「在宅医療コーディネーター養成カリキュラムの開発」
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(2) 2013 年度後期勇美記念財団在宅医療助成. 『在宅医療コーディネーターのつくり方』 はじめに 1. 地域の有志が集まる場をつくる 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木 麻衣子. 1 章 医療介護連携がうまくいかない理由を共有する 1. 地域医療の実情(医師からみた意思決定支援) 梶原診療所. 医師 本池 孝二氏. 2. 介護現場の実情(社会福祉法人の立場) 日本化薬メディカルケア株式会社. 代表取締役 宮野. 茂氏. 2 章 医療コーディネーションとは何かを共有する 1. 意思決定支援と関係調整 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木 麻衣子. 2.「援助する」者と「援助される」者のよりよい関係性に関する一考察 医療法人公道会. 公道会病院 佐藤. 貴之氏. 3 章 意思決定支援の場面を共有する(事例検討) 1. 事例検討の課題について 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木 麻衣子. 4 章 在宅医療コーディネーターの課題を整理する 1. 期間と地域限定の医療コーディネーターと地域包括ケア 東京都北区特別養護老人ホームみずべの苑 配置医. 碓井. 亘氏. 5 章 在宅医療コーディネーター養成講座を企画運用する 1. 在宅医療コーディネーター養成講座案 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木 麻衣子. 2. 研修運用の実際 日本化薬メディカルケア株式会社 企画部 山下. 和彦氏.
(3) はじめに 日本医療コーディネーター協会 理事 水木 麻衣子 「地域に医療コーディネーターが必要だ」という声を聞いたのは 2010 年の事である。 東京都豊島区医師会の依頼だった。それからずっと私は在宅医療コーディネーションを誰 がどのように担うのか、ということを探ってきた。このたび、2014 年勇美記念財団の研究 助成をうけて、 「在宅医療コーディネーターのつくり方」に論点をまとめることにした。 今回の研究プロジェクトでは、在宅医療コーディネーター養成カリキュラムを構築し、模 擬講座を開催し、その効果評価を行うことが当初の目的であった。東京都北区で在宅医療 に関わる有志に呼びかけ、北区在宅医療コーディネーター検討委員会を立ち上げ、その検 討委員会で「医療コーディネーション」についての議論を始めた。しかし、ゴールは遠か った。一番大きな理由は「在宅医療コーディネーターの必要性」について、委員の共通理 解を得るのに時間がかかったからである。カリキュラム案までたどり着かず、何か意思決 定支援なのか、誰が行うのか、どのように行うのか、そのあたりを共有するのが精一杯で あった。思い返せば、豊島区でも同じ議論はあったし 2014 年でもそれは続いている。そ れを考えると、本研究プロジェクトの知見は「在宅医療コーディネーターの養成は、カリ キュラムをつくり実施評価すればいいわけではなく、話し合いの場をつくり、現場と理解 し合いながら時間をかけて行うべき」ということにつきる。例えば、検討委員会をつく り、主要メンバーをあつめ、「在宅医療コーディネーターのつくり方」の論点を議論し、 委員が運営する養成講座を通して地域に理解を求めていくようなやり方である。 本報告書は、他の自治体が在宅医療コーディネーターを作りたいと思った時の参考にし て頂ければと思っている。ぜひ以下の論点にそって、議論をしながら、養成講座を企画し てほしいと思う。そのプロセスが、おそらく地域包括ケアの下地となると確信している。 そのプロセスはまず、地域にいる多職種の有志を集めるところから始まる。 「場」作り のプロである行政も入ったほうが本当はいいと思う。続いて委員の中で考え方を共有し始 める。そのポイントは以下である。 1 章のポイントは「連携がうまくいかない理由を共有する」こと。地域包括ケアで「連携」 の担い手が求められているが、 「連携」がうまくいかない理由を突き止めることである。そ のために、地域で医療を提供する医師が直面する”医療コーディネーターがいたらいいな”と 思う状況を聞いてみたり、介護現場で求められる医療連携の制度について現状を理解する。 2 章のポイントは、 「医療コーディネーションとは何か」を共有すること。医療コーディ ネーションとは意思決定支援と関係調整である。地域包括ケアに足りないのはこの二つで ある。多くの対人援助職が関わる在宅医療連携で、この意思決定支援と関係調整をどのよ うに行っていくのかを共有する。ここでは、利用者、患者家族がどのような意思決定支援 を求めているのか、心理学の立場からの考察を参考にしてほしい。 3 章は、 「意思決定支援場面の関わりの実際」を共有すること。実際の事例を用いて意思.
(4) 決定支援とは何かを共有するのである。ここでは本研究プロジェクトで使用した「意思決 定支援の必要な場面」の事例検討を紹介している。在宅医療コーディネーターが何を察知 し、何を考え、どのように支援をするのかについて、事例を通してイメージしていくとこ ろである。 4 章では、 「在宅医療コーディネーターの課題」を整理すること。どんなにやる気のある ひとが集まっても、必ず「必要性」への懐疑がでてくる。在宅医療コーディネーターへの 期待が高まる一方で、その検証なくしては、一歩も前には進まないことがわかる。 5 章では、養成講座カリキュラム例と運用の実際をまとめている。これは実際に企画し 運営するときのポイントである。カリキュラム案は豊島区の在宅医療コーディネーター養 成講座のものである。豊島区の研修を通じてたどり着いたカリキュラム案なので、多くの 自治体の参考にしてもらえると思う。 最後に、在宅医療コーディネーターは、既存の医療介護関係者の役割と重なるところも 多く、導入にあたっては混乱や障壁が出現する。それを乗り越えて、在宅医療コーディネ ーターをつくっていくことが、まさに求められていると考えている。その参考にして頂け ればと思う。.
(5) 1章. 医療コーディネーションが必要になった背景. 1.地域医療の実情(医師からみた意思決定支援) 梶原診療所. 医師 本池. 孝二氏. 2.介護現場の実情(社会福祉法人の立場) 日本化薬メディカルケア株式会社. 代表取締役. 宮野. 茂氏. 1 章のポイントは「連携がうまくいかない理由を共有する」こと。地域包括ケアで「連携」の担 い手が求められているが、 「連携」がうまくいかない理由を突き止めることである。そのために、 地域で医療を提供する医師が直面する”医療コーディネーターがいたらいいな”と思う状況を聞い てみたり、介護現場で求められる医療連携の制度について現状を理解する。.
(6) 1.. 地域医療の実情(医師から見た意思決定支援) 梶原診療所. 医師 本池. 孝二氏. 平成 27 年度介護報酬改定の基本的な考えかたは、中重度の要介護者や認知症高齢者への 対応の更なる強化となった。 今後増大することが予測される、医療ニーズを併せ持つ中重度の要介護者や認知症高齢者 について、 「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよ うにする」という地域包括ケアシステムの基本的な考え方を実現するためには、在宅生活を 支援するためのサービスの充実を図っていく必要がある。 現在の高齢者医療は、治す(Cure)医療に専念しQOLを考えない状況にある。病気や 障害を持っても活き活きと生き、穏やかに人生を終えるところまでのケア(Care)を支え る医療でなければならない。 その中での医師の意思決定支援は、ケアマネジャー、訪問看護ステーション看護師、訪問介 護ヘルパー等(以下:介護従事者)にとって重要な位置づけになるものと考える。 クリニックの医師の医療は、疾病を診るものであり患者の生活は見なくてもよい状況にあ った。昨年の診療報酬改定は、在宅医療において患者の生活状況を見なければならなくなっ た。 在宅医療・介護連携においては、在宅にいる患者の生活および医療を支援するために医師 と介護従事者がシームレスな連携を行わなければならなくなったのである。 在宅にいる患者の生活から医療までの情報を、医師、介護従事者が共有しなければならず医 師がそのネットワークのリーダーシップをとらなければならない状況になった。 介護従事者のモチベーションを上げるためには、医師が積極的にリーダーシップをとる必 要があると考える。 患者(利用者) ・家族・介護従事者にとって医師が、リーダーシップを取ってくれること がどのくらい安心感につながるかが重要である。 在宅医療を必要とする利用者にとっては、状態が安定している時(介護モード)には主に介 護従事者が前面に出てサービスを提供すれば良いと考える。医師は、バックボーンであれば 良いのである。状態が不安定期(医療モード)になった場合は、医師が前面にでてリーダー シップをとることとなり介護従事者がこれをサポートすることになる。 在宅医療・介護にとってこのフォーメーションが、重要となる。医師と介護従事者との役割 分担と考える。 地域の医療・介護連携にとって、医師が介護従事者に積極的にアドバイスをするためには医 療モードと介護モードの切り替えを如何にスムーズに行うかが重要と考える。医師が外来 で患者を診ている最中でも、インターネットのクラウドシステムを利用した情報が、介護従.
