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博 士 ( 薬 学 ) 桐 山 賀 充

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 桐 山 賀 充      学 位 論 文 題 名

カ ル シ ト ニ ン の 脳 お よ び 下 垂 体 に お け る 発 現 と そ の 生 理 的 意 義

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

1.序論

  カJレシトニン(CT)は、32アミノ酸残基からなるべプチドホルモンであり、

血中カルシウム濃度の調節を担うホルモンとして知られている。現在、CTの 臨床応用としては、骨粗鬆症や悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症などの治療 に用いられている。一方、CTば丶脳室内投与による鎮痛作用、下垂体からの 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)およびp・endorphinの分泌の促進、食欲の抑 制など多岐にわたる中枢作用を有している。CTによる鎮痛作用が、熱刺激や 機械刺激に対してよりも炎症に対して強く発現すること、CTの脳室内投与に より、血中ACTHが上昇することなどから、末梢での免疫反応に対して、CTが 中枢神経系または、内分泌系を介して作用する可能性がある。そこで、CT の産生と生理作用さらに、中枢神経系およぴ内分泌系におけるCTの役割を 明らかにすることを目的として、in vitroとinvivoの両者の系を用いて検討 した。

2. ヒト グ1Jオ ブ ラス ト ーマ 細 胞株A172に おけ るCTのInterleukin  6

(IL ‑6)産生

  細胞レベルでCT受容体(CTR)の存在が確認されているのはアストロサイ トである。したがって、ヒトグリオブラストーマ細胞株A172を用いて、中枢 神経系におけるCTの役割を検討した。A172細胞において、CTはIL‑6を産生さ せることが見出された。CTは用量依存的にcAMPを上昇させ、IL‑6の産生量と よく対応していた。さらに、PKA特異的阻害薬であるH89がCTによるIL‑6の産 生を抑制したことから、CTはセカンドメッセンジャーであるcAMP生成を介し て、IL‑6を産生させると推定した。

  CTとCGRPは、アミノ酸残基数が同程度で、N末端側およびC末端側に類似し た構造をもっている。したがって、CTとCGRPは、互いの受容体とも結合して その作用を発現している可能性がある。CTおよぴCGRPの各々の受容体に対す るアンタゴニストであるsCT(8‑ 32)とhCGRP (8‑37)を用いて、cAMP生成を 指標に検討した結果、CT、CGRPは各々各自の受容体を介してその作用を発現 していることが明らかになった。

3.lipopolysaccharide (LPS) 投 与 に よ る 炎 症 モ デル ラ ット の 作成   ラッ トにLPS(5mg /kg body weight)を腹腔内に投与し、炎症モデル ラットを作成した。ラットの体温は、平常時では38  ℃であるが、LPS投与 1.5時間後には、37℃まで体温が下降した。3時間後には、コントロールと

(2)

同じ体 温まで回 復したが 、4時間後 には、コ ントロール に比ベO.5℃前後の 体 温の 上 昇 が認 め られ た 。血中ACTH値 は、平常 時では、5pg/ml以下であっ たが、LPS投与1.5時 間後に約200 pg/mlまで上昇し、その後減少していき、

12時間後 には、約35 pg/mlまで減少 した。下垂体において、ACTHの前駆体で あるPOMCのmRNAの発現を 調べたと ころ、LPSによるPOMC mRNAの発現は変化し ていな かった。 一方、下 垂体にお いて、LPS投与3時間後にIL‑lt3、IL‑6およ OcTNF ‑aのmRNAの発 現が認め られた。 このことは、下垂体においても、サイ ト カ イ ン 誘 導 の ネ ッ ト ワ ー ク が 存 在 す る こ と を 示 唆 し て い る 。 4. LPS投 与 ラ ッ ト 下 垂 体 に お け るCT  mRNAの 誘 導お よ び血 中CT値 の 変 動

