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修 士 論 文 概 要 書

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修 士 論 文 概 要 書

2012 年 2 月提出 学籍番号

5110B044–3

CD

専門分野 情報理工学専攻 研究指導 情報システム設計研究

氏 名

栗岡 大生

指 導

教 員

戸川 望

研 究 題 目

次世代動画像符号化に適した並列補間手法の ハードウェア設計に関する研究

1 序論

情報化社会と呼ばれるこの時代では,個人が通信端 末を持ち,毎日,インターネットで通信を行っている.

様々な通信端末が情報を送受信するのに伴い,情報の 形も多様化した.文字や画像データと比較して,動画 データは大きく,無圧縮で蓄積,送信するには実用的 でない.このため,動画像圧縮技術は発展をしてきた.

その中でもH.264/AVCは映像デジタル圧縮技術の最 先端技術と言える.

現在,H.264/AVCの後継規格としてH.265/HEVC が議論されている.H.265/HEVCではH.264/AVCの 二倍の圧縮率を目標としている.H.264/AVCでは計算 が複雑にならないよう,できるだけ,単純であるが圧 縮に効果的な演算方法を採用してきた.しかし,H.265 では多少の複雑度は受け入れることにして,圧縮率の 向上を目指している[5].

中でも小数精度動き補償は計算の多くを占めている.

その中の処理である補間は未だ,単純計算のみで計算

している[1-4].多少の複雑度を受け入れるとして,こ

の補間の精度を上げることが出来れば,全体の圧縮率 の向上に貢献できると考えられる.また,ハードウェ ア化を考えた場合,補間はループ処理で単純計算が多 いのでハードウェア化に向いていると言える.

本論文では,画面間予測の小数精度動き補償での動 き予測の精度向上を目的とし,次世代動画像符号化に 適した並列補間手法を提案する.従来のH.264/AVCの 補間に加えて,動きを考慮した補間を並列にする.そ して,誤差を小さい方を選択することにより精度を上 げる.補間の精度を向上させることにより,予測精度 が向上し,高画質・高圧縮となる.

2 H.264/AVC

H.263 と比較し,2 倍程度の圧縮率を実現してい

る.次世代動画像符号化では,複雑度を受け入れ,

H.264/AVCの2倍の圧縮率を目指している.

3 補間

補間とは,周辺の整数精度の画素を入力とし,整数精 度の画素間を埋めた小数精度の画素を出力とする処理 である.出力する画素は小数精度動き補償に使われる.

3.1 H.264/AVCの補間方法

H.264/AVCの補間では,縦横一列の6個の整数精度 の画素それぞれを入力とし,小数精度の画素を出力と する.これでは,どのようなフレームに対しても同じ 補間をしてしまい,そのフレームの特徴が活かせてい ないという問題点がある.

3.2 徳永らの手法

徳永らの手法では,フレームのものの動きベクトル を考慮し,入力とする整数精度の画素を縦横一列のみ ならず,斜めの画素を用いれるよう動的に変化させる.

図1: H.264/AVCと徳永らの手法と提案手法の違い.

図2: 動きを考慮した適応的な補間の選択画素.

動きが激しい動画に対しては有効であるが,あまり動 きがない場合,利得は小さくなる.

4 次世代動画像符号化に適した並列補間 手法

本章では,予測精度向上による画質向上とビット・

レート削減を目的とし,次世代動画像符号化に適した 並列補間手法を提案する.本手法は,H.264/AVCの補 間に加え,動きベクトルを考慮した補間を並列に計算 する.そして,誤差が小さかった方を選択する.

3章で述べたH.264/AVCの補間と徳永らの手法と の違いを説明する.図1に概要を示す.H.264/AVCで は,縦横一列のみの整数画素を利用するWienerフィ ルタを用いて補間する.徳永らの手法では,動きに合 わせて動的に利用する画素を変化させる可変窓を用い て補間する.この可変窓の窓の数は7種類ある.提案 手法では,Wienerフィルタと可変窓とは異なる動きを 考慮した適応的な補間を並列に補間し,誤差の小さい 方を選択する.可変窓と動きを考慮した適応的な補間 の違いは,動きを考慮した適応的な補間は横ずれを考 慮した8種類の窓となっている.

(2)

図3: mobileのRD曲線.

動きを考慮した適応的な補間の窓の具体例を図2に 示す.Wienerフィルタでは(1),(6)の窓のみを用いて いたが,動きを考慮した適応的な補間では動きベクト ルに合わせて適応的に計算に使用する整数精度の画素 を変化させる.

