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円柱の表面粗度の変化がウェイクエクサイテーションに及ぼす影響

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Academic year: 2022

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(1)

円柱の表面粗度の変化がウェイクエクサイテーションに及ぼす影響

徳島大学大学院 学生会員 ○松川 将大 徳島大学 正会員 野田 稔 中電プラント株式会社 非会員 井上 真尋 徳島大学 フェロー  長尾 文明

1.

はじめに

空力振動現象の1つとしてウェイクエクサイテーションが知られており,従来の研究では,並列円柱の上流側円柱が 生成する後流が下流側円柱の空力不安定振動発現の原因であると考えられてきた.さらに下流側円柱の空力不安定振動 が,お互いを取り巻く流れ,後流と円柱の相互位置関係に起因する流れの干渉

1)

という要素からなっていることが知られ ており,今も研究が進められている.また,円柱表面に部材軸に対してある傾きで突起を取り付けるとカルマン渦の発 生が抑制される効果があるとの報告

2)

もあり,円柱表面の粗度と後流の特性との関係について不明瞭な点が多い.そこで 本研究では,ウェイクエクサイテーションに対する表面粗度の影響を検討するために,並列円柱の下流側円柱の

2

自由 度ばね支持応答実験を行った.また,円柱周りの流れ場を検討するために,円柱周りの風速分布の測定や並列

2

円柱間 の流れの可視化実験を行った.

2.

実験概要

–1

模型配置

(a)

滑面

(b)

メッシュA

(c)

メッシュB

(d)

ワイヤー

0

(e)

ワイヤー

10

(f)

ワイヤー

20

(g)

ワイヤー

30

度 写真-1 実験で用いた粗度

(1)

並列

2

円柱の基本条件:並列円柱模型の配置状況を図-1に示す.並 列円柱の直径を

D = 42mm

とし,

2

円柱の中心間距離が

L = 3D(126mm)

となる位置に配置してある.また,本研究で使用する円柱の表面粗 度を写真-1に示す.ここで,ワイヤーは直径

d = 2mm,d / D = 0.048

で あり,ここでは等間隔に

12

本取り付ける.いずれの実験でも同様の 表面粗度を使用する.

(2) 2

自由度応答実験:応答実験で測定するのは,下流側円柱の気流

直交方向

(鉛直)

の変位

Y,気流方向 (水平)

の変位

X,吹流し距離 l(静

的な空気力を受けることで無風時の下流側円柱の位置から有風時に 移動した距離)を測定する.下流側円柱は,上下左右

8

本のばねで支 持した.振動数

f

を鉛直,水平方向共に

2.2Hz

とし,オイルダンパー を使って対数減衰率

δ

0.007(スクルートン数:S c = 2m δ/ρ D 2 = 16.4)

の条件を保ち下流側円柱の応答実験を行う.

(3)

円柱後流の測定:I型熱線プローブによって,基準風速が

U 0 = 1,

2,3,4,5,6,9m / s

の時の単独静止円柱後流の風速測定を行う.測

定は円柱の中心点からの水平方向に

x = 1D〜5D

の鉛直断面において,

y= 3D〜-3D

までの範囲で行う.なお,評価時間を

20s

として平均風

U

と乱れ強さ

Iu

を求める.

(4)

並列

2

円柱間の流れの可視化実験:オイルミスト法を用いて煙 を発生させ,サンプリングレートを

500fps

とした高速度カメラで,

下流側円柱が振動中と静止した状態の並列

2

円柱間の流れを撮影し て可視化実験を行う.

3.

実験結果及び考察

(1)

下流側円柱の応答:円柱表面が滑面の場合の下流側円柱の応答を図-2に,吹流し距離を図-3に示す.並列円柱の下流側 円柱は

2

段階の安定なリミットサイクル

(StableLC)

と不安定なリミットサイクル

(UnstableLC)

が伴うハードフラッター 型の応答を示した.ここで,紙面の都合上,リミットサイクルのことを

LC

と表記する.1段階目の

LC

は倍振幅で

1D

程度の振幅で発生し,風速の増加に対して振幅はほぼ一定を保ち,吹流し距離もほとんど変化しなかった.一方,2段階 目の

LC

は風速が増加するにつれて振幅が大きくなり,吹流し距離も急激に増加する.

次に,円柱表面にメッシュA,Bを取り付けた場合と滑面の状態との応答の比較を図-4に示す.メッシュを取り付けた 場合,滑面の状態と比較すると,応答のピークが低風速側に生じ,高風速域での無次元倍振幅は小さくなる傾向を示した.

キーワード 並列

2

円柱,カルマン渦,リミットサイクル

770–8506

徳島県徳島市南常三島2–1 徳島大学 

TEL / FAX:088–656–7323

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑621‑

Ⅰ‑311

(2)

ここで,図-5に円柱表面にワイヤーを取り付けた場合の応答を示す.ワイヤーの取り付け角度を

20

°,30°で円柱表 面に取り付けた場合は,1,2段階目の

LC

が消失し,ほとんど振動しなかった.取り付け角度を

0

°,10°で円柱表面に 取り付けた場合は,1段階目の

LC

は発生したが,2段階目の

LC

は消失する応答を示した.この理由として,ワイヤー の取り付け角度を大きくする程,断面の二次元性を崩す効果が大きくなり,下流側円柱が受ける励振力が小さくなった ことが原因と考えられる.

