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幸せの探求

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Academic year: 2022

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(1)

比較宗教学概論Ⅰ 幸せの探求

幸/不幸・幸い/災い・祝い/呪い

20170523@2時間目

九州大学箱崎キャンパス301教室 飯嶋秀治

shuujiiijima@gmail.com

(2)

授業計画とQ&R

幸せという人間の感情が数値化できるということは人間が感情 的に取るほかの行動も理論的に説明できるようになると考えま す。最近AIのシンギュラリティなどに関心があり調べてみたり しているのですが、人間の可能性として芸術等新たなものなど を偶発的に生み出すという点で優れているため、AIに負けるこ とはないという主張がありました。しかし、感情の数値化とい うことが可能であるとするならば、人間が生み出す相対的に偶 発的なものについてもある程度予測がつくという事になります。

そうなると将来AIにそういった領域においても追い抜かれた人 類に生きる価値などはあるのかと考えてしまうのですが、先生 はこうした人間の能力が数値化できる、より客観的に見ること ができるようになることによる人類の未来についてどうお考え でしょうか。

最近では、いいところに就職するために、社会人にまだなりた くないから、という理由で大学への進学を希望する人が多くい ると思います。正直、私も純粋な研究意欲だけで大学に進学し たわけではありません。高等学校も同様だと思います。もちろ ん、大学に入って目標ややりたいことが決まることもあります が、卒業することが目的の人もいると思います。本日の講義で 気になったのですが、先生はどのようにお考えですか。

進度・内容・行動目標等 講義

1 0411自己・世界・講義の趣旨説明

2 0418言語・生態・経済の説明

3 0425国家・メディア・学校の説明

4 0509国際学会発表のためビデオ視聴

5 0516「幸せ」の釈義

6 0523幸/不幸・幸い/災い・祝い/呪い

7 0530宗教学方法論Ⅰ宗教心理学(W.

ジェイムス1842-1910)

8 0606宗教学方法論Ⅱ宗教社会学(E.

デュルケム1854-1917)

9 0613宗教学方法論Ⅲ宗教哲学(R.オッ

トー1869-1937) 10 0620宗教学方法論Ⅳ宗教民族学(A.

ファン・ヘネップ1873-1957)

11 0627宗教学方法論Ⅴ比較宗教学(M.エ

リアーデ1907-1986)

12 0704宗教学方法論Ⅵ宗教人類学(H.

コックス1929⁻)

13 0711宗教学方法論Ⅶ宗教民俗学(関一

敏1949⁻)

14 0718試験(小論文)

15 0725講評

(3)

言語と生態

自己中心主義から脱中心化へ

自文化中心主義から文化相対主義へ

狩猟採集漁労民・農耕/牧畜民から

市場経済・国民国家へ

(4)

九州とHeven’s Hell

(5)

「幸せ」の釈義

人間は、天使でも、獣でもない。そして、不幸なことには、天使の

まねをしようと思うと、獣になってしまう。(パスカル2001(1670):

358)

(6)

幸/不幸・幸い/災い・祝い/呪い

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。(宮沢賢

治『農民芸術概論綱要』)

(7)

Arrente English Dictionary

[Henderson and Dobson 1994:56,73]

• akangkeme(SE,C,N)- θvb.

1.feel happy, be pleased, enjoy yourself, be cheerful, have a good time.

2.be happy or pleased with someone; like or enjoy

something.

• akurne(SE,C,N) n.

1.bad,morally wrong,evil.

2a.not physically good;not useful, not working proprtly, useless, unusable, bad,

off(food),rubbish.

2b.sick,sore,injured,crippled,

damaged.

(8)

字統

[白川1992:294,335]

(9)

Oxford English Dictionary

[O.E.D.2017]

• happy,adj. and n.

Origin:Formed within English, by

deprivation. Etimology:<HAP n. +-Y suffix.>

A. adj.

Ⅰ.Senses relating principally to good fourtune.

1.a.Of a person:favoured by good fortune;lucky, fortunate; successful.

Occas. in extended use . Now somewhat rare.

B. n.

1.With the and pl. concord:happy people as a class.

2.a.A happy person or thing. Also: a happy state, event, etc.

• un’happy, adj.

frequency(in current use):

Etymology:UN-prefix 7.

1.a.Of persons (or animals):Causing misfortune or trouble(to oneself or

others); objectionable or miserable on this account.

b.Sc.Ill-natured;bad-tempered. Obs.

(10)

日本国語大辞典

[日本国語大辞典編纂委員会編1981]

• さいわい【幸】(「さきわ い」の変化した形)🈩〘名〙

①<形動>神仏など他が与え てくれたと考えられる、自分 にとって非常に望ましく、ま たしあわせに考えられる状態。

運のよいこと。また、そのさ ま。幸福。幸せ。*伊勢物語

[8巻:610]

• わざわい【禍・災・殃】〘名〙

(「わざ」は神のしわざの意、

「わい」は「さきわい(幸)」

などの「わい」と同じ。悪い結 果をもたらす神のしわざの意か ら)①悪い結果をもたらすよう な種々の事柄、気配。また、そ の悪い結果。身にふりかかる傷 害、病気、天災、難儀など。災 難。災厄。禍南。凶事。曲事。

不幸。*書記-仁徳六七年是歳

[20巻:641]

(11)

意味の遷移の比較

Arrernda:(-θvb.)feel happy, be pleased, enjoy yourself, be cheerful, have a good time.,( n.

漢字:幸、福(⁻100A.D.)