(7) 事者から取得でき適切なアドバイスをすることが出来るようになることが介護従事者の意 思決定支援において重要となる。このためにはITを利用した情報の共有化が必要であり ここでも医師のリーダーシップが必要となる。 認知症においても、本人主体の医療・介護等を基本に据えて医療・介護等が有機的に連携し、 認知症の容態の変化に応じて適時・適切に切れ目なく、早期診断・早期対応を軸とし、行動・ 心理症状(BPSD)や身体合併症等が見られた場合にも、医療機関・介護施設等での対応が 固定化されないように、退院・退所後もそのときの容態にもっともふさわしい場所で提供さ れる循環型の仕組みを構築する必要がある。その際、入院・外来による認知症の専門医療も 循環型の仕組みの一環であるとの認識の下、その機能分化を図りながら、医療・介護の役割 分担と連携を進める。また、介護現場の能力を高め、介護で対応できる範囲を拡げるために は、精神科や老年科等の専門科による、医療の専門性を活かした介護サービス事業者等への 後方支援と司令塔機能が重要であり、その質の向上と効率化を図っていく必要がある。 医師が、在宅にいる患者(利用者)の情報をクリニックにいながらに把握でき指示ができる ことが患者・家族・介護従事者にとっての安心に結び付き、医師の負担を少なくすることに なる。 地域完結型を目指すためには、医療と介護の間をどう埋めていくかが重要となる。良い在宅 医療のためには、病院医師、在宅医師、訪問看護、ケアマネを含めた介護スタッフと患者・ 家族との認識(気持ち)の共有が必要となる。 医師には、家族が言いにくいことを介護従事者であれば言いやすいこともある。患者(利用 者)の要望を医師に伝えることも介護従事者の役割と考える。 医師一人が、在宅医療介護の必要な患者を支えることは無理である。 医師と訪問看護ステーションの看護師が24時間のサービス提供体制を確保し、医療サー ビスと介護サービスの連携を担当するケアマネジャーが連携を調整する多職種連携を構築 することが必要となる。 連携を調整するケアマネジャーの力量もこれまで以上に必要であるが、ケアマネジャーを 支援する医師の柔軟性も関係を構築する上でより重要となる。 26年度医療保険制度改正そして27年度の介護保険制度改正において、この様な医療介 護連携の構築が必要であり求められるのである。.
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(9) 2.介護現場の実情(社会福祉法人の立場) 在宅医療介護連携に伴う医療保険、介護保険の推移 日本化薬メディカルケア株式会社. 代表取締役. 宮野. 茂氏. はじめに 平成26年度の医療保険制度改正および平成27年度介護保険制度改正は、地域包 括ケアシステム1)であり在宅にいる高齢者が医療から介護までをシームレスにサービ スを受けられる体制を構築することが求められている。しかし現在は、在宅におられ る医療・介護を必要な高齢者が、医療から介護までシームレスなサービスを提供され ていない現状にある。この様な課題を解決するにあたり社会保障・税一体改革及び 社会保障制度改革国民会議の報告書(平成 25 年 8 月 6 日)に示された内容を踏ま えつつ、平成 27(2015)年度の施行に向けて、介護保険制度改革が進められている。 注1)地域包括ケアシステム(介護・医療・予防) 個々人の抱える課題にあわせて「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予 防」が専門職によって提供される(有機的に連携し、一体的に提供)。ケアマネジメント に基づき、必要に応じて生活支援と一体的に提供。.
(10) 改革が求められる背景と社会保障制度改革国民会議(確かな社会保障を将来世代 に伝えるための道筋)の使命 1.改革が求められる背景 ○ 高齢化の進展により、疾病構造の変化を通じ、必要とされる医療の内容は、「病 院完結型」から、地域全体で治し、支える「地域完結型」に変わらざるを得ない。 ○ 医療改革は、提供側と利用者側が一体となって実現されるもの。「必要なときに必 要な医療にアクセスできる」という意味でのフリーアクセスを守るためには、緩やかな ゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の普及は必須。 ○ 医療を利用するすべての国民の協力と国民の意識の変化が求められる。 ○ 急性期医療を中心に人的・物的資源を集中投入し、早期の家庭復帰・社会復帰 を実現するとともに、受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護を充実。川上から川 下までの提供者間のネットワーク化は必要不可欠。 ○ 医療・介護の在り方を地域毎に考えていく「ご当地医療・介護」が必要。 〇在宅医療においては、在宅療養支援診療所とかかりつけ医との役割分担および認 知症サポート医・もの忘れ相談医とかかりつけ医との役割分担が明確とはなっていな い状況にある。 〇在宅療養支援診療所と急性期大病院の役割分担が明確となっていない。2人主治 医制の普及等、大病院医師とかかりつけ医との役割分担と連携(情報共有)が必要。 〇医療・介護連携においては、ケアマネジャーの医学的知識が乏しいことおよび医師 の在宅生活の介護に対する認識が低いため、コミニュケーションが円滑にはいかな い状況となっている。 〇在宅医療・介護を必要とする要介護認定者および認知症利用者は、このような事 業環境の中で医療・介護のサービスを別々に受けている。 ○ 「医療から介護へ」、「病院・施設から地域・在宅へ」の観点から、医療の見直しと 介護の見直しは一体となって行う必要がある。 ○ 地域包括ケアシステムづくりを推進していく必要があり、平成 27 年度からの介護 保険事業計画を「地域包括ケア計画」と位置づける。 ○ 国民会議の最大の使命は、前回の社会保障制度改革国民会議で示された医療・ 介護提供体制改革に魂を入れ、改革の実現に向けて実効性と加速度を加えること。.
