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博 士 ( 医 学 ) 石 部 祐 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 石 部 祐 子

学 位 論 文 題 名

ブ 夕 子 宮 エ ス 卜 ロ ゲ ン レ セ プ タ ー の り ン 酸 化 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

緒  言

  工ストロゲン(E 2)はエスト口ゲンレセプ夕一(ER)を介してその生理作用 を発現するこ とが知られている。E2とERの複合体tま標的遺伝子上のエスト口ゲン感応部位(estrogen re‑

sponsive elements: ERE)とよばれる特異的な部位に結合して転写を制御するが,ERによる 転写制御のメカニズムにっいては未だ不明な点が多く残されている。ERはプ口テインキナ―ゼ の基質にナょると考えられていることから,E2―ER複合体による転写制御のERのりン酸化が 関与していることが予測される。本研究ではERリン酸化の性質及びその生理的意義を明かに するため,ブタ子宮 の細胞質画分からheparin―Sepharose及びモノク口ナ―ル抗ER抗体を 用 い た 免 疫 沈 澱 よ り 得 たER標 品 を 用 い りン 酸化 反 応の 生化 学的 な 特徴 を解 析し た。

実験方法 1. ERの精製

  ブ夕子宮の細胞質画分に30%飽和の硫安を加え,得られた沈澱を40mM Tris―HC1(pH7.5)

―1 mM DTT―0.5mM PMSF(TDP buffer)−175mM KC15 mlに 溶 解 しSephadexG ‑ 25カ ラ ム(2.5x10cm)を 用い , 脱塩 後, [゜H]E2(lOOnMとheparin−Sepharose(2ml) を加 え4℃で 一晩 混 合し た。試料をカラムにっ め洗浄後175mMから500mMのKC1濃度勾配を 含むTDP bufferを用 いERを溶出した。放射能を もっピークを集めその溶液を5%glycerol

―0. ImMEDTA―O.1%NP―40ー72. 5mM KC1を 含むTDP bufferにな るよ うに調整した (heparin―Sepharose画分)。次に同bufferで平 衡化したモノク口ナ―ル抗ER抗体と結合 させ たproteinA―Sepharoseを1/6倍容カUえ一 晩インキュベートし得られ た沈澱を最終 ER標 品 とし て用 いた 。E2結 合能 はDextran―Charcol法で ,夕 ン パク 質濃 度はBradford 法で 測 定し た。Laemmliの方法に従い10%SDS―PAGE後銀染色を行った。モ ノクロナール ラット抗ヒトER抗体を用いてウエスタンブ口ッティングを行った。

(2)

  2. ERのルン酸化

  ER標 品69u1(O.53mM dimeric ERを含む)をlOmM2価金属イオン(Mg゜゛又 はCa2゛)

と33nM[7̲3 P]ATPを 加 え4℃ で120分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し , 反 応液 にlOmM非 標 識 ATPを 加 え 反 応 を停 止し た 。未 反応 のATPを 十分 洗浄 後SDS宀PAGEを 行な い, オー 卜 ラ ジオグラ フィーを行なった。

  3.リ ン酸化アミノ酸残基の同定

  Cooperの 方 法に 従い ,試 料ERをりン酸化後6NIIC1を加え加水分解し高圧薄層 電気泳動 を行ない オートラジオグラフィーで 検出した。

  4. ERとEREの結合の測定

  PGEM一7Zf( 十 ) の SmaI部 位 にERE( 5 ー CCAGGTCAGAGTGACCTGAGC― TAAAATAACACATTCAG―3 ) を2つ 連 結 し た フ ラ グ メ ン 卜 を 挿 入 し たプ ラス ミド (Zl 6 F10)か ら制限酵素(EcoRI,HindIII)を用いてEREを含む104base pairの部位を切出し,

[7一3 P]ATPとpolynucleotide kinaseを 用 い標 識EREを 調製 した 。非 標 識ATPで り ン 酸 化 し たERのheparin―Sepharose画 分と 調製 した 標 識EREを 用い ,ERとエ スト 口 ゲ ン 感 応 部 位 (ERE) と の 結 合 を Gel retardation assayに よ り 検 出 し た 。

結  果 1. ERの 精製

  ER標 品のSDS−PAGEで は主 要な 分 子量 を63Kと 他に70Kの2っ の バン ドが認められ,そ のウエスタンブ口 ッティングではタンパク質染 色に相応した位置にバンドが認められた。

