版)、倉田公裕『博物館の風景』、松宮秀治『ミュージ アムの思想』等がある10。特に、『新編 博物館学』(6版)や『博物館の風景』では、博物館 の歴史や基礎的活動に加えて、思想的背景も踏まえた理論研究が行われ、『ミュージアムの 思想』では、コレクションを中心とした思想や制度等について政治的観点から述べられて いる。これらの研究は、非常に重要な研究であるが、博物館の教育的作用に関して感性を 中心に分析したものではない。

次に、美術館・博物館の歴史的研究については、棚橋源太郎「博物館・美術館史」、椎名 仙卓『図解 博物館史』(改訂増補)、椎名仙卓『日本博物館発達史』、高橋雄造『博物館の 歴史』等があり11、これ以外にも歴史的な研究は数多く、博物館の成立過程や歴史的背景を 明らかにするさいに重要であると言える。

そして、美術館・博物館の実践的研究については、並木誠士他編『現代美術館学』や加 藤哲弘他編『変貌する美術館-現代美術館学II-』のように12、美術館に特化した研究があ り、美術館の基礎的活動に加え、美術館の事例や展覧会を取り上げて実践活動についても 述べている。しかしながら、『現代美術館学』では、「美術館教育活動の展望と課題」や「社 会教育施設として」の美術館について触れており13、『変貌する美術館-現代美術館学II-』

では、「学校教育における鑑賞学習と美術館の連携」について述べられているが14、人間形 成のプロセスや感性に主眼を置くものではないと考えられる。

美術館・博物館の実践的研究の中でも、ミュージアム・マネージメントに注目したもの として、大堀哲他編『ミュージアム・マネージメント 博物館運営の方法と実践』、フィリ ップ・コトラー&ニール・コトラー(Philip Kotler & Neil Kotoler)、井関利明・石田和晴訳

『ミュージアム・マーケティング』等がある15。また、『ミュージアム・マネージメント 博 物館運営の方法と実践』では、「ホスピタリティと利用者満足」16に関して感性的要因につ いて触れられているが、教育活動・ワークショップ等に関して感性は中心的に取り上げら れてはいない。同様に『ミュージアム・マーケティング』では、ミュージアムの使命(ミ ッション)・利用者・資金調達・マーケティング等の側面から、詳細な研究が行われ、「ミ

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ュージアム経験の 6 つのタイプ」の中で感覚的知覚といった事柄にも触れてはいるが、人 間形成や感性を主軸にしたものではない。

また、美術館建築に関する研究については、並木誠士・中川理『美術館の可能性』、Victoria Newhouse, Towards a New Museum、Raul A. Barreneche, New Museum等があり17、来館者研究 の面で重要であるだけでなく、物理的条件としての博物館の建築物に注目したものとして、

ジョン H. フォーク&リン D. ディアーキング(John H. Folk & Lynn D. Dirking), The Museum

Experience等が挙げられ18、非常に示唆に富む研究であると言える。

上記のことを踏まえると、歴史的・実践的な側面からの研究に比べて、思想的・哲学的 な側面からの研究は少ないと言え19、明治期以来の日本の美術館の課題にも結び付くもので ある。したがって、本研究では、美術館を取り巻く歴史的・実践的側面を踏まえつつも、

美術館を支える理論構築にむけて、思想的・哲学的側面も取り入れながら、人間形成に関 わる側面や感性を主軸に考察を行うこととする。本研究は、美術館を支える基本的理念や 思想の側面を考察するものであり、美術館に関する思想的・哲学的側面の研究促進に寄与 すると考える。そのさい、理論と実践が乖離しないように、美術館に関する歴史的側面や 具体的な美術館の事例を挙げながら考察していくこととする。

前述のように、美術館の教育的作用を明らかにする視点として、感性を中心にし、その 内容を明らかにしていることが本研究の独自性であると考える。美術館の教育的作用に関 しても、美術教育や美術館教育での鑑賞教育にとどまらず、感性を日常生活との関連や人 と人との在り方にまで結び付けて理論的検討を行うだけでなく、美術館建築やまちづくり との関連にも着目し、社会教育や生涯教育・生涯学習の観点も取り入れながら総合的に考 察していく。このように、美術館や美術館の教育的作用を総合的に捉えていることから、

美術館の基礎的研究として、美術館・博物館学の定着にむけて貢献できると考える。

4.本研究の視角・方法

本研究では、美術館の教育的作用について感性に注目する前提として、歴史的に美術館 がどのように意義付けられ、またどのような役割を担ってきたのかを明らかにする。美術 館の歴史的変遷を踏まえることで、日本の美術館の問題点や課題が抽出されるだけでなく、

解決方法を模索したり、今後のより良い美術館活動に活かせたりすると考える。

特に、明治期以降の美術館の在り方に関しては、“美術館とは何か”、“なぜ美術館が必要 なのか”という美術館の基本的理念の確立に寄与する思想的・哲学的考察がそれほど盛ん

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ではないことから、美術館の根源的要素が不安定になり、美術館の存在意義や社会的機能 を明示できない原因になっていると考える。その結果、人々が美術館活動に対する理解を 深めにくく、美術館が社会の中で不必要な機関として捉える原因の一つになっていると言 える。

このようなことから、第 1 章で美術館の歴史的変遷について触れることとする。美術館 の成立過程に注目するさいに、ギリシア時代から連なる歴史的側面や諸外国からの影響、

日本での美術館・博物館の成立について整理する。美術館の歴史的な成立過程の中に、作 品の成立や美的観点の形成を明らかにする契機が見出せるとともに、日本の美術館の課題 や問題点の理解に寄与すると考える。特に、閉鎖的な美術館イメージの払拭と美術館活動 の内容の明示には、美術館の教育的作用を明らかにし、一人ひとりに関係する事柄である ことを明らかにする必要がある。

そこで、本研究では、美術館の教育的作用を明らかにするさいに、「感性」、「作品」、「美 術館建築」、「まちづくり」の四つの柱を据えて考察する。

美術館は「美育の機關施設」の一つとして挙げられているように20、“美”と密接に関わ っている。そのため、「感性」を取り上げるさいにも、美との関連を視野に入れる。また、