H.264/AVCのフレームの特徴を活かせていないが安

定した補間と,可変窓によるフレームの特徴を活かせ るが動画によっては効果があまりない不安定な補間を 組み合わせる.これにより,互いの長所を活かしなが ら弱点が補強でき,予測精度の向上が期待できる.

5 実験・評価

前 章 で 提 案 し た 補 間 手 法 を ,C 言 語 で 書 か れ た H.264/AVCのエンコーダであるJMに実装し,ソフ トウェアシミュレーションをする.また,Verilog-HDL に実装し面積,遅延を評価する.

5.1 ソフトウェアシミュレーション結果

JMに徳永らの手法と提案手法を実装し,比較する.

エンコードの条件はITU-T SG16で決められたH.26L に関する推奨シミュレーション条件に従う.結果はRD 曲線で評価する.RD曲線とは縦軸がPSNR[dB],横 軸がビット・レート[kbps]で表される曲線である.グ ラフが左上になればなるほど,高画質,高圧縮が実現 できていることを意味する.

RD曲線図3に示す.これは,mobileという動画を圧 縮したときのRD曲線である.anchorはH.264/AVC, tokunagaは徳永らの手法,proposedは提案手法を表し ている.提案手法は他の2つの手法よりもグラフが左 上にきていることが分かる.他にもcontainer,paris, news,compete,silent,foremanという動画でも同様 の結果を得た.mobileにおいて,PSNRは最大でan- chorと比較して1.15dB,tokunagaと比較して1.17dB 向上,ビット・レートは最大でanchorと比較して5.5%, tokunagaと比較して5.8%の削減がみられた.したがっ て,高画質,高圧縮が実現できていると言える.

5.2 Verilog-HDL評価結果

Verilog-HDLにH.264/AVCの補間と提案手法を実 装し,面積,遅延オーバーヘッドを評価する.セルラ イブラリにはSTARC(CMOS 90nm)の設計ルールを 用いた.結果を表1に示す.輝度補間器のみにおいて は,58.8%増加,補間器全体においては15.7%増加とい う結果を得た.

表1: Verilog-HDLによる実験結果.

面積[µm2] 遅延[ns]

H.264/AVC 7638.5 1.09

(輝度補間器のみ)

Proposed method 12156.8 1.09 (輝度補間器のみ)

H.264/AVC 27596.3 1.6

(補間器)

Proposed method 31925.9 1.6 (補間器)

5.3 考察

ソフトウェアシミュレーションにおいて,提案手法 は動きが激しい動画に対して特に,PSNR向上とビッ ト・レート削減が見られた.したがって,スポーツの ような画面全体が動く動画に対して有効な手法である と考えられる.

Verilog-HDL実験において,並列していることから,

遅延増加はないことがわかった.面積は補間器全体で 15.7%発生するが,ハードウェア全体では数%であると 考えられる.スループットに関して,補間部の後の処理 の補償部において低下すると考えれられる.補償部と は予測輝度値と実際の輝度値とおの誤差を取る箇所で ある.補償部において,減算器を並べることでスルー プットの低下を防ぐことができるが,面積増加とのト レードオフとなる.

6 結論

以上,次世代動画像符号化に適した並列補間手法を 提案した.今後の課題は,メモリを考慮した設計であ る.提案手法では,順番に輝度値が入力されるという 仮定をおいているので,フレームメモリに対してロー ド命令ができない.輝度,色差信号に対して,アドレ ス計算をして,ロード命令ができると良い.

参考文献

[1] I. E. G. Richardson, The H.264 Advanced Video Compression Standard, John Wiley & Sons Ltd, 2010.

[2] I. E. G. Richardson, H.264 and MPEG-4 Video Compression, John Wiley & Sons Ltd, 2003.

[3] ITU-T, “Advanced video coding for generic au- diovisual services,” H.264 Standard, March 2009.

[4] Joint Video Team, Reference Software JM16.1, http://iphome.hhi.de/suehring/tml/download/, 2009.

[5] 角野眞也, 菊池義浩, 鈴木輝彦, H.264/AVC教科 書,株式会社インプレスR&D, 2009.

本論文に関する発表業績 国内学会(査読なし)

1. 栗岡大生,柳澤政生,戸川望,“動きベクトルを考 慮した遅延オーバーヘッドのないハードウェア向 き適応的並列補間手法,”電子情報通信学会大会講 演論文集(G0508A),pp. 75, 2011.

参照

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