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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 一 色 昭 則

     学位論 文題名

Antisymmetrized Molecular DynamlCSWithCOherent     StatePionandItSAppliCationtOLightNuClei      (コヒ ーレント 状態の兀 中間子場を 取り入れた      反 対 称 化 分 子 動 力 学 と 軽 い 核 へ の 適 用 )

学位論文内容の要旨

  1935年Yukawaに より核子間相互作用を媒介するものとして中間子の存 在が予言された。そ の後っ1・中間子が発見され、他の中間子等の交換も取り入れた模型の構築を通じて核カの理解は進 展してきた。これらの現戻的核カは中´ふカの他に、スピン・軌道力(LS力)、テンソルカ等の成分 を含み、弓蠡い状態依存性を持つ。また、2核子のスピン・パリティの状態ごとにphase shiftを合 わせるように中心力、LS力、テンソルカを決めた現実的核カを再構成し、それを用いて核構造の 研究がなされてきた。現実的核カを直接的に取り扱う構造研究は主に少数系において行われ、a 粒子内部では強いテンソルカの寄与が中心カと同 等かそれ以上であることが、すでに1970年代 にATMS (Amalgamation of Two一body correlations into Multiple Scattering process)によって 示されている。

  一方重い核においては、パリティの異なる軌道角運動量の状態を結合させるようなテンソルカ を用いた多体系の計算は困難であるため、テンソ ルカを中心カとLSカに繰り込んだ有効相互作 用や 現象 論的 な平 均場 によ り核 構造 の研 究 が行われてきた。MayerとJensenが中心カとLSカ からなる一体場でshell内の最も大きい全角運動量をもつ一粒子軌道が下がることにより原子核の 魔法数を説明したことがその代表として挙げられる。

  テンソルカの重要な性質は、全角運動量は同じで軌道角運動量の異なる状態を結合させること である。例えば重陽子においては3&のみでは固有状態にはならず、3&十3 Dlで固有状態とな る。こうした結合を一粒子軌道でみると、例えば2核子がs―軌道からp‑軌道に上がって相対的に D―waveに組むという2粒子2空孔(2p−2h)状態に対応する。このようにテンソ ルカはパリティ の異なる軌道を結合させる棚互作用であり、LSカと同じように一粒子軌道を変え得る。しかし、

こうした非対角要素を持つ相互作用の取り扱いは多体問題を解く上で非常に困難であり、中心カ とLSカに繰り込まれる下地となっていた。

    しかし、最近になってテンソルカを顕に取り入れた模型による評価、あるいは強いテンソルカ をもたらす7r中間子を取り入れた模型によって原子核の構造を研究しようという動きがでてきた。

Tokiらは、7r中間子を考慮した相対論的平均場理 論によって、平均場の段階で7r中間子が核構 造に大きな影響を与えうることを、Ogawaらはchiral sigma modelでLSカの効 果とされている 一粒子軌道のsplittingの半分程度が7r中間子によってもたらされることを示した。しかし、こう し た 議 論 は 基 底 状 態 に 留 ま っ て お り 、 励 起 状 態 の 議 論 は ほ と ん ど な さ れ て い な ぃ 。   本研究で我々は原子核の基底状態及び、励起状態をよく記述する反対称化分子動力学(Anti− symmetrized Molecular Dynamics; AMD)に卵中間子をコヒーレント状態 で取り入れたモデル を構築し、軽い核の構造研究に適用した。

  AMDはA核子 系の 波動 関数 をガ ウス 波束 の スレ ータ 一行 列式 で記 述し 、核子の自由度で多 体系を解く変分模型である。位相空間上にガウス波束を置き、反対称化させたまま相互作用を働 かせ、エネルギー表面の微分を求めその方向に波束を動かすことによって、エネルギ一極小の原

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子核の状態を得る。さらに、この手法は形やクラスタリングの仮定を必要としないので、橡々な原 子核を扱うことが可能である。これまでにも中性子過剰核や分子軌道にも適用され成功を納めて いるが、やはり対象とする原子核によって相互作用を変える必要がある。一般に、核子はっ11中間 子との相互作用あるいはテンソルカによってパリティの異なった一粒子軌道へと遷移する。肋起 状態の記述にはこれらの遷移演算子の異なる状態間でのMatrix Elementを計算する必要がある。

