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博 士 ( 薬 学 ) 畠 山 浩 人

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 畠 山 浩 人

学 位 論 文 題 名

腫 瘍 選 択 的 活 性 化 を プ ロ グ ラ ム し た

血 中 投 与 型 多 機 能 性 ナ ノ 構 造 体 に よ る 腫 瘍 へ の 遺 伝 子 デ リ バ リ ー シ ス テ ム の 構 築

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  新たな治療法として期待される遺伝子治療において、臨床例の約70%はがん治療で ある。また、臨床例の多くはウイルスベクターにより実施されているが、死亡例や自 血病の誘発が報告され安全性の問題が指摘されている。従って、がんを標的とした高 性能かっ安全性に優れた人工ベクターの開発は、がん遺伝子治療の実用化への大きな ブレイクスルーとなる。

  当研究室では高い活性と安全性に優れた新たな人工遺伝子ベクターとして多機能性 工ンベロープ型ナノ構造体(Multifunctional envelop‑type nano device; MEND)の開 発を進めている。MENDは核酸とポリカチオンの複合体をコアとして脂質二重膜によ ルコー トされた 構造を有 しており、体内および細胞内でのMENDの動態を制御する た めの 様 々な機 能素子を 、コアや ェンベ口ー プに修飾 すること が可能で ある。

  本研究では腫瘍を標的とした、in vivo血中投与型MENDの構築を目的に研究を行 った。初めに血中滞留化とEPR (Enhanced permeability and retention)効果によ る効率 的な腫瘍 への移行 を目的に、MENDに水溶性高分子PEGの修飾を試みた。PEG で 覆わ れ たMEND (PEG‑MEND)は 、 血中 滞 留性は上 昇したもの の、標的 細胞との 相互作用が阻害され、in vitro細胞系において遺伝子発現活性が著しく減少した。っま り、PEGは必要であるが邪魔であるという、『PEGのジレンマ』ともいうべき問題が 生じた。これは遺伝子や機能性核酸のべクター開発において世界中の研究者が直面し ている難問である。

  そこで、腫瘍特異的に発現しているマトリックスメ夕口プ口テアーゼ(MMP)に着 目し、 腫瘍MMPによ って特異 的に切断 されるPEG脂 質誘導体 を開発することでPEG のジレンマの解決を試みた。

  MMPに よ り切 断 さ れる ぺ プチ ド 配 列をPEGとり ン 脂 質で あ るDOPEに 挿入し た PEG‑ベ プチ ド‑DOPE (PPD)を設計 した。活 性エステ ル化PEGを重合 し、ベプ チド N末端と 結合させ 、ペプチ ドC末端とDOPE一級アミ ンとを結 合しPPDを合成した。

  次 に 、MMPに よ っ て 切 断 が 確 認 さ れ たPPDをMENDに 修 飾 し(PPD‑MEND)、

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PEG‑MENDと 比較 して 遺伝 子発 現活 性が 改善 され るか 否か 、in vitro細胞 系、 およ び in vivo担癌モデルマウスを用いて評価した 。

  In vitro細 胞 系 に お い て は 、PPD‑MENDの ル シ フ ェ ラ ー ゼ の 発 現 活 性 は PEG‑MENDに 比 較 し て 、 MMP依 存 的 な 上 昇 が 観 察 さ れ た 。 ま た こ の 上 昇 は 、 細胞への取り込 み量の増加やエンドソーム脱出の促進といった、PEGの切断に依存した細 胞内動態の改善 によることが明らかとなった。

  In vivoに お け るPPD.MENDの 血 中 滞 留 性 はPEG未 修 飾MENDと 比 較 し て 有 意 に 上 昇していた。ま た、担癌モデルマウスにおいて、EPR効果を介した腫瘍への移行が見られ た 。 そ の 結 果 、PEG.MENDと 比 較 して 腫瘍 にお ける ルシ フェ ラ ーゼ 活性 が上 昇し 、 PPD.MENDはinvivoにおいても機能すること が示唆された。

  し か し 、PPDはPEG修 飾 ほ ど 血 中 滞 留 性 を 付 与 す る こ と が 出 来ず 、体 内動 態で は PEG.MENDに劣っていた。体内動態と細胞内動態は遺伝子発現 活性に直列的に影響する ため、両者のバ ランスを最適化する必要がある。そこで、体内動態の改善を目的として、

