博 士 ( 医 学 ) 松 木 直 人
学位 論 文 題名
DQ6 マ ウ スに おける H3‑H3 ベプチ ドワクチ ン のインフルエンザ感染抑制能の検討
学位論文内容の要旨
【目 的】 ヘル パー T 細 胞が抗 原を 認識 し反 応す るた めには,T 細胞抗原受容体(TCR) ,主要 組織 適合 抗原 複合 体(MHC) ク ラス H 分 子, 抗原 ペプ チド断 片よ りな る三 分子 複合 体の形成 が 必 要 で あ る . 従 っ て 免 疫系を 活性 化す るた めに は, 少な くと もべ プチ ド抗 原と MHC 分 子 と の 結 合 性 が 高 く な け ればな らな いこ とに なる .そ こで ,ベ プチ ド抗 原と MHC 分 子と の結 合性 を高 め, T 細 胞に対 する 抗原 性を 増強 させ る方法としてカセットセオリーが考案 された.
先 に 我 々 は , こ の カ セ ット セ オ リ ー に 基 づ ぃ て 作 製 され たイ ンフ ルエ ンザ ウイ ルス A/Aichi/2/68(H3N2) に対するぺプチドワクチン46F/HA127 ―133/54A(18mer) が,パマウスにお いて イン フル エン ザウ イルスの感染を抑制することを報告した.今回は,このぺプチドワ ク チ ン が 他 の ウ イ ル ス 株 に 対 し て も 有 効 で あ る か を 検 討 し た . ま た , 46F/HA127‑
133/54A(18mer) の C 端 に さ らに HA127‑133 をっ ない だぺ プチ ドワ クチ ンH3‑H3 を 新た に作 製 し , そ の 効 果 を 検 討 し た. ま た , 我 々 の ぺ プ チ ド ワ クチ ンに は種 々の MHC クラ スH と 結合 する スー パー モチ ーフ が含 まれ るこ とが 判明 したの で, MHC クラ スH 分 子と してヒト HLA‑DQ6 分 子 の み を 発 現 し てい る以 廼マ ウス を新 たに 作製し ,こ のマ ウス をヒ トの モデ ルと して 使用 する こと によ り, ペプ チド ワク チン のヒト ヘの 応用 の可 能性 を検 討した.
【 材 料 と 方 法 】 マ ウ ス ; DQ6 マ ウ ス は , HLA‑DQ6 (DQAl*0103 , DQBl*0601) ト ラ ン ス ジ エ ニ ッ ク (Tg) マ ウ ス と , MHC ク ラ ス n ノ ッ ク ア ウ ト (KO) マ ウ ス を 交 配 し て 作 製 し た . ペプチド;ベプチドは自動ペプチド合成機430A を用いて合成した.Phenyl acetamidomethyl resm を TFMSA で 切 断 後 , Vydac C18 カ ラム を用 い, HPLC にて 95% 以 上の 純度 に精 製し た.