美術館で「感性」が育まれる活動としては、美術館での展覧会や作品鑑賞といった美術館 教育の側面と切り離せないため、「作品」についても考察を行う。「感性」に関しては第 2 章、「作品」に関しては第3章で理論的検討を行う。

「感性」の理論的側面については、美学の中での美的人間形成に着目しながら、美術館 と人間形成の手がかりを探る。特に、カント(Immanuel Kant, 1724-1804)の『判断力批判』

21やシラー(Johann Christoph Friedrich von Schiller, 1759-1805)の『美と芸術の理論-カリア ス書簡-』22といった美学理論をもとに考察していく。そして、「感性」が文化的価値の継 承や学校での美術教育とも関わっていることに注目し、美術館活動と引き付けながら教育 的作用を明らかにする。

「作品」に関しては、美術館で展示される作品の教育的作用への影響を考察する前提と して、“作品の成立”に注目する。そのさい、ウンベルト・エーコ(Umberto Eco, 1932-)『開 かれた作品』23や佐々木健一の『作品の哲学』24といった理論を基礎に考察する。作品の成 立には、他者の存在、つまり、鑑賞者の存在が不可欠であるため、特に作品が他者に鑑賞 されることによって生じる教育的作用に注目する。また、作品を展示活動の中で捉える場 合、鑑賞者は、感性や感覚を駆使しながら、リアリティを感じたり、「作品」鑑賞や「作品」

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解釈を通して自己の判断基準を確立したりする。

しかしながら、自己の判断基準は個人的な価値観や感性や感覚のみで成立するのではな く、社会的に形成された価値や作品を制作した作家や展覧会を企画した学芸員の視点から も影響を受けている。そのため、鑑賞者の判断基準は可変的であると言え、この判断基準 をもとに鑑賞者は物事の認識のフレームを形成していく。したがって、美術館での展示活 動は、人々(鑑賞者)の認識のフレームに影響を及ぼし、個人的な価値観や感性や感覚を 変容させる契機を持つ。この点が、美術館で展示される作品や展覧会の人間形成に関する 作用でもあり、留意すべき事柄でもある。このように、人々(鑑賞者)の認識のフレーム の形成にも、「感性」が関与していることに留意しながら考察を行う。

そして、美術館での来館者の鑑賞行為や体験の内容は、単に「作品」に限られたもので はなく、美術館の物理的要素である「美術館建築」や美術館の周辺環境・周辺地域や「ま ちづくり」の側面とも密接に関わっている。美術館は作品以外の要素からも成り立ってお り、美術館の教育的作用を全体的に捉えるうえでも、「美術館建築」と周辺環境・周辺地域 との関係構築にむけての「まちづくり」を取り上げる。「美術館建築」については第4章で、

「まちづくり」については第5章で実践的側面を加えながら考察する。

「美術館建築」に関しては、美術館と美術館建築との関係性に注目する。特に、“美術館”

を成立させる物理的要素である美術館建築が人々に与える影響について、来館者調査やイ ンタビュー等の調査を含めながら明らかにする。美術館建築は、美術館の周辺環境・周辺 地域との関係性によっても影響を受けており、美術館の来館者や周辺地域の住民や他の 人々への影響を考察するために、酒田市の美術館の事例や豊田市美術館等の事例を挙げ、

感性への作用に注目する。

「まちづくり」に関しては、美術館と周辺環境・周辺地域との関係構築にむけた視点か らインタビュー等の調査をもとに実践的観点から考察する。そのさい、金沢21世紀美術館、

ベネッセハウス ミュージアム、地中美術館等の事例を挙げながら、地域再生と感性を中心 とした美術館の教育的作用の関連性を考察する。そして、美術館に関するネットワークの 形成や文化財を中心としたまちづくりに注目し、美術館と美術館周辺の地域住民や美術館 の周辺地域と関係構築の観点から、地域の固有性と感性との関わりにも触れる。

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5.本研究の構成

本研究の構成は、以下のとおりである。

第 1 章では、美術館の成り立ちについて歴史的側面から考察する。諸外国の美術館・博 物館の変遷の中でも、ミュージアムの語源であるギリシア時代のムセイオンに注目する。

ギリシア時代のムセイオンの考察のさいに、“学芸と調和の観念”や“記憶”との関わりに 注目し、現代の美術館・博物館との関連性を明らかにする。次に、ギリシア時代のムセイ オンに関する考察を踏まえつつ、海外の美術館・博物館の変遷に注目する。特に、コレク ションと鑑賞行為の成立過程やイギリスでの公共博物館、フランスでの公共博物館、アメ リカの美術館での教育活動に至る背景を歴史的に考察し、現代の美術館・博物館の基礎を 明らかにする。そして、日本での美術館・博物館の変遷については、主に明治期以降を中 心にして、日本の美術館の課題や問題点を明らかにする。

第2章では、「感性」を中心とする。そのさい、感性の定義について整理し、美学の観点 を取り入れながら感性と美的判断との関連性を明らかにするとともに、美術館活動の中で の感性の重要性についても考察する。美術館や美術館活動について考えるさいに、作品や 資料との関わりだけでなく、自然に関する視点も重要である。それは、自然と美が密接に 関わっており、風景画等の作品に代表されるような自然と切り離せない作品も多々ある。

したがって、作品鑑賞を通して形成される自然観に注目し、美的経験による“自然に対す る認識”の形成過程を明らかにする。そして、自然観の形成とも結び付くものであるが、

美術館にまつわる価値の継承に注目する。それは、美術館建築や作品鑑賞を通して体現さ れた歴史的・美的・文化的価値の継承と感性との関わりについて明らかにする。このよう なことを踏まえて、美術館教育と学校の美術教育との連携について注目する。特に、「表現」

と「鑑賞」をつなげて考えることで、美術教育と美術館教育とが結び付き、感性を育むこ とや世界観の形成やコミュニケーション能力の獲得にむかう側面を明らかにする。

第 3 章では、第2 章での考察をもとに、展示活動を中心とした「作品」との関わりに注 目する。そのさい、作品の成立に注目し、作品鑑賞による他者の感得や作品解釈の多様性 による教育的作用を考察する。多様性というキーワードを美術館の教育的作用に引き付け て考えると、グローバリゼーションの中で美術館が対峙する多様性の問題にもつながる観 点である。そこで、作家の中でも、イサム・ノグチに注目し、作品制作によって生み出さ れる作用と美術館の役割を考察する。そして、美術館の教育的作用の中でも作品から生じ る影響を考察するために、ヴァーチャル化が進む中での作品鑑賞によるリアリティの感得