(11) 〇いずれにせよ、地域包括ケアシステムの確立は医療・介護サービスの一体改革に よって実現するという認識が基本となる。こうした観点に立てば、将来的には、介護保 険事業計画と医療計画とが、市町村と都道府県が共同して策定する一体的な「地域 医療・包括ケア計画」とも言い得るほどに連携の密度を高めていくべきである。 なお、地域包括ケアシステムを支えるサービスを確保していくためには、介護職員等 の人材確保が必要であり、処遇の改善やキャリアパスの確立などを進めていく必要 がある。また、地域医師会等の協力を得ながら、複数の疾患を抱える高齢者が自分 の健康状態をよく把握している身近な医師を受診することを促す体制を構築していく ことも必要である。 平成26年度診療報酬改定に係る基本的考え方 (1)医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等 〇平成26年度診療報酬改定においては、上記のような基本認識の下、社会保障・税 一体改革において、消費税率を引き上げ、その財源を活用して、医療の機能強化と、同 時に重点化・効率化に取り組むこととされている中で、入院医療・外来医療を含めた医 療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に重点的に取り組むべきであ る。 〇患者の立場からすれば、どのような状態であっても、患者の理解を得るための適切 な説明が行われ、状態に応じた適切な医療を受けることができるということが重要な のであり、そのような視点に立って、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看 護ステーション、そして介護事業所等に至るまで、患者を支える機能が円滑に連携し ていなければならない。地域においてこれらの機能が地域の実情に応じたネットワー クを構築し、地域全体で地域の医療需要に応えていく「地域完結型」の医療提供につ いて、それを促進するような評価が必要である。また、このとき、医療従事者の確保 が必要であり、医療従事者の負担軽減とともに、チーム医療の推進に引き続き取り組 むべきである。 (2)在宅医療について 〇一人暮らしや高齢者のみの世帯でも住み慣れた地域にできるだけ長く暮らせるよ うに、地域ごとに地域包括ケアシステムを構築することが重要である。主治医を中心 として、病院、医科診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所 等が連携し、地域で急変時の対応や看取りを含めた在宅医療を提供できる体制を構 築する必要がある。 〇このため、在宅医療を担う医療機関の量の確保と、患者のニーズに対応した質の 高い在宅医療の提供を推進するため、介護報酬との連携に留意しつつ、以下の事項 について検討を行う必要がある。 ①看取りを含め、在宅療養支援診療所・病院の機能強化 ②在宅療養支援診療所・病院以外の医療機関による在宅医療の推進.
(12) ③24時間対応、看取り・重度化への対応など、機能に応じた訪問看護ステーションの 評価、訪問看護ステーションの大規模化の推進 ④在宅歯科医療の推進 ⑤在宅薬剤管理指導の推進 ⑥訪問診療の適正化等 (3)医療機関相互の連携や医療・介護の連携によるネットワークについて2) 〇限られた医療資源の下、急性期から在宅医療、介護まで、患者がどのような状態 であっても、状態に応じた療養環境で適切な医療を受けることができるよう、地域ごと に患者の立場に立った地域包括ケアシステムを構築するため、地域の実情に応じた 「地域完結型」の医療のネットワークを構築する必要がある。こうしたネットワークにお いては、患者は状態に応じて適切な医療機関や施設、在宅等のサービスを受けら れ、状態の変化によりサービスが変わる場合においても、安心して円滑に次のサー ビスを受けることができるよう、連携先の紹介・確保、連携元と連携先での情報共有、 患者の理解を得るための適切な説明等が行われるようにしなければならない。 注2)医療・介護の連携によるネットワーク. 医療(大病院・診療所)・介護連携 急性期病院 平均在院日数の短縮 新入院患者の確保 早期退院. 退院時連携 加算の 効率的取得. 回復期リハ病院 脳卒中(麻痺). ネットワーク 退院時の受皿として の機能 急変時の入院連携. がん・非がん 緩和ケア. 居宅介護支援 事業所 訪問介護 通所介護 医療連携加算の 効率的取得. 在宅療養支援 診療所 24時間 連絡体制(集中受付 窓口のセンター化). 訪問看護 訪問 リハビリ. 平成27 年度介護報酬改定の基本的な考え方 中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化 〇今後増大することが予測される、医療ニーズを併せ持つ中重度の要介護者や認知 症高齢者について、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい生活 を続けられるようにする」という地域包括ケアシステムの基本的な考え方を実現する ためには、引き続き、在宅生活を支援するためのサービスの充実を図っていく必要が ある。.
(13) 〇今般の平成26 年の制度改正では、在宅医療・介護連携の推進、認知症初期集中 支援チームや認知症地域支援推進員の設置などを地域支援事業に位置づけ、特 に、認知症の早期発見、早期対応の推進に向けた施策を推進することとしたところで あり、今回の介護報酬改定においても、医療と介護の連携も含め、中重度の要介護 者や認知症高齢者への支援を強化していくことが重要である。 〇また、平成26 年度の診療報酬改定や今後の地域医療構想に基づく病床機能の 分化・連携の推進による医療機関から在宅復帰促進の流れの中で、在宅医療・介護 のニーズが高まることから、この点からも、中重度の要介護者が無理なく在宅生活を 継続できるように対応力を高めていくことが必要である。在宅において高齢者が自立 した生活を送るためには、生活機能の維持・向上を図るとともに、生活機能の低下を 防ぐことが重要であり、リハビリテーションについては、「心身機能」へのアプローチの みならず、「活動」や「参加」といった要素を強化し、社会とのつながりが維持された在 宅生活を継続できるように支援することが重要である。 注3平成27年度介護保険制度改正の主な内容. おわりに 平成26年度27年度の制度改正を実現するためには、医療的措置を必要とする利用 者と認知症の利用者に対して医療・介護連携における課題を抽出し、解決していくこ とが急務と考える。 このために、医療従事者と介護従事者が、共通の言語で顔見知りの関係のネットワ ークを構築することが重要となる。.
(14) 2章. 医療コーディネーションとは何か. 1.意思決定支援と関係調整 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木. 麻衣子. 2.「援助する」者と「援助される」者のよりよい関係性に関する一考察 医療法人公道会. 公道会病院. 佐藤. 貴之氏. 2 章のポイントは、 「医療コーディネーションとは何か」を共有すること。医療コーディネーシ ョンとは意思決定支援と関係調整である。地域包括ケアに足りないのはこの二つである。多くの 対人援助職が関わる在宅医療連携で、この意思決定支援と関係調整をどのように行っていくのか を共有する。ここでは、利用者、患者家族がどのような意思決定支援を求めているのか、心理学 の立場からの考察を参考にしてほしい。.
(15) 1.. 意思決定支援と関係調整 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木. 麻衣子. 1. 意思決定支援と関係調整の概要 (1)なぜ医療コーディネーションが必要か 医療コーディネーションの目的は、自分の意思で自らの生き方や治療方針を決定し、自 分の言葉でそれを関係者に伝えることができるようにすること。つまり意思決定支援と関 係調整だと定義している。医療コーディネーションは、単に医療資源のマッチングをする ことではなく、利害関係者の「関係調整」であり、そこに至るまでの「意思決定支援」と 「合意形成」を含む一連のプロセスである。そのプロセスのない単なるニーズのマッチン グでは、過剰サービスや不適切サービスになりやすく、そもそも本人の尊厳を尊重するこ とにならない。実際、意思決定の場面では、患者家族だけでなく支援者の価値判断が錯そ うし、対立や葛藤が生じており、その対立を緩和しなければ意思決定はできないし、かつ 関係調整を丁寧に行わないと合意形成に至らないことも多い。このような意思決定の場面 は、今までは医師患者関係の間、あるいは病院の中に限定されていた。しかし、今後、地 域包括ケアの整備に伴い意思決定の場面は地域に移行することが考えられる。資源の限ら れた中で、しかも多職種がかかわり得る環境の中で、最適な医療介護サービスを利用者に 提供していくためには、医療コーディネーション機能が必要であると考える。 地域包括ケアに関わる対人援助職はもともと意思決定支援と関係調整の役割を持ってい る。患者家族の希望に協力し、患者家族が自らの力を取り戻し発揮できるよう支援するこ とがケアの本質であり、患者家族をケアすることで対人援助職自身も成長していくと考え られている。しかし、現在は医療コーディネーションの機能は弱い。たとえば、筒井孝子 氏は報告書の中で、以下の二点を課題としている。①学際的なチームミィーティングは多 くの場合、意思決定や計画変更、見直し(coordination , integration)というより も、コミュニケーション(Linkage)をする場となっている。②各プロジェクトで統合を 向上させようと介入すると、大抵の場合、 coordination や integration についてではな く、スタッフ同士の連携の強化が行われる。coordination や integration が実現するよう な強固な策は、効力があるが、維持が難しい。 では、なぜ既存の対人援助職(ソーシャルワーカー、看護師、ケアマネジャー等)が医 療コーディネーションを行えないのだろうか。本来、意思決定支援は対人援助職が行うも のというよりは、本人のことをよく知る身近にいる信頼できる人が最も適している。しか し、医療的介入が行われる意思決定の場面では、情報の非対称性、状況の大きな変化、決 定への切迫感、それらに伴う心理的痛みがあり、身近にいる信頼できる人が意思決定支援 を行うことが難しいことも多い。そこで、専門職により意思決定支援が求められるのでは あるが、実際は①物理的な距離、時間的制約があり、意思決定に関わるような関係性が作.