ベプ チド のア ミノ 酸構 成は ,JMS‑HX110 (JEOL) に よる質 量分 析で 確認 した .中 和試験;
ベ プ チ ド 抗 原 (50nmol) と フロイ ンド の完 全ア ジュ バン ト(CFA) を 1 ニ 1 の比 率で 混合 して
エマ ルジ ョン を作 製し ,マ ウス 腹腔 内に 3 週毎 に3 回投与 した .そ の後 採取 した 抗血清と
ウイ ルス (50 プラ ーク /ウェ ル前 後に 調整 )を 混和 し, 37 ℃ で1 時 間静 置後 ,24 穴プレー
ト に 単 層 培 養 し た MDCK 細 胞ヘ 接 種 し , 37 ℃ で 48 時 間 培 養, 固定 ・染 色後 にウ ェル 中の
プラ ーク 数を 計測 し, その50u/o 感染阻止能で抗体価を判定した.T 細胞増殖反応試験;マ
ウ ス の 四 肢 皮 下 に ぺ プ チ ド抗原 (20nmol) とCFA の 混合 エマル ジョ ンを 免疫 し, 10 日 後に
採取 した 所属 リン パ節 細胞をナイロンウールカラムを通し回収したT 細胞画分(4xl05/ ウェ
ル ) を , 同 系 マ ウ ス の 脾 臓細 胞 か ら 得 た 抗 原 提 示 細 胞 (APC) ( lxl05/ ウ ェ ル ) と 階 段
希釈したベプチドとともに37 ℃. 72 時間培養した.その後[3H]̲thymidine を加え(18.5kBq/
ウ ェ ル ) 更 に16時 間 培 養 後 , そ の取 り込 みをDirect beta counter MATRIX 96で計 測し た. フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー ; 末 梢 血 リ ン パ 球 を ビ オ チ ン 化Y3P( 抗H−2Ab)と4℃ で30分 反 応 後 , r‑phycoerythrin (PE)―streptavidin (SA)と4℃で30分 反応 させ たも のと ,末 梢血1Jン パ球 を fluorescein isothiocyanate (FITC)一 抗 ヒ トHLA‑DQと4゜Cで30分 反 応 さ せ た も の と を FACScanで 解 析 し た , 感 染 実 験 ; 多 層 性 リ ポ ソ ー ム に 組 み 込 ん だ ぺ プ チ ド を マ ウ ス 鼻 腔 よ り4週 毎 に3回 投 与 し た 後 , 適 当 な日 数で 鼻腔 よル イン フル エン ザ ウイ ルス ( A/Aichi/2/68, 6xl03PFU)を 投 与 し た . そ の4目 後 に 採 取 し た 肺 を ホ モ ジ ェ ナ イ ズ し た 上 清 を24ウ ェ ル プ レ ー ト に 単 相 培 養 し たMDCK細 胞 に 接 種 し ,37℃ .48時 間 培 養 後 固 定 ・ 染 色 後 , ウ ェ ル 中 の プ ラ ー ク を 計 測 ・ 比 較 し た , 直 接 結 合 試 験 ; ヒ トEBVリ ン パ 芽 球 様 細 胞 株 で あ るKT12 お よ びEBWaよ り , そ れ ぞ れHLA‑DR9 (DRBl*0901) お よ ぴHLA‑DR4 (DRBl*0405)を 精 製 し , こ れ ら の 分 子 と ピ オ チ ン 化DR9結 合 性 ベ プ チ ド(」6NDGATGWVASMSSAY) お よ び ピ オ チ ン 化DR4結 合 性 ペ プ チ ド (GSTVFDNLPNPEH)GDYYGW) を そ れ ぞ れ 結 合 阻 害 す る 非 ピ オ チ ン 化 ペ プ チ ド と と も に48時 間 室 温 で 反 応 さ せ た . そ の 後 , 抗DR抗 体 を 結 合 させ た プレ ート ,さ らにStreptavidm‐a愀 甜mephOSphataSeと反応させ,PniロophenolphOSphate を 加 え て 発 色 後 ,405nmの 吸 光 度 を 測 定 し , そ の 値 よ ル ベ プ チ ド とHI丿H)R分 子 と の 結 合 性を算出した・
