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博 士 ( 薬 学 ) 荒 川 浩 治

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 荒 川 浩 治

学 位 論 、 文 題 名

トポイソメラーゼ阻害活性を有する化合物の抗腫瘍活性および 臓器内増殖腫瘍に対する増殖抑制作用に関する研究

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  トポイソメラー ゼ(Topo)は、抗がん剤の新た な標的として近年注目され ている酵素である。

著 者 は 、Top01阻 害 活 性 を 有 す る イ ン ド ロ カ ル バ ゾ ー ル 系 化 合 物ED‑110、NB‑506お よぴ Topo II阻害活性を 有するキノ口ン系化合物を 見いだし、in vitroおよびin vivoで抗腫瘍活性 に つ い て 検 討 を 行 い 、Topo阻 害 剤 の 抗 が ん 剤 と し て の 可 能 性 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。   さ ら に、 著者 は、 癌治 療 のも うー つの問題である癌転移につ いても着目した。著者は、 新 たに 高 転移 細胞 株(IMC‑HM)を分 離し 自然 転 移系 を樹 立し た。 さ らに 、本 モデ ル系 が、臓 器 内増 殖 腫瘍 に対 する 抗が ん 剤の 評価 に用いられることを確認し 、前述のNB‑506および数種 の 抗 が ん 剤 に つ い て 臓 器 内 増 殖 腫 瘍 に 対 す る 増 殖 阻 害 効 果 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。   1. Topo阻害剤の 抗腫瘍活性

  (1)インドロカ ルバゾール系化合物ED‑110の抗腫瘍活性

  ED‑110は 、TopoIを選 択的 に阻 害 し、 その 活性 はcamptothecinと同等かややこれを上回 つ た。In vivoの 抗腫 瘍評 価で は、 腹 腔内 投与 のED‑110がP388、L1210自血 病細 胞移 植マウ ス に 対 し 、2倍 以 上 の 延 命 効 果 を 示 し た 。 マ ウ ス腫 瘍colon 26をマ ウ ス皮 下に 移植 し、480 mg/m2のED‐110を投 与す る と、83ゲ 。と有意な固型腫瘍の増殖 阻害効果を示した。さらに ヒ ト 胃 癌 細 胞 株MKN145を 移 植 し た ヌ ー ド マ ウ スにED‐110を投 与す る と、30mガm2の投 与で 50弼以上の有意な 増殖抑制効果を示した。

  以 上 の結 果よ り、 イン ド ロカ ルバ ゾー ル 系物 質で あり 、Top01阻害 活 性を 有す るED−l10 は、 自 血病 のみ なら ずヒ ト 癌を 含め た固型腫瘍に対して、強い 効果を示すことを明らかに し た。

  (2)キ丿ロン系 化合物の抗腫瘍活性

    キノロン系化 合物のL1210マウス細胞に対 するDNA−Topo複合体(cleavablecomplex)形成 促進 作 用と 腫瘍 細胞 増殖 阻 害効 果と の間に強い相関関係が認め られ、キ丿ロン系合物のTop0 阻害 活 性と 腫瘍 細胞 増殖 阻 害効 果の 関連 性 が明 らか にな った 。さらに、ヒト乳癌MX‐1に 対 する抗腫瘍評価の 結果、キノロン系化合物のcleavablecomplex形成促進作用(三Topo阻害活性)

  と抗腫瘍効果が 相関していることが明らかに なった。

    2. イ ン ド ロ カ ル バ ゾ ー ル 系 物 質NB.506の 抗 腫 瘍 活 性 お よ び 安 全 域   TopoIを 選 択 的 に 阻 害 す るNB.506は 、 細 胞 レ ベ ル でRANお よ びDNA合 成 を 阻 害 す る 。 しか し 、他 のイ ンド ロカ ル バゾ ール 系化合物で報告されている プ口テインキナーゼ阻害活 性 は有せず、RNAおよ びDNAポリメラーゼ阻害活性 を示した。

    マウスに移植 した固型癌に対しNB‐506は 、有意な増殖阻害効果を示し た。さらにNB‐506 の投与により、ヌ ードマウス移植ヒト大腸癌、 ヒト肺癌およびヒト胃癌は 退縮傾向を示した。

  NB‐506の 至 適投 与ス ケジ ュー ル の検 討をMKN.45固型 癌を 用 いて 行っ た結 果、 連続投 与 カ彊瘍退縮効果、 再増殖開始までの抑制期間に ついて強い効果を示すこと が明らかになった。

さら に 、連 続投 与に よる 体 重減 少等 も認められないことから、 連続投与による治療が至適 と 考えられた。

  LD知 を 指 標 と し た 毒性 にお い てもNB‐506は、 単回 投与 お よび10回 連続 投与 で それ ぞれ     ー164一

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990 mg/m および810mガm ̄/dayx10を示し、他の抗癌剤(et叩0side、addamycin、cisplann、 mnotecan)と比べ、蓄積毒性は低いと考えられた。