(16) りにくい②意思決定支援の過程でみられる対立や葛藤に対処する自信がない。③時間がか かる意思決定支援をしてもしなくても報酬が変わらないためメリットがないという理由か ら、専門職による意思決定支援がうまく機能していないということが考えられる。今後、 地域包括ケアで、医療コーディネーションの担い手をどのように確保していくか、各自治 体が考えていく必要がある。 (2)医療コーディネーションのプロセス A.医療介護の場で起こる意思決定支援場面の特徴 医療コーディネーションではかかわりや介入のタイミングが重要であり、そのため には医療介護の場で起こる意思決定支援場面の特徴を理解しておく必要がある。そ の特徴は 8 つある。 ① 患者と家族の他、患者の身近にいる支援者(医療介護従事者)が対象になる ことが多い ②医師との信頼関係、治療選択、療養場所選択、看取り等、価値の対立が起きや すい場面が対象となることが多い ③ぎりぎりまで対立が顕在化しないため介入のタイミングがつかみにくい ④健康状態、介護状態等で決定事項がゆらぎやすい ⑤医療資源配分の問題が先鋭化しやすい ⑥専門職種間の価値観の対立がおきやすい ⑦関係調整に時間がかかる ⑧画一的な対応になじまない B.意思決定支援と関係調整のプロセス 医療コーディネーションにはプロセスがあるということを理解する必要がある。大きく わけて状況把握と関係調整に分かれると思われる。意思決定支援を開始する前には、その 対象の身体的安定が図れているかどうかの確認を行うこととしている。それは、医療にか かわる決定を行うにあたり、身体の安定は必須条件であるということである。つまり、身 体的な状況をアセスメントし、身体的な痛みや苦しみは除去することが意思決定支援のも っとも最初に行うことだということである。その確認の次には状況把握があり、ここでは 主にダイアログを行い患者の希望を聞きながら全体像を把握していく。患者家族が生きて きた文化背景、生活環境、家族関係、経済状態、健康状態、これまで利用してきた医療福 祉システム、その人の価値観、信念、行動規範を要約することによって、今後、 「誰とど こでどのように生きていきたいか」 、そのためには「どのようなシステムを利用したい か」 、 「その願いを妨げる障壁は何か」を把握する。 次の関係調整は前ステップで共有した患者家族の希望を叶えるためのシナリオをつくっ ていくイメージである。地域包括ケアにおける関係調整では主に在宅ケアスタッフのチー ムをつくることになる。そのチームはケアを行うというよりは状況を変化させていくため.
(17) のチームであるため、チーム編成は以下の 5 つの役割を担う人をそろえることになる。も ちろん、役割を重複することは可能で少数精鋭の核になるチームのほうがいい。①対立の 把握する人(観察力・分析力)②行動力があり実務ができるフォロワー(信頼性)③対立 を全員に知らしめ、どう解決するか、調整する人(リーダーシップ)④人を安心させるコ ミュニケーションと癒しの達人(コミュニケーション)⑤論理的で聡明。他人への関心は 薄い(専門知識)。たとえば、①をコーディネーターが担い、②は訪問看護師、③と⑤は医 師、④はケアマネという形が機能しやすいのではないかと思っている。この役割分担で意 思決定したものを実行するための戦略を考え、シナリオをつくり、その実践を行ったあと はモニタリングを続けるということになる。. 0.前提条件の確認:身体の安定がはかれているか(意思決定ができる状態にあるか) 1.状況把握:対話 その人が生きてきた文化背景、生活環境、家族関係、経済状態、健康状態、これま で利用してきた医療福祉システム、その人の価値観、信念、行動規範を要約するこ とによって、今後、 「誰とどこでどのように生きていきたいか」、そのためには「ど のようなシステムを利用したいか」、「その願いを妨げる障壁は何か」を把握する.
(18) 2.関係調整:合意形成(具体的には意思決定支援チームをつくる) 内容 チーム作り. ①対立の把握する人(観察力・分析力) ②行動力があり実務ができるフォロワー(信頼性) ③対立を全員に知らしめ、どう解決するか、調整する人(リーダーシップ) ④人を安心させるコミュニケーションと癒しの達人(コミュニケーション) ⑤論理的で聡明。他人への関心は薄い(専門知識). 目的. コーディネーションの方針を明確にする 患者と患者の最も身近にいる人が安心できるようにする. 戦略. 方針をどのように徹底していくか. モニタリング. システムの均衡が保てているか、ゆらぎは何か観察していく. 成果. 安心した環境、情報の流れを確認する. 完了. 在宅チームへ完全移行。. 2. ケアマネジャーによる意思決定支援を考える 医療コーディネーションニーズが発生している場面はだいたい①治療選択②療養の場の 決定③終末期の場面である。これらの場面は何らかの医療が介在するところであるが、そ の判断や取り扱いが、必ずしも医療者でなくてもいい場面が②、③である。むしろ、本来 は、患者家族が主体になって、決めていくことが求められており、患者家族をよく知る身 近にいる人が意思決定支援になった方がいい場面でもある。意思決定支援の場面を状態の 変化の速さと、意思決定支援者と患者家族の関係性の有無で見たときに、どういった対人 援助職が意思決定支援者に望ましいかを検討すると、下記のような図に考えられる。もと もと関係性があり、状態変化が緩やかな方や関係性がなくても(退院時に初対面でも)状態 変化が緩やかであれば、意思決定支援者として適しているのは、医療職よりむしろ介護支 援専門員(CM)である。介護支援専門員は生活者としての患者家族をよく知る、患者家 族にとって身近な存在であり、時間をかけて信頼関係を築いていく環境にあるからであ る。とくに高齢者ケアにおいては意思決定支援者として積極的な担い手になりうると考え ている。 また、経験を積んだ介護支援専門員はもともとの関係性を活かして、状態変化の激しい 患者家族への意思決定支援も可能だと思われる。経験値によるところが大きいが、今後 は、この領域は主任ケアマネジャーが担い手になりうると考えている。一方で、退院時に 初めて顔を合わせ、状態変化が急な患者家族には、医療職の意思決定支援者が向いている と思われる。年齢の若い末期ガンの方などは、治療への心残りがあったり、本人家族が死 に向き合う心構えが出来ていないことも多く、医療者による医学的な説明やケアにより、. シナリオ.
(19) 意思決定の前提条件である心身の安定を図ることが何よりも大事になるからである。看護 師等医療職も意思決定支援に積極的に関われていることは少なく、今後は医療職が意思決 定支援を積極的に関わることも大切になってくる。.