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に注目する。作品による展覧会では、作品を鑑賞するだけでなく、鑑賞者の認識のフレー ムの形成にも関わっている。それは、作品を制作した作家や展覧会を企画した学芸員の視 点が含まれているため、鑑賞者の個人的認識に影響を及ぼし、社会的認識にも影響を与え る。したがって、美術館での展示活動は、様々な人々の認識を変容させる契機でもあるた め、展示活動と公共性の問題にも触れながら、美術館の教育的作用について考察する。

第 4 章では、美術館を成立させる物理的要素である「美術館建築」について述べ、美術 館スタッフや来館者、作品や資料等を含む空間全体に注目する。まず、美術館と建築の歴 史的関わりから、美術館活動の中での美術館建築の重要性を明らかにすし、美術館建築が 美術館イメージに与える影響にも注目する。次に、美術館活動の中での美術館建築の重要 性を明らかにするために、美術館建築や存在する“空間・場所”の意味を教育的作用との 関わりから分析する。そして、“美術館”という“空間・場所”をかたちづくる美術館建築 の重要性について、来館者調査を基礎に明らかにする。そして、美術館建築の成立を周辺 環境・周辺地域との関係性から考察し、美術館建築と周辺地域との調和や美術館建築とラ ンドスケープ・デザインとの相互作用が感性に与える影響を考察する。

第 5 章では、美術館が実際に建てられている周辺地域に着目し、周辺環境・周辺地域と の関係構築にむけた「まちづくり」の観点から考察する。特に公立美術館の場合は、地域 や地域の人々との関わりを築くことは非常に密接であり、私立であっても地域住民からの 理解があることで、美術館活動を円滑に行うことができる。また、現在の美術館の置かれ た厳しい状況を乗り越えていくためにも、人々の理解や支援を得ながら活動を行うことが 必須である。まず、美術館を中心とした地域の魅力の創造に注目するが、美術館がまちづ くりに寄与する側面を明らかにし、美術館の周辺地域や周辺地域の住民への影響を分析す る。次に、美術館に関するネットワークに注目し、人々や作品や風景や文化施設・機関と いった要素が重層的につながることで、地域の魅力を生み出し、まちづくりに寄与する側 面を考察する。そのさい、地域の変容と美術館の関連性を明らかにするとともに、人間形 成に与える影響や公共性の視点の必要性にも着目する。そして、美術館とまちづくりの関 わりについて、歴史的な文化財の活用に注目する。特に、美術館活動の保管機能と結び付 けながら、歴史的要素と創造性の連関を考察し、美術館での教育的作用の内容や時間的・

空間的な側面からの公共性との連関について明らかにする。

本研究の目次は以下の通りである。

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【目次】

序章

第1章 美術館の歴史的変遷 第1節 美術館・博物館の起源

第1項 ギリシア時代のムセイオンとの関わり

(1)美術館・博物館の起源とムセイオン

(2)ムーサイとムセイオン

(3)ムセイオンの機能

第2項 ギリシア時代の学芸と調和の観念

(1)パイデイアーとテクネー

(2)ムーサイと調和

(3)美と調和

第3項 ムセイオンと記憶 結

第2節 海外の変遷 序

第1項 コレクションと鑑賞行為

第2項 イギリスでの近代博物館と公開性

(1)イギリスでの公共博物館の成立と公開活動

(2)公開活動に至る社会的背景

(3)公開性と展示活動との関連

(4)イギリスの近代博物館の特徴 第3項 フランスでの公共美術館の登場

(1)百科全書派との関わり

(2)公教育の登場

(3)ルーヴル美術館の開館

第4項 アメリカの美術館での教育活動

(12)

(1)地域の拠点としての美術館・博物館

(2)教育活動に対する視点

(3)美術館活動や機能の拡大

(4)アメリカの美術館での教育活動の特徴 結

第3節 日本での変遷 序

第1項 明治期以降の美術館・博物館の機能

(1)近代化との関連

(2)保管機能の強調

第2項 博物館法制定以後の美術館・博物館 第3項 生涯学習と美術館の関連

(1)地域との関わり

(2)学校教育との関わり

第4項 美術館に対するイメージの形成 結

第2章 美術館と感性 第1節 美を中心に

第1項 美学の中での感性の位置付け 第2項 美的判断と感性

第3項 美的感性と調和 結

第2節 感性と自然美 序

第1項 美と自然の関係 第2項 自然と作品 (1)風景画の成立 (2)作品鑑賞と自然観

(13)

第3項 美的経験と“自然に対する認識”

(1)関係性の感得

(2)調和とバランス感覚 結

第3節 文化的価値の継承 序

第1項 美術館の保管活動と文化的価値 第2項 文化財の見直し

(1)文化財と文化的価値の問題 (2)展示方法の工夫

(3)美術館建築としての文化財の利用 第3項 鑑賞を通した価値の継承

(1)創造性の涵養 (2)学びとの交差 第4項 歴史性の感受

第5項 公共財としての認識の芽生え 結

第4節 美術教育との関わり 序

第1項 美術館教育と美術教育 第2項 美術館教育と美術教育の接点

(1)学習指導要領の中での美術館・博物館の位置付け

(2)美術教育の場としての美術館

第3項 「表現」と「鑑賞」の基底となるもの

(1)感性を育む

(2)世界観の形成

第4項 コミュニケーション能力の獲得

(1)自己と他者・社会とのつながり

(2)他者を認める視点 結

(14)

第3章 美術館と作品 第1節 作品の成立

第1項 作品の成立と鑑賞行為

(1)作品の定義

(2)作品の自律性と鑑賞行為 第2項 作品の多義性

(1)作品鑑賞と他者

(2)作品解釈の多様性

第3項 コミュニケーションの生起 第4項 歴史性との関連

第2節 作家と作品の関わり 序

第1項 グローバリゼーションと美術館 第2項 アイデンティティの葛藤 第3項 作品制作と葛藤の克服

(1)作品制作とカタルシス

(2)作品制作のキーワードと作品 第4項 自然との関わり

(1)日本庭園と空間認識

(2)自然の認識 結

第3節 作品鑑賞とリアリティの感得 序

第1項 ヴァーチャル化とリアリティの感得 第2項 作品鑑賞と身体の関わり

第3項 展覧会・作品の事例

(1)エルネスト・ネト

(2)鈴木理策

(15)