  以上の結果よりNB‐506は、固型腫瘍に対し強い抗腫瘍活性を示し、且つ、蓄積毒性が低 くい薬剤と考えられた。

  3.新規癌自然転移系(臓器内増殖腫瘍)の構築

  IMCcarcinoma細胞をマウス皮下に移植してもマウスは、50日以上生存する。著者は、こ のIMC細胞の中に転移能の高いsub・populationがあることを見いだした。これをIMC‐HM細 胞 とし、詳 細な検討 を行っ た。5x104個のIMC‐HM細胞をCDFlマウスの皮下に移植する と細胞移植後10日目には肝に限局した転移巣が認められた。さらに、高転移細胞移植マウ スは、細胞移植後13〜18日で全例死亡することが観察された。13日目で死亡したマウスで は、肝、リンパ節、肺、脾、等で転移巣が確認された。

  IMC・HM細胞移植後3日目に移植部位の腫瘤を摘出しても、その延命日数に変化は認めら れなかった。以上の結果より、この細胞の転移は、移植後3日以内に起こり、始めに肝、そ れから全身の臓器へと転移すると考えられた。

  この転移モデルは、自然転移であるため原発巣からの遊離、拡散、浸潤、増殖の各ステッ プを含めての評価が可能であると考えられる。さらに、原発巣の手術切除により臓器内増殖 腫瘍(特に肝)モデルとしても有用であると考えられる。早い時期の肝への転移、その後の全 身転移と臨床における癌転移と類似しており、抗転移剤あるいは臓器内増殖腫瘍に対する薬 剤の評価に適したモデルと考えられる。

  4.まとめ

  TopoI選択的な阻害活性を示すインド口カルバゾール系化合物ED−110、NB‐506および TopoII阻害活性を有するキノロン系化合物を用い、Topo阻害活性と抗腫瘍活性あるいは臓 器 内 増 殖 腫 瘍 に 対 す る 阻 害 活 性 の 検 討 を 行 う こ と に よ り 以 下 の 知 見 を 得 た 。   (1)インドロカルバゾール系化合物ED‐110ならびにNB‐506が、TopoIを選択的に阻害し、

    マウス腫瘍およびヒト腫瘍に対し強い増殖抑制効果を示した。さらに、NB.506は、ヒ     ト固型腫瘍に対し退縮作用も示した。NB‐506は動物に対し低蓄積性を示し連続投与が     可能であることも明らかした。

  (2)キノ口ン系化合物においては、細胞レベルでのTopo阻害活性と腫瘍細胞増殖抑制効果     が強い相関を示し、さらに、ヒト乳癌MX‐1に対しTopo阻害活性と抗腫瘍活性の間に     強い相関性があることを明らかにした。

  (3)抗転移活性の評価を行うため、肝高転移株IMC‐HM細胞を単離し、新たな自然転移モ     デルの構築を行った。この細胞は、皮下移植後3日以内に肝へ転移し、その後全身の     臓器ヘ転移しマウスを腫瘍細胞移植後13〜19日で致死せしめる。この系は、自然肝     転移モデルであることから、化合物の抗転移活性評価モデル(特に肝転移)として有用     であると考えられた。さらに、原発巣から腫瘍細胞移植3日以内に肝へ転移、肝で増     殖することから、腫瘍移植後3日で原発巣を手術摘出することにより、臨床における     腫瘍摘出手術後の組織内微小転移巣増殖モデルとしても有用性が高いことを明らかにし     た。

  (4)TopoI阻害剤NB.506は、原発巣の増殖抑制のみならず、転移した腫瘍細胞の臓器内で     の 増 殖 を 抑 制 し 、 延 命 効 果 を も た ら す こ と を 明 ら か に し た 。     これらの知見を総合すると、Topo阻害剤は、自血病のみならず、固型腫瘍の治療薬として 有用であると考えられ、さらに、臓器内増殖腫瘍に対する増殖阻害をも持ち合わせており、

癌化学療法に有用な薬剤になる可能性を示唆したら

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    大 塚 栄子 副 査    教 授    松 田    彰 副 査    教 授    井 上 英夫 副査   助教授   周東   智

学 位 論 文 題 名

トポイソメラーゼ阻害活性を有する化合物の抗腫瘍活性および      臓 器 内 増 殖 腫 瘍 に 対 す る 増 殖 抑 制 作 用 に 関 す る 研 究

   申請者はトポイソメラーゼ阻害活性を有する化合物抗腫瘍活 性および臓器内増殖腫瘍に対する増殖抑制作用について研究を 行ってき たが、インドロカル ノヾゾール系化合 物ED ‐110 、 NB ‐506 の作用およぴ抗がん剤としての可能性について新知見を 得た。癌転移についても着目し、新たに高転移細胞株系樹立し、