(20) “援助する”者と“援助される”者のよりよい関係性に関する一考察 医療法人 公道会 公道会病院 佐藤貴之 はじめに 死は誰にでも必ず訪れる、普遍的かつ絶対的な現実である。したがって、人は人生におい て、いつかは身近な人々の死と自分自身の死に直面せざるをえない。 「まだ死にたくない」 「いつ死んでもいい」 「死んだほうがまし」 「私が死んだら…」 「いっ そ死んでくれたら」 。援助の現場においては、患者(利用者)やその家族の口から「死」を 含む発言が援助者にぶつけられることが多い。その発言の背景にあるものを知り、援助の質 を向上させるための情報を得る絶好の機会であるにもかかわらず、このような場面におい て、返答に窮してしまい、沈黙を続け、ただ頷く時間を過ごすことで、 「いい援助ができた」 と思ってしまってはいないだろうか。 医療機関や福祉の現場において、 “援助する”立場として業務に携わる者は、 “援助する” ことに対してやりがいや喜びを感じながら日々を送っている。同時に、戸惑いや悲しみ、絶 望感に苛まれることも少なくない。このようなネガティヴな感情を味わった経験を前向き に捉え、糧とする援助者がいる一方で、自身が傷つくことを恐れ、目前の“援助される”側 である患者(利用者)とその家族を正確に理解することを避け、独善的な援助を提供してし まうケースがある。 本稿では、 “援助される”側である患者(利用者)とその家族、 “援助する”側の援助者双 方の心理状態に焦点を当て、4 つのテーマに関する知見を紹介し、心理学的観点から“援助 する”者と“援助される”者のよりよい関係性について考察していきたい。実際の援助場面 ........ において活用可能な教科書的ではない知見を提供できればと考えている。. 悲しみはすでに始まっている ~予期悲嘆~ 患者に対する投薬を中心とした医療行為は、ある程度の延命が可能であるが、その家族は 非可逆的病理変化による衰弱を目の当たりにする。 「いつまで生きられるのだろう」 「死んで しまったらどうしたらいいのだろう」というように患者の死を予期することにより、漠たる 不安が常につきまとい、予期悲嘆を味わうようになる。 予期悲嘆とは、喪失を予期したときに実際に起こる悲嘆反応である(Burnell & Burnell, 1989) 。予期悲嘆は、現実の悲嘆(死別後の悲嘆)を前提にしているため、類似した段階を 経過する(Futterman et al., 1972)という見解と、通常の悲嘆とは異なる(Aldrich, 1974).
(21) という見解がある。Aldrich(1974)によると、予期悲嘆と通常の悲嘆とでは次の点で異な る。まず、予期悲嘆は患者と家族の両者が経験するものであるが、当然ながら死別後の悲嘆 は家族のみが経験するものである。予期悲嘆の終末は“愛する人の死”であり、理論的には その過程は時間の経過とともに促進される。また、 「希望」という段階を含んでおり、死別 後の悲嘆に比べて、否認の段階で躓きやすい。さらに、Fulton & Gottesman(1980)は、 死別後の悲嘆は故人を対象とし、予期悲嘆では患者あるいは病人を対象としている点にお いて異なるとしている。 Sweeting & Gilhooly(1990)は、患者の死への予期悲嘆は家族にとってストレスになる だけでなく、最後の数週間、数ヶ月という残りわずかな期間の人間関係を損なわせることが あると述べている。Sweeting & Gilhooly によると、予期悲嘆の過程が促進されるにつれ て、徐々に家族は患者から心理的に離れ、引きこもりの状態をもたらす。こうした反応を示 した家族は自分自身に罪悪感を持つうえに、瀕死の患者と接触を持たないことで社会的に 非難されることになる。一方で、患者は心理的・身体的に孤独になっていくと説明している。. その体験を意味あるものと捉える ~Posttraumatic growth(外傷体験後成長)~ 対人援助を目的とする精神分析学的理論では、悲嘆を経験している人を、外部から強いら れた喪失という理不尽な出来事から立ち直ろうとする受身の存在として捉えており、その 人自身が環境に働きかけて変えていくことも可能な能動的な存在であるということが見落 とされがちであった。また、その体験に何らかの「意味」を見出そうとする人間の行動や、 苦難を通じて辿り着く「人間的成長」といったポジティヴな側面には、あまり注目されるこ とはなかった。 「意味」の問題が取り上げられてきた主な分野は、心的外傷(trauma)体験の研究領域 である。Post traumatic stress disorder(以下、PTSD と略す)研究では、PTSD を引き起 こすような深刻な出来事を克服していく過程で、その体験を意味あるものとして位置付け ることの重要性が指摘されている。 Bulman(1992)は、愛する人との死別体験を“これまでの人生の中で培ってきた、人生 に対する見方や自分なりの人生の意味づけを崩壊するもの”として捉え、人は意味の再構成 のために自身の生のコントロール感、安全・安心の感覚を保つ能力が重要であると述べてい る。Taylor(1983)は、これらの死別体験の意味を見出す能力が大きいほど、悲嘆の度合い が小さくなるとしている。 Thompson & Janigian(1988)は、喪失体験後に人生の有意味感を回復する方略につい て、次のように説明している。その方略とは、喪失体験と一貫していない生活の方法や認知 的表象を変更するか、ポジティヴ・フォーカスを用いたり、認知変容を試みたり、社会的比.
(22) 較を行って、自分の体験を再解釈することである。また、意味の回復を妨げる要因として、 喪失体験があまりにも深刻である場合や、その人自身が古い意味に固執する度合いが強い 場合をあげている。 PTSD 体験を克服していく過程は、意味了解(meaning sense)と有益性発見(finding benefit)という2つの概念で説明されてきたが、それらは基本的には同様の心理的プロセ スであるという理由から、明確な区別化は行われていなかった(Davis, et al., 1998) 。しか し、Janoff-Bulman & Frantz(1997)によって、有益性発見は意味了解よりも、より積極 的意味合いを含むものとして、両者は区別された。有益性発見とは、困難な状況においてポ ジティヴな意味や有益性を見出すことであり、それによりネガティヴな側面が最小にされ たり、緩和されたりする(Davis, et al., 1998) 。 このような心的外傷体験後の人間的成長を包括する概念として、Calhoun & Tedeschi (2006)は Posttraumatic growth(外傷体験後成長)を提唱している。 Calhoun & Tedeschi による Posttraumatic growth の概念モデルを Figure 1 に示す。.
(23) Figure 1. Posttraumatic growth の概念モデル(Calhoun & Tedeschi,2006). 外傷を体験する前の人(person pretrauma)に、その人の人生それ自身を揺さぶるよう な重大な出来事(seismic event)が起きたとき、湧き上がる不快な情動を押さえようとし たり(management of emotional distress)、信念や目標を強く持とうとしたり( belief & goals) 、出来事を物語化する(narrative)ことを試みる(challenge)。この時点でのディス トレスは、試みの困難の程度、複雑性によって規定される。 次の段階では、自動的かつ侵入的な精神反芻(rumination)に苛まれる。この反芻による とらわれの状態にある人は、能動的に他者に対して外傷体験について話す、あるいは文字化 して表現することで自己開示(self-disclosure)を行う。 やがて、不快な情動は減少し(reduction of emotional distress)、自動的な精神反芻の統 制が可能となり(management of automatic rumination)、自らが掲げた目標の束縛から解 放される(disengagement from goals)。そして、かつて自動的かつ侵入的であった精神反.
