ONO 供与原子を持つ三座シッフ塩基配位子の新規単 核鉄(?)錯体の合成と性質
著者 乾 貴哉
URL http://hdl.handle.net/10236/00026657
2016年度 修士論文要旨
ONO 供与原子を持つ三座シッフ塩基配位子の 新規単核鉄 (Ⅲ) 錯体の合成と性質
関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 御厨研究室 乾貴哉
Ⅰ. 我々の研究室では,ONO供与原子を持つ三座のシッフ塩基配位子であるN-サリチリデン-2- ヒドロキシベンジルアミン類を用いて錯体の合成を行ってきた。これらの配位子は二核鉄(Ⅲ) 錯体1),二核銅(Ⅱ)錯体2)など複核錯体を形成することが多いが,近年合成条件次第では単核コ バルト(Ⅲ)錯体3)のように単核錯体も合成できることを報告した。本配位子を用いた単核鉄錯体 はこれまで合成されていないため、本研究では単核鉄錯体の合成を目的とし,Fig. 1に示した5 種のシッフ塩基配位子を用いてその合成を試みた。また,スピンクロスオーバー現象など興味 深い磁気的性質が観測される可能性を探った。
Ⅱ. シッフ塩基配位子H2La,H2Lb,H2Lc,H2Ld,H2Leは,対応する2-ヒドロキシベンジルアミ ン類とアルデヒド類の反応により合成した。これらのシッフ塩基配位子と鉄(Ⅲ)塩,対応する カウンターカチオンを反応させて次の鉄錯体を合成した。
テトラ(n-ブチル)アンモニウム塩:(n-C4H9)4N[Fe(L)2] (L = La(1a), Lb(1b), Lc(1c)),テトラフェ ニルホスホニウム塩:(C6H5)4P[Fe(L)2] (L = La(2a), Lb(2b), Lc(2c), Ld(2d), Le(2e)),テトラエチ ルアンモニウム塩:(C2H5)4N[Fe(L)2] (L = Le(3e))
単離した錯体について赤外吸収スペクトル,固体拡散反射スペクトルを測定し,元素分析を 行った。1a,1b,2a,2d,2eについては磁気モーメントの温度依存性の測定を行った。単結晶 が得られた2aについてX線結晶構造解析を行い,結晶構造を決定した。
Ⅲ. 各種の測定から,今回合成した錯体は鉄1原子に対して脱プロトン化した配位子2分 H2La H2Lb H2Lc H2Ld H2Le
Fig.1 シッフ塩基配位子
子,カウンターカチオン1分子を持つ高スピン状態の単核鉄(III)錯体であることが分かった。X 線結晶構造解析の結果から,錯体は中心金属に対して配位子がmeridional型で配位した歪んだ 八面体型構造を取ることが分かった。テトラブチルアンモニウムイオンをカウンターカチオン として持つ錯体とテトラフェニルホスホニウムイオンをカウンターカチオンとして持つ錯体で は,ゼロ磁場分裂の大きさが異なることが示された。
1) M. Mikuriya, Y. Kakuta, R. Nukada, T. Kotera and T. Tokii, Bull. Chem. Soc. Jpn., 2001, 74, 1425- 1434.
2) Y. Kakuta, N. Masuda, M.Kurushima, T. Hashimoto, D. Yoshioka, H. Sakiyama, Y. Hiraoka, M.
Handa, and M. Mikuriya, Chem. Papers, 2014, 68, 923-981.
3) M. Mikuriya, N. Masuda, Y. Kakuta, S. Minato, T. Inui, and D. Yoshioka, Chem. Papers, 2016, 70, 126-130.