• 検索結果がありません。

斜角桁の地震時回転挙動への下部工変位の影響に関する実験的検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "斜角桁の地震時回転挙動への下部工変位の影響に関する実験的検討"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

斜角桁の地震時回転挙動への下部工変位の影響に関する実験的検討

公益財団法人鉄道総合技術研究所 正○猿渡 隆史 正 西岡 英俊 西日本旅客鉄道株式会社 正 山田 孝弘

1.はじめに

斜角をもつ橋梁では,大規模地震時に桁が水平方向に回転し,場合により落橋が生じる被害事例が確認されてい る1)。このメカニズムに関する既往の研究は主として上部工(桁)の挙動のみを対象としており,斜角桁が橋台と 衝突すると鈍角側から鋭角側に向かう方向に回転することが明らかとなっている2)が,下部工を含めた橋梁全体系 を考えた場合の地震時の斜角桁の回転メカニズムは未だ解明されていない。そこで筆者らは,斜角橋梁全体系にお ける桁回転挙動を確認する模型振動実験3)を行った。本論ではこの実験での桁と下部工の変位,ならびに下部工の 変位と桁の回転挙動の関係について,別途実施した下部工の強制変位による静的実験の結果とともに報告する。

2.橋梁模型の振動実験の概要

実験に用いた1/20スケールの橋梁模型の一例として,交差 角(斜角)45°の橋梁で下部工背面に盛土のある橋台タイプの 模型の配置を図 1に示す。振動テーブルに剛結した土槽内の支 持地盤上に直接基礎の橋台を2基設置し,両橋台間に剛な桁を 載せる構造とし,橋台背面のU型擁壁内に盛土を構築してい る。また桁は,4か所の支承で下部工に支持され,支承は固定・

可動の区別はなく,いずれも水平全方向に動摩擦係数0.6~0.7 となるものとした。桁の端部には下部工側にパラペットを模擬 した部材を取り付けた。模型の詳細については文献3)を参照

されたい。実験ケースは表 1に示すように,交差角と下部工の種別をパラメー タとした。交差角は直角と45°の2種類,下部工は背面盛土のある橋台を模擬 したケースと背面盛土のない橋脚を模擬したケース,下部工のない桁のみのケ ースとした。下部工がないケースは支承の下沓を振動テーブルに剛結した。な おこのときはパラペットを設置しないケースも実施した。振動実験は,周波数 帯域が3~10Hzで継続時間10秒間のホワイトノイズ波による2次元波形を用 い,最大加速度を50galから漸増させていく加振パターンで実施した。

3.橋梁模型の振動実験の結果および考察(画像解析による変位)

実験棟の天井から撮影した画像の解析により模型や支持地盤の土槽の標点を追跡し,加振中の振動テーブルに対 する模型の変位を求めた。その結果,下部工のないケースでは,斜角桁がパラペットに衝突することにより鈍角側 から鋭角側に回転変位が累積するという,下部工の変位を無視した条件の既往の研究で想定している斜角桁の回転 メカニズム2)と同様の現象が確認できた。ここでは斜角橋梁で下部工のあるケースの結果を中心に述べる。

3.1 下部工が橋脚のケース(Case1-5,Case2-5)

斜角橋脚のケース(Case2-5)における最大加速度が500gal時の桁と桁座の位置について,加振前と加振中の最大 変位時のものを図 2(a)に示す。入力波の方向は不規則であるが,橋脚は基礎の降伏が生じて壁体に直交する方向へ の振動が大きく卓越するモードとなり,桁もそれに追随する挙動となっている。また,基礎の降伏により桁の応答 加速度は頭打ちとなり,支承部の摩擦は切れずに橋脚と桁が一体となり同位相で挙動し,桁のパラペットへの衝突 も生じていない。なお,直角橋脚のケース(Case1-5)の同条件の加振時にも同様の挙動が確認できた。

キーワード 斜角桁,振動台実験,橋台,支承

連絡先 185-8540 東京都国分寺市光町2-8-38 (公財)鉄道総合技術研究所構造物技術研究部 基礎・土構造 図 1 振動実験 Case2-6(斜角橋台)の模型配置

表 1 振動実験のケースと条件

実験ケース 交差角 下部工 Case1-0a

直角 (90°)

なし(パラペットなし)

Case1-0b なし

Case1-5 橋脚(背面盛土なし)

Case1-6 橋台(背面盛土あり)

Case2-0a 斜角 (45°)

なし(パラペットなし)

Case2-0b なし

Case2-5 橋脚(背面盛土なし)

Case2-6 橋台(背面盛土あり)

50340 350

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑643‑

Ⅰ‑322

(2)

3.2 下部工が橋台のケース(Case1-6,Case2-6)

図 2(b)に最大加速度が500gal時の桁と桁座および背面盛土部の位置に ついて,加振前後のものを示す。下部工が橋台の場合,加振中は直角橋台 も斜角橋台も不規則な入力波に対して,壁体に直交する方向に振動が卓越 する挙動をし,壁体前面方向に変位が累積していく傾向にある。直角橋台 のケース(Case1-6)では変位の累積がわずかであったが,これは桁が支承 の摩擦を介してストラット的に効き,橋台の変位を抑制しているためと考 えられる。当然このとき桁は回転しないため,落橋のリスクは比較的小さ いと考えられる。一方,斜角橋台のケース(Case2-6)では,壁体前面方向 への累積変位の向きと桁の位置関係から直角橋台で見られた桁のストラ ット化の現象は見られず,橋台の変位が抑制されることもない。逆に斜角 桁にとっては,両橋台の累積相対変位(支間長の短縮)が支承およびパラ ペットを介して回転力として作用することにより,桁が鈍角側から鋭角側 に回転する挙動を示した。このとき桁回転により,支承の限界変位(25mm) 以上に桁が動き,本実験における落橋と判断できる結果となった。