(24) 芻は自らが想起したい時に呼び起こせるようになる(rumination more deliberate) 。この 状態に辿りついた人はこれまでのスキーマの見直し(schema change)や、自らに振りかか った出来事に対し意味づけを行い、新たな物語として構成する(narrative development) ことができる。これら一連の過程において、その人自身が有する社会文化的な資源が導入さ れる。 最終的な段階である心的外傷後成長(posttraumatic growth)に到達した人は、体験した 出来事によりもたらされたディストレスが大きいほど、それを克服した結果の副産物であ る知識や通念を獲得することができる。 Tedeschi & Calhoun(1996)は、過去5年以内に重大なネガティヴライフイベントを経 験した大学生を対象として調査を行い、PTGI(The Posttraumatic Growth Inventory)を 作成している。PTGI は、①他者とのつながり、②新たな可能性、③人間的強さ、④心の変 化、⑤人生の再認識の5因子からなる 21 項目から構成されており、内的整合性はα=.91、 再検査による相関は r = .71 であった。 Calhoun & Tedeschi が提唱した Posttraumatic growth の概念モデルは、認知過程に焦 点をあてている点、社会的相互作用の影響を考慮している点、社会文化的な資源の投入を考 慮している点においても、対人援助の場面において援用可能なモデルであるといえよう。. Death education(死の準備教育)の必要性 Deeken(1986)は、死を身近な問題として考え、生と死の意義を探求し、自覚をもって自 己と他者の死に備えての心構えを習得することは可能かつ必要でもあるとし、死への準備 教育(death education)を提唱している。 死への準備教育は、知識のレベル、価値観のレベル、感情のレベル、技術のレベルで行わ れる必要があるとされている。知識のレベルにおいては、死生学を中心とした死に関わりの ある多様なテーマへの学際的なアプローチの成果を吸収し、知識としての獲得が行われる。 価値観のレベルでは、自己の価値観の見直しと再評価を行い、生と死にまつわる価値観を確 立させる。感情のレベルでは、死に関連して生起する感情に対して、対峙する態度の形成を 目的としている。このレベルでは、恐怖や不安、死の考察を抑圧しようとする感情、個人的 に死を直視することを免れようとする防衛手段としての純客観性への逃避などを統制する ための自己認識が要求される。技術のレベルでは、前出の3つのレベルを達成したうえで、 死にゆく人との相互作用において必要なスキルの獲得を目的としている。 人生のさまざまな段階において行われる死への準備教育を、Deeken は次のように説明し ている。 幼年期においては、自分のペットが死んだときに初めて死と向き合うことは少なくない。 子どもはこの経験に好奇心と興味を覚え、どうしてペットが死んだのか、人間も死ぬのかな.
(25) どと大人に尋ねることがある。これは、親が子どもと死について話し合い、子どもに喪失や 悲嘆という難しい問題と取り組ませる絶好の機会であるとともに、子どもの死に対する誤 った認識や態度を矯正し、健全な方向へと修正できる機会でもある。もし、大人が自分自身 抱いている死への恐怖、時期尚早であるという危惧から、死についての話を避けたり、押し 止めたりすると、子どもは大人からモデル学習し、 「死=タブー」という固定観念を身につ けてしまう可能性がある。その結果、子どもが後に死に対する行き過ぎた恐怖を抱くといっ た結果に結びつきやすい。また、家族の死を実際に経験することも死への準備教育の貴重な 機会のひとつとなるが、今日では大多数の人が病院で死を迎えるため、子どもたちは死につ いて学ぶ貴重な機会を奪われていると Deeken は指摘している。 青年期にある人を対象に行われる死への準備教育に、文学や哲学を通じた学習法や映画 鑑賞がある。大津(2005)は、Deeken の提唱する死への準備教育が教育の場における問題 意識と乖離していることを指摘したうえで、朝夕の特別活動(ホームルーム)での実践およ び複数教科にわたる横断的デス・エデュケーションの実施を提案している。押し付けの教育 プログラムとしてではなく、自然に共感できる内容の教材を与えることが、この世代の死に 対する理解をより深めることにつながる。 中年期(35 歳から 45 歳くらいまでの間)に多くの人は精神的危機を経験する。人生の 半分を過ぎてしまったことを自覚するといった体験である。それは同時に、人生は残り半分 になってしまい、自分の時間が限られたものになってしまったことの自覚でもある。この新 たな時間意識は、深い鬱状態に陥るきっかけともなるが、自己実現達成に関する評価、家族 内における自身の役割の再認識とともに、残された時間の貴重さを改めて確認することが できる。しかし、この世代の人々にとって、働きながら、あるいは家族の世話をしながら、 その学習機会を得ることは非常に困難な課題である。さらに、学習機会の場が少ないという 問題点もある。 老年期では、死への準備教育はより具体的なものとして行われなければならない。同世代 の人々が次々と亡くなり、 「次は自分の番かもしれない」という意識が高まる時期でもあり、 いかにして死に備え、遺される家族のために何をすべきか(遺言の作成、法律的問題の処理、 経済的配慮など) 、親しい人々にどのように別れを告げるかについて思考し、行動すること が望ましいとされている。近年では、生前の遺言(リビング・ウィル)によって死に瀕した 時の自分の死に方を決めていたり、生前葬を行ったり、遺骨を海上で撒くことを遺言するな ど、自分の死を想定した上で生存中にできるだけ自分の死に対処しようとするなどのこと がみられる(波平,2006) 。Deeken(1986)は、このような準備は自身の死に対する肯定的 態度を育むとともに、いつか死別を迎えたとき、遺された遺族の負担を軽くし、心理的安寧 を与えるとしている。 患者の死を日常的に体験しなければならない医療従事者やグリーフケアに携わる援助者 に対する死への準備教育も重要な課題である。医療従事者は、終末期患者と接する場におい て、患者に適切なケアを施すためにも死にまつわる様々な問題を学び、かつ死に対する個人.
(26) 的態度を検討する必要がある。また、グリーフケアに携わる援助者は、その悲嘆の様相を理 解する上で、自身の死に対する態度が危ういものであると満足な援助が提供できないばか りか、援助者自身の精神的健康にも悪影響を及ぼす。 死への準備教育がもたらす成果は、老若男女かかわらず、「自分はかく死にたい」という 考えを持って生きられることである。いつ訪れるか分からない、愛する人との死別に備え、 死に対する信念を確固なものとするために、死への準備教育は有効な手段であり、少なくと も中年期以降にはそれぞれが取り組むべき課題といえるだろう。. 燃え尽きる援助者 ~Secondary Traumatic Stress(二次的トラウマティック・ストレス)~ 対人援助に携わる者は、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥りやすいといわれている。 燃え尽き症候群は、表面的、非人間的対応をもたらしたり、離職率を上げたりして、結果的 に患者の QOL の低下やその家族への悪影響を与えてしまうため、対応すべき重要な課題で ある。バーンアウトに至るプロセスでは、脱人格化が起き、その過程で、個人的達成感の後 退が起こり、情緒的な消耗感を感じるに至る(慢性型進行)タイプと、急激に情緒的消耗を きたし、一気にバーンアウトに至る(急性型進行)タイプがある( Golembiewski & Munzenrider,1984) 。 Whippen & Canellos(1991)が全米の腫瘍専門医を対象に行った研究によると、56%の 医師がバーンアウトに該当し、直接患者を担当しているもので高頻度であった。一方、ホス ピスの医療スタッフは感情を表出するよう促されるため、腫瘍病棟に燃え尽きの頻度が少 ない(Bram&Katz, 1989)ことが報告されている。 また、医療関係者だけでなく、福祉領域をはじめとする対人援助職のバーンアウトも指摘 されている。自己犠牲的な業務の中で、日常的に傾聴を行っていくことで次第に疲弊し、や がて、自分の仕事を続けていくために自分自身の感覚を少しずつ麻痺させ、 「何も感じない」 ための工夫をするようになっていく。感じすぎるとつらくなり、疲労し、業務継続が困難と なるので、むしろ感じないということをもってやり過ごそうとする。藤岡(2006)は、これ ら一連の心的過程を適応の1パターンであると捉えている。 以上のような側面は、従来バーンアウトとして捉えられてきたが、最近では二次的トラウ マティック・ストレスという概念で捉え直そうという指摘もある(Figley & Stamm, 1996) 。 Figley(1999)は、二次的トラウマティック・ストレスを以下のように定義している。二 次的トラウマティック・ストレス(Secondary Traumatic Stress、以下 STS と略す)とは、 自分にとって大切な人がトラウマとなる出来事を体験したことを知ることにより、自然に 当然の成り行きとして起こる行動や感情である。また、これはトラウマを受けた人、もしく は苦しんでいる人を援助しようとすることから生じるストレスである。この現象は、共感性.