2. ERのりン酸化 i)2価金属イオン要求性

  2価の金属イオン非存在下でtまりン酸化は全くみられず,Mg2十,Ca2゛存在下で分子量63K と120Kにりン酸化によるバンドが認められた。分子量120Kはタンパク質染色では検出されず,

[°。P]ATPによ るりン酸化反応でのみ検出されることから,63K ERのりン酸化に伴いその ERが凝集したもの と考えられるがその詳細は不 明である。またこれらのりン酸化は非標識 ATPの添加及び試料の70℃,3分間の加熱で完全に消失した。

11)2価金属イオンの濃度依存性

  Mg ゛及 びCaa゛ を加えERと [¨P]ATPにインキュベート 後ERへの[°。P]のとりこ みを測定すると,イオンの濃度に依存してりン酸化は増加し,Mg゜゛ではlOmM,Ca2゛では0.l

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(3)

mMでほぼ最大となった。

丗)リン酸化反応の時間依存性とATP濃度依存性

  反応はほば60分まで時間依存性に増加した。また加えたATPの濃度に依存して反応は増大し,

ATPに 対 す るkmはMg゜゛ 存 在 下 でO,19〃MとCa2゛ 存在 下 でO.16餌Mと 算 出 さ れた 。 3.リン酸化アミノ酸残基の同定

  Mg ゛ 又はCa2゛ の存在 下でり ン酸化 された アミノ 酸残基は共にセリンと同定された。

4,E2のERリン酸化に対する影響とDNA結合能

  Mg゜゛又はCa2゛存在下ともにE2存在下の方が非存在下の場合よりもりン酸化は著明に増強 し た 。ま たERとEREの結 合はERが りン酸 化され た場合に のみ見 られ, リン酸 化され ない ERはEREとは結合しなかった。

考  察

  ERがプ口テインキナ―ゼの基質になることはこれまでの種々の報告からほぼ一致した見解で あるが,ER自身がキナーゼ活性を有するか否かにっいては未だ意見の統一は得られていなかっ た。 本研究 で用いたER標品 は抗ER抗体を用いて免疫沈澱させたものであり,他のプロテイ ンキナーゼの混在の可能性は低く,従って本研究で認められたりン酸化はER自身が持つ内因 キナ ーゼ活性によるものと考えられる。またタンパク質の構造解析からERはATP結合部位を 有すると推測されており,このこともER自身がキナーゼ活性をもつ本研究の結果を支持して いる。

  本研究でのERのりン酸化は顕著なイオンの特異性は見られなかったが,イオンの至適濃度 にっ いてはMg゜゛で はlOmM,Caa゛ではO.lmMという結果が得られた。一般的に細胞内では Mg ゛ とCaz゛の 濃度は それぞれ約5 mMとO.luMであることから,生理的にはMg゜゛による りン酸化がおこるものと考えられる。

  また 本リン 酸化反 応はATP濃 度に依 存し, そのKmはO.16〃M←O.19肛Mであった。本研 究 で 試料 と し たER標品 は抗ER抗 体を介 してproteinA一Sepharoseに 拘束さ れてい る条件 はあるが,ATPに対する十分高い親和性を有することが示された。

ERリン酸化の生理的意義にっいてチ口シン残基のりン酸化がりガンドとの結合に重要である と報 告され ている。 この報 告を考慮すると本研究で用いた最終ER標品はE2結合能を持っの でチ口シン残基は既にりン酸化されているものと予測される。本研究ではこのER標品のセリ ン残 基がE2存 在下で さらに りン酸化 される こと, リン酸化されたERはEREとの結合能が著

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明に増加することを明かにした。このことからセリン残基のりン酸化はE2―ER複合体が標的 遺 伝 子 中 のEREに 結 合 し て 転 写 を 調 節 す る 過 程 に 関 与 す る も の と 恩 わ れ る 。

学位論文審査の要旨

研究目的

  工ス卜 ロゲン (E2)とエストロゲンレセプター(ER)の複合体は標的遺伝子上のエスト口 ゲン感応部位(ERE)とよばれる特異的な部位に結合して転写を制御するが,そのメカニズム にERのり ン酸化 が関与していることが予測される。そこで本研究ではERリン酸化の性質及 びその生理的意義を明かにするためブタ子宮より得たER標品を用いりン酸化反応の生化学的 な特徴を解析した。

