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血胸で突然発症した悪性胸膜中皮腫の一例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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血胸 で突然発症 した悪性胸膜 中皮腫 の一例

市 立 甲府 病 院 内 田 賢 典1、 宮 澤 正 久2 、 呼 吸 器 内 科1、 菱 山 千 祐1、 宮 田和 幸3 呼 吸 器 外 科2、 山 家 理 司1、 病 理 科3 大 木 善 之 助1、 小 澤 克 良1、 要 旨:悪 性 胸 膜 中皮 腫 の約85%は 胸 水 貯 留 で 発 症 し、 初 期 病 変 か ら胸 水 細 胞 診 が 陽 性 に な る こ とが 多 い と され て い る。今 回 我 々 は 発 症1ヶ 月 前 に 悪性 胸 膜 中皮 腫 に特 徴 的 と され る画 像 所 見 に 乏 し く、約1ヶ 月 の経 過 で 大 量 の胸 水 貯 留 を来 た し、細 胞 診 か ら検 索 を進 めて 確 定 診 断 に至 っ た症 例 を経 験 した の で 報 告 す る。症 例 は70歳 代 の 男性 。1ヶ 月 前 のCT所 見 は右 肺S6の 小結 節 程 度 で あ った が 、2013年6月 下 旬 に 呼 吸 困 難感 を 自覚 し、胸 部X線 写 真 で右 の 片側 胸 水 を認 め入 院 とな った 。胸 腔 穿 刺 を行 い 、ほ ぼ 血 液 様 の もの が 引 け た。胸 水 は 滲 出性 で あ り、提 出 した 細胞 診 でClassVで あ った。退 院 して か ら行 ったPET 検 査 で は原 発 不 明癌 の 右 肺 門 リンパ 節 転 移 が疑 われ た。そ の 後 気 管 支鏡 検 査 も 行 った が 確 定 診 断 に は至 らず 、最 終 的 にVATSで 組 織 を採 取 し、免 疫組 織 学 的 に 確 定 診 断 に至 っ た。 今 回 我 々 は血 胸 で突 然 発 症 した悪 性 胸 膜 中皮 腫 の1例 を経 験 した。悪性 胸 膜 中 皮 腫 の 診 断 の た め に は ア スベ ス ト曝 露 の 有 無 を詳 細 に問 診 す る必 要 が あ る と 思 われ た。 キ ー ワ ー ド:悪 性 胸 膜 中 皮 腫 、 血 胸 、 胸 水 細 胞 診 、 免 疫 組 織 学 、 ア ス ベ ス ト は じめ に 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 は こ れ ま で 比 較 的 稀 な 腫 瘍 と され て き た が 、 そ の 罹 患 者 数 、 死 亡 者 数 は 世 界 的 に 急 激 に 増 加 し て い る。多 く の 国 で20年 以 内 の 間 に そ の 発 生 率 は 倍 増 す る と 予 測 さ れ て お り、Muramamaら の 報 告1) に よ る と 、2000年 か ら2039年 ま で の 男 性 の 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 に よ る 死 亡 数 は101400人 に 及 び 、2030年 か ら 2039年 ま で の10年 間 の 死 亡 数 は 43150人 と な り 、 こ の 時 期 に ピー ク に 達 す る こ と を 予 想 し て い る 。 初 発 症 状 と し て は 、 息 切 れ 、 胸 痛 が 主 で

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図1.入 院1ヶ 月 前(5月 下 旬) 図2.入 院 時(6月 下 旬) あ る が 、今 回我 々 は1か 月 前 の段 階 で 悪 性 胸 膜 中皮 腫 に 特 徴 的 と され る 画 像 所 見 が 乏 しか っ た に も関 わ らず 、 約1カ 月 の経 過 で 急 速 に胸 水 が貯 留 し、確 定 診 断 に 苦慮 した 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 の1例 を 経験 した の で 、若 干 の 文 献 的 考 察 を加 え 、報 告 す る。 症 例 症 例:70歳 代 男 性 主 訴:呼 吸 困 難 既 往 歴 心 筋 梗 塞(61歳) 喫 煙 歴1日25本20歳 ∼61歳 職 歴:事 務 仕 事 ア ス ベ ス ト曝 露 歴:黒 鉛 塗 装 、 配 管 業 。 現 病 歴:2013年5Aに 胸 痛 を 来 た し、 当 院 循 環 器 内 科 で 精 査 し た が 異 常 を 認 め な か っ た 。CT検 査 で は 右 肺 S6の 小 結 節 を 指 摘 され 、 他 に 異 常 所 見 を 認 め ず(図1)、 以 後 外 来 で フ ォ ロ ー と さ れ て い た。6月 上 旬 よ り咳 漱 、 白 色 疾 が 出 現 し 、 下 旬 に な り 上 記 主 訴 が 出 現 した 。 胸 部X線 写 真 で 右 の 片 側 胸 水 貯 留 を 認 め(図2)、 入 院 と な っ た 。 来 院 時 身 体 所 見: BP:143198mmHg、P:86bpm、