(3)ピピロッティ・リスト

第4項 “包まれている”という感覚の生起 結

第4節 作品による展示活動 序

第1項 展示活動と認識のフレーム 第2項 展示活動と社会のコミットメント 第3項 鑑賞することとフレームの形成 第4項 アイデアの源としての展示活動 結

第4章 美術館と美術館建築 第1節 美術館建築の意味

第1項 美術館と美術館建築の関係

第2項 美術館イメージの変遷と建築的要素 第3項 美術館建築の意味の変容

(1)美術館建築とインターナショナル・スタイル

(2)1960年代以降の美術館建設と建築家との共同 第4項 美術館の展示空間

(1)ホワイト・キューブの出現

(2)サイトスペシフィックな表現

(3) 普遍性と固有性をつなぐ“時間性”

第2節 “空間・場所”の影響力 序

第1項 場所と人と人との関係 第2項 場所と関係性

(1)場所の概念

(2)場所とコミュニケーションの生起

(16)

第3項 来館者調査の概要

第4項 展覧会に関する来館者調査の結果

(1)来館の動機

(2)来館のきっかけとなった情報

(3)展覧会の感想・注目した作品

(4)作品中のモデルに関して

(5)今後の展示への希望

第5項 美術館に関する来館者調査の結果 (1)美術館全体で印象に残ったこと (2)今後のMIMOCAの利用に関して (3)心に残る美術館での体験

MIMOCA来館者調査資料

第3節 美術館建築と場所(周辺地域)の関わり 序

第1項 美術館と周辺地域の関係

第2項 周辺地域との調和に関する美術館の事例

(1)土門拳記念館

(2)酒田市美術館

(3)本間美術館

(4)酒田市の文化が育つ土壌・歴史 第3項 美術館と自然的要素

第4節 美術館建築と周辺環境 序

第1項 美術館と周辺環境の連関

第2項 美術館とランドスケープ・デザイン

(1)ランドスケープ・デザインの視点

(2)ランドスケープ・デザインと景観の認識

第3項 美術館のランドスケープ・デザインによる影響

(17)

(1)美術館の周囲のデザイン

(2)美術館の周辺環境の活用

(3)屋外の作品との関わり

第4項 ランドスケープ・デザインを通した自然へのまなざし 結

第5章 美術館とまちづくり

第1節 美術館の周辺地域への影響 序

第1項 美術館と周辺地域の変容 第2項 美術館活動とまちづくり

第3項 まちづくりに関する美術館の事例

(1)金沢21世紀美術館

(2)ベネッセハウス ミュージアム

(3)地中美術館

第4項 “開かれた機関”としての美術館 第5項 “関係性”を考慮に入れた美術館活動 第6項 美術館の独自性の創出

第2節 美術館に関するネットワークの形成と人々の関わり 序

第1項 美術館活動への参加とネットワークの基礎 第2項 美術館を中心としたネットワークとまちづくり 第3項 美術館に関するネットワークの多層性による効果

(1)瀬戸芸2010に関する美術館とネットワーク

(2)小布施町のまちづくりと美術館 結

第3節 歴史的な文化財の活用 序

第1項 美術館と保管機能

(18)

第2項 文化財保護の観点 第3項 美術館と歴史的要素

(1)美術館建築として活用している場合

(2)作品や資料が歴史的要素を持つ場合 第4項 歴史的要素と創造性

第5項 保管機能と公共性 結

終章

脚注

6.各章での考察の概要

本研究では、美術館の教育的作用について、「感性」に着目して考察を行った。そのさい、

美術館の教育的作用を「作品」鑑賞に限定することなく、「美術館建築」、周辺環境・周辺 地域との関係構築にむけた「まちづくり」との関わりを視野に入れ、複合的に考察してい ることが本研究の特徴である。美術館で展示される作品や資料が人々に与える影響は多大 であるが、美術館の教育的作用は、作品鑑賞の中で培われるものだけでなく、美術館建築、

周辺環境・周辺地域との関係やまちづくりとの関わりから生じ、そのような関わりの中で 一人ひとりの感性も豊かに育まれていくのである。

そのため、美術館活動を様々な関係性の中で成立するものと認識しなければ、美術館が 人々や社会から乖離した機関として認識されたり、不必要な機関として捉えられたりする 原因となる。このようなことを避けるためにも、「感性」を中心として、「作品」、「美術館 建築」、「まちづくり」によって生じる美術館の教育的作用の内容を明らかにすることが重 要であると考える。

以下、第1章から第5章までの考察をまとめる。

第 1 章では、美術館・博物館の成立過程で生じた美術館・博物館のイメージや役割を検 討した。ギリシア時代のムセイオンは、現在の美術館・博物館と同様の活動ではなかった

(19)

にせよ、美の基準(調和)に影響を与えていることや、記憶との結び付きによって美術館・

博物館の保管活動との関連を見出することができた。

中世になるとコレクションの形態が定着したが、これに伴って鑑賞行為の原型が成立す ることになった。当時は、個人的な観点からコレクションを“鑑賞”することが中心であ ったが、徐々に鑑賞行為が様々な人々に開かれることによって、イギリスでの公共博物館 の登場やフランスでの公共美術館の登場につながったと考えられる。そして、アメリカで の美術館・博物館の活動に関しても、博物館教育の重要性が理解できるとともに、展示す る作品のジャンルの拡大や美術館建築への注目によって、現代の美術館・博物館活動にも つながるキーワードが出現した時期であると考えられる。

このような欧米諸国の影響を日本の美術館・博物館も影響を受けることになるが、日本 での美術館活動の問題点や課題としては、保管機能の強調、「ハコモノ」の整備の重視、学 芸員やエデュケーター等の美術館スタッフの専門性の確立の必要性が抽出された。特に、