4.下部工の相対変位量と桁回転角に関する考察

振動実験の斜角橋台のケース(Case2-6)で確認された,下部工(橋台)

の相対変位による桁の回転角の関係を評価するため,振動実験で用いた斜 角桁と支承を用い,下部工を強制的に変位させる静的実験を実施した。図 3の通り,支承の下沓を桁座を模擬した2本のH形鋼に2か所ずつ結合し,

その上に振動実験と同様に桁を載せた。H 形鋼は片側を固定条件とし,も う片方はガイドレールにより1方向にのみ動く可動条件とした。この可動 側のH形鋼をジャッキで押すことにより,橋台間相対変位(支間長の短縮)

を模擬した。

図 4 に橋台間相対変位(桁長で正規化)と桁の回転角の関係について,

静的実験での結果と振動実験の斜角橋台のケース(Case2-6)の結果を合わ せて示す。いずれも橋台間相対変位が増加(支間長が短縮)するにつれ桁 の回転角が増加する傾向にある。また相対変位により桁の遊間が詰まり桁 がパラペットに衝突(橋台間相対変位/桁長:0.01 付近)した後,桁の回 転角が急増していることも確認できる。

5.おわりに

1/20スケールの橋梁模型を用いた2次元振動実験と静的実験により次の知見を得られた。①下部工が橋脚で両橋 脚が同位相で変位し,かつ支承の降伏震度が橋脚の降伏震度を上回る場合には,直角橋梁,斜角橋梁ともに桁と橋 台が一体となり挙動し,桁の回転挙動は見られない。②下部工が橋台で相対累積変位が生じる場合には,直角橋梁 は桁がストラット化して橋台の前面への累積変位を抑制するのに対し,斜角橋梁は支承の降伏震度が橋脚の降伏震 度を上回っていても,斜角桁の鈍角側から鋭角側へ回る方向に桁が回転する。③斜角橋梁で橋台間の相対変位が増 加(支間長が短縮)すると桁の回転角が増加する関係があり,パラペットに衝突した後は急激に回転角が増加する。

これらの知見を踏まえ,今後,下部工変位の影響を考慮した耐震診断法の確立を目指す予定である。

参考文献

1) 川島,運上,星隈,幸左:2010年チリ地震による橋梁の被害とその特徴,第13回日本地震工学シンポジウム,pp.1103-1110,

2010. 2) 矢部,武村,川島:直橋および斜橋の桁間衝突とその影響,構造工学論文集Vol.43App.781-7911997. 3) 猿渡,

西岡,山田:振動実験による斜角橋台・斜角桁の地震時挙動把握,第10回地盤工学会関東支部発表会,2013.

(a) 斜角橋脚(Case2-5)

(b) 斜角橋台(Case2-6)

図 2 加振による桁および桁座の変位

図 3 静的実験の実験装置全景

(装置直上から撮影)

図 4 橋台間相対変位と桁回転角の関係

斜角桁

斜角橋脚 斜角橋脚

支承の摩擦が切れず,橋脚と桁が同位相で振動 天井から撮影した画像の

解析結果 ※変位を5倍に拡大

:加振前

:加振中の最大変位時

斜角桁 斜角橋台 斜角橋台

背面盛土 背面盛土

桁へ回転力 ⇒桁の鈍角を中心に回転(46/1000rad)

橋台間に相対変位(支間長が短縮)

天井から撮影した画像の

解析結果 ※変位を5倍に拡大

:加振前

:加振後

0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.00

0.01 0.02 0.03 0.04 0.05

振動実験

(Case2-6)

静的実験

桁の回転角(rad

橋台間相対変位/桁長 橋台桁座

(H‐100×100)

ジャッキ 固定

可動

斜角桁

載荷方向

パラペットへ衝突

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑644‑

Ⅰ‑322

参照

関連したドキュメント

図-2 に実験装置を示す.コンテナ内に 2 本のレンガを設置して実験を行った.いずれのレンガも風化火山灰で埋 設して,上部が地表面から出るようにしている.レンガには 4 つの AE

波数の比較検討を行う事を目的とした。 2.実験条件および実験方法 実験水路は、長さ 20.0m、幅 0.6m、高さ 0.7m

図 .4-5 に,各有義波高のカスプ地形における海岸線 300m 地点の沖方向への水位差を示す.各地点での岸方 向へ 50m 地点との差を表し,水位差が正の場合沖方向 の水位が高いことを表す.

とした.テーパーの形状は図-2 および写真-1 に示すような形状となって おり,テーパーの広い面(以下,底部)の直径 D を 26mm,からテーパ ーの狭い面(以下,首部)の直径 d

私たちの身の回りには,粉体・粒状体が流れる挙動 が見られる.例えば,代表的なものとしては土石流を

実験にあたり, 図-2 に示すように応力発光体を塗布した シートを,ひずみの発生をより顕著に捉えやすいひび割れ 部を中心に,接着剤でコンクリートの橋桁表面に貼り付け

×0.8,警戒値=整備基準値×0.5 とした 1) .沈設中 の高架橋の挙動の例として,北側函体の沈設深さと 高架橋の沈下・傾斜量の相関を図-3 に示す.鉛直変 位は警戒値 7.5mm に対し

第一次実験は、図 1 に示す幅 3m×奥行き 3m×高さ 1.5mの装置で 行った。実験の目的は、パイプドレーン工により浸潤線が低下するか