PEGとPPDを1:1で 混 合 修 飾 し たPEG/PPD.MENDに よ る 検 討 を 行っ た。 その 結果 、 血 中滞 留性、腫瘍への移行が促進 され、遺伝子発現活性もPPD.MENDより上昇すること が 明 ら かと なっ た。 以上 の検 討を 通レ て、PPD.MENDは戦 略通 りにPEGの ジレ ンマ 解 決の機能素子と して有用であるとことが示唆された。

  最後に核酸医 薬として大きな期待が寄せられているsiRNAのデリパリーシステム とし てPPD.MENDの 機 能 評 価 を 行 っ た 。s皿NAを 封 入 し たMENDの 血 中滞 留性 をさ らに 向 上 さ せ る た め に 、 従 来 、 分 子 量2000で あ っ たPEGと は 異 な る 、分 子量5000のPEGを 組 み 合 わせ 検討 を行 った 。そ の結 果、PPDを 多く 含ん でい ても 従来 のPEG.MENDと 同 等 の 血 中滞 留性 を維 持で きるPPD.MENDの最 適化 に成 功し た。 このPPD,MENDを血 中 投与すると、EPR効果を介して効率よく腫瘍 に蓄積した。また、組織切片の観察により、

ほ と ん ど の が ん 細 胞 にPPD.MENDが 分 布 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ の PPD.MENDを投与後、腫瘍組織においてマーカー遺伝子である ルシフウラーゼの活性を 評 価し たところ、70%以上もの高 い効率でノックダウンしていた。PPD.MENDを投与し ても、肝毒性や サイトカイン産生といった毒性は見られなかった。さらに、MEND投与後 の脾臓における 網羅的な遺伝子発現変動をマイク口アレイで解析したところ、インターフ ェ ロ ン に 関 わ る 遺 伝 子 の 発 現 変 動 が 、PEG未 修 飾MENDと 比 較 してPPD.MENDで抑 制 していた。

  以上 の検 討か ら、PPD.MENDは血 中投 与後invivo腫 瘍に お いて効率よく機能し、ま た 安 全 性 に も 優 れ た デ リ パ リ ー シ ス テ ム で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

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学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 准教授 准教授

原 島 秀 吉 松 田    彰 紙 谷 浩 之 南 川 典 昭

学 位 論 文 題 名

     腫 瘍 選 択 的 活 性 化 を プ ロ グ ラ ム し た 血中投 与型多 機能性ナ ノ構造体による腫瘍への      遺 伝 子 デ リ バ リ ー シ ス テ ム の 構 築

  新 た な 治 療 法 と し て 期 待 さ れ る 遺 伝 子 治 療 に お し ゝ て 、 臨 床 例 の 約70% は が ん 治 療 で あ る 。 ま た 、 臨 床 例 の 多 く は ウ イ ル ス ベ ク タ ー に よ り 実 施 さ れ て い る が 、 死 亡 例 や 自 血 病 の 誘 発 が 報 告 さ れ 安 全 性 の 問 題 が 指 摘 さ れ て い る 。 従 っ て 、 が ん を 標 的 と し た 高 性 能 か つ 安 全 性 に 優 れ た 人 工 ベ ク タ ー の 開 発 は 、 が ん 遺 伝 子 治 療 の 実 用 化 へ の 大 き な ブ レ イ ク ス ル ー と な る 。 当 研 究 室 で は 高 い 活 性 と 安 全 性 に 優 れ た 新 た な 人 工 遺 伝 子 ベ ク タ ー と し て 多 機 能 性 エ ン ベ □ ー プ 型 ナ ノ 構 造 体(Multifunctional envelop‑type nano device; MEND)の 開 発 を 進 め て い る 。MENDは 核 酸 と ポ リ カ チ オ ン の 複 合 体 を コ ア と し て 脂 質 二 重 膜 に よ ル コ ー ト さ れ た 構 造 を 有 し て お り 、 体 内 お よ び 細 胞 内 で のMENDの 動 態 を 制 御 す る た め の 様 々 な 機 能 素 子 を 、 コ ア や ェ ン ベ 口 ー プ に 修 飾 す る こ と が 可 能 で あ る 。

