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衛星データを利用した環境保全計画シミュレータの開発

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Academic year: 2022

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衛星データを利用した環境保全計画シミュレータの開発

―IKONOS 衛星データを用いた土地被覆分類図の作成―

東洋大学国際共生社会研究センター客員研究員・国土環境株式会社    正会員        ○黒岩  大悟 東洋大学国際共生社会研究センター客員研究員・国土環境株式会社      近藤  弘章 東洋大学国際地域学部    フェロー会員    松尾  友矩

1. はじめに 

土地利用の改変を伴うような開発計画には環境アセ スメントの実施が求められている。しかし現行のアセ スメントにおいては、一定の開発計画を前提として、

当該計画が環境基準等の達成に影響を及ぼさないとの 判定が出ると、その計画をより良い計画に改善させて いくような努力が払われないことが多い。また、生態 系に対する影響についても、特定の生物種の生存の可 否が問われることはあっても、食物連鎖を考慮した生 態系の保全までを考慮するアセスメントは実施しにく いのが実状である。

  このような現行のアセスメントの実態を踏まえ、本 研究では、地表被覆の改変がそこに生息する生物種へ の影響、その生物種の生態系における位置等を考慮し ながら、環境アセスメントを試行的に行うシミュレー タの開発を行う。具体的には生態系の保全に関して、

植生の分布を確認することで、動物の食性にかかわる 情報を確認し生存のための回廊を確保するなどの対策 を検討する情報を扱う。さらに植生分布等の情報は衛 星データを利用することが考えられる。

  本年度は、以上のような全体的な計画の中で、重要 な基礎データとなる植生分布を示す土地被覆分類図を 高解像度衛星IKONOSの観測データを利用して作成し た。

2. 対象地域の選定

  対象地域を選定するにあたり、次の3点を考慮した。

1) IKONOS衛星データの取得が可能な地域。

2) 山間部での開発計画があり、環境保全の対応策が 多様である地域や、植生のデータを元にした生物生 態系へのアプローチも考慮できる地域。

3) 衛星データから推定した地上の被覆状態が検証で き、ある程度の地上情報がある地域

以上の 3 点を考慮して選定した地域は、東京都青梅

市のJR 青梅駅北側に位置する自然豊かなN丘陵周辺 である。この地域では大規模な住宅地開発事業計画が あり、今現在も一般市民によって計画の凍結や見直し が求められている。そのため、平成13年に作成された 環境影響評価書等の資料が公開されている。

3. 使用したデータ 1)  衛星データ

  土地被覆分類図を作成するのに使用した衛星データ はIKONOS衛星からのもので、2001年2月8日と2002 年7月20日のデジタルジオ画像(解像度4mのマルチ スペクトル、解像度1mのパンクロマチック)である。

2) 現存植生図

比較を行うための現場データとして、環境影響評価 書案(図7-7-10, 山一土地株式会社(2001))の現存植 生図を用いた。これは平成2年から平成10年にかけて 行われた現地調査と空中写真判読から作成された現存 植生図である。

4. 土地被覆分類図の作成方法 1) パンシャープン画像の作成

  マルチスペクトル画像とパンクロマチック画像から 主成分を用いた画像間演算を行い、解像度1mのマルチ スペクトルのパンシャープン画像を作成した。作成し たパンシャープン画像は2001年2月8日と2002年7

月20日(図1)である。これ以降、画像処理を施した

画像は2002年7月20日のパンシャープン画像であり、

2001年2月8日のパンシャープン画像は単に写真とし て利用した。

2) 分類項目の設定

7月のパンシャープン画像に対して最尤法による土 地被覆分類を行うため、分類項目を設定した。設定し た項目は常緑樹、落葉樹、草地、アスファルト、屋根

(赤、青、黒、灰色)、裸地、水域(プール、池)の11 種である。今回は、植生域と都市域の区別に重点を置   キーワード  IKONOS,土地被覆分類図 

  連絡先      〒224‑0025  神奈川県横浜市都筑区早渕 2‑2‑2    国土環境株式会社  TEL045‑593‑7607 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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いた為、以上の項目とした。

3) 土地被覆分類図の作成

2)で決定した項目についてトレーニングエリアを選 び、最尤法により解像度1mの土地被覆分類図を作成し た。常緑樹、落葉樹、草地の区別は7月と2月の画像 を比較しながら行った。

5. 分類結果

  作成した土地被覆分類図を図2に示す。図2から植 生域と都市域が分類されているのがわかる。また、住 宅と住宅の間や街路樹などのわずかな植生も検出でき ている。

土地被覆分類図の落葉樹、常緑樹部分と現存植生図 を重ねた図を図3a)、b)に示す。土地被覆分類図の落葉 樹、常緑樹をそれぞれ赤色、黄緑色で表す。赤色が深 緑色(現存植生図の落葉樹)、黄緑色が黄色(現存植生 図の常緑樹)にそれぞれ重なっているほど正しく分類 されていることになる。これらの図から、落葉樹、常 緑樹共に正しく分類されていることが確認できる。

6. まとめ

IKONOS衛星のデータから解像度1mのマルチスペ

クトル画像(パンシャープン画像)が作成でき、解像度の 高さから航空写真としての利用も可能である。そのデ ータを用いて、特に、植生と人工物の判別、常緑樹、

落葉樹の判別が視覚的に出来る解像度 1m の土地被覆 分類図が作成できた。これらのことにより、日本国内 のみならず、予備知識やデータの少ない発展途上国に おいても、IKONOS衛星データから植生を目的とする 土地被覆分類図の作成が可能であることが示唆された。

今後は、NDVI などのバンド間演算を取り入れ、樹種 の分類など植生の細分類化が課題である。

謝辞

使用したIKONOS衛星データは日本スペースイメー

ジング株式会社より提供して頂いた。ここに謝意を表 する。

参考文献

1) 山一土地株式会社 (2001), 環境影響評価書案永山 北部丘陵住宅地開発事業

2) ERDAS, Inc. (1999), ERDAS Field Guide (Fifth Edition)

図1 パンシャープン画像 (7月)

図2 土地被覆分類図

a) 落葉樹の比較

b) 常緑樹の比較

図 3  分類した落葉樹、常緑樹の重ね合わせ 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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