本モデル系が、臓器内増殖腫瘍に対する抗がん剤の評価に用い られることを確認し、前述の NB ‐506 および数種の抗がん剤の 評価に用いられることを見いだした。

  1 .Topo 阻害剤の抗腫瘍活性

( 1 ) イ ン ド ロ カ ルバ ゾ ―ル 系化 合 物 ED‑110 の 抗腫 瘍 活性 ED ‐ 110 は 、 TopoI を 選 択 的 に 阻 害 し 、 そ の 活 性 は camptothecin と同等かややこれを上回った。In vivo の抗腫瘍評 価では、腹腔 内投与のED‑110 がP388 、 L1210 自血病細胞移 植 マウスに対し、 2 倍以上の延命効果を示した。マウス腫瘍colon 26 をマウス皮下に移植し、480 mg/m2 のED‑110 を投与すると、

83 %と有意な固型腫瘍の増殖阻害効果を示した。さらにヒト胃

癌細胞株 MKN ‐4 .5 を移植したヌードマウスにED −llO を投与す

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ると、 30 mg/m2 の投与で50u/o 以上の有意な増殖抑制効果を示 した。

以上の結果より、インドロカルノヾゾール系物質であり、Topo I 阻害活性を有するED ―110 は、白血病のみならずヒト癌を含め た固型 腫瘍に対して、強い効果を示すことを明らかにした。

(2) キノロン系化合物の抗腫瘍活性

   キノ口ン 系化合物の L1210 マウス細胞に対するDNA ― Topo 複 合体(cleavable complex) 形成促進作用と腫瘍細胞増殖阻害効果 との間 に強い相関関係が認められ、キノロン系合物の Topo 阻 害活性と腫瘍細胞増殖阻害効果の関連性を明らかになった。さ らに、ヒト乳癌 MX ‐1 に対する抗腫瘍評価の結果、キノロン系 化合物のcleavable complex 形成促進作用(=Topo 阻害活性)が抗 腫 瘍 効 果 に 反 映 し て い る こ と が 明 ら か に な っ プ こ 。

  2 . イ ン ド ロ カ ル パ ゾ ー ル 系 物 質 NB‑506 の 抗 腫 瘍 活 性      ,および安全域

  TopoI を選 択的に阻害する NB ― 506 は、細胞レベル で RAN お よびDNA 合成を阻害する。しかし、他のインドロカルノヾゾー ル系化合物で報告されているプロテインキナーゼ阻害活性は有 せ ず 、 RNA お よ び DNA ポ リ メ ラ ー ゼ 阻 害 活 性 を 示 し た 。 マウス に移植した固型癌 に対し NB ‐ 506 は、有 意な増殖阻害 効果を示した。さらにNB ―506 の投与により、ヌードマ、ウス移 植ヒト 大腸癌、ヒト肺癌 PC‑13 およびヒト胃癌 MKN‑45 は退縮 傾向を示した。

NB ― 506 の至適投 与スケジュールの検討をMKN ・ 45 固型癌を用 いて行った結果、連続投与が腫瘍退縮効果、再増殖開始までの 抑制期間について強い効果を示すことを明らかにした。さらに、

連続投与による体重減少等も認められないことから、連続投与

に よ る 、 治 療 が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。

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  3. 新 規 癌 自 然 転 移 系 ( 臓 器 内 増 殖 腫 瘍 ) の 構 築   IMC carcmoma 細胞をマウス皮下 に移植してもマウスは、50 日 以上生存する。申請者は、この IMC 細胞の中に転移能の高い sub −population カミあることを見いだした。これを IMC ‐HM 細胞 と し 、 詳 細 な 検 討 を 行 っ た 。 5Xl04 個の IMC‑HM 細胞 を CDFi マ ウスの皮下に移植す ると細胞移植後 10 日目には肝に限局し た転移巣が認められた。さらに、高転移細胞移植マウスは、細 胞移植後 13 ‑  18 日で全例死亡することが観察された。13 日目 で死亡したマウスでは、肝のみならずりンノヾ節、肺、脾、卵巣 等で転移巣が確認された。

IMC − HM 細 胞 移植 後 3 日 目に 移植 部 位の 腫瘤 を 摘出 しても、

その延命日数に変化は認められなかった。以上の結果より、こ の 細胞の転移は、移植後3 日以内に起こり、始めに肝、それか ら全身の臓器へと転移することを示し、この転移モデルは、自 然転移であるため原発巣からの遊離、拡散、浸潤、増殖の各ス テップを含めての評価が可能であると考えられる。さらに、原 発巣の手術切除により臓器内増殖腫瘍(特に肝)モデルとしても 有用であると考えられる。早い時期の肝への転移、その後の全 身転移と臨床における癌転移と類似しており、抗転移剤あるい は臓器内増殖腫瘍に対する薬剤の評価に適したモデルであるこ とを見いだした。

   以上の研究は博士(薬学)の学位を受けるのに十分値するも

のと認めた。

参照

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