実験成績

1. ER標品の調製

  ブ夕子 宮の細 胞質画 分からheparin−Sepharoseカラムクロマ卜グラフィ一及びモノクロ ナー ル 抗ER抗 体を用 いた免 疫沈澱 により 最終ER標 品を得 た。10%SDS―PAGEで は主要も 分子量63Kと70Kの2っ のバン ドが認 められ た。モノク口ナールラッ卜抗ヒトER抗体を用い たウエ スタン ブ口ッテ イングではタンパク質染色に相応した位置にバンドが認められた。

2.ERのりン酸化

  ER標 品69ロ1をlOmM2価 金 属 イオン (Mg゜゛ 又はCa2゛)と33nM[ア―3 P]ATPを 加 え4℃で120分間イ ンキュ ベート し,反 応液にlOmM非標識ATPを加え反応を停止した。未反 応 のATPを 十 分 洗 浄 後SDS一PAGEを 行 な い , オ ー 卜 ラ ジ オグ ラ フ ィ ーを 行 な っ た。

i)2価金属イオン要求性

  2価の金属イオン非存在下ではりン酸化は全くみられず,Mg2十,Ca2゛存在下で分子量63K と120Kにりン酸化によるバンドが認められた。分子量120Kはタンパク質染色では検出されず,

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夫 章

征  

  信

山 田

犬 牧

西

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

[32P]ATPに よるり ン酸化反応でのみ検出されることから,63K ERのりン酸化に伴いその ERが 凝集し たもの と考えられるがその詳細は不明である。またこれらのりン酸化は非標識 ATPの添加及び試料の70℃,3分間の加熱で完全に消失した。

  用 いたER標 品は抗ER抗体を用いて免疫沈澱させたものであり,他のプ口テインキナーゼ の混在の可能性は低く,従って本研究で認められたりン酸化はER自身が持つ内因性キナーゼ 活性によるものと考えられる。またタンパク質の構造解析からERはATP結合部位を有すると 推 測され ており ,このこともER自身がキナーゼ活性をもつ本研究の結果を支持している。

  Mg2゛及びCa2゛を加えERへの[32P]のとりこみを測定すると,イオンの濃度に依存して り ン 酸 化 は 増 加 し ,Mgz゛ で はlOmM,Ca2゛ で はO.ImMで ほ ぼ 最 大 と な っ た 。   一 般的に 細胞内 ではMg2゛ とCa2゛ の濃度は それぞれ約5 mMとO.luMであることから,生 理的にはMgz゛によるりン酸化がおこるものと考えられる。

面)リン酸化反応の時間依存性とATP濃度依存性

  反応はほぼ60分まで時間依存性に増加した。また加えたATPの濃度に依存して反応は増大し,

ATPに 対するkmはMg2゛ 存在下 でO.19ロM,Ca2゛存 在下で0.16〃Mと 算出された。試料と し たER標 品は抗ER抗体を 介してproteinA―Sepharoseに拘束 されてい る条件 はある が,

ATPに対する十分高い親和性を有することが示された。

3.リン酸化アミノ酸残基の同定

  Cooperらの 方法に従 い,試 料ERをり ン酸化 後6NHC1を 加え加 水分解 し高圧薄 層電気 泳 動を行ないオートラジオグラフィーで検出した。Mg゜゛又はCa2゛存在下でりン酸化されたアミ ノ酸残基は共にセリンと同定された。

4. E2のERリン酸化に対する影響とDNA結合能

  Mg2゛又はCa2゛存在下ともにE2存在下の方が非存在下の場合よりもりン酸化は著明に増強 し た。EREを2つ連結 したフ ラグメ ントを 挿入したプラスミドから制限酵素を用いてEREを 含 む104base pairの 部 位 を 切出 し,標 識EREを調 製した 。非標 識ATPでり ン酸化 したER のheparin−Sepharose画 分 と 調製し た標識EREを用 い,ERとEREとの結 合をGel retar‑

dation assayにより 検出し た。ERとEREの結 合はERがりン酸化された場合にのみ見られ,

リン酸化されないERはEREとは結合しなかった。

  本 研究で はER標品 のセリ ン残基 がE2存在 下でり ン酸化 される こと,リン酸化されたER はEREとの結合能が著明に増加することを明かとした。このことからセリン残基のりン酸化は E2ーER複合体 が標的 遺伝子 中のEREに 結合し て転写を調節する過程に関与するものと思わ

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れる。

  以上,本研究はエスト口ゲンレセプターのりン酸化の性質およびその生理的意義を明かにした も の で あ り , 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 値 す る も の と 認 定 さ れ た 。

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