【 結 果と 考察 】今 回, これ まで 用い て きた46F/HA127‐133/54A(18mer冫 が,H3イ ンフ ルエ ン ザ ウ イ ル ス の 他 の 変 異 株 に も 有 効 で あ る か ど う か 検 討 し た . 以 前 の 実 験 か ら ,46F凪A127− 133/54Aく18mer) で 誘 導 し た 抗 体 は , 主 と し て 中 央 部 分 に 挿入 したHA127‐133を 認識 し, ウ イル ス を中 和す るこ とが 判明 して いる .イ ンフ ルエ ンザ ウイ ル スAパexas/1〃7(H3N2)はへム ア グ ル チ ニ ン (HA) の127‐133番残 基の アミ ノ酸 配列 がNんch犯 /68と同 一で ある ので ,ベ プ チ ド ワ ク チ ン46FmA127‐133/54A(18mer) で パ マ ウ ス を 免 疫 し て 誘 導 し た 抗 体 は A′TexaS/1〃7ウ イル スをmvitr0に お いて 中和 する ので はな いか と考 えた .実 際こ の抗 体は , A′TexaS/1〃7をmvi廿oで 中和 した (50ワ 。中 和価 =64倍) .ま た, イン フル エン ザウ イル ス A旧hilippmesだノ82(H3N2),A/Hokk甜doだ0/89(H3N2)は,ヘムアグルチニン(HA冫の127‐133番 残 基 の ア ミ ノ 酸 配 列 が 糾 んcm倒68と は133番 残 基 の1残 基 が 異 な る が , ベ プ チ ド ワ ク チ ン 46FmA127‐133/54A(18mer) で誘 導 した 抗体 は, これ らの ウイ ルス もmviロ0にお いて 中和 し た(50ワ。 中和 価〓32倍 ). さら に, イン フル エン ザウ イル スA/MemphiS/1/94(H3N2)は1994 年 に 分 離 さ れ た 株 で あ り , ヘ ム ア グ ル チ ニ ン (HA冫 の127‐133番 残 基 の ア ミ ノ 酸 配 列 が Nんch氾/68と は131・133番 残 基 の3残 基 が 異 な る が , こ の ウ イ ル ス も ,46FmA127‐ 133/54A(18mer)で誘導した抗 体は,mvi缸・oにおいて中和することめミ判明した(50%中和価=
128倍 ) . 従 っ て , ベ プ チ ド ワ クチ ン46FmA127‐133/54A(18mer)は ,そ の流 行年 度に 関係 な く , ほ と ん ど す べ て のH3サ ブ タ イ プ ( 香 港 風 邪 ) に 有 効 で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . 次 に ,Hし いDQ6Tgマ ウ ス と ク ラ スnKOマ ウ ス を 掛 け 合 わ せ ,MHCク ラ スHと し て HLA−DQ6分 子 の み を 発 現 す るH廼 マ ウ ス を 新 た に 作 製 し , こ れ を ヒ ト の モ デ ル マ ウ ス と し て 使 用 し た . ま た , ベ プ チ ド ワ ク チ ン の 抗 体 産 生 を 増 強 す る 目 的 か ら ,46F/HA127‐ 133/54A(18mer) のC端 に, ヘム アグ ルチ ニン(HA) の127−133番残基を結合させたぺプチドワ ク チ ンH3‐H3も 作 製 し た , リ ポ ソ ー ム に 組 み 込 ん だH3‐H3を 鼻 腔 よ り 投 与 し ,D晒 マ ウ ス に お け る 感 染 抑 制 能 を 検 討 し た . 最 終 免 疫 よ り1週 後 にNんch氾 /68ウ イ ル ス を 感 染 さ せ た 場 合 、 リ ポ ソ ー ム 単 独 投 与 群 に 比 べ て ぺ プ チ ド ワ ク チ ン を 組 み 込 ん だ り ポ ソ ー ム を 投 与 し た マ ウ ス に お い て は , 有 意 に ウ イ ル ス の 感 染 抑 制 が 認 め ら れ た . さ ら に , 最 終 免 疫 より3 週 後 にA/Aich刪68を 感 染 さ せ た 時 に も 、H3−H3は 感 染 を 防 ぐ こ と が 判 明 し た .H3‐H3が DQ6マ ウ ス に お ぃ て 比 較 的 長 期 間 , 感 染 を 抑 制 し た こ と か ら , こ の ぺ プ チ ド ワ ク チ ン が
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HL,A ー DQ6 陽 性 の ヒ ト に お い て も 使 用 で き る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た . この ぺプチ ドワ クチ ンと HLA‑DQ6 以外の HLA クラス n 分子との結合性を,精製した HLA クラス H 分子との間の直接結合試験で調べたところ,HLA‑DR4 (DRBl*0405) , HLA‑
DR9 (DRBl*0901) に対して結合性を示した.HLA‑DQ6 , HLA‑DRBl*0405 , HLA‑DRBl*0901
の日本人における発現頻度を調べると,これらのいずれかを持つヒトは日本人全体の約
720/0 を占めることが判明している.従って,H3‑H3 ベプチドワクチンは,大部分の日本人
に対して有効であろうと考えられた.
