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河川における堆積物の元素挙動と地球化学

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Academic year: 2022

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(1)河川における堆積物の元素挙動と地球化学 著者 URL. 小川 真人 http://hdl.handle.net/10236/11291.

(2) 2012 年度 修士論文要旨. 河川における堆積物の元素挙動と地球化学 関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 壷井研究室 小川 真人 本研究は河川における堆積物の元素挙動を明らかにすることが目的であり,兵庫県南西 部に位置する山崎断層付近,兵庫県南東部に位置する六甲山系北東部及び,大阪府と奈良 県との県境に位置する葛城山東側をケーススタディとして河川堆積物の化学組成分析を 行った。山崎断層付近については断層と自然放射線線量率の関係を調べるため,微量成分 元素含有量の分析に加えてシンチレーションサーベイメーターを用いた自然放射線線量 率(γ 線)の測定も行った。河川堆積物(粒径 180 μm 以下)中の化学組成分析については主成 分元素(Na,Mg,Al,Si,P,K,Ca,Ti,Mn,Fe),微量成分元素(V,Cr,Co,Ni,Cu, Zn,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Ba,Pb,Th)含有量を溶融ガラスビード法・波長分散型蛍光Ⅹ線 分析装置を用いて行った。また希土類元素 (Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy, Ho,Er,Tm,Tb,Lu)含有量については微量成分元素分析用ガラスビードを塩酸で酸分解 後乾固し,硝酸で溶解させ希釈した溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて分析し た。自然放射線線量率の測定は地表 5 cm 及び地表 1 m で行った。 山崎断層付近の河川堆積物 100 試料についての微量成分元素含有量の分析結果から地表 の元素濃度分布図を作成した。河川堆積物における元素濃度はその河川の上流における地 質や地形の影響を受けるため,元素濃度分布図を用いることで断層の位置や堆積物の母岩 の影響が化学的に見える可能性がある。また自然放射線線量率を 75 地点で測定した。地 表 1 m における自然放射線線量率については実測に加え Beck et al.(1972)1)を参考に K2O, Th 含有量からの計算値も求めた。計算式には U の濃度値が必要であるが,本研究では U の定量分析を行っていないため U/Th=0.20 (相関係数 0.89)2)を用いて計算した。元素濃度分 布図から断層付近では Co,Cr,Cu,Ni,V の 5 元素の濃度が高くなる傾向が見られた。 主要な断層としては東中央部に土万断層 3)が,東西方向に山崎断層系安富断層が,南東方 向に暮坂峠断層が存在しており,このうち少なくとも安富断層は活断層であり 1000 年当 たり 1-10 m 程度の変位があるとされる 4)。元素濃度の分析結果からは断層付近において 放射線線量率に関連する元素(K,Th,Pb)の濃度上昇は見られなかった。しかし断層付 近では実測の自然放射線線量率(地表 1 m)が計算値に比べ上昇する傾向がみられた。した がって断層付近で自然放射線線量率が増加した原因は断層からの Rn 放出である可能性が 高い。Rn は気体の放射性元素であり,空気中に拡散するため,その娘核種である Pb の濃 度に局所的な傾向を与えない。したがって上記の濃度分布と矛盾しない。この地域におけ.

(3) る元素濃度の平均値と今井ほか(2004)2)の全国平均値を比較すると Zr で約 8.5 倍(本地 域:478 ppm,全国:56.2 ppm),Th で約 2 倍(本地域:12 ppm,全国:5.9 ppm)という高濃度を示 した。この原因は本地域幅広く分布すると流紋岩質あるいはデイサイト質の岩石 3, 4)である と考えられる。これらの岩石の源となるのは花崗岩質あるいは花崗閃緑岩質のマグマであ る。花崗岩や花崗閃緑岩は副生成物として Zr に富むジルコンを含む。ジルコンには Th も 濃集する。そのため Zr や Th が高濃度になると考えられる。 また母岩を限定できる河川堆積物を中心に,葛城山の 4 試料,六甲山系の 3 試料,山崎 地域の 7 試料の計 14 試料について検討した。葛城山の試料についてはその河川の流域が すべて葛城トーナル岩Ⅱ型 5)である。六甲山系の試料は 1 試料が六甲花崗岩をその河川上 流の流域に持つもので,残りの 2 試料は結晶質凝灰岩,石英閃緑岩,有野累層と呼ばれる 堆積岩や凝灰岩からなる地層 6)も上流の流域に持つ。山崎で採取した試料については 3 試 料が七種山層の流紋岩質火砕流堆積物の地層を流域に持つ河川からなる,残りの 4 試料は 超丹波帯山崎層の堆積岩の地層を流域に持つ河川からなる試料である。葛城山の試料につ いては母岩の分析結果との比較及び,分析を行った試料の間での比較を行った。その結果, 葛城山の試料と母岩の比較から Eu を除く希土類元素が河川堆積物に濃集しており,Eu の 濃度は母岩とほぼ同等であった。希土類元素は基本的に三価でのみ安定であるが,Eu のみ 二価でも安定状態を持つ。Eu は岩石中では二価であるため灰長石中の Ca を置換して存在 し,他の希土類元素は三価の元素を置換して存在する。そして二価の Eu は他の三価の希 土類元素に比べ水溶液中で安定なため地下水や河川水中に含まれた状態での移動性が高 い 7)。この性質は分析結果において C1 コンドライトによる Eu の規格化値が他の希土類元 素の規格化値が作る曲線上の値に比べ小さな値を示す原因となり得る。Eu を除く希土類元 素は規格化値を原子番号順に並べると曲線的な傾向を持つが,Eu に関してはその値が他の 元素の作る曲線に乗らないことが多く,これを Eu 異常と呼ぶ。これらの中で山崎層や七 種山層が供給源である堆積物においては負の Eu 異常が小さく,六甲山や葛城山の花崗岩 やトーナル岩を母岩とする河川堆積物においては大きな負の Eu 異常が見られた。また火 成岩起源の河川堆積物において,その供給源となる岩石が同一のものである場合,Y 濃度 と Eu 異常の間に負の相関がある。これは Y が三価で安定な元素であり Eu を除く希土類 元素と似た挙動を示すことが原因であると判断した。 1) Beck H.L. et al., 1972, New York, N.Y.10014 2) 今井登ほか, 2004, 日本の地球化学図, 209p 3) 山本孝広ほか, 2002, 山崎地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅), 産総研地質調査総合センター, 48p 4) 山本孝 広ほか, 2000, 龍野地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅), 地質調査所, 66p 5) 政岡邦夫, 1982, 地質学雑誌, 88, 483-497p 6) 藤田和夫・笠間太郎, 1982, 大阪西北部地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅), 地質調査所,112p 7) Leybourne, M. I., and Johannesson, K. H., 2008, Geochimica et Cosmochimica Acta, 72, 5962-5983p.

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