博 士 ( 工 学 ) 岡 本 英 明
学 位 論 文 題 名
座 標 測 定 に お け る 幾 何 公 差 の 検 証 に関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
近 年 , 機 械 製 品 に 対 し て 高 機 能 化 , 低 価 格 化 , の 要 求 が高 まる 一方 であ る, こ の よ う な 状 況 の な か , 製 造 工 程 に お い て 発 生 す る 部 品 形 状 誤 差 の 許 容 範 囲 を ど の よ う に 定 義 す る か は , 機 能 と コ ス ト の 両 面 に お い て 極 め て 重 要 な 問 題 と な っ て い る . 幾 何 公 差 方 式 は , 独 立 の 原 則 , 最 大 実 体 公 差 方 式 , 位 置 度 公 差 方 式 な ど 多 く の 新 し い 概 念 に 支 え ら れ て お り , 解 釈 の 一 義 性 と 部 品 互 換 性 を 保 証 す る 唯 一 の 公 差 方 式 と し て 著 し い 普 及 を 見 せ て い る . 一 方 , 検 査 工 程 に お い て は , コ ン ビ ュ ー タ の 進 歩 を 背 景 と し て , 座 標 測 定 技 術 が 広 く 普 及 し て い る . 座 標 測 定 で は , 部 品 の 表 面 を 何 ら か の プ ロ ー プ に よ ル サ ン プ リ ン グ し . そ れ に よ ル デ イ ジ タ ル 化 さ れ た 測 定 点 群 ( 以 下 , 測 定 デ ー タ セ ッ ト と 呼 ぷ ) に 対 し て ソ フ ト ウ ェ ア に よ る デ ー 夕 処 理 を 行 っ て , 寸 法 や 幾 何 偏 差 を 評 価 す る . こ の よ う な 状 況 に お い て , 座 標 測 定 に お い て 幾 何 公 差 を 検 証 す る こ と が 重 要 と な っ て い る . し か し , そ れ を 妨 げ る 問 題 点 と し て 次 の2っ が マ ク ロ な 観 点 か ら 指 摘 さ れ る . 第1に , 幾 何 公 差 に お い て 形 体 , 軸 線 , 寸 法 な ど 不 明 確 な 定 義 が あ る 問 題 で あ る . 第2に , 公 差 の 定 義 に 対 し て 厳 密 に 検 証 す る た め の 体 系 的 な 方 法 論 が 充 分 に 確 立 さ れ て い な い こ と で あ る .
本 論 文 で は , 後 者 の 問 題 解 決 を 行 い , 座 標 測 定 に お け る 幾 何 公 差 の 体 系 的 か つ 厳 密 な 検 証 方 法 論 の 確 立 の た め , 以 下 の 内 容 を 実 現 す る こ と を 目 的 と し て い る . (1) 形 状 公 差 だ け で な く , 関 連 形 体 や 最 大 実 体 公 差 に も 対 応 す る た め 同 一 の 理 論 に 基 づ き , し か も 厳 密 な 検 証 を 可 能 と す る 一 貫 し た 方 法 論 を 提 案 す る .
(2) 上 記 方 法 論 に 基 づ く 関 連 形 体 の 幾 何 公 差 の 検 証 方 法 を 襲 案 し , 計 算 機 シ ミ ユ レ ー シ ョ ン に よ り 実 験 的 に そ の 妥 当 性 を 確 認 す る . (3) 穴 グ ル ー プ な ど の よ う に 相 互 に 位 置 , 姿 勢 を 拘 束 し あ う 複 数 の 形 体 の 幾 何 公 差 検 証 に 対 し て 必 要 と な る 複 合 形 体 の 概 念 に つ い て 明 ら か に す る . 上 記 方 法 論 に 基 づ き , 複 合 形 体 の 幾 何 偏 差 を 評 価 す る 方 法 を 提 案 し , 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 実 験 的 に そ の 妥 当 性 を 確 認 す る . (4) 最 大 実 体 公 差 に 対 し て , 上 記 方 法 論 に 基 づ く 機 能 ゲ ー ジ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 新 し い 検 証 方 法 を 提 案 し , 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 実 験 的 に そ の 妥 当 性 を 確 認 す る .
本 論 文 は 7章 か ら 構 成 さ れ て お り , そ の 概 要 を 以 下 に 示 す . 第1章 は 緒 諭 と し て , 本 研 究 の 背 景 , マ ク ロ な 観 点 か ら の 現 状 の 問 題 点 , 目 的 お よ ぴ そ の 意 義 に つ い て 述 べ た .