学位論文審査の要旨
学 位論 文 題 名
DQ6 マウ スにお ける H3‑H3 ペプチド ワクチン の イ ン フ ル エ ン ザ 感 染 抑 制 能 の 検 討
ヘル パーT細胞 が抗 原を 認識 し反 応す るた めに は、T細胞 抗原 受容 体(TCR)、主要組織適 合 抗 原 複 合 体(MHC)ク ラスn分 子、 抗原 ペプ チド断 片よ りな る三 分子 複合 体の 形成 が必 要 で あ る 。 本 研 究 では 、ペ プチ ド抗 原とMHC分 子と の結 合性 を高 め、T細胞 に対 する 抗原 性 を 増強 させ るこ とにより、インフルエンザウイルスNAichl/2/68(H3N2)に有効なペプチドヮ ク チン を作 成し た。 そレ てこ のワク チン46F/HA127‑133/54A(18mer)が、他のウイルス株に 対 し て も 有 効 で あ る か を 検 討 レ た 。 ま た 、 今回 用い たぺ プチ ドヮ クチ ンには 種々 のMHC ク ラ スnと 結 合 する ス ー パ ー モ チ ― フ が 含 ま れる こと が判 明し たの で、MHCク ラスn分 子 と し て ヒ トHLA‑Dく砥 分子 のみ を発 現し てい るDQ6マウ スを 新た に作 製し 、こ のマ ウス を ヒ ト の モ デ ル と レて 使用 する こと によ り、46F/HA127‑133/54A(18mer)と 新た に作 成レ た H3‑H3ペプチドヮクチンのヒトヘの応用の可能性を検討した。
46F/HA127‑133/54A(18mer)でハマ ウス に誘 導した抗体は、主として中央部分に挿入した HA127‑133を 認 識 し 、 ウ イ ル ス を 中 和 す る こ と が 判 明 し て い る 。 ペ プ チ ド ヮ ク チ ン 46F/HA127‑133/54A(18mer)とフ口インドの完全アジュバントでハマウスを免疫して誘導し た 抗 体 は 、 ウ イ ル ス プ ラ ー ク ア ッ セ イ に よ り 、HA127‐133番 残 基 の ア ミ ノ 酸配 列 が
〜 んchi倒68と 同一 で あ る 」Vrcxas/1〃7をmvi廿oで 中和 する こと が判 明し た。 また 、 HA127・133の133番 残 基 の み が 創 んch氾 /68と 異 な るA暦hilipp血es/2/82(H3N2) 、 A/Hokkaido/2ツ89(H3N2)もinvitroにおいて中和した。さらに、A/Mempms/1/94(H3N2)は1994 年 に 分 離 さ れ た 株 で あ り 、N越ch氾/68と はHm27・133の131‐133番 残 基 が 異 なる が 、 46FmA127‐133/54べ18mcr)で誘導した抗体は、このウイルスもinvitroにおいて中和するこ とが判明した。従って、ペプチドヮクチン46FmA127‐133/54べ18mcr)は、その流行年度に 関 係ナ ょく 、ほ とん どす べて のH3サ ブタ イプ (香港風邪)に有効である可能性が示唆され た。
次に 、HLA−DQ6トランスジェニックマウスとクラスnノックアウトマウスを掛け合わせ、
MHCク ラ スnと し てHLA‐DQ6分 子 の み を 発 現 す るDQ6マ ウ ス を 新 た に 作 製 し 、 これ を ヒ トのモデルとして使用した。ペプチドヮクチンの抗体産生を増強させるため、46F/HA127‐ 133/54べ18mcr)のC端に、HA127‐133番残基を結合させたH3.H3ワクチンを作製し、リポ ソ ーム に組 み込 み、 鼻腔 より 投与レ て、D晒 マウ スに おけ る感染 抑制 能を 検討した。最終