English:(adj.)Senses relating principally to good fortune.→ Of a

person:favoured by good fortune;lucky, fortunate →( n. )With the and pl.

concord:happy people as a class.→A happy person or thing. Also: a happy state, event, etc.(⁻1550A.D.)

日本語: 【幸】(「さきわい」の変化した 形)🈩〘名〙 ①<形動>神仏など他が与え てくれたと考えられる、自分にとって非常 に望ましく、またしあわせに考えられる状 態。(⁻794⁻)→しあわせ【仕合・幸】〘名

〙(「しあわす(為合)」の連用形の名詞 化)①めぐり合わせ。(⁻1549⁻)→こうふ く【幸福】〘名〙(形動)恵まれた状態に あって不平を感じないこと。(1808)

• Arrernda:n.bad,morally wrong,evil.

• 漢字:災( ⁻100A.D. )

• English:(adj. )→Of persons (or animals):Causing misfortune or trouble(to oneself or others);

objectionable or miserable on this account.(a1400A.D.)

• 日本語:わざわい【禍・災・殃】〘名

〙(「わざ」は神のしわざの意、「わ い」は「さきわい(幸)」などの「わ い」と同じ。悪い結果をもたらす神の しわざの意から)①悪い結果をもたら すような種々の事柄、気配。また、そ の悪い結果。身にふりかかる傷害、病 気、天災、難儀など。災難。災厄。禍 南。凶事。曲事。不幸。(-720-)→?

→ふこう【不幸】?

(12)

幸/不幸の数値化

エッジワースの単純化は次のよう

な仮定だった。すなわち「すべて

の人間は快楽機械である」という

ものである。ジェレミー・ベンサ

ムがすでに一九世紀初めに、「幸

福を価値基準にした計算」という

紛らわしい名前でこの概念を生み

出していた。それは人類に対する

一つの哲学的見解で、多数の生き

た損益計算者が、それぞれみずか

らの心理計算の快楽を最大化する

ように、生活をせわしげに調整す

るというものだった[ハイルブ

ローナー2001(1999):281] 。

(13)
(14)

祝い/呪い

(15)

幸せの念願/不幸の忌避

[藤原2008]

(16)

イエスの説教例「幸いの詞」

[佐藤編訳2005 cf.田川1984]

(17)

ユダヤ教から「真の宗教」としてのキリスト教へ

[佐藤2012;聖アウグスティヌス1976(

397⁻400

);ヨナス1986(1963)]

モーセ

ユダヤ12部族 ローマ帝国[ラ]

律法主義⇔預言者[ヘ]

ヨハネ

イエス(B.C.6-30頃か)[ア]

12使徒[ギ]

ヘレニスト・グループ⇐「ヘブライ人」グループ パウロ(-62頃)[ア、ヘ、ギ]

福音書[ギ]Euaggelion/[英]gospel

2世紀頃「聖書」成立

アウグスティヌス(354-430)[ギ、ラ]「De Vera Religione (On True Religion)」

(18)

「幸/不幸・幸い/災い・祝い/呪い」

の複数性の配置図

• 質的変遷

1.神仏偶然による幸/不幸 2.意識的になす祝い/呪い

3.個人の状態としての幸/不幸

• 数量化

4.個人快楽最大化/不快最小化 5.個人幸福=機能×財×機会/個 人リスクの算定

心理学

社会学

哲学 民族学

比較学

民俗学

(19)

幸い/幸せ/幸福の書籍

0 200 400 600 800 1000 1200

-1899 1903 1907 1911 1915 1919 1923 1927 1931 1935 1939 1943 1947 1951 1955 1959 1963 1967 1971 1975 1979 1983 1987 1991 1995 1999 2003 2007 2011 2015

集合縦棒

幸い 幸せ 幸福

0 500 1000 1500 2000 2500

-1899 1903 1907 1911 1915 1919 1923 1927 1931 1935 1939 1943 1947 1951 1955 1959 1963 1967 1971 1975 1979 1983 1987 1991 1995 1999 2003 2007 2011 2015

積上げ縦棒

幸い 幸せ 幸福

(20)

参考文献

浅田彰1983『構造と力』勁草書房

佐藤研編訳2005『福音書共観表』岩波書店

佐藤研2012『旅のパウローその経験と運命』岩波書店

聖アウグスティヌス1976(397⁻400)『告白』上、下 服部英次郎訳 岩波書店 白川静1992『字統』平凡社

世界単位認定協会編2006『新しい単位 カラー版』扶桑社サブカルPB

セン、アマルティア1988(1985)『福祉の経済学 財と潜在能力』鈴村興太郎訳 岩波書店 田川健三1984『宗教とは何か』大和書房

田川建三1997『書物としての新約聖書』勁草書房

日本国語大辞典編纂委員会編1981『日本国語大辞典』小学館

ハイルブローナー、ロバート2001(1999)『入門経済思想史 世俗の思想家たち』八木甫ほか訳 ちくま学芸 文庫

ポランニー、カール1980(1977)『人間の経済Ⅰ ―市場社会の虚構性―』玉野井芳郎・栗本慎一郎訳 岩波 書店

メドウズ、ドネラ H.、デニス L.メドウズ&ヨルゲン・ランダース2005 (2004) 『成長の限界 人類の選択』

枝廣淳子訳 ダイヤモンド社

ヨナス、ハンス1986(1963)『グノーシスの宗教』秋山さと子・入江良平訳 人文書院 Henderson、John and Veronica Dobson eds.1994Arrentre English Dictionary IAD

O.E.D.2017Oxford English of Dictionary Online. Oxford.U.P.

EDINET(証券取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)

参照

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