保管機能の強調によって、作品や資料を保管するための倉庫として認識され、「ハコ」を造 ればよいという認識から「ハコモノ」の整備の重視につながっていったと考えられる。し かしながら、美術館の施設としての美術館建築の整備や機能が不必要というわけではなく、

美術館建築が人々や周辺地域にもたらす影響を鑑みると、美術館建築の機能や役割を人々 や美術館活動と結び付けながら再考する必要がある。したがって、美術館建築が与える教 育的作用を提示することで、単なる「ハコモノ」ではなく、教育的作用を持つ重要な要素 としてその意味も変容すると言える。そのため、美術館活動を総合的に捉える必要性が見 出せるとともに、美術館の教育的作用を「感性」を中心に考察する視点として、「作品」、「美 術館建築」、「まちづくり」のキーワードが見出せる。

これに加えて、作品や資料、美術館建築の意味や役割を伝えていくのは、学芸員やエデ ュケーター等の美術館スタッフであり、その内容を人々に伝えることで、美術館イメージ も変容していくと考えられる。また、教育・展示活動のような公開活動を積極的に行い、

保管機能以外の側面を理解できるバを生み出すことで、美術館が「ハコモノ」としてでは なく、美術館建築や周辺環境・周辺地域との関係性を含みながら成立する複合的な人間形 成のバであることが伝わっていくのではないかと考える。

また、学芸員やエデュケーター等の美術館スタッフの専門性の確立にむけても、美術館 を総合的に捉え、教育的作用を人々や社会に提示することが必要であると考える。このよ うな取り組みを継続して行うことで、日本の美術館の問題や課題も徐々に解決に向かうと

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考えられる。

第 2 章では、第1 章で明らかになった日本の美術館の問題点や課題の解決を踏まえなが ら、美術館と「感性」の関わりについて考察した。特に、美を中心に考察すると美的判断 に感性が関与していることが見出せた。美的感性を育むことによる人間形成の内容につい ては、調和を感得し、自己を取り巻く人々や環境に対するまなざしを育むこと、様々な関 係性を感得できる姿勢が培われること、作品鑑賞を通して理解した美や歴史性を通して新 たな創造に向かうことが挙げられる。

美術館では、作品鑑賞を通して美的感性を育む契機が含まれるだけでなく、作品の中に 溶け込んだ“自然”による美的感性への影響も看過できない。例えば、風景画に代表され る作品を鑑賞することによって、自然観の形成に関与することを鑑みると、美を中心とし た感性の作用と同様に、関係性の感得や調和とバランス感覚を育むことに結び付く。その ため、美術館は美的なものだけでなく、自然に関する事柄と密接に関わっており、美術館 活動の中で培われる美的感性や自然観の形成は、美術館の教育的作用の中でも大きな柱に なると考えられる。

また、美的感性や自然観は、美術館活動の中では、作品や資料といった文化的価値によ って継承される側面があるため、収集、保管、調査研究、展示・教育活動等の美術館の基 礎的活動を通して形成される側面がある。つまり、美的感性や自然観は、一人ひとりの感 性や感覚といった個人的要素だけではなく、作品や資料に含まれる美的価値や歴史的価値 や文化的価値から成立する社会的要素が絡み合っていると言える。そのため、美術館での 展覧会は、個人的要素と社会的要素が交差するバとして位置付けられる。つまり、美術館 では作品や資料の収集、保管、調査研究だけでなく、展示・教育活動等を通して美的価値 や歴史的価値や文化的価値を継承する側面がある。さらに、作品や資料だけでなく、美術 館建築自体が文化的価値を保持している場合もあるため、美術館での価値の継承は多岐に わたると考えられる。

特に、文化的価値は単に人々に継承されるだけでなく、その価値をもとに創造活動に向 かう場合もあるため、創造性の涵養や学びとの交差や歴史性の感受が見出せる。そのため、

感性との関わりで考えた場合にも、作品や資料や美術館建築といった文化財を通して創造 性を育み、人間を歴史的存在として捉える基礎になるため、それらの要素を公共財として 捉える視点も欠かせない。

前述のように、作品や資料が保有する美的価値や歴史的価値や文化的価値は、人々の鑑

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賞行為と不可分である。したがって、鑑賞行為の成立を考える前提として、美術館教育と 学校での美術教育に注目した。美術館教育と美術教育の接点となるのが「鑑賞」であり、

1988 年以降の美術教育の「表現」重視の傾向から「鑑賞」教育の重視へと転換したことに よって、美術館と学校との連携が重要な課題となった。しかしながら、「表現」と「鑑賞」

は別個のものではなく、感性を育み、世界観を形成するという側面では通底している。そ のため、「表現」と「鑑賞」は相互に影響を与えており、自己と他者・社会とのつながりを 意識したり、多様性を感得したりする作用もある。そのため、“つながり”と“多様性”の 理解を土台として、コミュニケーション能力の獲得にも結び付くと言え、その基底に感性 を育むことがある。

第 3 章では、感性を育む要素の一つとして「作品」に着目した。まず、作品の成立と鑑 賞行為について整理し、作品が保有する“多義性”が、“他者”や“作品解釈の多様性”の 存在に起因していることを考察した。上記の“他者”や“作品解釈の多様性”の存在は、

作品鑑賞のさいに、鑑賞者が作品や作品を制作した作家との対峙から生じ、作品解釈や作 品の体験を通して両者がコミュニケーションを行う側面を含むと言える。このコミュニケ ーションを介して自己(鑑賞者)と他者(作品や作家)とがつながるため、美術館での鑑 賞行為によって形成された視点が、実生活にも影響し、自己と他者とのつながりに意識を 向ける契機となる。その一方で、同じ作品を鑑賞したとしても、鑑賞者それぞれの観点で 作品解釈を行うため、多様性が生じる側面があり、鑑賞者間のコミュニケーションも発生 すると言える。したがって、美術館での作品鑑賞を通して、“自己と他者との共生”の観点 を示唆する側面が見出せた。

また、作品や作家と鑑賞者の間に生じるコミュニケーションによって、現在と歴史的要 素とがつながる側面もある。美術館での展示活動を通して、過去と現在をつなぐだけでな く、そのつながりを基礎に未来ともつながっていくと言える。このように、美術館の教育 的作用は、時間的側面からも影響を受けており、様々な価値観が交差することによって、“多 様性”を認め合う姿勢をかたちづくる契機となり、作品や資料に含まれる歴史性には、時 間的な観点からみたコミュニケーションが生じるため、鑑賞者の感性にも影響を与えるこ とが理解できる。