  RT‑ PCR法 に よル ラ ット の嗅球以 外の脳全 域および 下垂体に おいて、CTR mRNAが 検出 さ れ た。 一 方、CTmRNAはコ ン トロ ー ル およ びLPS投与 したラッ ト の脳 で は 検出 で きな か ったが、 下垂体に おいて、CTmRNAが発現して いる こ とが 分 か った 。LPS投 与ラ ットの下 垂体にお けるCT  mRNAは、6時間後に 発現が 誘導され 、12時間後 まで発現 は持続し ていた。LPS投 与ラット の血中 CT値は、 平常時に おいて、40 pg/ml前後であ ったが、LPS投与後3時間 から6 時 間に お い て、50 pg/mlまで上昇 し、その 後、減弱 すること が分かった 。 5. 下 垂 体 星 状 濾 胞 (Folliculo‑ Stel late,FS) 細 胞株TtT/GFにお け るCTの作用

  ラット にCTを過剰 投与する と、FS細胞 において、下垂体腺腫が発現する。

さらに 、FS細胞は アストロ サイトに 類似している。これらのことから、FS細 胞にグ リア細胞 と同様にCTRが存在し 、CTがCTRに結合することにより情報が 伝達さ れると推 定した。 マウスFS細 胞株TtT/GFにCTを添加すると、用量依存 的 に細 胞 内cAMPが上 昇 した。 また、CGRPを 添加した 場合も、 同様に細胞 内 cAMPの 上昇 が 認 めら れ た。っ ぎに、sCT (8‑32)とhCGRP (8‑37)を用いてCT およびCGRPによるcAMP生 成につい て検討した結果、FS細胞においても、CTお よびCGRPは 各々独自 の受容体 を介してcAMPを増加させていることが明らかに なった 。また、FS細胞に11‑lpお よびlTNF‑Qを添 加すると 、著しくIL‑6が増 加する ことが認 められた 。さらに 、CTはこれらのサイトカインによるIL‑6の 産生を増強させることも明らかになった。

6.結論

1)グリ ア細胞に おいて、CTが独自の 受容体に 結合し、cAMPを セカンドメッ センジャーとしてIL‑6を産生させることが見出された。

2) LPSを投与したラットにおいて、下垂体のCT mRNAの発現が上昇した。この CTmRNAの 発 現 の上 昇 は血 中のCT量 の増加を 伴ってお り、CTが甲 状腺だけで は な く 下 垂 体 か ら も 血 中 に 分 泌 さ れ る 可 能 性 を 示 唆 し て い る 。 3) LPS投与ラットの下垂体において、11‑1p、ILー6およびtTNF‑a mRNAの発現 が誘導されることが分かった。

4) FS細胞において、CTがIL‑6を産生させた。さらに、CTがIL ‑lt3およびTNF・ aによるIL‑6産生を増強させることも見出された。

  下垂体 において 、IL‑6はACTH、プ ロラクチンなどの各種ホルモンの誘導を 起こす 重要な因 子のーつ である。ACTH、プロラクチンなどの下垂体ホルモン は炎症 に深く関 わってい ることか ら、CTはIL‑6の産生を介して、炎症の際に 重要な役割を担っていることが推定された。

557一 ・

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    徳光幸子 副 査    教授    栗原堅三 副 査    教授    野村靖幸 副査   助教授   大熊康修      学位論文題名

カルシトニンの脳および下垂体における 発現とその生理的意義

  カルシトニンは、32アミノ酸残基からなるペプチドホルモンであり、血 中カルシウム濃度の調節を担うホルモンとして知られている。一方、カルシ トニンは、脳室内投与による鎮痛作用、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン (ACTH)およびendorphinの分泌の促進、食欲の抑制など多岐にわたる中枢 作用を有している。

