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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 中谷夏織 論文審査担当者 主査神奈木真理副査鍔田武志 東田修二 論文題目 Cord blood transplantation is associated with rapid B-cell neogenesis compared with BM transpl

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Academic year: 2021

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 中谷 夏織

論 文 審 査 担 当 者 主査 神奈木 真理

副査 鍔田 武志、東田 修二

論 文 題 目 Cord blood transplantation is associated with rapid B-cell neogenesis compared with BM transplantation (論文内容の要旨) <要旨> 造血細胞移植は造血疾患の治療として用いられている。不十分な免疫回復は臨床予後に重大な 影響を与えることから造血細胞移植後のT 細胞、B 細胞の再構築の評価は重要である。この研究 で我々は免疫学的因子が造血細胞移植後の感染症に関連するかどうかを調べるために、133 名(原 発性免疫不全症56 名、悪性腫瘍 77 名、0-62 歳(中央値 12 歳))の TRECs(T cell receptor excision circles)、sjKRECs、cjKRECs(signal and coding joint kappa-deleting recombination excision circles)を後方視的に解析した。KRECs は TRECs より早く陽性となりその後上昇した。レシピ エント年齢が若いことは移植後のsjKRECs と cjKRECs の回復に寄与していた。また、臍帯血移 植は骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比してB 細胞の回復が早いことに寄与しており、年齢層の高 いレシピエントにおいても B 細胞新生能に寄与していた。慢性 GVHD は TRECs の低下に関連 していたが、sjKRECs や cjKRECs の増加とは関連していなかった。造血細胞移植 1 か月後に sjKRECs が陽性であることは移植後の感染症が少ないことと相関した。TRECs や KRECs のモ ニタリングは造血細胞移植後の免疫能再構築を評価する有用な手段になり得ると考えられた。 <緒言> 造血細胞移植は血液腫瘍、先天的骨髄疾患、原発性免疫不全症といった疾患の治療として行わ れている。免疫能再構築の評価は、移植後の感染症や原病の再発、生存に関連すると考えられて いるために重要である。 これまでCD4 陽性 T 細胞数や T 細胞増殖能、B 細胞数、血清 IgG が造血細胞移植後の免疫能 回復の指標として用いられてきた。近年、T 細胞や B 細胞の分化増殖過程で産生される TRECs やKRECs をそれぞれ解析することにより、T 細胞 B 細胞の新生能をより直接的に評価すること が可能となっている。 これまでの報告によると、TRECs の回復は悪性腫瘍における造血細胞移植後の生存や感染症に 関連し、TREC 値は骨髄移植や末梢血幹細胞移植よりも臍帯血移植後の患者で低いとされている。 また、KRECs のうち、coding joint KRECs(cjKRECs)は B 細胞数の指標、signal joint KRECs (sjKRECs)は B 細胞新生能の指標として用いられているが、造血細胞移植後の KRECs の回復

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についてはよく知られていない。移植後の KRECs と生存あるいは感染症との関連も今までに報 告されていない。さらにKRECs によって評価される B 細胞の回復が移植源によって異なるかど うかもまだわかっていない。