次に、「作品」は作品を制作した作家と切り離せないため、イサム・ノグチを取り上げて 作品制作の面から考察した。グローバル化が進み、高度情報化社会となった現代では、多 様性を感じる機会が増加している。このような社会的状況の中では、“他者との共生”が大

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きな課題となる。特に、美術館での展覧会では様々な作品が展示されるため、多様な価値 観が交差するバと捉えられる。前述の作品が保有する“多義性”にも関連するが、作品鑑 賞の多様性を認め合うことは、人々の“多様性”を認め合う姿勢と通底している。このよ うな姿勢は、グローバル化社会の中で欠かせないため、美術館での人間形成の側面として も重要な位置付けにあると言える。また、多様性を認めつつ、包括的に捉える視点も忘れ てはならない。イサムの作品にも普遍的要素が含まれていたが、作家の表現である作品は、

作品鑑賞を通して人々に伝わるため、作品に潜む多様性や普遍性を感じられるか否かにも

「感性」が関わっているのである。

そして、作品鑑賞に関しては、多様性や普遍性との関連やコミュニケーションの生起と いった側面だけでなく、リアリティの感得を可能にさせる側面もある。特に、エルネスト・

ネトや鈴木理策やピピロッティ・リストの作品は、展示空間自体が作品となって、鑑賞者 の身体感覚を鋭敏にさせる効果が見出せた。このようなことから、作品鑑賞は単に視覚的 な作用に限られた行為ではなく、美術館の展示空間と一体となって成立するものであるこ とが明らかになった。その結果、リアリティの感得と結び付き、感覚を研ぎ澄まし、身体 感覚を駆使して作品を鑑賞することになり、感覚を鋭敏にすることで、感性も豊かになっ ていくと言える。

また、展覧会に代表される作品や資料の展示活動には、学芸員の価値判断が関与してい るため、展覧会を通して人々(鑑賞者)や社会の認識のフレームが形成されることも明ら かになった。そのため、美術館での作品鑑賞の影響は、美術館での作品鑑賞の中で完結す るものではなく、日常生活を送り、学びの過程にも密接に関わっていることが理解できた。

このようなことから、美術館の教育的作用は、美術館活動の中にとどまるものではなく、

様々な側面に影響を及ぼしていると言える。

第 4 章では、美術館と「美術館建築」に注目し、美術館の物理的要素である美術館建築 の教育的作用を考察した。まず、美術館と美術館建築の関係性を整理し、美術館イメージ との関連性を指摘した。また、来館者調査の結果から、鑑賞者は美術館で作品だけでなく 展示空間も認識していることが明らかになり、“美術館”という“空間・場所”をかたちづ くる美術館建築は、来館者の美術館での体験にも直接影響していることが理解できた。さ らに、美術館建築は周辺地域との調和を実現する手立てとなったり、美術館建築とランド スケープ・デザインが相互作用したりする側面があるため、来館者の意識を美術館から美 術館を取り巻く周辺環境・周辺地域にむける作用がある。特に、美術館建築とランドスケ

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ープ・デザインが関わることで、周辺環境・周辺地域の見方を示す側面があるため、来館 者や地域住民や他の人々に自然へのまなざしを意識させ、自然環境の捉え方にも影響を及 ぼすと考えられる。

第 5 章では、美術館と「まちづくり」に関して、周辺地域の人々とのつながりによる地 域再生や美術館に関するネットワークの形成や文化財を中心にしたまちづくりへの影響に 注目した。そのさい、作品や美術館建築を介したまちづくりへの影響だけでなく、美術館 周辺の地域住民が美術館活動に参加することによって生じる作用の重要性が明らかになっ た。つまり、美術館活動を中心に、人と人とが結び付いたり、地域の魅力を創出したりす る側面があることから、地域再生に寄与することが見出せる。

そのさい、美術館を取り巻くネットワークの影響も看過できず、地域の様々な要素が絡 み合って美術館活動が成り立っていることも忘れてはならない。このネットワークには、

地域の特性や自然環境を中心としたネットワークやインフラストラクチャー等のネットワ ーク、美術館や作品(アート)やイベントを中心としたネットワーク、人と人とをつなぐ ネットワーク等が挙げられる。そのため、美術館に関わるネットワークは、美術館の周辺 環境・周辺地域に重層的に張り巡らされていると言え、人々が美術館活動に参加すること によって、美術館の周辺環境・周辺地域の捉え方を変容させる契機も含む。そのため、美 術館の来館者は、単に美術館を訪れるだけでなく、美術館の周辺環境・周辺地域との関係 性とともに美術館を体験するのである。したがって、来館者は美術館活動を介して、美術 館の周辺環境・周辺地域の見方を形成する側面があり、美術館と美術館の周辺環境・周辺 地域が複合的に来館者の感性にも影響を与えていると考えられる。

7.結論

以上の考察を踏まえると、美術館の教育的作用として、以下の 4 点が重要な事柄として 挙げられる。

第1に、美術館では作品鑑賞を通して、美的感性を育むということである。“美的”であ るということには、“調和を感得すること”が含まれており、自己と他者との在り方を考え るさいにも、人間と他の生物との関係性を考えるさいにも、調和の観点があることで共生 の姿勢につながると言える。それは、感性が豊かであることによって、他者の存在や他の 生物との関係を想像できるような力を育むことになり、相互の関係性を大切にしながら生 きる姿勢に結び付くからである。

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第 2 に、美術館での作品鑑賞を通して、作品解釈の多様性や他者の問題を感じ、それに よって人々の多様性を見出すことにつながる側面がある。特に、美術館では、様々な作品 が一堂に会するバでもあり、多様性を感得できるとともに、共通性や相違性をも感じられ る機会と言える。そのため、多様性の感得によって、自己以外の他者との関係性を考える 機会になると同時に、作品解釈を介することによって、自己と他者の差異を埋めたり、自 己と他者の相違があるにせよ自分なりに他者を理解したりする契機が含まれている。つま り、その過程でコミュニケーションが生じ、このようなプロセスを経て、自己の考え方に も気付き、自己のかけがえのなさ、他者のかけがえのなさを意識できるようになる。