第2章 で は , 幾 何 公 差 と そ の 検 証 に 関 す る 研 究 の 現 状 と 問 題 点 に つ い て 述 ベ
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た.幾何公差については,それを検証するという観点から行われている研究お よび国家的.国際的機関における標準化の現状について述ベ,定義の不明確さ が残されている問題を明らかにした.幾何公差の検証については,定義に対し て厳密に検証するとぃう観点から研究の現状を述べ,形状公差に比べて姿勢公 差,位置公差に対する検証方法が充分確立されていないことを述べた.これを 解決するためのアプローチとして,偏差を厳密に評価するアプローチと機能ゲ ージシミュレーションによるアプローチがあることを示し,それぞれの問題点 を指摘した.以上の問題点の指摘を通して,ミクロな観点からも本研究の意義 を明らかにし,解決すぺき具体的な課題を設定した.同時に,研究を進める上 での前提条件についても言及した.
第3 章では,体系的な幾何公差の検証方法を確立するためのべースとして.
微小変位スクリュー法による形状要素のフイッテイングを取り上げ.その詳細 なレピューを行った.手法の特長を詳細に分析し,形状公差に対する検証の厳 密性だけでなく関連形体の幾何公差検証,複合形体の形状評価評価,機能ゲー ジシミュレーションヘ拡張でき,一貫した検証手法を確立するべースとして高 い可能性を有していることを明らかにした.
第 4 章では ,関連形体の幾何公差の定義にしたがって厳密に偏差を求め,
検証 を行う方法 について述 べた.微小 変位スクリュー法をべースとして,
幾何 学的制約条 件として, 位置および 姿勢に関する条件の定式化を行い,
これを用いた幾何偏差の評価方法およびアルゴルズムを提案した.ついで.
現行 の幾何公差 および偏差 の定義に照 らし合わせて,提案する方法がその 厳密 な検証方法 を具現化す るものであ ることを明らかにした.さらに,計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 実 験 的 に そ の 妥 当 性 を 確 認 し た . 第 5 章では ,複合形体の形状評価方法.について述ぺた.まず複合形体の 定義 とそのモデ ル化の概念 について明 らかにし.微小変位スクルュー法を べ―スとして,測定データセットから複合形体を評価する方法を提案した.
さら に,この方 法に基づぃ て.平面お よび円筒から構成される複合形体の 例に ついて定式 化を行い, 計算機シミ ュレーションにより,その妥当性を 確認した.
第 6 章で は,機能ゲ ージシミュ レーション による公差 検証につい て述べ た. 微小変位ス クリュー法 をべースと した,バラメトリックソルッドモデ ルに よる新しい 機能ゲージ ジミュレー ション方法を提案した.姿勢公差つ いて は,幾何学 的制約条件 を付加した パラメトルックソリッドモデルによ り, 位置公差つ いては,複 合形体に幾 何学的制約条件を付加したパラメト リッ クソリッド モデルによ り機能ゲー ジを忠実に表現できることを示し,
さら に,一般的 なケースに ついても定 式化を行った.この定式化に基づく
具 体的なア ルゴルズム を提案する とともに. 従来のsoftgauge と 比較して
法をべースとして形状公差,姿勢公差,位置公差を厳密に検証する一貫し た方法論を提案することができたことを述べ,今後の課題について言及し た.