今回我々はTRECs と KRECs の回復に寄与する因子について、特に KRECs に焦点をあてて 解析を行った。また悪性腫瘍あるいは原発性免疫不全症の患者における造血細胞移植後の TRECs、KRECs と感染症の関連について研究を行った。 <方法> 1996 年 3 月から 2013 年 8 月に造血細胞移植を施行され、東京医科歯科大学小児科または血液 内科、防衛医科大学校小児科でフォローアップされていた133 名について研究を行った。移植時 年齢の中央値は 12 歳(0-62 歳)であった。この研究は東京医科歯科大学と防衛医科大学校の倫 理委員会の承認を得た。 TREC、sjKREC、cjKREC は造血細胞移植後 1 カ月、3 カ月、6 カ月、1 年毎にリアルタイム PCR によって測定し、RNase P を内因性コントロールとして用いた。TREC、KREC が 10 copies/µgDNA 未満を陰性と定義し、10 copies/µgDNA 以上を陽性と定義した。 ウイルスのゲノムDNA はマルチプレックス PCR あるいはリアルタイム PCR を用いて測定し た。前処置に関しては、放射線の 5Gy 以上の全身単回照射あるいは 8Gy 以上の分割照射、もし くは他の化学療法に加えて 8mg/kg 以上のブスルファン投与を施行した場合に骨髄破壊的処置と 定義した。HLA 分類は HLA-A、B、DRB1 の遺伝子型によって行い、GVHD は標準基準によっ てグレード分類を行った。感染症の発生は症状を有し、病原体が検出され、その重症度がCTCAE のグレード3 以上の時と定義した。 臨床パラメーターとしては、レシピエント年齢、レシピエントの性別、原疾患、前処置、ドナ ー年齢、移植源、HLA 一致度、血縁、急性 GVHD、慢性 GVHD、ステロイドの使用、抗胸腺グ ロブリン(antithymocyte glopbulin, ATG)の使用を選択した。生存率はカプランマイヤー法で 評価を行いログランクテストで比較した。単変量解析で有意(p<0.05)であった因子を多変量解 析で使用した。急性GVHD、慢性 GVHD、ステロイド使用、ATG 使用は造血細胞移植後の事象 であり他の因子に関連するため多変量解析から除外した場合と入れた場合の両方を検討し、ドナ ー年齢は骨髄移植に限定したため除外した。 <結果> まず始めに我々は造血細胞移植後のTREC、sjKREC、cjKREC の回復を評価した。

TRECs の回復よりも sjKRECs と cjKRECs の上昇は早く、sjKRECs と cjKRECs は相関して いた。このことはB 細胞の生着が一旦なされれば B 細胞の成熟は正常であることを示唆している。 TREC と sjKREC の回復にもいくらかの相関は認められるが、特に造血細胞移植後の早期におい てT細胞新生なしにB 細胞新生が多数の患者で認められた。 移植後1 カ月に sjKRECs が陽性であった患者の 71%で移植後 3 カ月の sjKRECs が上昇して いた。一方で移植後1 カ月の TRECs が陽性であることはその後の T 細胞回復を示すものではな かった。

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TRECs 回復についての長期解析において、臍帯血移植は骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比して 少なくとも劣っているものではなかった。KRECs の回復は臍帯血移植の方が骨髄移植よりも早 かった。回復したsjKRECs と cjKRECs の最終的な値は年齢が一致したコントロールと同程度で あった。 次に我々は、TRECs、sjKRECs、cjKRECs に寄与する因子についての評価を行った。 まず単変量解析を行い、その結果をもとに多変量解析を行った。単変量解析においてレシピエ ント年齢が若いことは TRECs および sjKRECs、cjKRECs の上昇に寄与し、骨髄移植において ドナー年齢が若いことはsjKRECs、cjKRECs の上昇に寄与していた。臍帯血移植は sjKRECs、 cjKRECs の上昇に寄与していた。単変量解析の結果、レシピエント年齢、原疾患、前処置、移植 源、血縁の因子を用いて多変量解析を行ったところ、多変量解析においてもレシピエント年齢が 若いことと臍帯血移植は sjKRECs と cjKRECs の上昇に寄与していた。急性 GVHD、ステロイ ドの使用、ATG の使用を解析に含めた場合には、grade0-2 の急性 GVHD、ステロイドの使用な し、ATG の使用なしが KRECs を上昇させることに寄与していた。さらに慢性 GVHD があるこ とは、単変量解析では sjKRECs、cjKRECs の低下することに寄与していたが、多変量解析にお いては慢性GVHD は B 細胞の回復に寄与していなかった。 我々は次に造血細胞移植後の感染症の発生との関連を調べた。移植後1 カ月の TRECs あるい はsjKRECs が陽性であることは感染症の減少と有意に相関していた(p=0.043, p=0.033)。さら に移植後1 カ月で sjKRECs、cjKRECs が陽性の群では細菌感染症が少ないという傾向が認めら れたが、統計学的有意差は得られなかった。 <考察>

我々は今回の研究で以下のことを見出した。1) sjKRECs と cjKRECs は TRECs よりも早く上 昇する。2) レシピエント年齢が若いことは sjKRECs、cjKRECs の回復に寄与している。3) 臍 帯血の使用は骨髄や末梢血の使用に比してsjKRECs、cjKRECs を早く回復させる。4) 移植後 1 カ月でsjKRECs が陽性であることは感染症の減少と相関する。