  本論文提出者は中枢神経系および内分泌系におけるカルシトニンの役割を 明 らか にす ること を目 的と して 研究を 行い、以下の成果をおさめた。

1.細胞レベルでカルシトニン受容体の存在が確認されているヒトグリオブ ラストーマ細胞株A172を用いて、中枢神経系におけるカルシトニンの役割 を検討した。A172細胞において、カルシ卜ニンはIL−6を産生させることが 見出された。カルシトニンは用量依存的にcAMPを上昇させ、IL−6の産生量 とよく対応していた。さらに、プロテインキナゼAの特異的阻害薬であるH89 がカルシトニンによるIL―6の産生を抑制したことから、カルシトニンはセ カンドメッセンジャーであるcAMP生成を介して、IL−6を産生させると推定 した。

2.カルシトニンとcalcitonin gene related peptide (CGRP)は、アミノ酸 残基数が同程度で、N末端側およびC末端側に類似した構造をもっている。

したがって、カルシトニンとCGRPは、互いの受容体とも結合してその作用 を発現している可能性がある。カルシトニンおよびCGRPの各々の受容体に 対するアンタゴニストであるサケカルシトニン(8−32)とヒトCGRP(8−37) を用いて、cAMP生成を指標に検討した結果、カルシトニン、CGRPは各々各 自 の受 容体 を介し てそ の作 用を 発現し ていることが明らかになった。

3.ラットにlipopolysaccharide (LPS)を腹腔内に投与し、炎症モデルラッ

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トを作成した。ラットの体温は、平常時では38℃であるが、LPS投与1.5 時間後には、37℃まで体温が下降した。3時間後には、コントロールと同 じ体温まで回復したが、4時間後には、コントロールに比べ0.5℃前後の体 温の 上昇が認め られた。血 中ACTH値は、平常時では、5pg/ml以下であっ たが、LPS投与1.5時間後に約200 pg/mlまで上昇し、12時間後には、約35 p g/mlまで減少した。下垂体において、ACTHの前駆体であるPOMCのmRNAの 発現を調べたところ、LPSによるPOMCmRNAの発現は変化していなかったが、

LPS投与3時間後にIL−lB、ILー6およびTNFーaのmRNAの発現が認められた。

このことは、下垂体においても、サイトカイン誘導のネットワークが存在す ることを示唆している。

4.RT―PCR法によルラットの嗅球以外の脳全域および下垂体において、カル シトニン受容体mRNAが検出された。一方、カルシトニンH1RNAはコントロー ルおよびLPS投与したラットの脳では検出できなかったが、下垂体に、カル シトニンmRNAが発現していることが分かった。LPS投与ラットの下垂体に おけるカルシトニンmRNAは、6時間後に発現が誘導され、12時間後まで発 現は持続していた。LPS投与ラットの血中カルシトニン値は、平常時におい て、40pg/ml前後であったが、LPS投与後3時間から6時間において、50pg/ml まで上昇し、その後、減弱することが分かった。

5.ラットにカルシトニンを過剰投与すると、下垂体星状濾胞細胞に下垂体腺 腫が発現する。これらのことから、マウス下垂体星状濾胞細胞細胞株TtT/GF TtT/GFにカルシトニンを作用させると、用量依存的に細胞内cAMPが上昇し た。また、CGRPを添加した場合も、同様に細胞内cAMPの上昇が認められた。

っぎに、サケカルシトニン(8ー32)とヒトCGRP(8ー37)を用いてカルシト ニンおよびCGRPによるcAMP生成について検討した結果、TtT/GF細胞にお いても、カルシトニンおよぴCGRPは各々独自の受容体を介してcAMPを増加 させていることが明らかになった。ILーlBおよびTNF―Qを添加すると、IL− 6が増加したが、さらに、カルシトニンを添加すると、これらのサイトカイ ンによるIL−6の産生が著しく増強されることも明らかになった。以上のこ とから、カルシトニンが下垂体からも分泌され、ILー6の産生を介して、炎 症の際に重要な役割を担っていることを突き止めた。

  以上の新知見およびこれらの研究を遂行するために考案した研究手法はカ ルシトニンの新しい中枢における作用を見いだし、作用機構の解明に寄与し たものである。審査員一同はこれら一連の研究を高く評価し、本論文提出者 が 博 士( 薬 学) の 称号を受 けるにふさ わしいと判 断したもの である。

参照

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