博 士 ( 工 学 ) 細 岡 敏 夫
学 位 論 文 題 名
青 化 製 錬 鉱 滓 の 活 用 に 関 す る 綜 合的 研 究
学 位 論 文内 容 の 要 旨
串木野製錬工場は、最近の厳しい経済環境の中で我国に生き残った唯一の青化製錬所 である。本研究では、青化製錬所が直面する経営および環境保全上の課題を解決するこ とを目的に、製錬プロセスの改善と鉱滓の活用に関して綜合的に技術開発を進めた。具 体的には、岩戸鉱山系の粗粒含金珪酸鉱についてはその特質を生かしてバットリ―チン グ法を確立するとともに、鉱滓を細骨材として活用する技術を開発した。更に、串木野 鉱山と岩戸鉱山系の微粒青化製錬鉱滓については、鉱滓―セメント系混合盛土材および 非流失性人工土壌材として加工処理する技術を発展させた。この結果、鉱滓堆積ダムを 必要としない、世界でも類例のない青化製錬操業を実現し、コスト肖q減に成功した。
本論文は、これらの技術開発に関する基礎研究と現場応用試験の成果をまとめたもの で、下記の7章で構成している。
第1章は序論で、日本の金山のおかれている経営環境を串木野鉱山を例にとって説明 した。金銀市況価格の低迷と人件費の高騰を克服するためには、生産コストの削減を成 功させる以外に方法がないことを指摘した上で、本研究の目的と立場を明らかにした。
第2章では、串木野鉱山と岩戸鉱山の概況を説明した。両鉱山の採鉱原価を比較した 上で、坑内掘りの串木野鉱山では生産を押さえて鉱石の品位をあげる一方、岩戸鉱山は 低品位鉱の量産を進める以外に合理化策はないことを指摘した。次いで、製錬操業の問 題点は、低品位鉱の畳産による磨鉱および鉱滓処理費の増大であることを指摘し、青化 製錬と鉱滓処理工程に対する技術革新の必要性を説いた。
第3章では、磨鉱および鉱滓処理工程の合理化策の一環としてバットリーチング法の 採用を検討し、基礎試験とパイロット試験を通して細骨材に適する柆度で金の高い溶解 率が得られることを確認した。次いで、製錬系統を改めることによって柤柆の岩戸鉱の 処理にバットリーチング法を、串木野鉱と徽粒の岩戸鉱の処理に全泥青化法を適用した。
この結果、高い製錬成績をあげると同時に細骨材の製造に成功した。また、鉱滓堆積ダ
― 367−
ムの延命化なども含めて大きな経済効果を得た。
第4章では、全泥青化製錬鉱滓にセメント系硬化剤を添加した鉱滓ーセメント系混合 材の加工処理法の研究開発と現場応用試験結果について述べた。研究開発に当たっては、
混練ペーストを3日間養生した試料の土質試験を実施し、ハンドリング性と強度発現性 の検討結果から量産処理条件を確定した。次いで、鉱滓一セメント系混合材の量産工場 を建設し、現場応用試験として串木野鉱山第3鉱滓堆積ダムの築堤工事に活用した。築 堤から1年経過後、盛土の土質試験および三軸圧縮試験を実施し、混練後の養生硬化過 程で粉砕した鉱滓―セメント系混合材は優れた強度物性を発現することを確認した。
応用試験現場の築堤法面には、施工後5〜6年経過しても乾燥収縮によるひび割れも 豪雨による洗掘も発生せず、雑草が繁茂し、予想以上の成果が確認された。本研究では、
この法面の非侵食性と植栽性から鉱滓ーセメント系混合材が非流出性人工土壌になり得 る こ と が わ か り 、 更 に 土 壌 性 能 の 発 現 性 に つ い て 究 明 を 進 め た 。 第5章では、鉱滓ーセメント系混合材の混練後と粉砕、圧密後の養生硬化過程におけ る一次強度発現と二次強度発現を計測し、強度発現の支配因子は主として混練から粉砕 までの養生硬化時間と圧密度であることを明らかにした。次いで、固結構造の顕微鏡観 察とセメントの水和反応速度の検討結果から、一次と二次強度発現によって生じた団柆 と間隙の集塊構造を明らかにし、土壌性能を支配する団粒構造が養生硬化後の扮砕によ って発生する理由について考察した。
第6章では、二次強度発現させた人工土壌試料で芝草の植生試験と噴射水の侵食試験 を実施し、植生限界Vcと流失限界Ecとの問に140〜60 kg/cm の強度範囲があることを 確認した。また、土壌の調製に当たって一次強度発現時間を調節すれぱ、二次強度発現 をVcとEcの間 に導 き 、植 物の 生育 性と 土壌 の非 流失性の両方の 性質を満たすこと が可能であることを実証した。なお、鉱滓一セメント系混合材への木質ファイバーの混 人 効 巣 に つ い て も 試 験 し 、フ ァイ バー 混入 によ る土 壌性 能の 向上 を確 認 した 。 講7章は本論文の結諭で、本研究で得られた成果と知見を総括し、一般選鉱廃滓の人 I| ! , 壌 材 へ の 活 用 と 人 工 土 壌 材 の 緑 化 工 事 へ の 応 用 に つ い て 言 及 し た 。
‑ 368−
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
青化製錬鉱滓 の活用に関する綜合的研究