(27) ストレス、または共感疲労とも言い換えられる。 専門的な援助技術の中では、関係性と共感が重要であるとされている。深く傷ついた体験 は、受容と共感が保証され、信頼関係(ラポール)を前提に援助者に対して語られていく。 すなわち、共感と信頼関係の樹立という援助的な専門性を行使すればするほど、STS にさ らされる場面に遭遇しやすくなるというジレンマが存在する(藤岡, 2006) 。 以上のことから、患者の家族以外の援助者である医療従事者やグリーフケアに携わる専 門家、非専門家に対するケアも重要であるという見解が広まっている。. おわりに 以上の 4 つのテーマに関する先行知見を紹介した上で、“援助する”者と“援助される” 者のよりよい関係性について考察してみよう。 何らかの疾患を患い、その治療を継続している患者(利用者)は、 “疾患に罹患する前の 自分”と“疾患に罹患した今の自分”とを比較し、何がどう喪失されているか(今後、どれ ほど喪失する可能性があるか、を含む)を査定する。査定には、現時点の病識の捉え方が大 きく影響を与える。楽観的( 「たいした変化はない」 「何も失ったものはない」等)に査定す る者、悲観的( 「すべてを失ってしまった」等)に査定する者、様々であろう。喪失を予期 した際に生じる悲嘆反応である予期悲嘆では、喪失の対象に対する認知のあり方が悲嘆の 強さを規定するといっても過言ではない。つまり、失う対象が何であるか、どれほど重要な ものなのか、代替肢があるのか、等、当人にとって重要性が高いほど、その悲しみは深くな ると考える。 また、その家族も同様に、 “疾患に罹患する前の患者との関係性”と“疾患に罹患した今 の患者との関係性”とを比較し、その喪失の度合いを査定する。大半の家族は、患者の罹患 や進行に伴い生活パターンの変化と適応を余儀なくされているため、そこに費やされたコ スト(経済的・時間的・精神的)が査定に大きな影響を与える。 患者(利用者)とその家族が喪失した穴を資源の投入によって出来る限り埋めていこうと いう援助のあり方は、いわば「悲しみを埋める」作業である。日常生活上の不具合や不便さ はサービスによって解消するものの、喪失による悲しみは埋められただけで癒されていな い。 その癒しのヒントとなるのが、2 つ目のテーマで紹介した Calhoun & Tedeschi(2006) は Posttraumatic growth(外傷体験後成長)モデルである。一連の過程において、その人 自身が有する社会文化的な資源が導入されると紹介したが、援助者という存在は社会資源 に含まれるものであり、喪失に関する話題に関して会話する機会が多い者のひとりである。 現場での対話場面において、患者(利用者)やその家族が語る時、援助者はこの概念モデル を思い出しながら、耳を傾けていただきたいと願う。~老いても、病んでも、人は成長する.
(28) ~ そう信じることが次の援助への道標となることであろう。 援助者が自身の精神的健康の維持にさらに関心を持っていただけるよう、「 Death education(死の準備教育) 」 「Secondary Traumatic Stress(二次的トラウマティック・ス トレス) 」について紹介した。 死の準備教育については、誤字ではあるが“共育(きょういく) ”の字を充てたい。教え る、教えられるという関係性ではなく、患者(利用者)とその家族、援助者が一体となり、 人生の終焉について共に考え、育ち合える関係性が望ましいと考える。一方、患者(利用者) とその家族と一体化を目指すことは、二次的トラウマティック・ストレスのリスクが高まる ことから、援助者は適切な距離感を常に意識しておく必要がある。 本稿が、 “援助する”者と“援助される”者のよりよい関係性の構築に向け、援助者が新 たな一歩を踏み出す一助になれば幸いである。. 引用文献 Aldrich, C.K. (1974). Some dynamics of anticipatory grief. In B. Shoenberg., A.C.Carr., D.Peretz., et al.(Eds.). Anticipatory grief. NewYork: Columbia University Press. Bram, PJ., Katz, LF. (1989). A study of burnout in nurses working in hospice and hospital oncology setting. ONF, 16, 555-560. Bulman, R.J. (1992). Shattered Assumptions: Toward a new psychology of trauma. NewYork: Free Press. Burnell, G.M. & Burnell, A.L. (1989). Clinical Management of Bereavement : A Handbook for Healthcare Professionals. Human Sciences Press. Calhoun, L,G., & Tedeschi, R.G. (2006). The Foundations of Posttraumatic Growth:An Expanded Framework. In L.G. Calhoun., & R.G. Tedeschi.(Eds.). Handbook of Posttraumatic Growth: Research and Practice. Lomdon: Lawrence Erlbaum Associates. 3-23. Davis, C.G., Nolen-Hoeksema, S., & Larson, J. (1998). Making sense of loss and benefiting from the experience: Two construals of meaning. Journal of Personality and Social Psychology, 75, 561-574. Deeken, A. (2001). 生と死の教育 岩波書店 Figley, C.R. & Stamm, B.H. (1996). Review of the Compassion Fatigue Self-Test. In B.H. Stamm (Ed.), Measurement of stress, trauma, and adaptation. Lutherville, MD: Sidran Press. Figley, C.R. (1999). Compassion Fatigue: Toward a New Understanding of the Costs of Caring. In B.H.Stamm,(Ed.) Secondary Traumatic Stress. Lutherville, MD:Sidran.
(29) Press. 藤岡孝志 (2006). 福祉援助職のバーンアウト、共感疲労、共感満足に関する研究 -二次的 トラウマティック・ストレスの観点からの援助者支援- 日本社会事業大学研究紀要, 53, 27-52 Fulton, R., & Gottesman, D.J. (1980). Anticipatory grief: A psychosocial concept reconsidered. British Journal of Psychiatry, 137, 45-54. Futterman, E.H., Hoffman, I., & Sabshin, M. (1972). Parental anticipatory mourning. In B.Shoenberg., A.C. Carr., D.Peretz., et al.(Eds.). Psychosocial aspects of terminal care. NewYork: Columbia University Press. Golembiewski, R.T., & Munzenrider, R. (1984). Phases of psychological burnout and organizational covariants: A replication using norms from a large population. Journal of health Resource Administration, 7, 290-323. Janoff-Bulman, R., & Frantz, C.M. (1997). The impact of trauma on meaning: From meaningless world to meaningful life. In M.Power., & C.R. Brewin (Eds.). The transformation of meaning in psychological therapies: Integrating theory and practice. NewYork: Wiley. 91-106. 波平恵美子 (2006). 死の文化:文化人類学の立場から. 内田伸子 (編) 誕生から死までのウ ェルビーイング-老いと死から人間の発達を考える-, 金子書房, 41-53 大津多賀 (2005). 中学校におけるデス・エデュケーションの意義と実践. 龍谷大学大学院文 学研究科紀要, 27, 238-242. Sweeting, H.N., & Gilhooly, M.L.M. (1990). Anticipatory grief: A review. Social Science & Medicine, 30, 1073-1080. Taylor, S.E. (1983). Adjustment to threatening events: A theory of cognitive adaptation. American Psychologists, 38, 1161-1173. Tedeschi, R.G. & Calhoun, L,G. (1996). The Posttraumatic Growth Inventory:Measuring the positive legacy of trauma. Journal of Traumatic stress, 9, 455-471. Thompson, S.C., & Janigian, A.S. (1988). Life Schemes: A framework for understanding the search for meaning. Journal of Social and Clinical psychology, 7, 260-280. Wippen, DA., Canellos, GP. (1991). Burnout syndrome in the practice of oncology: Results of a random survey of 1,000 oncologist. Journal of clinical oncology, 9, 1916-1920..