(2)

滑面単独円柱後流の流れ場:応答実験で下流側円柱を設置した

x / D = 3

における上流側円柱設置位置に設置した単独円 柱後流の風速分布と乱れの強さの測定結果を図-6,図-7に示す.まず,図-6の結果から

y/ D = 0

付近において風速比がか なり小さくなっていることが分かる.また,風速比が

1

以下の範囲となる幅は,2D〜3D程度となっている.ここで図-2 を見ると,倍振幅

2Y / D = 2〜3

というと

2

段階目の

LC

の倍振幅とほぼ一致することが分かった.一方,図-7の結果から

y/ D = 0

付近において乱れ強さがかなり大きくなっていることが分かる.また,乱れ強さのピークが

y/ D =− 0 . 5〜0 . 5

であ り、この間隔が

1D〜1.5D

程度となっている.ここで図-2を見ると,倍振幅

2Y / D = 1〜1.5

というと

1

段階目の

LC

の振 幅とほぼ一致していることが分かった.

次に,並列

2

円柱間の流れの可視化実験の結果を図-8,図-9に示す.ここで,下流側円柱の振動波形はほぼ正弦曲線 を描いており,いずれも振幅鉛直変位が最大

(上死点)

の瞬間である.

図-8,9を比較すると,1段階目の

LC

が発生している場合はカルマン渦は発生せず,2段階目の

LC

が発生している 場合は

2

円柱間に流れの巻き込みが発生しており,カルマン渦が発生していることが分かる.ここで,図-8と図-2,3と を比較すると,1段階目の

LC

が発生している場合の振動メカニズムとしては,ギャップフローが発生し,そのため自励 振動が発生している.しかし,風速の増加に対して振幅はほぼ一定を保っていることから,上流側円柱の死水域内での 振動であるために上流側円柱から剥離した流れの主流によって形成される空気の壁により振動が拘束されたと考えられ,

図-8からその傾向が確認できた.

一方,図-9と図-2,3とを比較すると,2段階目の

LC

が発生している場合に大振幅が発生する理由としては,風速が 大きくなったことで振幅が発達し

2

円柱間に流れ込む流れが多くなり下流側円柱が受ける励振力がさらに増加したこと と,カルマン渦発生により上流側円柱の後流幅が広がった為に振幅が急激に増加したことが考えられる.

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

0 30 60 90 120 150

2Y/D

U/fD State of rest 1st-StableLC 2nd-StableLC UnstableLC

図-2 下流側円柱の鉛直倍振 幅

(滑面)

0 0.05 0.1 0.15 0.2

0 30 60 90 120 150

l/D

U/fD State of rest 1st-StableLC 2nd-StableLC

図-3 下流側円柱の吹流し距 離

(滑面)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

0 30 60 90 120 150

2Y/D’

U/fD’

smooth meshA meshB

図-4 下流側円柱の鉛直倍振 幅

(メッシュ)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

0 30 60 90 120 150

2Y/D’

U/fD’

smooth wire-angle0 wire-angle10 wire-angle20 wire-angle30

図-5 下流側円柱の鉛直倍振 幅

(ワイヤー)

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1

y/D

U/U0 1m/s

2m/s 3m/s 4m/s 5m/s 6m/s 9m/s

図-6 円柱後流の風速分布

(滑面,x / D = 3)

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

y/D

Iu 1m/s 2m/s 3m/s 4m/s 5m/s 6m/s 9m/s

図-7 円柱後流の乱れ強さ

(滑面,x / D = 3)

図-8 並列

2

円柱間の流れ

(1

段階目の

LC

発生時)

図-9 並列

2

円柱間の流れ

(2

段階目の

LC

発生時)

4.

おわりに

以上の結果が得られたが,リミットサイクルの発生要因などは今回の検討だけでは明確にできなかった.今後はより詳 細な流れの可視化実験,並列

2

円柱間の流れと励振力の関係を検討していく事で,大振幅振動の発生原因を理解し,ウェ イクエクサイテーションの制振対策を考える必要がある.

5.

謝辞

本研究は,科学研究費補助金・基盤研究(C)2256048000の助成を受けたものであり,記して謝意を表す.

参考文献

1)

宇都宮英彦

接近する並列円柱系の空気力学的挙動

,土木学会論文集,

pp.1-8

1983

2)

八木知己,岡本健吾,榊一平,頃安弘,梁子豊,成田周平,白土博通

表面形状を考慮した斜張橋ケーブルの抗力低減と空力安定 化に関する研究

,第

21

回風工学シンポジウム論文集,

pp.263-268

2010

土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月)

‑622‑

Ⅰ‑311

参照

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