したがって、作品解釈を通して自己形成するとともに、第 1 で考察した美的感性によっ て、他者との共生へのまなざしをかたちづくり、異質なものとのコミュニケーションを可 能にさせる土台になると言える。また、作品や資料による展覧会に関して、学芸員の視点 を基礎としながらも、様々な価値観が交差するバとして、多様性を感じ、創造性の源とし て美術館が機能することも看過できない。

第 3 に、美術館建築による感性への影響である。来館者調査の結果から、来館者は美術 館建築にも注目していることが理解でき、来館者は作品だけではなく、美術館建築によっ て形成される空間も鑑賞し、体験していると言える。美術館建築は、展示室に代表される 物理的空間を形成するだけでなく、美術館の周辺環境・周辺地域を示唆する側面がある。

そのため、美術館建築を通して、人々が周辺環境・周辺地域とつながりながら生きている ことを理解する側面がある。そのため、美術館建築に含まれるコンセプトや周辺環境・周 辺地域との関係性を来館者は意識的・無意識的に感じていると言え、美術館建築の体験に よって、全身の感覚を研ぎ澄ませることになり、感性も鋭敏になっていくと考えられる。

第 4 に、美術館と周辺地域とのつながりが意識されることで、美術館をまちづくりとの 関連から捉えたり、周辺環境・周辺地域を形成する一要素として考えたりするきっかけを 含むことである。美術館が地域の特色を形成したり、まちづくりの拠点として機能したり 場合もあり、美術館活動や美術館建築を通して周辺地域の住民にも影響を与える側面があ る。そのさいにも、人々の感性の働きは看過できず、前述の美術館建築の作用と密接に関 わるが、美術館と周辺環境・周辺地域をつなぐ土台となっていく。そのさい、美術館と美 的価値や文化的価値から生まれる判断基準や自然観が相互に作用しながら、来館者や周辺 地域の住民や他の人々にも影響を与えていくのである。したがって、美術館活動は様々な 人々に影響を与えるため、社会教育機関として、また公共機関として活動を行う基礎とし

(25)

て、公共性の保障を意識する必要性が見出せる。

上記の四つの観点は、“美術館”という場所を訪れ、「作品」に対峙し、「美術館建築」を 体験し、「まちづくり」との関係性を「感性」によって実際に感じることから出発している。

高度情報化社会では、様々な情報に触れることができる一方で、直接的な体験が減少し、

直接的な「つながり」を感じにくい状況になっていると言える。そのため、美術館での作 品鑑賞を通して、感覚が刺激され、感性が豊かになり、自己や他者との関係性を感じられ るような姿勢が育まれる作用にも、改めて注目することが必要である。美術館で実際に作 品に対峙することで得られる効果は、美術館に特有の作用であり、このような社会的な状 況の中で、美術館に実際に足を運び、作品と対峙することによって生じるリアリティの感 得は、「つながり」の実感にも寄与すると考えられる。

また、感性が豊かであることによって、他者の立場になって考えられる想像力を育んだ り、自己の考えを他者に伝えられる表現力を培ったりすることにも結び付くと考えられる。

つまり、感性は、思いやりの心を育み、様々な人々とコミュニケーションを行うための基 礎となり、自己と他者との関係を構築していくうえでも欠かせない要素であると言える。

例えば、『国民生活白書 つながりが築く豊かな国民生活』(平成19年版)でも、「物の豊 かさ」よりも「心の豊かさ」を求める傾向にあり、「心の豊かさがには、人々の精神的な充 実感や安心感が大きくかかわっている」ことに加えて、精神的な安らぎと家族を始めとし た隣近所や職場の人との「つながり」が関連していると指摘されている25。つまり、人間が 生きていく中で、様々な人々と関係を築くことが精神的な充実感や安心感と密接に関わっ ていることが読み取れ、その関係性の構築にはコミュニケーション能力が必要になると言 える。前述のように、感性とコミュニケーション能力の獲得は深く関係しており、美術館 活動には「心の豊かさ」を感じられる契機が含まれていると考えられる。そして、「心の豊 かさ」に関係する「つながり」についても、感性と関わる側面があると思われる。

8.今後の課題

今後の課題としては、美術館の保有する“美的要素”を明らかにすることである。本研 究では、“美”や“美的感性”ついて触れたものの、美的要素が人々や社会に与える影響を 明らかにできなかった部分がある。序章でも述べたが、美術館は「美育の機關施設」の一 つであるため26、美的要素も美術館の特性をかたちづくるものであると言える。また、作品 に関しても、必ずしも“美”を基準に制作されているとは言えず、美術館の保有する美的

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要素は捉えにくくなっている。しかしながら、本研究で考察した“美的感性”には、調和 の感覚と密接に関わるだけでなく、バランス感覚を養うことにも寄与しているため、人間 存在だけでなく、様々な生物や周辺環境・周辺地域との在り方に直接影響を与えるもので あると言える。環境破壊や生物多様性の保全といった事柄にも、調和の感覚と関わる美的 要素が貢献する側面があると考えられる。

美術館の保有する美的要素は、美術館の特性を明確にするものであり、美術館の教育的 作用を深めて考える手がかりになると考えられる。さらに、美術館の保有する美的要素は、

美術館の社会的役割や社会的意義を明確にすることにも寄与すると言える。そのため、美 術館の保有する美的要素に注目し、さらに考察を行う必要があろう。

(27)

【注】

1 ここでの館数については、登録・相当・その他の全てを含むものである(2010.3.31現在)。

(財団法人 日本博物館協会編『博物館研究』Vol.46 No.4(No.514)、財団法人 日本博物館 協会、2011年、pp.11-13。)

2 これに関して、倉田・矢島によれば、モノは「調査し、研究され、その意義、価値を認め、

それを高揚することによって博物館資料」となり、ヒトは「調査研究をし、展示を通じて その教育の役割を果たそうとするヒト、すなわち博物館人と、それを利用するヒト、すな わち人間(社会)」であり、バは「単なる場所ではない、すなわち単なる施設でなく、その 施設(博物館という建物・空間)を活用し、活動する機関を構成する要素の一つとしての バ」であるとする。本研究では、倉田・矢島の指摘を参照しつつ、美術館・博物館資料と して存在する場合に「モノ」、美術館・博物館に関係する人々や社会という意味合いを含む 場合に「ヒト」、単に場所として存在するだけでなく機会や契機等の意味合いを含む場合に