串木野製錬工場は、最近の厳しい経済環境の中で我国に生き残った唯一の青化製錬所 である。本論文は、青化製錬所が直面する経営および環境保全上の課題を解決すること を目的に、製錬プロセスの改善と鉱滓の活用に関して綜合的に技術開発を進めた成果を まとめたものである。具体的には、岩戸鉱山系の粗粒含金珪酸鉱についてはその特質を 生かしてバッ卜リーチング法を確立するとともに、鉱滓を細骨材として活用する技術を 開発している。更に、串木野鉱山と岩戸鉱山系の微粒青化製錬鉱滓については、鉱滓―
セメント系混合盛土材および非流失性人工土壌材として加工処理する技術を発展させて いる。この結果、鉱滓堆積ダムを必要としない、世界でも類例のない青化製錬操業を実 現し、コス卜削減に成功している。
本論文は、下記の7章で構成している。
第1章は序論で、日本の金山のおかれている経営環境を日1木野鉱山を例にとって説明 している。金銀市況価格の低迷と人件費の高騰を克服するためには、生産コストの削減 を成功させる以外に方法がないことを指摘した上で、本研究の目的と立場を明らかにし ている。
第2章では、串木野鉱山と岩戸鉱山の概況を説明している。両鉱山の採鉱原価を比較 した上で、坑内掘りの串木野鉱山では生産を押さえて鉱石の品位をあげる一方、岩戸鉱 山は低品位鉱の畳産を進める以外に合理化策はないことを指摘している。次いで、製錬 操業の問題点は、低品位鉱の量産による磨鉱および鉱滓処理費の増大であることを指摘 し 、 青 化 製 錬 と 鉱 滓 処 理 工 程 に 対 す る 技 術 革 新 の 必 要 性 を 説 い て い る 。 第3章では、磨鉱および鉱滓処理工程の合理化策の一環としてバットリーチング法の 採用を検討し、基礎試験とパイロット試験を通して細骨材に適する粒度で金の高い溶解 率が得られることを確認している。次いで、製錬系統を改めることによって粗粒の岩戸 鉱の処理にバットリーチング法を、串木野鉱と微粒の岩戸鉱の処理に全泥青化法を適用 している。この結果、高い製錬成績をあげると同時に細骨材の製造に成功している。ま
― 369―
巌 美
之 治
昌 利
英
島 川
地 田
田
中 恒
三 鎌
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
た 、 鉱 滓 堆 積 ダ ム の 延 命 化 な ど も 含 め て 大 き な 経 済 効 果 を あ げ て い る 。 第4章では、全泥青化製錬鉱滓にセメント系硬化剤を添加した鉱滓―セメント系混合 材の加工処理法の研究開発と現場応用試験結果について述べている。研究開発に当たっ ては、混練ぺーストを3日間養生した試料の土質試験を実施し、ハンドリング性と強度 発現性の検討結果から量産処理条件を確定している。次いで、鉱滓一セメント系混合材 の量産工場を建設し、現場応用試験として串木野鉱山第3鉱滓堆積ダムの築堤工事に活 用している。築堤から1年経過後、盛土の土質試験および三軸圧縮試験を実施し、混練 後の養生硬化過程で粉砕した鉱滓―セメント系混合材は優れた強度物性を発現すること を確認している。
応用試験現場の築堤法面には、施工後5〜6年経過しても乾燥収縮によるひび割れも 豪雨による洗掘も発生せず、雑草が繁茂し、予想以上の成果をあげている。本研究では、
この法面の非侵食性と植栽性から鉱滓―セメント系混合材が非流出性人工土壌になり得 る こ と が わ か り 、 更 に 土 壌 性 能 の 発 現 性 に つ い て 究 明 を 進 め て い る 。 第5章では、鉱滓―セメント系混合材の混練後と粉砕、圧密後の養生硬化過程におけ る一次強度発現と二次強度発現を計測し、強度発現の支配因子は主として混練から粉砕 までの養生硬化時間と圧密圧であることを明らかにしている。次いで、固結構造の顕微 鏡観察とセメントの水和反応速度の検討結果から、一次と二次強度発現によって生じた 団粒と間隙の集塊構造を明らかにし、土壌性能を支配する団粒構造が養生硬化後の粉砕 によって発生する理由について考察している。
第6章では、二次強度発現させた人工土壌試料で芝草の植生試験と噴射水の侵食試験 を実施し、植生限界Vcと流失限界Ecとの間に140〜60 kg/cm゜の強度範囲があることを 確認している。また、土壌の調製に当たって一次強度発現時間を調節すれぱ、二次強度 発 現をVcとEcの 間に 導き 、植 物の 生育 性と土壌の非流失性の両方の性質を満たす ことが可能であることを実証している。なお、鉱滓―セメント系混合材への木質ファイ パーの混入効果についても試験し、ファイバ一混入による土壌性能の向上を確認してい る。
第7章は本論文の結諭で、本研究で得られた成果と知見を総括し、一般選鉱廃滓の人 工 土 壌 材 へ の 活 用 と 人 工 土 壌 材 の 緑 化 工 事 へ の 応 用 に つ い て 言 及 し てい る。
これを要するに、著者は青化製錬鉱滓の活用を目的にパッ卜リーチング法による細骨 材の製造および鉱滓ーセメント系混合材の加工処理法による非流出性人工土壌材の開発 に成功しており、資源開発工学および地盤工学の発展に寄与するところ大である。よっ て 著者 は、 北海 道大 学博 士( 工学 )の 学位を授与される資格あるものと認める。
‑ 370―