(30) 3章. 意思決定支援の場面の共有(事例検討). 1. 事例検討の課題 日本医療コーディネーター協会. 理事. 水木. 麻衣子. 3 章は、 「意思決定支援場面の関わりの実際」を共有すること。実際の事例を用いて意思決定支 援とは何かを共有するのである。ここでは本研究プロジェクトで使用した「意思決定支援の必要 な場面」の事例検討を紹介している。在宅医療コーディネーターが何を察知し、何を考え、どの ように支援をするのかについて、事例を通してイメージしていくところである。.
(31) 1. 事例検討の課題 日本医療コーディネーター協会 理事 水木 麻衣子 今回の研究の事例検討で使われた事例を紹介する。事例の選択については、意思決定支援を 積極的に行っていくことが好ましい場面として、以下の二点を提示した。 ①患者・家族・医療提供者・介護関係者等で意見、価値観、方針が対立している、あるいは 対立しそうな場面。 ②治療選択、療養場所の選択、看取りなど顕在化した対立はないが何らかの判断、決定が必 要な場面。 事例検討会では、検討会委員の介護支援専門員に「意思決定支援に関われたと認識した」 事例を提示してもらった。介護支援専門員が意思決定支援に関われたと認識する事例の特 徴は、①退院時に初対面だった患者で、②がんという病名あるいは聞きなれない病名がつい ている、③在宅医療チームとの協働があったというものである。自分のかかわりが「意思決 定支援」なのか?という迷いがあり、医療的な処置がありそれがうまくいった事例、あるい はうまくいかなかった事例という選定になったと思われる。これらの事例検討を行うと、介 護支援専門員は関係調整の選択肢はあげられるが、優先順位やその具体的方法(対話のレベ ル)を検討することが苦手であることがわかった。それらは、意思決定支援のタイミングの 遅さや意思決定支援の浅さにあらわれていた。意思決定支援のタイミングが遅れる、意思決 定支援が浅くなる理由は、個人の資質というよりは、医療コーディネーションが実践されな い理由とほぼ一致すると思われる。つまり①物理的な距離、時間的制約があり、意思決定に 関わるような関係性が作りにくい②意思決定支援の過程でみられる対立や葛藤に対処する 自信がない。③時間がかかる意思決定支援をしてもしなくても報酬が変わらないためメリ ットがないという点である。 事例検討会の際に委員から「退院のタイミングは病院が決めるものであり、地域が介入で きるものではない」 「業務の範囲外のため、じっくり意思決定する時間がない」という声が 聞かれた。一方で、意思決定支援は大事だと思ってはいるようであった。総合して考えると、 現在の介護支援専門員の意思決定支援の現状は、関心はあり取り組んでみたいと思うが機 会が乏しく訓練不足だということである。その結果、提供者側の自己満足的な意思決定支援 になっている可能性もある。具体的には、意思決定支援を単純化したプロセスと考え、その プロセスをたどることで意思決定支援をしたという感覚で終わるということである。今後 は、本来の意思決定支援の体験が必要になる。そのために、意思決定支援事例の検証を多職 種で行うことは、有意義であると考える。特に、介護支援専門員が大切にしていることは「自 立支援」である。それはどの職種よりも徹底している。それは、本人の意思をなるべく尊重 できるように努力することでもある。実際に検討会では、介護支援専門員は本人が帰りたい といったら、どうしたら帰れるか考えるということを多職種より徹底できていた。それを見 た時に、介護支援専門員が意思決定支援を担っていくことの価値を見たような気がした。.
(32) 【事例検討の例(進め方例) 】 今回の事例検討の枠組みは、下記の通りで行った。事例検討会で多職種の立場からの意 見を聞くことは、 「発見」も多いが、それをどのように意思決定支援にいかしていくの か、について、を検証していくのには、ファシリテーターの力量が必要になる。今後、意 思決定支援の枠組みの検討と事例検討の進め方については検証を続けていかなければいけ ない。 ① プロフィールの確認と経緯の確認 患者家族の意向、大切にしていることを知っているか、意思決定支援者としての存 在感があるか 患者家族の病気の理解、状況の理解 患者家族がどのように病気を理解しているのか、現実とどのくらいの乖離があるの かを把握する。 ② 選択肢の把握と検討 患者家族の意向に関する現実検討 合意に至る調整(戦略) ③ 本人の意思と当事者たちの合意 合意すべき内容の決定 【例 1】「意思決定支援が困難」だと思った事例 意思決定支援者自身が「積極的に介入できなかった」と認識していた事例。病状が「待 ったなし」になって初めて本人の意思を尊重する合意形成が図られた。そもそも向き合う ことに大きな葛藤が生じる ALS という病気の特殊性もある。意思決定支援のタイミングが なかなかとれない状況での支援者本人の認識は「医療側の情報提供不足とご家族の意向が 合わなかった事例」というもの。意思決定支援の観点から、議論になることは、二点。① そもそも意思決定の難しい病気であり、向き合わせようという恣意的な働きかけは容易に かわされる、という点、②「医療者側の情報提供不足」が具体的にどのような情報が不足 しているかの確認をしていないという点、が挙げられる。 【プロフィールの確認と経緯の確認】 性別. 女性. 年齢. 72 歳. 支援者. 夫. 病名. 筋萎縮性即索硬化症. 経済状態. 自立. 診療科. 大学病院神経内科. 介護保険. 要介護 2、ケアマネ、車椅子貸与. 概要. 病名告知されてから 1 年半で永眠。どこでどのように最期を迎えるかの意思決定と合意形成 が難しかった例。在宅医療サービスは使用せず最期は病院にて永眠。.
(33) 【選択肢の把握と検討】 夫から、妻も私も自然のままで逝きたいと希望しているが、娘が寝たきりでもよいので 長生きして欲しいと強く希望している。 本人 延命措置はしない 夫. 延命措置はしない. 長男 どちらでもよい 長女 延命措置を希望 【本人の意思と当事者たちの合意】 呼吸器をつけての施設入所は遠方の上、費用負担が大きいとのことで、本人と夫が拒否。 娘が受け入れ、近医病院に入院決定。 【コーディネーションの課題】 ・家族を支え、情報提供をしてきたが、本人家族が意思決定の課題に「直面」できなかっ た事例。本事例では、 「なぜ直面できなかったか」を本人家族と介護支援員の関係性を 振り返ることも大切であった。 ・病院の医療者のかかわりが不十分であったと評論家のように語ることは尤もらしいが、 意思決定支援を行う医療コーディネーターの立場からすると、病院の医療者が十分に関 われて、患者家族が意思決定の課題に直面することができるようになるためには、どの ような支援がありえたか、と考える必要がある。.
図
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