「バ」と表記する。(倉田公裕・矢島國雄『新編 博物館学』(6版)、東京堂出版、2004年、

pp.34-35。)

3 村田昇「人間形成の意味」平野智美・菅野和俊編著『人間形成の思想』教育学講座第2巻、

学習研究社、1979年、p.2, pp.7-8。

4 例えば、大英博物館(The British Museum)やグッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)、

ルーヴル美術館(Musée du Louvre)やリヨン織物装飾芸術博物館(Musées des Tissus et des Arts

Décoratifs de Lyon)等が挙げられる。(高橋雄造『博物館の歴史』法政大学出版局、2008年、

及び、大英博物館ホームページ、http://www.britishmuseum.org/default.aspx、2009.11.16閲覧、

グッゲンハイム美術館ホームページ、http://www.guggenheim.org/、2009.11.16閲覧、フラン スの美術館・博物館に関しては、メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(Maison des Musées de France)ホームページ、http://www.museesdefrance.org/top.html、2009.11.16閲覧を参照した。)

5 衆議院法制局・参議院法制局編『現行法規総覧』第8巻第4編 地方制度(1)(2011.6.23 現在)、第一法規出版、pp.513-513ノ2。及び、小林真理「公共文化施設の課題と指定管理 者制度 文化政策的視点から問い直す」小林真理編『指定管理者制度-文化的公共性を支え るのは誰か』時事通信出版局、2006年、pp.3-20、中川幾郎「自治体文化政策と指定管理者 制度のあり方 公的施設のミッションとは」同前、pp.21-34参照。

6 『新しい時代の博物館制度の在り方について 「これからの博物館の在り方に関する検討 協力者会議」報告書』これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議、2007年、p.3参 照。

7 同前、参照。

8 衆議院法制局・参議院法制局編『現行法規総覧』第24巻第9編 教育・文化(5)(2011.6.23 現在)、第一法規出版、p.8131。

9 山田諭「コレクションの思想-日本の美術館の現場から」美術フォーラム21刊行会編集 部編『美術フォーラム21』Vol.11、美術フォーラム21刊行会、2005年、p.59。

10 前掲『新編 博物館学』(6版)。倉田公裕『博物館の風景』六興出版、1988年。松宮秀治

『ミュージアムの思想』(新装版)、白水社、2009年。北澤憲明『眼の神殿「美術」受容史 ノート』美術出版社、1989年。吉見俊哉『博物館の政治学 まなざしの近代』中央公論新社、

1992年。

11 棚橋源太郎「博物館・美術館史」伊藤寿朗監修『博物館基本文献集』第16巻、大空社、

1991年。椎名仙卓『図解 博物館史』(改訂増補)、雄山閣出版、2000年。椎名仙卓『日本 博物館発達史』雄山閣出版、1988年。高橋雄造『博物館の歴史』財団法人 法政大学出版局、

2008年。

12 並木誠士他編『現代美術館学』昭和堂、1998年。加藤哲弘他編『変貌する美術館-現代

美術館学II-』昭和堂、2001年。

13 喜多村明里「美術館教育活動の展望と課題」前掲『現代美術館学』pp.69-77、江上ゆか「社

(28)

会教育施設として」同前、pp.346-359。

14 福本謹一「学校教育における鑑賞学習と美術館の連携」前掲『変貌する美術館-現代美 術館学II-』pp.68-77。

15 大堀哲他編『ミュージアム・マネージメント 博物館運営の方法と実践』東京堂出版、1996 年。Philip Kotler & Neil Kotoler、井関利明・石田和晴訳『ミュージアム・マーケティング』

第一法規、2006年。

16 諸岡博熊「ソフトサービス④ ホスピタリティと利用者満足」前掲『ミュージアム・マネ ージメント 博物館運営の方法と実践』pp.349-356。

17 並木誠士・中川理『美術館の可能性』学芸出版社、2006年。Victoria Newhouse, Towards a New Museum, Expanded Edition, New York: Monacelli Press, 2006. Raul A. Barreneche, New Museum, London: Phaidon, 2005.

18 John H. Folk, Lynn D. Dirking, Foreword by Willard L. Boyd, The Museum Experience,

Washington, D.C.: Whalesback Books, c1992 1997. 高橋順一訳『博物館体験-学芸員のための 視点-』雄山閣出版、1996年。

19 例えば、吉岡洋は、美術館という制度を支える「近代西洋の思想や世界観、さらにその 背後にある形而上学」といったものがそれほど根付いていないことを指摘している。(吉岡 洋「ヘルシンキ・ヒューマン・ミュージアム」美術フォーラム21刊行会編集部編『美術フ

ォーラム21』Vol.11、美術フォーラム21刊行会、2005年、p.76。)

20 川本宇之介「社會教育(後篇)」川本宇之介『社會教育』北文館、1934年、p.65。

21 Immanuel Kant, Kritik der Urteilskraft: Mit einer Einleitung und Bibliographie herausgegeben von Heiner F. Klemme, Mit Sachanmerkungen von Piero Giordanetti, Humburg: Felix MeinerVerlag,

2001. 牧野英二訳『カント全集』8、岩波書店、1999年。

22 Friedrich Schiller,Aus der Zeit der Karlsschule, Philosophische Briefe, Über die tragische Kunst, Kallias oder Über die Schönheit, Friedrich Schiller dtv-Gesamtausgabe Band17, Theoretische Schriften Erster Teil, München: Deutsher Taschenbuch Verlag, 1966. 草薙正夫訳『美と芸術の理 論-カリアス書簡-』岩波文庫、岩波書店、1936年。

23 Umbert Eco、篠原資明・和田忠彦訳『開かれた作品』(新装版)、青土社、2002年。

24 佐々木健一『作品の哲学』財団法人 東京大学出版会、1985年。

25 内閣府編『国民生活白書 つながりが築く豊かな国民生活』(平成19年版)、社団法人時 事画報社、2007年、pp.3-4。

26 前掲「社會教育(後篇)」p.65。

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