• 検索結果がありません。

『探求の共同体

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "『探求の共同体"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

220

現行の教育を批判する場合にとりうる立場とし て,二つの立場が考えられる。

一つは,教育そのものに内在する暴力性や,教 育を行ううえで必ず付随すると考えられる他者侵 害性をあげつらうことで,「教育=悪玉」図式を 描き出して,脱学校を主張する立場。もう一つは,

現行の教育に含まれる暴力性や他者侵害性を指摘 しつつも,それをいかに乗り越えて,よりよい教 育の構築をめざしていくかを考えてゆく学校再構 築の立場である。

前者を「脱学校」論,後者を「学校再構築」論 とよぶとすると,マシュー・リップマンの『探求 の共同体 考えるための教室』は,「脱学校」論の 立場から提示された教育に対する批判を正面から 受け止めつつも,どのようにしたら,学校を生き 生きとした集団的な探求の場にすることができる かを模索した「学校再構築」論であるとみること ができる。(Ⅰ.思考力のための教育〈第 1 章,第 2 章,第 3 章〉)

「学校はおかしい」「学校は遅れている」「学校 がもっと居心地の良い場所だったら良いのにな」

という学校に対する漠然とした不満は,多くの人 が経験的に感じえるもので,アカデミズムの世界 においても,多くの論者が,その不満に便乗して 学校批判を繰り広げてきた。

しかし,「脱学校」論においてはさることながら,

「学校再構築」論においても,現行の教育を内側 から組み替えていく実効的な対案を体系的に示し た教育理論は少ないのではないだろうか。

本書は,まさに,このような「学校再構築」論 の行き詰まり状況を打開する可能性を多分に含ん だ教育論であるといえる。

Ⅱ.探求の共同体〈第 4 章,第 5 章〉や,Ⅲ.思

考のオーケストラ〈第 6 章,第 7 章,第 8 章〉では,

理論的基礎を伴いつつ,具体的に「探求の共同 体」をつくってゆく方途についての詳細な検討が 行われている。さらに,Ⅳ . 思考をよりよいもの にしていくための教育〈第 9 章,第 10 章,第 11 章,

第 12 章,第 13 章〉では,これまで多くの論者が さかんに述べ立ててきた「批判的思考」を再吟味 してとらえなおすとともに,「創造的思考」と「ケ ア的思考」という概念を合わせて,多元的思考ア プローチという新たなモデルの提示がなされる。

Ⅱ~Ⅳを概観してわかることは,方法論におけ る具体性と理論的基礎の重厚さ,そして,従来の 研究の到達点を乗り越えてゆく革新性という点に おいて,リップマンの構想は,これまでの「学校 再構築」論よりも優れているということである。

また,本書において注目されるべきもう一つの 点は,「探求の共同体」において重要視される丁 寧な概念の吟味が,まさに,本書のなかでなされ ているということである。つまり,「探求の共同体」

とは何かを明示する本書そのものが,「探求の共 同体」で重要視することは何かを語りかけている のである。この点は,教育論を考えるうえで,こ れまでそれほど重要視されてこなかったように思 われるが,民主主義を実現するための教育が民主 主義的に行われなければならないということと同 じように重要なことであるように思われる。つま り,「探求の共同体」論が「探求の共同体」的に 書かれることの重要性である。そのように考える と,本書の説得力は,その理論の豊饒性というこ ともさることながら,リップマンが,「探求の共 同体」論で重要視されていることを忠実に守って いるという一貫した態度からも得られているので はないだろうかと考えられる。

リップマンの「探求の共同体」論は,ただ批判 を述べ立てるだけに終わっていた「脱学校」論と,

具体的な方法を伴わずに理念を提示するに留まっ ていた「学校再構築」論,この両者の行き詰まり を打開する体系的学校改革論を実直に一貫した態 度で追い求めた教育論として,今,まさに,教育 現実の変革のために求められているのではないだ ろうか。

河野哲也 ・土屋陽介・村瀬智之 監訳 マシュー・リップマン 著

『探求の共同体 考えるための教室

玉川大学出版部 2014年 A5版 460頁 ¥4000(税抜)

藤原 敬

参照

関連したドキュメント

何日受付第何号の登記識別情報に関する証明の請求については,請求人は,請求人

太宰治は誰でも楽しめることを保証すると同時に、自分の文学の追求を放棄していませ

図 21 のように 3 種類の立体異性体が存在する。まずジアステレオマー(幾何異 性体)である cis 体と trans 体があるが、上下の cis

つまり、p 型の語が p 型の語を修飾するという関係になっている。しかし、p 型の語同士の Merge

断するだけではなく︑遺言者の真意を探求すべきものであ

そこで、そもそも損害賠償請求の根本の規定である金融商品取引法 21 条の 2 第 1

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

 ライフ・プランニング・センターは「真の健康とは何