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図3.穿 刺 後HRCT 図4.PET検 査(7月 下 旬) BT:36.6℃ 、SpO2:96%(RIA)、 右 肺 呼 吸 音 減 弱 あ り。 入 院 時 検 査 所 見:WBC111001μ L(Neut76.4%),CRPO.8mg/dL, CYFRA28.Ong/mL(正 常 範 囲3.5未 満),可 溶 性 メ ソテ リ ン 関 連 ペ プ チ ド 0.5nmo1几(正 常 範 囲1.5未 満),他 特 記 所 見 な し 臨 床 経 過:入 院 後 、 胸 腔 穿 刺 を 行 っ た 。 血 性 胸 水 で 、 ほ ぼ 血 液 様 の も の が 引 け た 。 胸 水 中LDHは 38051UILと 高 値 で あ り、検 査 結 果 か ら も 滲 出 性 の 胸 水 で 、 胸 水 中ADA は16.OIUILと 陰 性 で 、 結 核 菌DNA も 検 出 さ れ ず 、 胸 水 中CEAは 0.5ng/mL未 満 で あ っ た 。穿 刺 後 の 画 像(図3)で も 、原 発 巣 と思 わ れ る 結 節 は 認 め られ な か っ た 。 こ の 時 に 提 出 した 胸 水 細 胞 診 で はClassVで あ り 、 癌 腫 の 可 能 性 も あ っ た が 、 免 疫 染 色 上 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 が 疑 わ れ た(表1)。 胸 水 の 再 貯 留 は 認 め られ ず 、 退 院 と な り、 外 来 でPET検 査 を 行 っ た 。 ● 7月 下旬 に行 っ たPET検 査 (図4)で は右 主 気 管 支 周 囲 、右 中下 葉 気 管 支 間 の リンパ節 にFDGの 集 積 を認 め た。 右 肺 底 区S8や 右 肺S6胸 膜 下 に結 節 が あ るが 、こ こにFDG集 積 は は っ き りしな か っ た。PET上 は 悪 性 胸 膜 中皮 腫 よ りは原 発 不 明 癌 の 右 肺 門 リ ンパ 節 転移 が 考 え られ た。8 月 中 旬 に 再 度 検 査 入 院 し、原 発 巣 の 検 索 と して 上部 消 化 管 内視 鏡 検 査 、 気 管 支 鏡 検 査 を 行 っ た が 、 上 部 消化 管 に 病 変 を認 め ず 、 気 管 支鏡 検 体 か らはclassmが 検 出 され るに と どま 左:臓 側 、 右:壁 側 胸 膜 プ ラ ー ク あ り 図5.胸 腔 鏡 下 生 検 術

