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専 攻

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Academic year: 2021

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近代日本中学生における集団生活の意義 旧制脇町中学校の寄宿舎生を中J心に一

専 攻 人間教育専攻 コース 人間形成コース 氏 名 加 古 脊 孫 一 郎

問題の所在と目的

本研究では、 1896(明治 29)年に徳島県 尋常中学校第一分校として発足し、 1899(明 治32)年に独立した億島県脇町中学校を対象 とする。脇町中朝交の生徒たちは卒業、進学 後、様々な分野での活躍を期待されるのであ る。このような状況は、脇町中朝交に限らず、

おおよその旧制中学校がそうであると考えら れるのだが、その中でも、集団活動がもっ、

人格・消神・責任などの人間形成がどのよう に為されていたのだろうか。教育ツーノレのひ

とつで、ある寄宿舎生活を通じた人間形成作用 について考察したい。

1つの手がかりとして着目されるのは、現 在は脇町高校に伝在する脇町中学校の!日蔵資 料の1つで、ある『蛍雪』である。これは、脇 町中学校の寄宿舎生による文芸作品集である。

当時在舎した生徒たちの日記や、文芸作品な どを集めている。本研究では『蛍雪』を都合 6冊調査し、計250題の作品を分析した。

これまでの旧制中学校に関する研究では、

主に教育制度に関する研究や、学校の歴史に 関する研究など、旧制中執交の法制度とその 実態の側面に焦点が当てられてきた。市山

(2003)が「中学生自身に光をあて、その等 身大のありように迫ろうとした研究は乏ししリ

と述べているように、その学校で学ぶ者自身 の目線に立ち、彼らの声を拾い、彼らの人間

指導教員 梶 井 一 暁

形成の過程に迫ろうとする分析を試みた研究 は乏しい。本研究では、主に『蛍雪』の検討 を通じ、脇町中学校を事例に、旧制中学オ交に 学ぶ生徒たちの集団生活の意義について論じ たい。

各章の要点

第1章では、 1872(明治5)年に明治正鯨斤 政府によって発布された「学制Jから、 1899

(明治32)年の「中判交令」改正にかけて、

日本の旧制中学校に関する近代教育制度の変 遷を振り返り、さらには当時の徳島県下にお ける中判交の設立状況をまとめた。

第2章では、徳島県立脇町高等学校倉リ立百 周年記念事業実行委員会百年史編集委員会編

『脇町高校百年史j(脇町高等制強IJ立百周年 記念事業期成同盟会、 1996)を参考に、徳島 県脇町中学校の歴史について振り返り、さら に、現在の徳島県立脇町高等学校校地内にあ る「芳遊歴史舘」についてその概要、および 収蔵されている資料について検討した。

第3章では、 1900(明治33)年に建築・

落成した旧制脇町中斜交寄宿舎の歴史を振り 返り、当時在舎した生徒たちが手掛けた『蛍 雪』の中の文章や作品を手がかりに、彼らの 生活や心情を考察した。

考察

本研究で得られた知見として以下の3点を 強調しておきたい。

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1点目は、寄宿舎生活の中での多様な人間 関係によって、敬愛の念や感謝の心が育まれ たことである。親元を再齢、寄宿舎に入舎し、

多くの場合が見知らぬ者同士であれば、当然 不安やさみしさを感じながら生活を送ること となる。そのような中で、ある者は寄宿舎を 大きな家族と呼び、本当の家族同様にそこで 過ごす者の幸せを庫品、ながら寝食を共にして いた。寄宿舎という集団の中で過ごすことは、

生徒たちの心的部分に強く影響を与え、大き く成長させたに違いないだろう。

2点目は、男子生徒の持つべき理想として 掲げられたのは、勤勉・真面目・努力といっ たもので、、その理想、を追求すべく日々精進す る姿があったということである。一生徒の文 章に典型的に「学生は一意専:JL¥学業を励み、

身心を鍛錬修養し国家の前途を思ひ将来有為 有用の人物たらんことを其の本領と考へなく てはならぬ」とみられるように、学生のある べき姿は学業に励み、身心を鍛え、国家の有 用の人物となることだと述べている。そのよ うな姿に近づくことのできる、あるいは求め られるのは、勤勉であり、真面目であり、努 力を惜しまない人物なのである。

3点目は、寄宿舎生活の厳しい規則にもか かわらず、自由や楽しみを見出し、充実した 生活を送っていたということである。寄宿舎 の規則は明確に記されていないが、生徒たち の文章からはその厳しさだけが伝えられてい る。時間や場所で拘束されることにより、自 由を感じ、厳しさの中でも自身の成長を感じ ることによって、あらゆる事物八有難みを感 じ、寄宿舎で過ごす時間がなければそのよう なことは感じにくいのかもしれない。

『蛍雪』には、故郷の思い出や寄宿舎旅行

など、多様な文章が掲載されていた。そこで は、試験の点数や蹴責などではかりうるよう な学力や体力ではなく、寄宿舎の同級生や上 級生、故郷の家族や友人などとの人間関係、

中学生として勉学相軍動に励む構えの姿勢な ど、自身の内面的、精神的要素、また、より 日常の生活に欠かすことのできない要素に関 わることが等身大の言葉で表現されていた。

これらの要素は、学校とは別の、寄宿舎とい う特異な集団、換言すれば、寝食や苦楽を共 にする濃い関係の切り結びのなかであるから こそ育まれたのかもしれない。

このように、寄宿舎での集団生活は、彼ら の人間形成に働きかける力を有していた。そ の力はエリート候補生である中学生に、仲間 のいることを知らせ、自己という有守主を問わ せた。規律のなかに自由を学ばせ、自由のな かに規律を意識させた。寄宿という制度は生 徒の身体を拘束することを基本とするが、そ れを契機に若き生徒たちのなかに濃厚な共有 体験を生み、共同意識や勤勉的人物の理念な ど、を醸成していった。寄宿舎生の人間形成の あり方は、戦前の旧制中学校のなかの一端で あるが、現代の生徒の心身の成長の問題に差

し向ける要素もあると思われる。

今後の課題 2点挙げられる。

1点目は、『蛍雪』を手掛げた生徒たちがそ の後、どのような成長をし、当時をどのよう に思っているか、インタビュー等で迫れなか った点である。

2点目は、寄宿舎日誌『蛍雪』の総発刊数 など、『蛍雪』の全貌を明らかにすることがで きていなし1点である。

参照

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