SjKRECs、cjKRECs は TRECs に先んじて上昇していた。また、移植後 1 カ月の sjKRECs が 陽性の患者では、3 カ月後、6 カ月後も sjKRECs が上昇しており、B 細胞の免疫能再構築を予測 することが示唆された。 レシピエント年齢が若いことはsjKRECs、cjKRECs の回復に寄与していた。既報告によると、 健常児において sjKRECs は 1 歳未満で最も高く年齢と共に低下する。このことからドナー年齢 が若いことはB 細胞の再構築に有利であると考えられる。我々の結果はレシピエント年齢が若い こともまた、sjKRECs、cjKRECs の上昇に寄与していることを示した。 さらに我々は臍帯血移植を受けた患者群で、骨髄移植と末梢幹細胞移植に比して、sjKRECs とcjKRECs の回復が早いことを見出した。臍帯血移植後に B 細胞再構築が早く行われることは 今までにも報告されており、我々の結果はB 細胞再構築が B 細胞新生によるものであり、末梢で の増殖によるものではないことを示唆した。

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- 4 - さらに、我々の結果はGVHD や ATG が、これまで報告されてきた T 細胞の回復だけでなく、 B 細胞の免疫能再構築にも影響を与えていることを示唆した。 慢性GVHD のある患者においては、TRECs に関しては予想通り移植後 6 カ月、1 年において 有意に低下していた。一方において慢性GVHD は B 細胞の増加に寄与するとの既報告とは異な り、移植後3 カ月から 2 年の KRECs は低下していた。この矛盾は、慢性 GVHD の患者ではよ り強力な免疫抑制剤を使用されていることに起因すると思われるが、今後更なる症例の集積およ び解析が望まれる。 我々の研究は、移植後1 カ月の TRECs、sjKRECs が陽性である患者は移植後の感染症に罹患 しにくいことを示唆した。早期のB 細胞の新生は早期の骨髄回復を達成すると考えられる。B 細 胞は抗体産生細胞に加えて抗原提示細胞としても働いていると考えられる。 臍帯血移植は、骨髄や末梢血に比較して、B 細胞の回復に優れており、また T 細胞の新生に劣る ものではなかった。このことは臍帯血移植後のB 細胞回復における量的優位性を示唆している。 免疫学的検査や、感染症、自己免疫、免疫学的所見といった臨床データと組み合わせることによ って、KRECs、TRECs は造血細胞移植後の免疫学的管理において有用な手段になり得ると考え られる。

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論文審査の要旨および担当者

報 告 番 号 甲 第 4713 号 中谷 夏織 論文審査担当者 主査 神奈 木真理 副査 鍔田 武志、東田 修二 (論文審査の要旨) 造血幹細胞移植は血液腫瘍や原発性免疫不全症の治療として用いられている。移植後の免疫再 構築による免疫能の回復状態は予後に重大な影響を与えるため、その評価は臨床上重要である。 申請者は、T 細胞、B 細胞の抗原受容体遺伝子の再構成の際生じる環状 DNA(TREC, KREC)等 を指標として、移植後の免疫再構築の評価を試みた。造血幹細胞移植後の 133 名のレシピエント (0-62 歳)を対象として、経時的に TREC, KREC をリアルタイム PCR で測定し、年齢,性別、 原疾患,移植源、前処置等種々の因子と免疫再構築との関係を解析した。その結果、B 細胞の新 生は T 細胞より早期に認められ、レシピエント年齢が若いことが移植後の B 細胞の回復に寄与す ること、臍帯血移植は骨髄移植や末梢血幹細胞移植に比して B 細胞の回復が早いことが分かった。 また、移植1ヶ月で既に TREC や KREC が検出された群では、検出されなかった群と比較して移 植後の感染症の頻度が有意に低かった。本研究は、多数の臨床検体を用いて、TREC や KREC 測 定の意義を種々の角度から検討した後方視的解析であり、これらが造血細胞移植後の免疫能再構 築を評価する有用な指標になり得ることを示した臨床的意義の高い研究である。

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