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り 、 確 定 診 断 に 至 らず 、 胸 腔 鏡 下 肺 生 検 を 行 う方 針 と な っ た 。 9月 中 旬 、 胸 腔 鏡 下 生 検 術 を 施 行 し た 。 当 初 はPET上 集 積 の あ るS8 の 縦 隔 リ ンパ 節 生 検 の 予 定 だ っ た が 、 胸 膜 播 種 所 見(図5)を 認 め 、壁 側 胸 膜 生 検 を 施 行 した 。 病 理 標 本 の 免 疫 染 色 を 施 行(表1)し 、Calretinin陽 性 、 CK5/6陽 性 、D2-40陽 性 、 非 常 に 淡 い がWT1陽 性 よ り、中 皮 細 胞 が 示 唆 され た 。CEA陰 性 、TTF-1陰 性 か ら 肺 原 発 の 腺 癌 は 否 定 的 で 、P63陰 性 、 CAM5.2陽 性 よ り扁 平 上 皮 癌 も 否 定 的 だ っ た 。 免 疫 組 織 化 学 的 に は 、 上 表1。 免 疫 染 色 所 見 抗体 胸水細胞診 胸腔鏡下生検 Calretinin 一 VVT-1 十 CAM5.2 十 十 CK516 十 ÷ D2-40 季 十 TTF-1 一 一 CEA 一 ■ 34βE12 十 P63 葡 皮 型 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 が 最 も 考 え られ た 。6月 下 旬 に 行 っ た 胸 水 細 胞 診 の 病 理 結 果 と ほ ぼ 同 じ結 果 で あ り、 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 に よ る 胸 水 の 貯 留 と 診 断 し た 。 病 理 写 真 で は 免 役 染 色 で Calretininが 核 に 、CK5/6は 細 胞 質 に 、D2-40は 細 胞 膜 に 陽 性 と な っ て い る 所 見 が み られ た 。 こ の 結 果 に よ り悪 性 胸 膜 中 皮 腫 の 確 定 診 断 が 得 ら れ た 。 そ の 後 、 カ ル ボ プ ラ チ ン 、 ペ メ ト レ キ セ ドの 併 用 療 法 を 開 始 し た 。 経 過 は 良 好 で 、 有 害 事 象 は 認 め て い な い 。 考 察 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 の 画 像 診 断 と し て は 、 胸 部 単 純X線 、CTが 主 に 用 い られ る。 胸 部 単 純X線 で は 、 片 側 性 の 胸 水 貯 留 、 び ま ん 性 胸 膜 肥 厚 、 胸 膜 腫 瘤 あ る い は そ れ ら の 組 み 合 わ せ と して 認 め ら れ る 。 胸 部CTで は 、 片 側 性 胸 水 や 広 範 な び ま ん 性 の 不 整 結 節 状 胸 膜 肥 厚 を 認 め る こ と が 多 い 。 胸 部CTで の 胸 膜 プ ラ ー ク 検 出 率 は 、 AlJaradら の 報 告 に よ る と95%と 非 常 に 高 く2)、 画 像 上 確 認 で き る こ と が ほ と ん ど だ が 、 本 症 例 に お い て は 胸 腔 鏡 で は 確 認 で き た 胸 膜 プ ラ ー ク を 胸 部 単 純X線 、CTで は 確 認 で き な か っ た 。 さ ら に 、 血 胸 出 現 前 後 の

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CT、PET検 査 で 悪性 胸 膜 中皮 腫 に 特 徴 的 と され る胸 膜 肥厚 所 見 が 軽 微 で あ り、VATSの 異 常 所 見 に一 致 した FDGの 集 積 も認 め なか った 。そ の た め に確 定 診 断 に苦 慮 した 。 宇 佐 美 ら の報 告3)に もあ る よ うに 、悪 性 胸 膜 中皮 腫 で は胸 水 が82.2%に み られ 、 胸 水 症 例 で は詳 細 な職 歴 調 査 を行 い 、 胸 膜 プ ラー ク が 無 い 場 合 で も中 皮 腫 を 疑 うこ とが 重 要 で あ る。 日常 診 療 で胸 水 貯 留 を 来 た す 疾 患 は数 多 い が 、 悪 性 胸 膜 中皮 腫 で は 初 期 病 変 か ら胸 水 細 胞 診 が 陽性 に な る こ とが 多 く、 そ の 診 断 的 意 義 は 高 い と考 え られ る。 本 症 が 急 激 に 血 胸 を起 こ した 原 因 の 一 つ と して 、抗凝 固薬 を内服 して い た こ とが 考 え られ た 。 結 語 短 期 間 に 貯 留 し た 血 胸 に よ る 呼 吸 困 難 を 来 た し、 そ の た め に 診 断 され た 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 の1例 を 経 験 し た 。 本 症 例 の よ う にCT、PET上 胸 膜 病 変 の 所 見 に 乏 し く と も 、 臨 床 的 に 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 が 鑑 別 に 挙 が る 際 に は 、 ア ス ベ ス ト曝 露 歴 な ど の 詳 細 な 問 診 を と る こ と が 肝 要4)5)で あ る。 引 用 文 献

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3)宇 佐 美 郁 治 、岸 本 卓 巳 、木 村 清 延 、 他.我 が 国 に お け る 中 皮 腫 、 石 綿 肺

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参照

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