我 々は7r中間 子をコ ヒーレン ト状態 で用意し、AMDの波動関数と7r中間子の波動関数の直積で 全系の波動関数を記述することにより、7r中間子と核子の相互作用を 'rr中間子の演算子と核子の 演算子に分離して評価できることを用いてAMDに適用した。

  一 つの適用 例とし て12C原 子核を 取り上げた。中性7r中間子のみを取り扱うこのモデルの適 用 にあたり 、中性7r中間子と核子の結合定数を約、厄倍して評価している。これはSugimotoら の荷電・パリティ射影ハートリーフオックによりQ粒子を計算した結果と矛盾しない。その結果、

中 性7r中間子 が核内で期待値をもちうることを示した。これにより、12Cの0一状態が、核子の 0―状態と核子の基底状態(0+)に中性7r中間子(量子数0―)がーつ結合した状態が結合すること によルエネルギー的に下がることを定一陸的に示した。また、基底状態(0+)と2+の間隔が7r中間 子と核子の相互作用により、拡がることを示唆した。これはOgawaらのっ1・中間子によって一粒 子軌道を変える効果を肋起状態でみたものである。

  現在の枠組では荷電‑rr中間子の取り扱い、7r中間子と核子の結合によってあらわれる△粒子 との7rN△結合、short range correlation、17r中間子交換相互作用の交換項であるFock term、 7r中間子の効果を取り除いた有効相互作用の構築など解決すべき点は多いが、異なるパリティを 持つ一粒子軌道の結合を取り入れて原子核の励起状態をも記述できる数少ないモデルであると位 置 づけられ 、ハド ロン物理 と核子 多体系の 物理をっ なぐ架 け橋のーっとなりうるであろう。

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学位論文審査の要旨

主 査  助 教 授  大 西  明 副 査  教 授  加 藤 幾 芳 副 査  教 授  和 田  宏

副 査  教 授  岡 部 成 玄 ( 情 報 基 盤 セ ン タ ー ) 副 査  助 教 授  布 施  泉 ( 情 報 基 盤 セ ン タ ー )

     学位論文題名

Antisymmetrized Molecular DynamlCSWithCOherent     StatePionandItSAppliCationtOLightNuClei      (コ.ヒーレント状態の兀中間子場を取り入れた      反 対 称 化 分 子 動 力 学 と 軽 い 核 へ の 適 用 )

  核子間に勧く強いカ(核力)から原子核の構造を解明することは、Yukawaの中間子論 以来、原子核物理学における基本課題である。汀中間子によりもたらされるテンソルカ は、北大グループの先駆的な研究以来、少数核子系において中心カと同等以上の寄与を持 っことが直接的に示されてきた。一方で質量数のより大きな原子核では、核子間の異なる 軌道角運動量を結合する膨大な波動関数の空間が必要となり、テンソルカは間接的にしか 取り扱われてこなかった。最近になって7中間子、あるいはテンソルカの効果をあらわ に取り入れた核構造研究の言式みが始まっているが、これらの多くは基底状態、あるいは少 数核子系にその適用が限られている。

  著者は本論文において、汀o中間子をコヒーレン卜状態の形であらわに取り扱い、反対 称イヒ分子動力学(AMD)と組み合わせることにより原子核の基底状態・励起状態を記述す る新たな理論的枠組を開発し、軽い核の構造研究に適用した結果を示した。コヒーレント 状態の導入により、汀0中間子場演算子の行列要素を異なる状態間でも求めることが可能 となり、AMDと組み合わせて多くの原子核の励起状態に対する汀0中間子の直接的な役 割を研究する道を拓いた。また、これまでに示されていた一粒子状態のスピン・軌道力的 なsplittingに対する襾o中間子の寄与が観測可能な軽い核の励起スベク卜ルに反映される ことが示された。

  これを要するに、著者は多くの原子核の基底状態・厨カ起状態における7r中間子の直接 的な役割を研究する可能性を拓き、軽い原子核における7T粒子の役割について新知見を 得 た も の で あ り 、 分 野 の 研 究 に 対 し て 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の で あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認める。

参照

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