  本 学 位 論 文 で は 腫 瘍 を 標 的 と し た 、in vivo血 中 投 与 型MENDの 構 築 を 目 的 に 研 究 を 行 っ た 。 初 め に 、 血 中 滞 留 化 とEPR (Enhanced permeability and retention) 効 果 に よ る 効 率 的 な 腫 瘍 へ の 移 行 を 目 的 に 、MENDに 水 溶 性 高 分 子PEGの 修 飾 を 試 み た 。PEGで 覆 わ れ たMEND (PEG‑MEND)は 、 血 中 滞 留 性 は 上 昇 し た が 、 in vitro細 胞 系 に お い て 遺 伝 子 発 現 活 性 が 著 し く 減 少 し た 。 っ ま り 、PEGは 必 要 で あ る が 邪 魔 で あ る と い う 、 『PEGの ジ レ ン マ 』 と も い う べ き 問 題 が 生 じ た 。 こ れ は 遺 伝 子 や 機 能 性 核 酸 の ベ ク タ ー 開 発 に お い て 世 界 中 の 研 究 者 が 直 面 し て い る 難 問 で あ る 。

  そ こ で 畠 山 は 、 腫 瘍 特 異 的 に 発 現 し て い る マ ト リ ッ ク ス メ 夕 口 プ 口 テ ア ー ゼ

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  (MMP) に着目 し、 腫瘍 MMP によ っ、 て特異 的に 切断 され るPEG 脂質誘導体を 開発す るこ とで PEG のジ レン マの解決を試みた。MMP により切断されるべプチ ド 配 列 を PEG と り ン 脂質 で あ る DOPE に 挿 入 し た PEG‑ ペ プ チ ド ‑DOPE (PPD) の設計と合成に成功した。

   次 に 、 MEND を PPD 修 飾 し (PPD‑MEND) 、 PEG‑MEND と 比 較 し て 遺 伝 子 発現活性が改善されるか否か、in vitro 細胞系、およびinvivo 担癌モデルマウ スを用 いて 検討 した 。In vitro 細胞系では、PPD‑MEND のルシフウラーゼの発 現活 性 は PEG‑MEND に 比 較 し て 、 MMP 依 存 的 に 上 昇 した。 また この 上昇 は、

PEG の切断に依存した細胞内動態の改善によることが明らかとなった。In vivo に お け る PPD‑MEND の 血 中 滞 留 性 は PEG 未 修 飾 MEND と 比 較 し て 有 意 に 上 昇し 、 EPR 効 果 を 介 し た 腫 瘍 への 移 行 が 見 ら れ た 。その 結果 、PEG‑MEND と 比較 し て 腫 瘍 に おけ るル シフ ェラ ーゼ活 性が 上昇 し、PPD‑MEND は invivo に おいても機能することが示唆された。

     しかし、PPD は PEG 修飾ほど血中滞留性を付与することが出来ず、体内動態 では PEG‑MEND に 劣っ てい た。 体内 動態と 細胞 内動 態は遺 伝子 発現 活性 に直 列的に影響するため、両者のパランスを最適化する必要がある。そこで、体内動 態 の 改 善 を 目 的 と し て 、 PEG と PPD を 1 : 1 で 混 合 修 飾 し た PEG/PPD‑MEND による検討を行った。その結果、血中滞留性、腫瘍への移行が促進され、遺伝子 発現活性もPPD‑MEND より上昇することを明らかとした。

   最後に核酸医薬として大きな期待が寄せられているsiRNA のデリバリーシス テム と し て PPD‑MEND が有 用で ある か検討 した 。血 中滞留 性の さら なる 向上 を目的 に、 異な る分 子量の PEG の組み合わせを調ベ、 PPD を多く含んでいても 従 来 の PEG‑MEND と 同 等 の 血 中 滞 留 性 を 維 持 で き る PPD‑MEND の 最 適 化 に 成功 し た 。 こ の PPD‑MEND を 血 中投 与 す る と 、 EPR 効果を 介し て効 率よ く腫 瘍に 蓄 積 し 、 多 くの 腫瘍 細胞 にPPD‑MEND が分 布し ている こと が明 らか とな った。また、腫瘍組織においてマーカー遺伝子であるルシフウラーゼの活性を、

70 %以 上も の高 い効 率でノ ックダウンしていた。一方、 PPD‑MEND を投与して も、肝毒性やサイトカイン産生といった毒性は見られなかった。また、脾臓にお ける遺伝子発現変動をマイク口アレイで網羅的に解析したところ、インターフェ 口 ン に 関 わ る 遺 伝 子 の 発 現 変 動 が 、 PEG 未 修 飾 MEND と 比 較 し て PPD‑MEND で抑制していた。

   本研 究に おい て構 築され た PPD‑MEND は血中投与後invivo 腫瘍において効率

よく機能し、また安全性にも優れたデリバリーシステムであり、独創性と新規性に

おいて、学位論文に値すると判断する。

参照

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