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
座標測 定にお ける幾何 公差の検証に関する研究
近 年、機械製品に対して高機能化、低価格化の要求が高ま る状況において、製造工程に おい て発生する部品形状誤差の許容範囲をどのように定義す るかは、機能とコストの両面 にお いて極めて重要な問題とナよっている。幾何公差方式は、独立の原則、最大実体公差方 式、 位置度公差方式など多くの新しい概念に支えられており 、解釈の一義性と部品互換性 を保 証する唯一の公差方式として著しい普及を見せている。 一方、検査工程においては、
コン ピュータの進歩を背景として、座標測定技術が広く普及 している。座標測定では、部 品の 表面を何らかのプロープによルサンプリングし、それに よルディジタル化された測定 点群 (以下、測定データセットと呼ぶ)に対してソフトウェアによるデー夕処理を行って、
寸法 や幾何偏差を評価する。このようナょ状況において、座標測定において幾何公差を検証 す るこ と が重 要と なっている。しかし、そ れを妨げる問題点として次の2っがマクロな観 点 から 指 摘さ れる 。第1に、幾何公差において形体、軸線、寸法など不 明確な定義がある 問 題で あ る。 第2に、 公差の定義に対して厳密に検証するための体系的 な方法論が充分に 確立 されていないことである。
本 論文では、後者の問題解決を行い、座標測定における幾 何公差の体系的かっ厳密な検 証方 法論の確立のため、以下の内容を実現することを目的としている。(1)形状公差だけ でな く、関連形体や最大実体公差にも対応するため同一の理 論に基づき、しかも厳密な検 証を 可能とする一貫した方法論を提案する。(2)上言己方法論に基づく関連形体の幾何公差 の検 証方法を提案し、計算機シミュレーションにより実験的にその妥当性を確認する.(3) 穴グ ループなどのように相互に位置、姿勢を拘束しあう複数 の形体の幾何公差検証に対し て必 要となる複合形体の概念にっいて明らかにする。上言己方法論に基づき、複合形体の幾 何偏 差を評価する方法を提案し、計算機シミュレーションに より実験的にその妥当性を確 認す る。(4)最大実体公差に対 して、上記方法論に基づく機能ゲージシミュレーションに よる 新しい検証方法を提案し、計算機シミュレーションによ り実験的にその妥当性を確認 する 。
本 論文は7章から構成されてお り、その概要を以下に示す。
史 幸
悟 昇
建
正
侑
浪 田
嵐 数
十
岸
池
五
嘉
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
的機関における標準化の現状にっいて述ペ、定義の不 明瞭さが残されている問題を明らか にした。幾何公差の検証にっいては、定義に対して厳 密に検証するという観点から研究の 現状を述ベ、形状公差に比べて姿勢公差、位置公差に 対する検証方法が充分確立されてい ないことを述べている。これを解決する方法として、 偏差を厳密に評価するアプローテと 機能ゲージシミュレー ションによるアプローチがあることを示し、それぞれの問題点を指 摘した。以上の問題点を指摘を通して、ミクロな観点 からも本研究の意義を明らかにし、
解決すべき具体的な課題を設定した。同時に、研究を 進める上での前提条件にっいても言 及している。
第3章 では 、体 系的 な幾何公差の検証方法を確立 するためのべースとして、微少変位ス クリュー法による形状要素のフイッティングを取り上 げ、その詳細なレビューを行った。
手法の特徴を詳細に分析し、形状公差に対する検証の 厳密性だけでなく関連形体の幾何公 差検証、複合形体の形状評価、機能ゲージシミュレー ションヘ拡張し、一貫した検証手法 を提案してい・る。
第4章 では 、関 連形 体の幾何公差の定義にしたが って厳密に偏差を求め、検証を行う方 法にっいて述べた。微少変位スクリュー法をべースと して、幾何学的制約条件として、位 置および姿勢に関する条件の定式化を行い、これを用 いた幾何偏差の評価方法およびァル ゴリズムを提案している。っいで、現行の幾何公差お よび偏差の定義に照らし合わせて、
提案する方法がその厳密な検証方法を具現化するものであることを明らかにした。さらに、
計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 実 験 的 に そ の 妥 当 性 を 確 認 し て い る 。 第5章 では 、複 合形 体の形状評価方法にっいて述 べている。まず複合形体の定義とその モデル化の概念にっいて明らかにし、微小変位スクリ ュー法をべースとして、測定データ セットから複合形体を評価する方法を提案している。 さらに、この方法に基づいて、平面 および円簡から構成される複合形体の例にっいて定式 化を行い、計算機シミュレーション により、その妥当性を確認している。
第6章 では 、機 能ゲ ージシミュレーションによる 公差検証にっいて述べている。微小変 位スクリュ一法をべースとしてパラメトリック半空間 モデルによる新しい機能ゲージシミ ユレーション方法を提案している。姿勢公差にっいて は、幾何学的制約条件を付加したパ ラメトリック半空間モデルにより、位置公差にっいて は、複合形体に幾何学的制約条件を 付加したパラメトリック半空間モデルにより機能ゲー ジを忠実に表現できることを示し、
さらに、一般的なケースについても定式化を行ってい る。この定式化に基づく具体的なァ ルゴリズムを提案するとともに、従来のsoftgaugeと比較してその差異を明らかにした。ま た 、 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 い 、 実 験 的 に そ の 妥 当 性 を 確 認 し で い る 。 第7章 は、 結諭 であ り、前車までのまとめとして 、微小変位スクリュ一法をぺースとし て形状公差、姿勢公差、位置公差を厳密に検証する一 貫した方法論を提案することができ たことを述べ、今後の課題にっいて言及した。
これを要するに、本論文は製品の幾何公差検証問題 の数学的定式化を行うとともに、体 系的検証方法を示し、従来困難であった幾何公差検証 が可能である事をあきらかにするな ど、生産工学、精密工学に寄与するところ大である。
よって、著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。
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